日本代表の10月の3連戦には、「オランダ遠征で明らかになった世界と戦うための課題をどうクリアしていくのか」という戦術的な課題と、「新戦力の見極め」という課題の2つのテーマがあった。

香港戦では、レギュラー組が出場し、前者についての方向性が見えた。弱小香港相手にも、しっかりとハードワークして、ゴール前へのクロスに合わせて数多くの選手が飛び込んでいくという共通意識は見て取ることができた。「クロスの精度」という部分では不満が残ったが、香港戦は日本代表が少しずつでも進歩しているということが明らかになった試合だった。

スコットランド戦では、岡田監督は香港戦とはメンバーを完全に入れ替えて、控え組と新戦力でメンバーを組んで戦った。課題の2つめが、この試合のテーマだった。

ところで、スコットランドと言えば、サッカーの世界ではイングランドに次ぐ超伝統国である。イングランドで生まれたアソシエーション式フットボール(つまりサッカー)はすぐにスコットランドにも普及し、世界で2番目に作られた「アソシエーション」(サッカー協会)はスコットランド協会だった。スコットランドでは、ロングボールを使ったイングランドとは対照的なショートパスをつなぐサッカースタイルが生まれ、また数多くの名選手も育ち、彼らと契約するためにイングランド北部のクラブはプロ化の方向に進んでいった。

国際的に見ても、スコットランドのショートパスのサッカーはハンガリーやチェコなどに影響を与え、あるいはパスをつなぐアルゼンチンのサッカースタイルもスコットランドを起源とするものだ。日本のパスサッカーも、元をたどれば1920年代に日本で理論的にサッカーを教えたビルマ人留学生チョウ・ディンに行き着くのだが、チョウ・ディンがショートパスのサッカーを信奉していたのは、母国ビルマ(今のミャンマー、当時は英国領)でスコットランド人にサッカーを教えられたからだった。世界のサッカーに、スコットランドはどれほど寄与したことか……。

閑話休題。そんな超伝統国のスコットランド相手に日本代表が控え組で戦おうというのだ! 日本のサッカーは本当に強くなったものだ。

ともに控え組や新戦力が多数起用されたこの試合、選手個々の能力は明らかに日本の方が上だった。日本代表の控え組+新戦力組は、完全にゲームをコントロール。ボール支配率は最終的には57・7%。スコットランドはなんと90分間で1本しかシュートがなかったのだ(一方の日本代表は、シュート17本)。もっとも、個の力で上回ってゲームを支配はしているものの、コンビネーションはさっぱりだった。まあ、今までこのチームで一緒にプレーしたことのなかったメンバーがぞろぞろ入ってきたのだから、これは仕方のないところだろうが、「縦に、縦に」と明らかに攻め急ぎという場面が多い。縦パスが流れて、相手に拾われてカウンターを狙われる。

本来なら、新戦力組は格下の香港戦で起用するのが順当なのだろうが、岡田監督は対戦相手よりも、むしろ対戦順の方を優先したのだろう。「少しでも一緒にトレーニングをする時間を与えて、チームのやり方に馴染ませてから使いたい」という考え方だ。「デビューは少しでも楽な状況で飾らせたい」という親心のようなものか。あるいは、岡田監督の慎重過ぎるほどの手堅さというべきか……。

だが、逆にレギュラー組がいないために、なかなかいい形でパスが回らない中でプレーせざるをえないという苦しさがあった。たとえば、この試合、後半の56分から出場した森本貴幸。ほしいタイミングでボールが回ってくる場面が少なかったが、これは森本自身の問題というより、チーム全体としてパスがきれいに回らないからだったのだろう。そうなれば、次は「森本をはじめ、新戦力の選手たちがレギュラー組に組み込まれたらどうなるのか?」を見てみたい。中盤できちんとパスが回り、MFがいい形で前を向いた瞬間に森本が裏へ動いたとすれば、もっとボールをもらえたことだろう。

岡田監督は、第3戦目のトーゴ戦には「1戦目と2戦目を見て現時点でのベストの布陣で臨む」と言っている。まさか、「スコットランド戦に出場したメンバーの中から、中村憲や内田を復帰させて、これまでのレギュラー組で戦う」という意味ではないだろう。そうではなく、レギュラー組で固めたチームの中に、たとえば前半に2人、後半に2人といったように分散させて新戦力を組み入れるべき。そうすれば、レギュラー組との相性も分かるし、なにしろ、新戦力組の選手たちももっといい形でボールをもらえて、力を発揮できるはずだ。

岡田監督には、もっと自分たちのチームを信じて、冒険をしてもらいたい。そうでなければ、格下相手の(!)この10月の3連戦の意味はなくなってしまう。

photo

後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

お知らせ


★J SPORTSでは09/10シーズンもプレミアリーグを生中継中心に毎節4試合以上放送します!
世界最古の歴史を持つFAカップとカーリングカップも放送予定!

▼J SPORTSイングランド・プレミアリーグサイト
http://www.jsports.co.jp/tv/football/premier/index.html

<次節の放送予定>
10月17日(土)20:39〜 アストンビラ vs. チェルシー J sports Plus ※生中継
10月17日(土)22:54〜 アーセナル vs. バーミンガム J sports Plus ※生中継
10月17日(土)22:54〜 マンチェスターU vs. ボルトン J sports 2 ※生中継
10月17日(土)25:30〜 サンダーランド vs. リバプール J sports 2
10月18日(日)23:54〜 ウィガン vs. マンチェスターC J sports Plus ※生中継
>>詳しい放送予定はこちらから

<プレミアリーグ関連番組>
10月16日(金)22:00〜 09/10 E.N.G.〜イングランドサッカー情報番組〜 J sports 2
10月17日(土)20:00〜 09/10プレミアリーグ プレビューショー J sports Plus
10月19日(月)23:00〜 09/10プレミアリーグ ハイライト J sports 2


★「J SPORTSプレミア調査隊」調査開始!!
J SPORTSプレミアWebサイトの新コーナー「プレミア調査隊」。
チームの人気度などプレミアリーグにまつわるエトセトラを調査し、
「プレミアリーグ ナビ」ナビゲーターの秋山奈々チャンと共にお伝えします。
http://www.jsports.co.jp/tv/football/premier/research/index.html


★スポナビブログ「J SPORTSプレミアリーグナビ」更新中!!
プレミアリーグのみどころや現地ネタをお届け。
英国人熱狂的サポーターを旦那に持った日本人嫁の日記も好評連載中!
▼J SPORTSプレミアリーグナビ
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/jsports_premier/