久しぶりに浦和レッズの試合(対京都サンガF.C.)を見に行った。「さて浦和というチームは、フィンケ監督の下で本当に変わったのだろうか・・・」。

フィンケ監督自身は、試合後の記者会見で「われわれのチームはポジティブな形で成長している」と豪語した。たしかに、前半の浦和レッズはすばらしかった。昨シーズンまで見ていた浦和とは、まったく戦い方が違っていた。パスをつないで攻める。あるいは、苦しい時間でもボールを保持することでリズムを変える。そんなことができるようになっていた。

浦和のシステムは4−2−3−1。今では、世界中でお馴染みのシステムである。普通の4−2−3−1では、2列目の「3」は左右に張って、ウィンガーとしてプレーし、サイドバックと合わせて2人で(それにMFを交えて)サイドを崩す。だが、浦和の場合、2列目の「3」はいずれもトップ下に近い機能を果たしている。オリジナルのポジションでは、右にポンテ、中央に山田直輝、左に原口元気の3人である。この3人が、柔軟にポジションを変えて中央でプレーするから、タッチライン際での攻撃は、主にサイドバックに任される。

試合は、浦和にとって実に好都合の展開になった。

7分(それまではほとんど浦和にはチャンスはなかった)、ハーフラインの手前でフリーでボールを持ったポンテが、前方を見てロングボールを蹴りこんだのだ。その落下点はペナルティーエリアの僅かに外だったが、マークしているはずのDF金正秀(キム・ジョンス)は出遅れてしまう。そこに、エジミウソンが走りこんで、GKが出てくる頭上を越えるループシュートを決めたのだ。これで、京都サンガF.C.のDF陣は腰が引けてしまい、中盤でもプレスがかからなくなってしまう。おまけに注意力も散漫で、1点目の失点のような場面が何度もあり、32分には中盤でのFKを闘莉王が早めに蹴ると、京都のDFは誰も反応しない。つまり、これでは、浦和レッズが本当に良くなってパスが回るようになったのか否か、なかなか判別がつかない状態だったのだ。この京都の守備では、どんなチームだってパスが回るのは当然だ。

浦和はこれまでになく、パスにこだわって攻めた。しかし、そのパス回しに参加しているのは、要するにトップ下の3人なのだ。ボランチの阿部勇樹や鈴木啓太、ワントップのエジミウソンあたりがたまにそこに参加するだけ。原口と山田直は、昨シーズン、高円宮杯(U18)の優勝メンバーだ。あのときの、浦和レッズユースのプレーは、じつに衝撃的だった。ショートパスをワンタッチでつないで相手を完全に攻め崩す、要するにトップチームではまったくできていないことをやってのけて優勝したのだから。そのときの、メンバーである原口と山田直が、そのパス・サッカーをトップチームに持ち込んだ形だ。

そして、そこにパスの巧さでは定評のあるポンテが加わるのだから、相手のプレッシャーがない楽な状態でパスがつながるのは当然である。ポンテも、非常に状態が良さそうだし、ポンテの場合、ショートパスをつなぎながらでも、たとえば1点目のように、広い視野を持っており、正確なロングボールも蹴ることができる。つまり、浦和レッズの攻撃が変わったのは、チーム全体の改造が進んだというより、ポンテが完全に復調し、パステクニックのある原口や山田直とコンビネーションを組んだことの効果と言っていいだろう。フィンケ監督の、最初の成果(功績)は、チームを改造したことではなく、原口や山田直といった若い選手を抜擢して、起用したことなのだろう。

ところが、この3人のトップ下を使った攻めにも、大きな問題点が潜んでいた。

まず、ポンテも33歳という年齢であり、必ずしも90分間全力でプレーできるわけではないこと。そして、ポンテと組む原口と山口直は、まだ若く、やはり90分を彼らに託してプレーさせる段階にはない。後半に入って、その心配が実際のものとなった。若い2人が疲労もあってリズムを失い、ポンテの運動量も落ちてくる。パスにも、再三にわたってズレが生じてくる。心配したフィンケ監督は、原口に替えて高原直泰を送り込んだが、コンディション的に良くないのか、バランスを崩して倒れる場面ばかりが目立つ。

ちょうど、それと時期を同じくして、京都も立て直しを図ってきた。62分に、中盤でのプレスがかかりにくいシジクレイを退け、加藤弘堅が入り、加藤を右のウィンガー。ウィンガーだった渡辺大剛を最終ラインに下げて、右SBだった角田誠を中盤の底に入れる。角田は、ユース時代から名の知れた、肉体派、武闘派の選手だけに、彼が中盤に上がったことで、京都の出来が格段に良くなったのだ。

京都のミスに近いような形で1点を先制し、しかも、相手のプレッシャーも弱く、前半の浦和は完全な試合をした。ただ、あれだけチャンスがありながら、後半にもかけて、点が取れなかったことが大きな課題。そして、新生浦和レッズの見せ場であるパス・サッカーにしても、ベテランのポンテと若手の2人によってもたらされたもの。それだけに、この3人の運動量が減ってしまうと、他の選手が代わりにパス回しに参加するわけにもいかない。要するにすぐにチーム全体が機能しなくなってしまうのだ。

今季の浦和レッズは幸い(?)ACLへの挑戦がない。他の強豪がACLとJリーグの板ばさみで苦しんでいる今、浦和が勝点を稼いで、優位に立っておけば、ある時期にしっかりと強化してチームを完成させることもできるだろう。そうした余裕のある間に、ポンテたち頼みの現状をなんとか変えられないものだろうか。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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