全51節という長丁場のJリーグ・ディビジョン2(J2)は、7月8日に折り返しに当たる26節が終了した。この日の注目カードは、依然として首位をキープしている湘南ベルマーレと、最近順位を上げてきた4位のヴァンフォーレ甲府の「上位対決」。オールブラックの特別仕様ユニフォームに身を包んだ湘南が2−1で競り勝って、首位の座を守った。
立ち上がりに甲府がマークをつかみ損ねたような気がしたが、すぐに立て直すと、しっかりとしたブロックを作って守備を固め、トップのマラニョンに向けてロングボールを蹴りこんで起点を作る。14分にはロングボールが湘南DFのジャーンに当たってマラニョンに渡り、マラニョンがドリブルでDFを引きつけて、井沢惇が右ボストをかすめるシュートを放つなど、甲府が攻勢をかけたが、その後しだいに湘南が田原豊のポストプレーを使ってリズムをつかみ、36分に田原のドリブルでFKをゲット。寺川能人のFKに、中村裕也が合わせて湘南が先制した。後半、甲府がトップの3人を組み替えるなど反撃の糸口をつかもうとするが、湘南の最終ラインがよく耐えて、74分に坂本紘司のCKを、今度はアジエルが合わせて2−0。その後、甲府の反撃を国吉貴博による1点だけに抑えて逃げ切った。
両チームが相手の良さを消しあったような内容。接戦、熱戦ではあるが、けっしてスペクタキュラーな試合とは言いがたかった。なにしろ、湘南・反町康治監督の第一声が「原稿書くのに困る試合でしょう?」だったのだ。反町監督は「スカウティング通りだった」という。後半立ち上がりにプレス向けに配布されるハーフタイムコメントも「・相手の挑発にのらない ・あとはスカウトどおり」という素っ気無いものだった。「相手は、前の3人にロングボールを合わせるパワープレー。パスは回させてもいい。そのための対処もスカウティング通りでよかったので、後半もそのまま。すべてプラン通り」というのだ。
では、スカウティング通りの試合が、どうして監督自身が「コメントに困る」といった内容の試合になってしまったのか。
それは、おそらく、甲府の安間貴義監督にとっても「スカウティング通り」だったからなのだろう。ボランチの寺川と田村雄三がゲームを作り、ワントップの田原にボールを預け、2列目のアジエル、坂本、中村が絡み、サイドバックの臼井幸平、鈴木伸貴も加わって攻めに厚みを持たせる。「リスクを犯しても、人数をかけて、相手ペナルティーエリア内にボールを運ぶ」と、反町監督も「甲府とは違う」とばかりに豪語した厚みのある攻め。開幕当初は途中でスピードダウンしてギクシャクする場面も多かったが、田原というポストプレーヤーを得て、湘南の攻めはたしかにスムースさを増してきている。
だが、ゴール正面をしっかり固めた甲府の守りを、湘南は崩しきれなかった。2得点は、セットプレーからのボールを、うまく味方の足元に合わせたもの。これ以外にも、セットプレーでは何度も決定的な形は作っていたが、逆に言えば、セットプレー以外では最後まで甲府の守りを崩しきれなかったのも事実である。
J1昇格を争う勝点の奪い合い。そして、1つのチームと年間に3試合ずつ戦う変則的な51試合の長丁場のリーグ。お互いに相手の良さを消しあっての、厳しい戦いになるのは当然のことでもある。世界中どこに行っても、2部リーグというのは勝負の場。1部上位のようなスペクタクルなど期待できないし、サポーターもエンターテイメントよりも結果を求めるのが2部リーグ。世界中どこに行っても、2部の試合というのは肉弾相打つ戦闘が90分間続くことが多いものだ。
もっとも、日本では2部(J2)でも、3部(JFL)でも、テクニカルな、あるいはタクティカルな試合が行われることが多い。言ってみれば、代表チームがやろうとしていることを、2部のチームも、3部のチームもやろうとしている(それが、「うまくできるかどうか」という違いがあるだけ)。世界的に見たら、珍しい2部リーグなのである。
試合後の記者会見で質問を受けた反町監督はこう語った。「かつてのJ2は、守りを固めて昇格を狙うチームが多かったが、今は違う。上位チームに対しても、『どうやって守るか』ではなく、『どうやって崩すか』を考えるようになってきている」それにしては、この日の甲府戦はスペクタキュラーではなかったのだが……。
最近のJ2には、「横綱」がいる。たとえば、昨シーズンのサンフレッチェ広島。J2で圧勝した広島は、J1に昇格しても(守備に弱点を抱えながらも)すばらしいパスサッカーで上位を脅かす存在となっている。今年のJ2にも反町監督の言葉を借りれば「西の横綱・セレッソ大阪」と「東の横綱・ベガルタ仙台」がいる。湘南自身は「前頭」だそうだが、今の湘南は自信も付けて「大関」の実力はあるだろう。そういった相手に対して、下位チームが攻めを挑んでくる。それが今のJ2なのである。
他国の2部リーグとJ2の違いの原因は、つまり、3部降格がないからである。J1昇格の可能性のない下位チームにとっては、失うものはないのだ。守って勝点1を取るよりも、将来の躍進に向けてきちんとしたサッカーをすることの方が大事だということになる。
近い将来、J2に降格制度ができ、「下位チームがJFLに降格」ということにでもなれば、様相は一変する。Jクラブとして生き残るために、下位チームは残留のためになりふり構わぬ戦いを始めることだろう。現在のJ2で、「コメントに困るような試合」になる可能性が高いのは、J1昇格の可能性を持つ第2グループの、たとえば甲府が横綱、大関に挑む試合ということになろう。
そういう「勝負事としてのサッカー」(2部らしいサッカー)だって、僕はべつに嫌いではないが……。
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
★コミュニティシールド2009「マンチェスターU vs. チェルシー」 生放送決定!
J SPORTSでは8月9日(日)に行われるプレミアリーグ、FAカップ優勝クラブが対決する
コミュニティシールド2009を生放送でお届けします!


会員限定メールマガジン!!番組表やおすすめの番組など会員限定、旬の情報満載でお届けいたします。