「Jリーグ」開幕!J SPORTSではJ1全試合を放送中!
3月8日(月)24:00 FC東京vs.横浜F・マリノス J sports 1
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3月6日に開幕した2010年Jリーグ。私はFC東京対横浜F・マリノス戦を選んだ。特に東京の現状を確認したかったからだ。新戦力の森重真人、松下年宏どれだけチームにフィットしているか、負傷で出遅れた石川直宏、梶山陽平がどこまで回復しているかなど、チェックポイントは複数あった。
この試合は本来、先週末にエスパニョールから8年ぶりに古巣に戻った中村俊輔の復帰戦になるはずだった。俊輔とFC東京戦といえば、東京がJ1初昇格した2000年開幕ゲームを思い出す。当時、名門・横浜と新参者・東京の実力差はかけ離れていた。守って守ってカウンターを狙う東京相手に横浜は完全にボールを支配し、攻め続けた。が、1点が取れず、終盤にPKを与えてまさかの苦杯を喫してしまう。試合後、俊輔は東京の泥臭い戦い方を「部活サッカー」と評した。この発言は各方面で物議を醸したが、それほど質の違いがあったのも事実である。あれから10年が経過し、両者の力関係は逆転しつつある。それを俊輔が実際にピッチ上でどう感じるか、ぜひ聞いてみたいところだった。彼の登録が間に合わなかったのは実に残念だ。
しかし、俊輔がいなくても興味深いゲームであることには変わりない。まず東京の先発を見ると、最終ラインは昨季から大きな入れ替えがあった。センターバックはこれまで今野泰幸とブルーノ・クアドロスのコンビが軸で、時に茂庭照幸、藤山竜仁らが入っていたが、ブルーノも茂庭も藤山も移籍してしまった。代わって森重とキム・ヨングンが加入。今回は森重と今野がコンビを組むことになった。若手ナンバーワンDFといわれる森重の動きは今季のカギを握るだけに注目だ。一方、右サイドは徳永悠平がボランチに上がったため椋原健太が先発した。梶山と米本が揃って負傷中のボランチは徳永と羽生直剛の組み合わせ。2列目は中村北斗と松下が左右に入った。そしてFWは鈴木達也と平山だ。助っ人FWのリカルジーニョはまだ適応不十分でベンチスタートとなった。
一方、木村和司新監督が率いる横浜は貪欲にゴールへ向かうスタイルへの脱皮を図っていた。2列目のワイドに位置する狩野健太、山瀬功治が積極的に上がってシュートを放ち、渡邉千真、長谷川アーリアジャスールの両FWもクロスに鋭い反応を見せるなど、昨季よりゴール前の迫力が増していた。
そんな中、始まった試合だが両者とも思うように得点機が作れない。東京の方はやはり主力ボランチの不在が響いて中盤でタメが作れず、サイドが飛び出して深い位置までえぐる形も出せなかった。松下は持ち前のアグレッシブさを前面に押し出したが、連動性はまだ今ひとつ。城福浩監督も「もっと力を引き出せるはず」と期待を込めて話していた。
そこで奮闘したのが守備陣だ。森重と今野は何年も一緒にプレーしているように息の合った連係を見せ、徳永もボランチとしてバイタルエリアにしっかりとフタをした。森重は横浜の先発2トップ、途中から出てきた坂田大輔らスピードあるFWと対峙してもほとんど負けるがない。1対1の強さ、読みの鋭さを随所に見せつけた。「城福(浩)監督に期待されているのが分かっているので重圧はある。でも難しいことをやっているわけじゃないし、チームの色、選手の色も理解できたから大丈夫」と本人も自信を見せた。ここ数年、守備の不安に悩まされてきた東京だが、今季は実にいい補強をしたといえる。
もう1つ光ったのが、負傷上がりの梶山と石川直宏である。梶山は後半19分、石川は24分から登場したが、それによって硬直化していた東京の攻撃にリズムが出てきた。梶山は持ち前のあたりの強さ、キープ力で貢献し、石川はスピードある突破で平山相太のロスタイムの決勝点を力強く演出した。
石川は1月の日本代表の指宿合宿に参加した際「まだ自分のイメージと実際の動きにギャップがある。ケガをしたことで接触プレーへの恐怖感も残っている」と話していた。おそるおそるボールを受け、走り、シュートを打つ姿は昨季終盤のキレキレの彼とは程遠かった。東アジア選手権のメンバーには残れず、今度は左ひらめ筋負傷で全治3週間と診断された。本人も苦しんだだろうが、開幕戦のピッチに戻り、さらに決勝点のアシストという結果を残したのだから大きな自信を得ただろう。横浜の小椋祥平を一瞬の速さでかわし、2人のDFが寄せてきても怖がらずにクロスを出したシーンを見ても、対人プレーへの恐怖感は克服できたようだ。
わずか20分でこれだけの仕事をできるMFは今の日本代表にいない。先日のバーレーン戦前の練習で岡田武史監督は中村俊輔の右MFの位置に興梠慎三(鹿島)を試していたが、「石川が戻った時のことを想定しているのでは」と見る向きもあった。イザという時、流れをガラリと変えてくれる彼が2ヵ月後の代表メンバー発表時までに完全復活できる可能性が広がったのは間違いない。
まだ1試合ではあるが、今季の東京は前向きな材料が多そうだ。それだけに今後が楽しみである。
元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。


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