先週末6日にJリーグが開幕したが、1週間後の今週末14日には日本フットボールリーグが開幕する。8日に行われた全18チームの監督会見に顔を出したが、今季は3部といえども興味深い材料が多いようだ。

まずはJリーグ準会員の動向である。ガイナーレ鳥取、町田ゼルビア、V・ファーレン長崎、今季JFLに昇格した松本山雅FCが4位以内に入れば、来季のJ2参入が可能になる。どのクラブも一大目標に向け、士気を高めているところだ。

4チームの指揮官を顔ぶれを見ると、バラエティに飛んでいる。鳥取は昨季途中から東京ヴェルディの監督を務めた松田岳夫氏、町田は98年フランスワールドカップ日本代表だった新人監督の相馬直樹氏、長崎は昨季のザスパ草津の監督だった佐野達氏がそれぞれ今年から指揮を執る。松本山雅の吉澤英生監督は今季が3年目だ。JFLを戦ううえでは、Honda FC時代にJFL最優秀監督に輝いたことのある吉澤監督が一歩リードというところだろうか。しかし松田監督は日テレベレーザの監督を長く務めるなど経験豊富だ。相馬監督は全くの新人ではあるが、鹿島アントラーズの常勝時代を担い、日本代表として世界と対峙したハイレベルのキャリアを生かせるだろう。佐野監督は横浜フリューゲルスや京都サンガ、草津で15年近くコーチ経験を積み重ねているだけに、現場の空気感を熟知している。

戦力的には、元日本代表の岡野雅行、服部年宏らを擁する鳥取が最も充実しているのではないか。昨季5位で苦い思いをしているだけに、今季こそという思いはひと際強い。昨季6位の町田もJ1経験のある木島良輔、藤田泰成らを補強。昨季までのボールポゼッション偏重なスタイルからスピードを生かしたやや現実的なサッカーにシフトしそうだ。長崎もベテランMF原田武男を中心にまとまりがある。そして松本山雅も湘南ベルマーレなどを渡り歩いた33歳のFW柿本倫明を軸に攻守のバランスの取れたサッカーをする。だが昨季の守備陣を担っていた主力が抜け、新戦力がどこまでフィットしているか分からないところが気がかりではある。

この準会員4チームに立ちはだかるのが企業クラブである。昨年優勝のSAGAWA SHIGA FC、2位の横河武蔵野FC、3位のソニー仙台FCはいずれも企業の力強いバックアップをもとに活動している。SAGAWAの中口雅史監督は「全選手が社員契約を結んでいて、午前中は配送センターなどで働いている。練習は午後からというスタイルで旧日本リーグ時代のチームと同じです」と説明する。そんな彼らがプロである準会員より上位にいるのはなぜか。

相馬直樹監督はこう分析する。
「JFLには18チームがあるが、企業、プロ、セミプロ、大学生といろんな形態のチームがある。しかも34試合がほぼ日曜日だけで、非常に長丁場になる。夏場でも昼の13時から試合が開催されるなど、非常にタフさが求められる。そういう時、最も問われるのが『安定感』。成績によって選手の生活が左右されない企業チームは安定感という面で勝っている。それが終盤になって上位に来る理由じゃないか」と。

彼ら企業チームにもかつてJリーグを経験した選手が何人かいる。SAGAWAであれば、キャプテンの山根伸泉は市立船橋高校で選手権優勝を経験。国士舘大学時代もユニバーシアード代表として戦い、浦和レッズへ入団。そこでチャンスが得られず、佐川急便東京へ活躍の場を求めた。2007年に佐川急便の東京と大阪が合併し、現在のチームに移行しているが、彼はずっとここでプレーし続けている。大沢朋也、御給匠らもJ経験者。企業チームだからといって、戦力的には決して見劣りしないのが実情だ。

こうしたチームに、数年後のJ準会員加盟を狙うFC琉球、ツエーゲン金沢などが絡み、さらに流通経済大学もいる。このように混在したリーグだからこそ、計算がつかない事態が起きる。そこがJFLの醍醐味かもしれない。

少し前になるが、2008年11月にFC琉球対流経大のゲームを見た時のことである。山下芳輝ら元日本代表クラスを擁するFC琉球が、猛烈な運動量で走り回る流経大にいとも簡単に負けていたのだ。「ボールを持った時の技術とか戦術とかより、どれだけ走るか。JFLではそういう部分が強く求められてくる」と山下は話したが、まさにタフでなければ戦えない。そんな印象を強く受けた。

ゆえに、J2昇格レースも決して一筋縄ではいかないだろう。今季は私が応援する故郷のクラブ・松本山雅もいることだし時にはJリーグではなくJFLに足を運んでみたいと思う。多くのサッカーファンにもぜひ3部リーグに目を向け、盛り上げてもらいたい。

元川 悦子

もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。