雨の中を、浦和駒場スタジアムまでナビスコカップの試合を見に行った。浦和レッズ対モンテディオ山形。相手が下位チームのせいか、あるいは雨のせいか、駒場の観衆は1万3371人と、レッズ戦としてはかなり少なかったが、「Jリーグきっての金持ちクラブ」対「J1最低の予算規模のクラブ」の構図である。となれば、中立の者としては、ついつい、山形に肩入れしたくなってしまう。

そして、山形がじつに見事なゲーム運びでビッグクラブを2-0と粉砕した。

もちろん、選手個々の能力は浦和の方が上。山形の勝利には、浦和の自滅の感もある。両チームの監督がそろって「前半20分までは浦和にビッグチャンスがあった」ことを強調した。そして、その間に浦和がゴールを決められなかったのは浦和のミスである。昼から降り続く雨に濡れたピッチもスリッピーで、最後のパスやシュートの精度が落ちたことも確かだ。だが、立ち上がりの浦和の攻勢は山形も予想していた通りの展開で、山形は必死で相手選手に食らいついていった。そして、それが浦和のミスを誘ったという面もある。

浦和の攻撃はワントップにエジミウソンを置き、2列目にポンテ、田中達也、柏木陽介を置き、その3人が流動的に飛び出していく形。そして、右の平川忠亮と左の宇賀神友弥のサイド攻撃がからむ。一方の山形の守備は、比較的フラットな4人のディフェンスラインと、アンカーの位置に佐藤健太郎を置いた4-1-4-1。ワントップは、田代有三である。浦和のトップのエジミウソンに対しては、センターバックの石井秀典がマークし、もう1人のセンターバックの西河翔吾が余る形。浦和の2列目からの飛び出しに対しては、MFがまず最初のチェックに行くが、最終的には両サイドバックの右の宮本卓也、左の石川竜也が対処し、集中してマークを途切らせない。

こうして、0-0のまま時間が推移し、20分を過ぎると山形にもカウンターのチャンスが生まれてくる。25分、28分と、立て続けに左のMF宮沢克行が俊足を生かして抜け出しかける場面が生まれ、浦和の平川、山田暢久がタックルで止めに行って、相次いでイエローカードをもらう。そして、その時に足を痛めた宮沢に替えて、山形の小林伸二監督はボランチの下村東美を入れ、下村をアンカーに置いて佐藤を2列目に上げる交代を準備。

そして、その交代がレッズのCKの場面で認められ、そのCKからのカウンターで山形が1点を先取してしまう。カウンターからのパスが左サイドに回り、つい先ほどの交代で左のサイドに回っていた秋葉が受ける。すると、左サイドバックの石川がオーバーラップ。浦和の守備陣は、カウンターで人数が足りなくなっていた上に、相手のポジションチェンジのせいもあったのか、こうした山形の選手たちの動きをまったく捕まえていなかった。そして、石川がまったくのフリーで正確なクロスを上げ、最後は田代が得意のヘディングで先制した。

こうなると、もともと守備の意識の高かった山形にとっては思う壺。

もっとも、後半に入ると浦和も猛攻をしかけたのだが、攻める意識が強く、パススピードが速くなりすぎたのだ。パススピードが上がることは、もちろん、一般的に言って悪いことではないのだが、スリッピーなピッチで速いパスを出すものだから、足元でコントロールできず、また、縦に流れてゴールラインを割ってしまう場面も再三あった。ピッチ状態を見て、プレーを選択しなければいけないのだが、まったくそうした工夫もなし。

そして、攻めあぐねている浦和を尻目に、63分にはスローインからの攻めで、増田誓志が上げたクロスがまたも田代にドンピシャ。田代がこの日2点目のヘディングシュートを決めて、これで、勝負あり。その後の浦和は組織を失い、山形は体力的にも最後まで動きが落ちずに、2点のリードを守りきって2-0と快勝した。山形の守り勝ちである。しかも、きちんと鋭いカウンターの形を用意していたのだから、この地方クラブが昨シーズンに続いて、今シーズンも降格圏より上の順位を保っている理由がよく分かった。

山形の守りは、最近流行の言葉で言えば、まさに「ハエがたかるような守備」ということになろうか。しかも、ただ人数がかかるだけではなく、相手とのマッチアップを考え、攻守のバランスを考えて、周到に用意された守備だった。浦和と山形とのチーム力の差。これは、ちょうどワールドカップでオランダやデンマークに挑む日本代表との差に匹敵する。やはり、日本がワールドカップの舞台でそうした強豪を倒すためには、この日の山形のような戦い方をするしかないだろう。

岡田武史監督は、言葉では「ハエがたかる」などという極端な表現を使ったが、この日の山形のような守備の組織をこれから半月の間に作れるのだろうか?アジア予選では、日本は浦和レッズの立場にあった(攻めあぐねるあたりもソックリ?)。そして、予選突破後も強いチームとの試合はごく限られたもので、まだ、選手たちも監督も、「ハエがたかるように守る」意識が十分のようには思えない。今の日本のサッカーは、J1に例えれば、やはり山形のような立場にいる。「降格回避」(ワールドカップで言えば「グループ最下位回避」)こそが最大の目標である。

浦和レッズ対モンテディオ山形の試合を見ていたら、「次のワールドカップでは、いっそのこと、J2クラブを昇格させ、J1の弱小クラブを残留に導く専門家である小林伸二氏あたりを代表監督に迎えるというのもありかな」という気がしてきた。

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授