J1もシーズン折り返し地点を迎えた。が、そんな今週頭、大分トリニータのシャムスカ、柏レイソルの高橋真一郎両監督解任というショッキングなニュースが舞い込んだ。両チームとも今季は開幕から低迷し、J2降格が日に日に近づいている。それを避けるためにカンフル剤を打ち込もうということだろうが、シーズン真ん中まで監督問題の結論を引っ張ったのはどうなのか。判断があまりに遅すぎる印象は拭えない。大分の後任監督であるオーストリア人のポポビッチ氏は日本サッカーを知らないし、柏の後任監督であるネルシーニョ氏も日本を離れて4年以上の時間が経っている。どちらもすぐチームや選手個々の特徴を把握できると思えない。そういう意味でも、両者はリスクの大きな賭けに出たといえる。

まず大分だが、J1で14連敗という最悪の状況。昨季クラブに初タイトルにもたらしたシャムスカ監督といえども、更迭はやむを得ない。が、判断をここまで遅らせたフロントには疑問が残る。連敗が積み重なった5月の時点ですでに解任論は浮上していた。しかしシャムスカ監督は「2月のパンパシフィック選手権出場のため、しっかりとしたコンディション強化ができず、負傷者が続出した」と説明。「ケガ人が戻れば問題ない」という言葉を信じて結論を見送ったのだ。

6月のJ1中断期間には、鈴木慎吾や金崎夢生ら主力を休ませ、体力強化に専念させた。負傷者も戻って、J1再開の第14節・川崎フロンターレ戦(6月20日)から巻き返しを図るはずだった。けれども高松大樹や深谷友基の復帰が間に合わず、1.5軍の陣容の川崎に完敗。この時点で11連敗となった。だが、フロント陣は解任した場合の違約金問題や後任の人選などで困惑。一歩踏み出すことができないまま、ズルズル連敗を重ねる事態を招いた。7月になってフェルナンジーニョを獲得し、指揮官を変えるという大鉈を振るったが、対応が後手後手に回った今、本当にJ1残留に向かえるのかは微妙だろう。

柏にしてもフロントの見通しの甘さが、この結果を招いたといわざるをえない。全ての問題は昨季天皇杯決勝にチームを導いた石崎信弘監督(現札幌監督)を手放したことに遡る。石崎監督がフランサを軸としたチーム作りからの方向転換を主張したこと、年俸の問題などから、上層部は石崎監督を切って、フランサを残す選択をした。そして昨季までヘッドコーチだった高橋監督を昇格させたのだ。

しかし高橋監督はユース年代の指導経験は豊富でも、J1クラブの指揮を執った経験が全くない。井原正巳ヘッドコーチもシジマールGKコーチにしてもそうだ。本来、新人監督が就任した場合にはヘッドコーチに豊富なJ1経験を持つ人間を置くなどしてサポート体制を強化すべきだ。が、柏はそれをせず、完全に未経験者集団で固めたのだ。

開幕から4試合連続ドローの時点では、まだこの体制でも行けるだろうという雰囲気だった。だが負けが続くようになると、高橋監督から少なからず不安が垣間見えるようになる。加えて、柱のフランサが負傷離脱し、昨季大きく成長した李忠成や菅沼実らがスランプに悩んだ。守備陣もミスからの失点を繰り返したが、指揮官らはこれを止める術を見出せない。悪循環に悪循環が続いて、とうとうここまで来てしまった。

フロントは6月からテコ入れを開始。まず大宮アルディージャから小林慶行をレンタルで獲得した。続いて、ブラジル人FWアンセウモハモンを補強し、北朝鮮代表の安英学を獲る方向で動いた。そして7月にはパク・ドンヒョクをガンバ大阪からレンタルで獲得。なりふり構わぬ補強するのはいいが、なぜかボランチを2人獲り、コミュニケーションが重要な最終ラインに韓国人選手を取るなど、どうも即効性のある補強ではない様子。行き当たりバッタリな印象は拭えない。

そしてネルシーニョ監督への交代だ。この人事はかつて東京ヴェルディの強化部門にいた小見幸隆強化編成部部長と竹本一彦GMのパイプを使ったものだと容易に想像できる。しかし前述の通り、ネルシーニョ監督も最近の柏の状況に詳しくなく、チーム作りは難航するだろう。多くの新戦力と現有戦力をどのように使うのか。それもフロント陣や新指揮官には頭の痛い問題といえる。

両者に共通するのは、危機管理体制の未整備という問題点だ。大分は「シャムスカ監督に任せておけば大丈夫」という過信がどこかにあっただろうし、柏も「多少苦労してもJ2降格はないだろう」という楽観視がなかったとは言えないはずだ。そういう見通しの甘さが現状を招いた。いずれにしても、フロントの責任は重大である。

これだけの大きな改革を経て、大分と柏は覚醒するのか。彼らが復活してくれば、J1ももう少し面白くなる。ここから何とか意地を見せてほしい。

元川 悦子

もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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