前半1点。後半1点というのは、サッカーの試合としては完勝である。ボール支配率60%というのも、ほぼ完璧な数字だ。だが、もちろん、バーレーンなどを相手にしての完勝など、今の日本代表にとってはとても満足できるものではない。何よりも、内容である。

試合後の会見で、バーレーンのマチャラ監督は「ミスから2失点した。サッカーでは、ゴールはミスから生まれるものだ。大事な場面でミスをするかどうか。それが、日本とバーレーンの選手の質の差であり、国内リーグのレベルの差なのだ」と振り返った。意味深長な言葉である。ワールドカップ本大会では、立場は逆転してしまうのだ。

バーレーンのミスをしっかり拾った日本が、この日は2−0で勝ったのだが、ワールドカップでは日本が犯すであろうミスを、強豪国はしっかりと衝いてくるはずだ。そして、バーレーン戦でも、日本の守備陣はたしかに何度かのミスを犯していた。もちろん、サッカーをしていて、ミスがない試合などできるはずはないが、防げるミスはできる限り減らしていかなければならない。

この日の守備の問題の多くは、右サイドバックに入った内田から始まった。よほどコンディションが悪かったのだろうか。相手のカウンターに対応しようとして自分で転倒してしまった5分のプレーから始まって、最後までバタバタしたプレーの連続だった。不用意に相手に体を預けて抜かれたり、正面から当たりに行って股抜きをされたりと、散々な出来。こうなると持ち味の攻撃力も半減。昨年は良かった中村とのコンビネーションも生かせなかった。

今年は、指宿合宿で体調不良に見舞われ、ようやく回復はしたものの、公式戦数試合で早くも疲れの色が濃いようだ。岡田監督は、内田に対する信頼が厚く、やはり右サイドバックは内田を起用するようだが、つねにバックアップを考えなければならないだろうし、試合の中でも右サイドのカバーは大きな課題として残る。

守備ラインとボランチはずっと組んできたメンバーである。長谷部を除いて、東アジア選手権でも一緒にプレーしていた選手たちである。当然、バーレーン程度の相手は完全に封じ込めてもらわなければいけないのだが、内田に限らず、全体がバタバタした印象は否めなかった。2人が同じ相手に重なってしまったり、簡単に入れ替わられたり。相手がバーレーンだったからいいようなものだが、これがワールドカップで戦うような強いチームだったら、当然、失点は覚悟しなければならない。

海外組が入って注目された攻撃面は、まずまずの出来だったろう。「何度やっても1−0」と思われた後半のアディショナルタイム。右からのクロスにニアで森本、中央に本田と、新戦力の若い海外組2人が飛び込んで2点目が生まれた。終わり方も非常に良い終わり方で、このところの停滞感は多少は拭えた。

たしかに、「海外組」が加わった日本代表の攻撃は、2月の東アジア選手権の時と比べれば「勢い」が感じられた。とくに、左サイドに入った松井は、これまでになくチームに溶け込んでおり、シンプルにボールをさばいて長友を生かしたり、遠藤も含めて絶妙のコンビネーションで何度もチャンスを演出した。松井は、ヒールでのノールックパスで長友を走らせる場面も何度かあったが、同時に軽いプレーでボールを奪われてピンチを招いたのは相変わらず。このへんは、状況判断の問題だろう。

同じ左サイドの長友は、持ち前の運動量を生かしてペナルティーエリア内まで進出して何度もチャンスメーク。守備に戻る動きも速く完全な合格点。昨年は、左サイドからの攻めは、右サイドに比べて物足りなかったが、バーレーン戦では完全に機能した。このところ、左サイドのMFが固定できないでいたが、やはり松井は最有力候補だろう。

ところが、完成していたはずの右サイドは、内田の不調のおかげでほとんど機能しなくなってしまった。もっとも、チームがそんな状態で、しかも、本人のコンディションも万全とは程遠い状態だった中村は、それでも右サイドでしっかりボールをキープして、個人のテクニックだけで起点を作ってしまった。このあたりは「さすが」である。中村がJリーグに復帰して、いいコンディションで今後の代表の活動に参加できることは、中村本人にとっても、岡田監督にとっても大きなプラスになるはずだ。

トップに岡崎を置き、トップ下に本田。右に中村、左に松井という、バーレーン戦の攻撃陣には勢いもあったし、「可能性」も感じられた。だが、この日のプレーには、チグハグな場面が多かった。焦っている風ではないし、それほど走り回っているわけでもない。だが、パスのタイミングが早すぎる(それでいて前で動いたのにボールが出ないような場面もあった)。それの繰り返しだった。岡田監督は「入れ込みすぎ」と表現したが、まさにその通り。

もっとも、海外組は帰国して時間もなく、コンディションのバラつきも大きかった(良かったのが松井と本田)。さらに本田をトップ下に置く形も初めてだったのだから、コンビネーションに多少の問題があるのは当然と言えば当然である。これからワールドカップ直前の5月まで、海外組を組み入れてのトレーニングはできない。コンビネーションは、ワールドカップ前の3週間の間に調整するしかないのだろう。

まあ、そんな状態の中でも時間が経つうちに、それなりの意思疎通はでき始めていたし、いろいろ言われていた中村と本田の関係も、前半の先制ゴールを生んだところから改善の兆しも見え始め、後半は2人の間でパスが交換される場面が何度も見られた。3週間あれば、攻撃のコンビネーションはなんとか上げていくことも出来るだろう。

攻撃面でのチグハグさは、試合までの準備期間の少なさや海外組のコンディションを考えれば仕方のないことだが、守備面での修正はしっかりとやってもらいたい。それが、バーレーン戦での率直な感想である。

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授