浦和レッズが、とうとうナビスコカップも含めて5連敗を喫した。それも、17位に低迷している柏レイソルに4点を奪われての大敗である(今季最多失点)。「6試合ぶりの得点」も生まれたが、それもCKからの闘莉王のヘッドという「飛び道具」だった。しかし、そんな大敗を喫した後の埼玉スタジアムも「ブーイングに包まれた」わけではなかった。選手たちがサポーター席に挨拶に行っても、まばらな拍手と若干のブーイングと……というじつに微妙な反応。かつての、熱いレッズ・サポーターならどんな騒動を起こしていただろう?

レッズ・サポーターも年齢と経験を重ねて大人になったのか、層が入れ替わったのか……。それとも、フィンケ監督の理想に共感し、完成を待つつもりなのか……。代表チームがこんな試合を2回でも続けていたら、もう、世の中は非難囂々。スポーツ紙には「解任」の2文字が踊っていることだろう。

これまでの「守ってカウンター。トップの選手の個の力で点を取って勝つ」というリアクション・サッカーを捨てて、パスをつないで、選手が動いて、ポゼッションで攻め崩すという理想のサッカーを追求し始めたのが今シーズンの浦和である。「昨年までと同じ選手で、スタイルを変えるのはかなり時間を要するだろう」と思っていたが、山田直輝という逸材に恵まれたこともあって(そして、若い山田や原口元気をフィンケ監督が抜擢したことで)、予想より早く、浦和の新しいサッカーは形になっていく。4月、5月は結果も伴っていた。

これまでと違うスタイルを目指す、これまでと違ったタイプの指揮官だったが、結果が出ていたことで、選手たちもそれを信じて戦うことができていた。この時期、まるで新しいスタイルのサッカーが完成したかのようにもてはやす雑誌も散見した(ファン、つまり購買層も多い浦和に関しては、メディアもついつい甘い評価を下しがちになるのは仕方がない)。ところが、夏場に入ると浦和は失速。第18節で最下位の大分トリニータに敗れたところから連敗が始まった。ナビスコカップも含めて、4試合連続で完封負けを喫した後に迎えた柏戦だった。

この間、僕は浦和の試合を生で見ていない。そして、久しぶりに見た浦和は、かなりの重症と言わざるを得なかった。

たしかにパスはつながっている。取材するときは、ノートにボールの動きと選手の動きを書き取るのだが、出来上がった図面を見れば、確かに「パスをつなぐサッカー」は実現できているのだ。トップの高原直泰が中盤にも顔を出して、サイドに位置を取った堀之内聖とパス交換して、堀之内が走る場面もあったし、名手ポンテがスペースに入れたパスを、MFの原口元気がスペースに走り込んで、トップのエジミウソンに落とした場面もあった。左サイドの平川忠亮からのダイアゴナル・パスにエジミウソンが走り込む場面もあった。

中盤に守備のラインを敷き、最終ラインは攻めの場面でも、守りの場面でも、前に上がらずにスペースを埋めている。そんな柏の守備が功を奏して、なかなか点は入らない。だが、浦和はしっかりと攻めてはいた。もちろん、結果、つまりゴールに結びつかないのは仕方がない。相手が守りを固めてきたら苦戦するのは、これは当然のこと。FCバルセロナだって、チェルシーが守りを固めてきたら、最後の最後の瞬間まで、手も足も出なかった。

だが、ゴールに結びつかないだけではなく、攻めの迫力がまったく感じられないのが問題なのだ。パスはつながって、相手ペナルティーエリア前での攻めが続くのに、相手にとって脅威を与えられていないのだ。あれでは、守っている方は、攻めを1回しのぐ度に自信を深めていってしまう。自信を持った柏は、前線の大津祐樹と、強化指定選手で入団したばかりの田中順也というスピードとテクニックを持った若手を走らせてカウンターを狙う。

立ち上がりからの相手の攻めを守りきった後の23分、左サイドで短いパスをつないだ柏は、ポポとのワンツーで抜け出した大津が落ち着いてサイドネットに決めて先制。さらに26分にはショートコーナーからポポが強烈なシュートをバーすれすれの高さに叩き込んで、スコアを0-2としてしまう。

闘莉王が1点を返して、1-2で迎えた後半も同じように、浦和が攻めて、カウンターを狙った柏が2点を追加して勝負を決めた。浦和の攻めに、なぜ迫力が足りないのか。はっきり言って、スピードと運動量が絶対的に足りないからだ。選手たちの意識はパスをつなぐことに集中してしまっている。パスをつなぐのは、最終的に誰かが相手ゴール前に飛び出してシュートを狙うため、ゴールに襲い掛かるという気持ちが必要なのに……。

試合後の記者会見でフィンケ監督も「運動量が不足していた」という言葉を何度も口にしている。それはその通りなのだが、運動量が不足していたというのは「現象」であり、「結果」である。どうして、運動量が減ってしまったのか。そこを問題とすべきだろう。そう思って、質問してみたら、「いろいろな原因が考えられる」といった趣旨のことを言った挙句に、「坪井慶介、鈴木啓太、山田直輝といった運動量のある選手が各ラインで欠場した」といったことも言い出した。

なんだ、運動量のサッカー、パスのサッカー、コレクティブなサッカーと言ったところで、結局は「個の力」が頼りだったのか!

一番の問題は、連敗中の浦和の選手たちから自信が失われてしまっていることなのではないか。思い切って、ボールを持っている味方を追い越していく勇気も欠けている。あるいは、戦術的を頭では理解していても、それが体に染みこんでいないようにも見える。監督に言われた通りにパスを回している段階で、体が自動的に反応しない。そんな時期なのかもしれない。

教師タイプのフィンケ監督は理論的な分析や若手の育成、チーム作りはうまいかもしれない。だが、初めての日本ということもあって、モチベーションを上げるという面で、選手とのコミュニケーションという意味で、何か問題があるのかもしれない。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授