今夏の移籍市場でマンチェスター・シティーが、ライバルのマンチェスター・ユナイテッドで契約を満了したMFオーウェン・ハーグリーブスを獲得したが、その理由が明らかになった。カナダ生まれのハーグリーブスは、バイエルン・ミュンヘンで育ち、複数のポジションをこなせる器用な選手である。イングランド代表としても将来を嘱望されたが、相次ぐケガで昨季までの3シーズンはほとんど出番なし。まだ30歳だが、ほとんど引退も同然だった。そのような選手をなぜ、金満マンシティーが獲ったのか、と大きな疑問だった。

その理由を先日、ロベルト・マンチーニ監督がこう解説した。マンシティーはセンターMFが必要だったため、レアル・マドリードのフェルナンド・ガゴと、ASローマのダニエレ・デロッシのどちらかの獲得を目指したという。だが「デロッシは世界最高峰のMFだが、ローマを退団するつもりはないようだ。ガゴにはずっと興味があったが、資金を費やすことができなかった。ファイナンシャル・ファアプレー(FFP)規定を考慮してのことだ。だから契約を満了していたハーグリーブスと契約したんだ」と明かした。

このFFPとは、欧州連盟(UEFA)が来季から新たに導入する規定で、各クラブの1年間の最大赤字額が定められ、超過すると、欧州チャンピオンズリーグ(CL)や欧州リーグ(EL)などへの出場に必要な、ライセンスを剥奪される可能性がある、とされていた。これまで明確な罰則が明示されていなかったため、その効力に疑問符がついていた。だが最近UEFAのプラティニ会長が、「威厳賞金の凍結や、移籍禁止など、厳正に対処する」と明言。各クラブとも、本腰を入れて対応に乗り出した、というわけだ。もちろんこのルールはイングランド・プレミアリーグだけではなく、欧州各リーグの主要クラブすべてに適用される。

FFPとは、最大赤字額が段階的に厳しくなる方式。実際には来季から導入だが、初年度は過去2シーズン分、つまり今季分の収支も対象になる。最終的には2015−16年シーズンから、過去3季で総赤字額は3000万ユーロ(約33億円)しか許されない。つまり1シーズンあたり、わずか約11億円。ちなみにマンシティーは昨季、1億1000万ポンド(143億円)の赤字を出した。今夏もFWアグエロやMFナスリを獲得するなど、大盤振る舞いをしてきたが、かなりサイフの口を絞らなくてはならなくなったのだ。

ほかイングランドならチェルシー、スペインならレアル・マドリード、イタリアならインテル・ミラノやACミランなどが、同じように支出を大幅に削減しなければならない。プレミアリーグをはじめ、欧州の勢力図が変わるかもしれない。

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原田 公樹
1966(昭和41)年8月27日横須賀生まれ、呉育ち。国学院大学文学部中退。週刊誌記者を経てフリーのスポーツライターとして独立し、99年に英国へ移住。ウェンブリースタジアムを望む、北ロンドンの12階のアパートメントに住んでいる。東京中日スポーツやサッカーマガジンに寄稿し、ロンドン・ジャパニーズの不動の左サイドバックでもある。 »Twitterアカウント »メールを送る