リーグ戦の開幕前は、観戦する方にとっても、やはりゲームに飢えている状態である。最近は、プレシーズンマッチがキャンプ地で行われることが多く、キャンプ取材に行かないと、なかなかゲームが見られない。というわけで、フクアリで行われた「ちばぎんカップ」に、張り切って行ってきた(いや、本当は、明け方にセリエAのインテル対サンプドリア戦の解説が入っていて、朝の7時に終了して、そのまま2時間半仮眠を取ってから、眠い目をこすりながらの観戦だったのだが……)。
両チームとも仲良くJ2に陥落したシーズンの幕開けを飾るという、微妙な位置づけの千葉ダービーだったのだが、スタジアムに着いて、まず嬉しかったのは、かなり多くの観客が詰め掛けていたことだ。発表された入場者数は1万4567人。2部リーグに落ちても、それでも、多くのサポーターが見守ってくれる。これは、Jリーグが作り上げてきた文化である。
プロ野球というのは、たった12球団しかないので、当然2部落ちというのはないのだが、「全球団が優勝争いをする」という設定で毎シーズンが開幕する。たった12球団が2つに分かれて、たった6球団のリーグ戦だから、優勝争いから離されてしまったチーム同士の戦いは単なる「消化試合」となってしまうのだ(その予防のために、「クライマックスシリーズ」と称したプレーオフ制度が必要なのだろう)。
だが、サッカーは自由競争のリーグ戦で、チーム経営の失敗などでチームが弱体化すれば容赦なく2部に落とされてしまうし、失敗が続けばチームは解散となる。当然、はなっから優勝など狙えるわけのないチームもあり、残留だけを目標にしているチームもいれば、1部昇格が何年越しの悲願というチームもある。それでも、地元のサポーターは、そのことを承知で応援を続ける。そんなサッカー文化が、Jリーグ発足からわずか(?)17年間ですっかり定着したのだ。
そんな、なかなか素敵な雰囲気の中ではじまった千葉と柏の試合は、試合内容も期待していたよりも、ずっと良かった。
立ち上がりから、リズムをつかんだのは、ジェフユナイテッド千葉。中盤の高い位置でプレスをかけて、ボールを奪うと、どんどんトップに当てて、チャンスを作る。とくに右サイドではサイドバックの坂本、ワンボランチの山口、2列目の工藤、さらに3トップの一角の深井が絡んで、パスをつないだ攻めで崩す。トップの巻も、トップに張ってポストプレーをしていたかと思うと、中盤に降りてプレッシングに加わって相手ボールを奪ったりと、さすがのプレーを見せる。
何よりも、前がかりな攻守は、昨季のような受身に回った試合とは違って、自らが主導権を握って打開しようという積極性を感じることができる。「結果がすべて」のJ2では、当然、相手が引いてくる試合も多いはずだから、それを打ち破って昇格をつかむには、こういう自ら起こすアクションは絶対に必要なはずである。
一方の柏レイソルも、戦力的には昨季と比べても大きなダウンはないはずだが、千葉の動きの良さに受身に回る時間が長かった。それでも、前半の4分に先制したのは、柏の方だった。左サイドに入った新加入の林からの高速クロスを逆サイドから突っ込んだ澤が決めたもの。
一方の千葉も、36分に、右から作ったチャンスを巻が至近距離から強烈なシュート。これは、柏のGK菅野にはじかれ、一旦はクリアされたものの、すぐに左から深井が入れたアーリークロスをアレックスが決めて、1-1。後半も千葉が押し気味だったが、決め手を欠いて、1-1のまま終了し、PK戦で千葉が4-3と勝利した。
とにかく、前からの積極的な守備とパスをつなぐ攻め。千葉がすばらしい内容の試合を披露した。
試合後の江尻監督も「キャンプでやってきたことが徐々に表現できるようになった」という、きわめて前向きのコメントを残した。コンディション的にも千葉はかなり出来上がっているようだった。中盤でのルーズボールに対する1歩目の速さ。それが、柏に対して中盤を制して優位に立てた最大の理由だった。千葉は、明日にでもリーグ開幕を迎えたかったのではないだろうか?
ここが、不安といえば不安と言える。リーグ開幕2週間前にこれだけ仕上がった状態になっている(もちろん、パスのコースと味方の走りのタイミングが合わないなど戦術面でのズレはあるが、これはいずれにしても公式戦の中で修正するしかない)とすれば、これからの2週間をどう過ごすのかが問題となる。このまま2週間、トレーニングと練習試合を繰り返すだけで、この状態を維持するのは難しい。一度、負荷を与えたトレーニングで追い込んで、もう一度、開幕に向けてピークを作るしかないのだろうが、それもリスクがある。つまり、千葉の場合、「仕上がりが早過ぎるのではないか」という心配があるのだ。柏の方は、まだまだ、これから上げていく段階に見えた。2週間、ちょうどいい時間が残っている。
千葉の良さばかりが目立った試合ではあったが、同時に、プレシーズンの難しさ。ピーキングをどこに持っていくのかという部分の難しさを感じた試合でもあった。
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授


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