いやあ、「泣きっ面に蜂」というか、うまくいかないときには、悪いことが次々と起こるものである!
東アジア選手権の韓国戦。立ち上がりは決して悪くはなかった。韓国の攻撃を安定した守備でしっかりと受け止めてゲームをコントロール。ほとんどが跳ね返されたとはいえ、韓国ゴール前に速いパスやクロスがどんどん入った。ボランチの稲本が最終ラインをカバーして、両サイドバックが攻め上がる形も、すっかり板についてきた。
22分には、FKに合わせに行った闘莉王が倒されてPKをゲット。遠藤が決めて1点をリード。ここまでは、順調だった。しかし、1点をリードされた韓国がアグレッシブさを取り戻す。GKの李雲在(イ・ウンジェ)やDFラインからロングボールを放り込んで、こぼれ球を拾って、セカンド攻撃につなげる。単純ではあるが、パワーに劣る日本には効果的な攻めだった。その後、オーストラリア人のデロフスキー主審が韓国にもPKを与えて同点となる。
そして、「いよいよ、これから本当の勝負が始まる」と思った瞬間、ゴールから遠い位置から若い李昇烈(イ・スンヨル)がいきなり強引なシュート。なんでもないシュートだったのだが、これがブロックに入った中澤佑二に当たってコースが変わってゴールイン。韓国にとっては幸運な、そして日本にとっては不運なこのゴールが後の試合の流れを決めた。
1点を追う日本にとって、まだまだ時間はあったのだが、ゴール前の競り合いの中で闘莉王が相手を蹴って一発退場になってしまって、試合は難しいものとなってしまった。1点を追うチームが1人少なくなってしまうのは致命的だ。しかも、闘莉王は日本にとって、守備の要であるだけでなく、最大の得点源の1人でもあった。
それでも、後半の日本は稲本をワンボランチにして4−1−2−2の形にして、両サイドバックも攻め上がって韓国を押し込んだ。パスをつないで日本らしい攻撃を展開し、何度か完全に裏を取った形も作ったが、しかし、「日本のことは研究した」という韓国のDFがすばらしいカバーでクリアを続ける。そして、70分、狙い通りのカウンターから韓国が3点目を決め、最後まで日本の攻撃を跳ね返し続けて、3−1で勝利を手繰り寄せた。
韓国ゴール前での攻防。中盤でのこぼれ球の奪い合い。やはり、球際での競り合いでは韓国のパワーが上回ったが、勝負を分けたのは、やはり、あの李昇烈の幸運なゴールだった。1点をリードされ、さらに1人少ない形で追いかけた日本がリスクを冒し、バランスを崩しても攻めに行かざるを得なくなってしまったからだ。
試合後の記者会見で、岡田監督は「指宿合宿で元に戻るのが1週間ほど遅れた」と、今大会での敗因を語った。「元に戻る」というのは、シーズンオフ明けに、フィジカル・コンディションや試合勘を取り戻して、オフの前にできていたことを、再びできるようにするという意味だ。
日本代表は、昨年11月の南アフリカ・香港遠征を終わってから解散し(12月のミニキャンプはトレーニングなどはなかった)、シーズンオフに突入。11月までにできていたことを取り戻してから、ベースアップという予定だったのが、なかなか元に戻らなかったのだ。
昨年の2月には、ワールドカップ予選のオーストラリア戦があったため、早め早めにコンディションを作り、2月の段階でもかなりいい状態になっていた。今年は、スタッフも選手も4カ月後のワールドカップを見据えてのスタートで、昨年に比べれば調子を上げるのを遅くしたのだろうが、それが、予想以上に遅れてしまったわけだ。その、最初のボタンの掛け違えが、結局、韓国戦まで続いてしまったのだ。
ベネズエラ戦ではとても試合のできる状態ではなかった。東アジア選手権初戦の中国戦は戦う姿勢も見えて、それほど悪い試合ではなかったが、ゴールが奪えなかったことで、代表批判が高まってしまう。素人のような新聞記者の書くことなど気にすることはないはずなのに、選手たちも動揺してしまったのだろう。香港戦の前半は、パスをつなぐだけの、ひどい内容の試合をしてしまう。韓国戦では、強敵を前に悪くはない試合をしたのだが、不運なゴールがあって敗れてしまう。
パワーで韓国に大きく劣ったのも、もともとパワーでは韓国の方が上回っている上に、オフ明けの日本が「元に戻っていない」のに対して、1月の早い時期に活動をスタートし、南アフリカ遠征、スペイン合宿をすませて、出来上がった状態だったのだから、当然のことだ。
大会を通じての収穫は、試合の途中で稲本をアンカー(ワンボランチ)として、遠藤の位置を上げ、サイドバックが高い位置を取りやすくして、テンポを上げるやり方が確立されたこと。ベネズエラ戦でも、香港戦でも、この形で後半の途中で攻撃力をアップすることができた。闘莉王退場という、まったく別の理由だったが、韓国戦でも後半は稲本の前に中村憲剛と遠藤保仁を置く布陣で、1人少なくなった状態で韓国を攻め立てた。もう少し、この形のトレーニングを積めば、オプションの1つというより、この形でゲームをスタートすることもできるはずだ。
課題は明らかになった。
しかし、日本代表がまとまった時間を使えるのは、もう5月の直前合宿までほとんどないのだ。ワールドカップまでの親善試合も、直前に噂されているイングランド戦、コートジボワール戦を含めても、あと5試合しかない。稲本をワンボランチとする新しい形の完成。平山相太あるいは森本貴幸の融合……。修正点、課題もはっきりしてはいるのだが、もう、解決のために残された時間はわずかになってしまった。
それにしても、やはり相手が韓国だと気持ちも入るし、両国ともこれまでとは見違えるような試合ができた。せっかく、いい練習相手が隣にいるのだから、もっと試合をすべきだろう。
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授


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