この春、横浜の三ツ沢陸上競技場で関東大学リーグの試合を見ているときに、解説者の三浦泰年さんと話をしていて、「大学リーグのレベルはどのくらいなんだろう?」という話題になった。で、僕はなんとなく「J2の下位くらいですかねえ?」と言ったのだが、後でちょっと反省というか、後悔というか、疑問を感じた。

「いくらなんでも、プロのJ2下位と同じということはないんじゃないか」と。でも、その後、実際にJ2の下位の試合を見ていて、「いや、だいたいそんなものか……」とも感じていたのである。関東大学リーグのレベルは、J2並みなのか、JFL並みなのか……。

そもそも、大学のチームというのは不思議な存在である。種別で言えば年齢制限なしの第一種のチームなのに、実際問題として22歳以下の選手が中心で、他の第一種のチームとは別のリーグ戦を戦っているのだ。世界にも、他に類を見ない存在と言ってもいい。J1が1部、J2が2部、JFLが3部に当たるわけだが、大学リーグも「3部」の一種なのだろうか?

そういうあり方が、望ましいのかどうかということは別問題として、実際に、そういう存在として大学のサッカー部は活動しているわけである。Jリーグが発足した直後は、優秀な高校選手たちはこぞってJリーグのクラブに入り、「大学」は低迷。日本のサッカーのメインストリームからは外れた存在だった。だが、次第に高校を出ても直接プロには行かず、4年間大学でプレーした後で即戦力としてJリーグに入る選手が急速に増えてきている。大学経由で代表入りする選手も多いし、大学からヨーロッパのチームに移る選手すら出てきているのだ。

大事な20歳前後の時期を、大学リーグという(同年代の選手しかいないという意味で)甘やかされた環境で過ごすことが本当に良いことなのかどうか、僕は疑問に感じているのだが、実際問題として、現在の大学サッカーというものが果たしている役割を考えると、大学のレベルがあまり低くては困るのも事実なのである。

というわけで、前置きが長くなったが、大学対JFLの対決が実現したので(といっても、この大会は毎年やっているわけだが)、西が丘サッカー場に行って来た。第14回東京都サッカートーナメントの準決勝だ。要するに、天皇杯全日本サッカー選手権大会の東京都予選である。

カードは、関東大学リーグ前期で2位につけている明治大学とJFL10位の町田ゼルビアである。町田はJリーグ準加盟クラブの一つで、10位という順位以上の力を持つことは間違いない。準決勝の第1試合では関東大学リーグ2部の東京学芸大学(この大会では1部の慶應義塾大学と中央大学を連破して準決勝に進出してきた)と、東京都リーグのTFSC(東芝府中)が対戦して、東京学芸大学が5−0と圧勝している。

僕は、よく「日本の2部リーグや3部リーグは世界ではまれに見るテクニカルなサッカーをする」ということを書いている。世界標準では、2部とか3部の試合というと、テクニックや戦術などはどこへやら。とにかく、激しくボールを奪い合い、奪ったボールはロングキックで少しでも相手ゴールの近くに運ぶといった荒っぽい、体力ずくの試合が多いのだ。だが、日本では2部のチームでも、3部のチームでも、1部上位と同じような、あるいは代表チームと同じようにテクニカル、タクティカルなサッカーを目指している(「それがどこまで実現できるのか」というところが、1部との違いなのだが)。

だが、明治大学と町田の試合は、ある意味でヨーロッパの2部リーグ(の中のマシな試合)のような試合でもあった。両リーグの意地のぶつかり合いとでも言うか、勝負にこだわった試合だった。とくに明治大学は、2年前のこの大会の決勝で同じ町田ゼルビア(まだ、関東リーグにいた)を破って天皇杯に出場して、本大会でも活躍した記憶があるから、天皇杯に対するモチベーションが高いのかもしれない。ふだんの、リーグ戦よりもはるかに厳しい守備で勝負にこだわった戦い方をした。

相手のツートップの酒井良と飯塚亮に対して、マンツーマンではないが、ストッパーの丸山祐市と楠木啓介が距離を縮めてタイトにマーク。酒井や飯塚がサイドに開いても、サイドバックと入れ替わって丸山と楠木が付いていく。中盤でも、激しくマーク。激しいボールの奪い合いが延々と続いた。

もちろんミスも生じるのだが、その後のカバーの集中力も非常に高かった。前半の途中までは、互角の攻め合いを演じていたが、次第に明治大学の守備が功を奏し始めて、町田はチャンスをつかめなくなる。そして、35分、右サイドを崩した明治大学は都丸昌弘からのスルーパスに合わせて久保裕一が抜け出し、角度のないところからシュートを決めて先制した。

後半も、明治大学がやや優勢に進めたが、無理に追加点を奪いに行くよりも、勝負にこだわってゲームをコントロールしながらタイムアップの笛を聴いた。タイムアップの瞬間、明治大学ベンチ前では拳を振り上げた神川明彦監督の体が宙を待った。「JFL中位に比べれば、関東大学上位は格が上なのだよ」。明治大学にとっては、それを見せ付けるための戦いだったような気もする。

天皇杯の都道府県代表決定戦は、8月最後の週末に各地で決勝が行われる。社会人と大学、それに一部は高校のチームも入り乱れての異種戦で、興味深いカードも多いことだろう。一度、チェックしてみてはいかがだろうか。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授