久しぶりにFC町田ゼルビアの試合を見に行った。JFL後期第3節、相手もJリーグ準会員で、昇格を目指している(今年、現実的に昇格の可能性が最も強いチーム)ガイナーレ鳥取である。

町田は、後期第2節現在で18チーム中11位と成績的には低迷しているが、開幕当初のチグハグ感はなくなり、安定感が増してきたところだ。そして、後期は第1節、第2節と連勝スタートを切っていた。重要な試合とあって、会場の町田市立陸上競技場も3861人の観衆に埋まっている。試合は、序盤こそ「格上」の鳥取が、右サイドからのクロスなどでチャンスをつかむが、すぐに町田がゲームをコントロール。MFの石堂和人がパスをさばき、両サイドMF、右の酒井亮、左の柳崎祥兵がドリブルで中に切れ込んで、パスをつないで攻める。

もともと、開幕当初の苦戦の連続だった頃から町田には創造的なプレーが多く見られ、「弱いけれども、面白い」サッカーだと思っていった。だが、JFLというレベルでの戦いに慣れ、自信もつけてきたのだろう。攻撃が当時と比べると非常にスムースになってきた。サイドアタッカーが攻めに出たときのMFやサイドバックの攻撃参加のタイミングなどがとても良くなってきている。そして、セカンドボールを拾って、攻撃の連続性も出てきた。

10分に先制ゴールにつながるCKを奪った場面もそうだ。くさびのボールを中央に入っていた柳崎が落とし、石堂が左に振って、上がってきたサイドバックの津田和樹にさばく。そして、津田のシュートが相手に当たってCKとなったのだ。石堂の左CKを、右サイドバックの森川宏雄が頭で決めた。その後も、試合はほぼ一方的に町田のリズムで進む。

先制ゴールの直後の15分には相手の横パスをカットしたところから、柳崎のシュートがバーをたたく。20分以降、町田のパスが読まれて、つながらなくなった時間もあったが、26分には左サイドバックの津田からの縦パスに酒井が飛び込み、後ろから押されたように見えたが、レフェリーの笛は鳴らず……。33分、39分とゴール正面でのFKのチャンスがあり、1本目は石堂が直接狙ってはずしてしまうが、2本目はトリックを使って石堂が浮かせたボールに柳崎がフリーで飛び込み、最後は山腰泰博がシュートするがこれもDFに当たる……。

結局、後半も立ち上がりに鳥取の時間帯があったものの、さらに町田はチャンスの山を築く。

町田の進歩ぶりは明らかだった。前にも書いたように攻撃の連動性が大きく上がっていたが、同時に守備面でも動きがじつにスムースだった。鳥取の攻めは、右サイドからのクロスと同時に、下がり気味のトップの位置から、左右に顔を出すハメドのトリッキーなドリブルが中心だが、この神出鬼没のハメドの動きを町田のMFとDFが、けっして見逃さず、それが鳥取が攻めで苦労する要因となったのだが、ハメドに対して、町田は特別なマークは付けずにムースに受け渡しができていた。

左右にボールが流れてくると、セントラルMFとアウトサイドのMFが挟み込むようにアプローチをしかけ、パスコースをうまく限定した上で、最終ラインの選手が対応する。サイドに起点を作ろうとする鳥取の攻めを、町田がことごとくつぶしてしまった形である。また、相手陣内深いところで、「取れる」と感じたときには、激しくプレッシャーに行くのも有効で、何度かチャンスにつなげていた。

課題は、なんといっても決定力だろう。

この試合も、どこかで追加点さえ奪えていれば完勝だったはず。結局、追加点が奪えず、最後の数分は鳥取が押し込んで、町田としては、満員の観衆の前で不必要にスリリングな試合を演じてしまった。下部リーグの試合というのは、その国のサッカーの本質を垣間見させてくれる。いわば、「3部リーグを見ればその国のサッカーが分かる」と言うことができる。およそヨーロッパのどこの国でも、3部リーグでこれほどパスサッカーを追及している国はないだろう。2部以下のサッカーというのは、どこの国でも基本的にフィジカルの勝負である。いかにボールを相手ゴールに近いところに送り込むか。そして、最後はFWの個人能力で持ち込んで得点を狙う。それを、延々倦まずに繰り返すのである。

それに対して、日本の3部リーグ(JFLや大学リーグ)は、じつにきれいな(戦術的な)パスサッカーを志しているチームが多い。彼らも、1部リーグ上位のチームや代表チームと同じサッカーを目指しているのだ(もちろん、それがどこまでハイスピードで正確に実行できるかという点に大きな違いがあるのだが)。そして、パスをつないできれいに、戦術的にチャンスを作り出すわりに、最後のフィニッシュの精度を欠いて決めきれない。

まさに、「JFLを見れば、日本のサッカーが理解できる」のである。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授