南アフリカから戻ってきて、3節連続でFC東京の試合を見た。今季序盤は守備の安定こそ見られたが、得点力不足が著しく、中位をウロウロする結果になってしまった。が、中断期間に元日本代表FW大黒将志を横浜FCから獲得。助っ人のリカルジーニョも日本サッカーに適応してきて、前線に新たな核が生まれた。これで得点力がアップしたことは非常に前向きな材料といえる。

しかし中盤は依然として落ち着かない。昨年急成長した米本拓司が左ひざ負傷で長期離脱を強いられており、城福浩監督は徳永悠平をボランチに上げることで穴埋めを図ってきた。徳永はフィジカルが強く、相手をつぶすことができるため、中央に置けば守りは確かに安定する。パートナーの梶山陽平も思い切って攻撃に参加できるだろう。しかし球出しと流動性という意味ではどうしても足りない。それでも我慢しても使い続けたのは、徳永への絶大な信頼と、失点を減らしたいという強い思いゆえだろう。

その徳永が25日の湘南ベルマーレ戦を前に左ひざ滑膜炎で全治2〜3週間と診断された。そこで考えられる策は羽生直剛、今野泰幸、森重真人のいずれかをボランチに置くこと。城福監督が選んだのは森重だった。

羽生をボランチに動かす場合には、石川直宏と大竹洋平らを2列目に置かなければいけないが、この時は石川が熱中症にかかり、体調が万全でなかった。となると、羽生は動かせない。今野に関しては絶対にセンターバックから動かしたくないと指揮官は考えているようだ。「今野のカバーリング能力は日本のトップクラス。ボランチに置いた時はパス出しにやや難がある。前に出せるのにバックパスをするのはミスと同じ。センターバックならずっと前を向いているので、後ろにパスを出すことはない。フィードもうまいし、そちらの方がより力を発揮できる」というのが城福監督の説明である。

こうして選ばれた森重だが、湘南戦では目覚ましい働きを見せた。相手の中盤のプレスが甘かったこともあるが、梶山とポジションを入れ替えながらスムーズな動きとパス出しを見せた。東京のパス回しは徳永がボランチに入っている時より明らかによかった。守備面でも時に体をぶつけて相手を止めたり、巧みな戦術眼でインターセプトしたりと申し分ない。「森重はもともとボランチの選手。前でやった方がより実力を発揮できる」と北京五輪に彼を連れて行った反町康治監督も脱帽するほどの存在感を示した。

28日のジュビロ磐田戦では、相手のプレスが厳しく、運動量も多かったことから、森重は湘南戦ほどボールを持つことはできなかった。それでも梶山との出入りは息が合っていたし、相手のキーマン、ジウシーニョを鋭い当たりでつぶす場面もあった。中2日のゲームで久しぶりのボランチということもあり、走る量の少なさは気になったが、やはり攻撃を考えると徳永よりプラスではないかという感想を持った。

1-1のドローに終わった試合後、「ボランチは森重より今野を置いた方がダイナミズムが生まれるはずだが…」という質問が城福監督に投げかけられた。指揮官は前述の通りの回答をしたわけだが、確かに今後、誰をボランチに据えるかは頭の痛い問題ではないか。米本は目下、リハビリ中で、早ければ9月にも復帰する可能性もあるというが、すぐに昨季のようなトップフォームを取り戻せるかは微妙。となると、しばらくは代役でしのがなければいけない。

その場合、これまで通り、徳永を置くか、森重を据えるか、今野を思い切って上げるかという選択肢が出てくる。徳永では攻撃面でどうしても足りない部分があるし、森重は運動量とアグレッシブさで見劣りする面がある。しかし今野を前に出してしまうと、守備面で不安が生じる。どれをとっても帯に短し襷に長しだ。「城福さんは毎試合同じ先発で行くわけじゃない。総力戦で戦うから、ポジションも変わる。その都度、考えてやっていくしかない」と今野は話していたが、東京の大動脈であるボランチが安定しないことが波に乗れない今季を象徴していると思えて仕方ない。

当面は森重と梶山のボランチで行き、徳永は本職の右サイドバックに戻した方がいいというのが私の個人的な意見だ。中断明けから大黒、リカルジーニョという点の取れるFWが出てきたのだから、彼らを生かすためにも中盤の構成力は高い方がいい。森重と梶山なら攻撃チャンスもバリエーションも増える。徳永の武器である直線的な動きを生かし、右サイドを駆け上がった方がチームのプラスになるのはないか。

徳永の復帰は8月4日のスルガ銀行チャンピオンシップ、リガ・デ・キト戦(国立)のあたりだろう。この大一番で城福監督が何を選ぶのか。その決断が今季後半戦の東京を大きく左右しそうな予感がするだけに、その動向に注目したい。

元川 悦子

もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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J1 第15節 FC東京 vs. ジュビロ磐田 放送予定
・7月29日(木)16:00 J sports 1
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