5月16日に行われた浦和レッズとガンバ大阪の「決戦」は、浦和のフォルカー・フィンケ監督が語ったように「0−0でも魅力的な試合」だった。とくに興味深かったのは、西野朗監督の言葉で言えば「今までになかった内容」、つまり、浦和がパスをつないで攻め、G大阪が粘り強く守ってカウンターを狙うという、昨年の4試合とは明らかに異なった展開になった点だった。

最近、「今シーズンの浦和は変わった」とよく言われる。某サッカー専門誌などは、浦和の特集まで組んだほどだが、周囲の目がそう見ているわけであり、実際にはそれほど変わったとは思えない。パスが回るのはポンテが好調だからだったような気がする。だが、G大阪戦の浦和は、ポンテ不在のまま、パス・サッカーの本家であるG大阪相手にパス回しで圧倒したのである。

ポンテの代役は18歳の山田直輝だった。

4−2−3−1の「3」の中央に入って、そこから自由にポジションを変えながら、たえず浦和のパス回しの中心にあった。運動量も豊富で、後半ちょっと押し込まれるような時間帯にはディフェンスラインの前まで戻って、深い位置でパスをつないでリズムを取り戻すなど、まさにフリーマンとしてチームの中心に君臨したのだ。個人レベルでも、3分には鈴木啓太のパスを受けてターンした瞬間に相手DFをはずし、すぐに走りこんできたエジミウソンに絶妙のパスを通したりと、テクニックを見せ付ける。しかも、パスまわしだけでなく、フィニッシュにも積極的に顔を出し、前半にはポスト、後半にはバーを直撃するシュートも放った。

フィンケ監督は、イエローカードをもらった選手はすぐに交代させる。G大阪戦の試合後の記者会見では、カードをもらった下平匠を交代させた西野監督の采配をわざわざ誉めたほどだ。過去にそれで敗れた経験があり、よほど大きなトラウマとなっているのだろう。しかし、この試合では63分に山田直がカードをもらったにも関わらず(おかげで、山田直は次節出場停止)、フィンケ監督は山田直を最後までピッチ上に置いた。この日の山田直は代えたくても代えられない、浦和レッズにとって絶対の存在だったことが、フィンケ采配によっても証明されているわけだ。

1試合毎に経験を積み、急成長している山田直を見るのは、今やレッズ戦最大の楽しみと言ってもいい。そして、彼ら、若い世代を大抜擢したところにこそ、フィンケ監督の真骨頂を見るような気がする。日本人監督だったら、経験の浅い18歳をあそこまで使い切ることができるだろうか……。

その浦和対G大阪の試合を見てから、横浜の日産スタジアムに移動して、横浜F・マリノス対FC東京の試合を見た。浦和美園の駅から埼玉高速鉄道 → 東京メトロ南北線 → 東急目黒線 → 東急東横線 → JR横浜線を乗り継いでの移動は大変で、日産スタジアムに着いたのは、キックオフ直前になってしまった。さすがに優勝争いをすべき浦和対G大阪の頂上決戦に比べると、苦境にあるチーム同士。レベルの違いは歴然としていた。個人レベルでは、両チームとも好選手がそろっているし、選手個々もそれなりに頑張っているのだが、「個」がチームとして結びついていない。

そんな試合ではあったが、後半に中村北斗がFC東京移籍後初出場を果たした。そして、北斗は出場したかと思ったら、瞬く間に初ゴールも決めてしまった。ゴールそのものは、CKからのボールが平山相太に当って目の前にこぼれてくるというラッキーなものだったし(平山が狙って落としたのだとしたら、たいしたものだが)、北斗自身も、まだ、本調子とはとても言えない状態のようだが、それでも右に中村北斗、左に鈴木達也が開いて攻め立てた時間帯のFC東京の攻撃は見応え十分だった。

そもそも、中村北斗の出場は梶山陽平が負傷して巡ってきたものだったし(城福浩監督は、「どんな形でも出そうと思っていた」とコメントしたが)、そして、まだ十分ではない状態でも結果を出してしまうあたり、中村北斗という選手は運を持っている。なによりも、そのフィジカル的な能力の高さやスピードは今後に期待を抱かせる。

そんなこんなで、5月16日の土曜日は山田直輝、中村北斗という2人の若い選手たちのプレーを目に焼き付けて帰宅。その後、なんとなくテレビをつけていたら、画面の中では森本貴幸が、ASローマを相手にゴールを決めていた。

日本の若手もやるではないか!

問題は、そんな選手たちを、どうやって順調に伸ばしていくのかだ。経験の少ない選手に無理をさせて潰してしまうのはもちろん困ったことだが、やはり基本的には能力の高い選手たちには実戦を経験させて、伸ばしていきたいものだ。そこで、注目されるのが、代表(もちろんフル代表)への招集である。

岡田武史監督が、昨年の5〜6月に作り始めた日本代表は、すでに一定のまとまりができて、1つの意識をもったチームとして完成している。アジア予選勝ち抜きを考えれば、当然、今のまま何も手をつけずに戦っていくのが、安全な選択だ。だが、「アジア予選突破」は日本代表の目標ではない。「ベスト4」かどうかは別として、ワールドカップで世界を驚かせることはどうしても実現させてほしい。

とするならば、今のままで不十分なのは明らかではないか! さらに上を目指すため新戦力の組み込みは絶対に必要だし、予選突破決定から本大会まで丸1年もある中で、チームのマンネリ化を防ぐためにも、現在のチームを一度解散するくらいの思い切った若返りを図るべきだろう。そして、長期間代表チームがともに行動できる機会と言えば、2009年中にはキリンカップからオーストラリア戦までの3週間強の期間しかない。その次は2010年2月の東アジア選手権の時になる。

「今が旬」の若手は、ぜひキリンカップの段階から招集して、「予選突破の次」に向けての布石を打っておいてもらいたいものである。

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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