J2の栃木SC対アビスパ福岡の試合が東京の国立競技場であった。スタジアムの関係で、ホームの宇都宮で現在ナイトゲームができないため東京での開催となったのだ。おかげで、東京に居ながらにして栃木対福岡という珍しいカードを観戦することができた。「ホーム」の栃木は開幕から3連敗(しかも、無得点)、福岡も1分2敗と出遅れてしまった両チームの対戦である。前週の暖かさから一転、公式記録によれば、気温が7・4度。試合の途中からは、冷たい雨も降りつけるコンディションとなった。

前半立ち上がりに栃木がいきなりチャンスを作ったが、その後は福岡が完全に試合をコントロール。左サイドバックの中島崇典が前線のスペースにセンスあふれるパスを通して、サイドから攻めの起点を作る。ドリブルで仕掛けてはFKを獲得し、そのFKから勢いのあるボールを上げて決定機を作った。だが、前半は福岡もシュート3本だけで、どちらも現在のチーム状態をそのまま表したかのように、得点の臭いのしない45分間だった。

後半に入ると、福岡のボランチで、前半は守備的な役割を果たしていたウェリントンが持ち上がってチャンスを作る。66分、福岡が先制する。だが、ゴールは相手を崩したというより幸運によるものだった。自陣からのクリアがそのまま前線の高橋泰に渡り、高橋がドリブルで持ち込んで上げたクロスを長身FWの大久保哲哉がヘディングで決めたもの。この失点で気落ちしたか、栃木は1分後に追加点を許す。左から作ったチャンスから、岡本英也が遠目からファーサイドに決めた見事なシュート。中央にFWが走りこんでいただけに、栃木のGK小針清允にとっては、意外なタイミングで飛んできたシュートだったのだろう。結局、この連続ゴールが決勝点となり、2−0で福岡が勝利。栃木は、泥沼の4連敗。いまだ勝ち星なしという、試行錯誤の状態が続いている。

下部リーグの試合を見に行くと、意外なベテラン選手の名前を発見して、「ああ、彼はここでプレーしていたのか」と驚くことも多い(「お前の不勉強のせいだろう」と言われれば、その通りなのだが……)。栃木には、GKの小針、MFの栗原圭介、DFの米山篤志といった元ヴェルディの選手がいた。一方の福岡には、元日本代表、昨年までジュビロ磐田でプレーしていた田中誠がいる。先制ゴールを決めた大久保、左サイドバックの中島はともに元横浜FC。若い選手としては、元ユース代表でアルビレックス新潟にいた河原和寿が栃木にいて、ワンタッチでの落としでテクニックを発揮していた。相手の速攻の場面で、うまく展開を遅らせるなど、「洒落た守備をする選手がいるなぁ」と思って見ると米山だったりと、さすがベテラン選手は状況に合わせたプレーができると感心することも多い。

しかし、もう少し、若手の活躍が見られなかったのは残念だった。

たとえば、福岡にはユースから生え抜きの鈴木惇がいる。中学生時代から各年代の代表に選ばれ続けた鈴木は、まだ19歳である。視野の広いパスを出せる面白い存在だ。ところが、鈴木はソツのないプレーは見せるのだが、その視野の広さを発揮した思い切りのいいパスが出ない。とくに、後半になってボランチの相方であるウェリントンが攻撃に出る場面が多くなると(それが、チャンスメークにつながるのだから、チームとしての選択は間違いではない)、そのカバーのために後方に残ることが多くなり、チャンスには絡めなくなってしまう。

両チームの先発・リザーブを含めて、この試合には32人が登録されたのだが(J2の場合、リザーブは5人ずつ)、10代の選手が鈴木ただ1人というのもさびしい。栃木の先発11人の平均年齢は27・18歳、福岡の方は26・00歳。つまり、両チームともかつてJ1で活躍(あるいは在籍)していたベテラン、中堅どころを中心としたチーム作りなのだ。もちろん、先ほども書いたように、ベテランならではの落ち着いたプレーは貴重なもの。J1あるいは代表で活躍したような選手の能力の高さは間違いない。チーム作りとして計算もできる。

だが、将来のチーム作りということを考えたら、これでいいのだろうか?20歳代後半から30歳以上のベテランにいつまでも頼るわけにはいかないのは当然。それなら、将来、このチームの顔となるような若手を育てる努力をもっとすべきではないのだろうか?

できれば、福岡の鈴木のようなクラブ生え抜きの選手。それが無理でも、地元出身のスター候補を育てていかなくては、クラブの将来につながっていかないのではないか。もちろん、若手を育てるために、あるいはチームをまとめるために、ベテランの力も必要だ。若い選手中心で要所にベテランを配する。それが理想の形なのではないか。ベテラン選手たちの元気な姿、経験に裏打ちされた安定したプレーを見るのも嬉しいことだが、やはり、このレベルのチームだったら若い選手の台頭ぶりを見てみたかったというのが、僕の感想である。もちろん、プロチームなのだから、結果を出すことも大事ではある。ともに、苦しい開幕となったから、将来がどうこうと言っていられない状況なのも理解できる。

だが、1つ言えるのは、今のところ、J2には降格がないという事実である。たとえ、今シーズン最下位に終わったとしても、降格しなくてすむのだ。それなら、もっと冒険ができるのではないか!

J2も、チーム数が増えていけば、いずれ、近い将来には降格制度が動き出すはずだ。その頃J2に昇格したチームにとっては、「J2残留」が大きな目標になってくる。そうなったら、若手を育てるなどといったことができにくくなる。つまり、現在J2に在籍しているチームにとっては、「降格がないという贅沢」が許されているのだ。長期的な視野に立ってチーム作りをしてもらいたいものである。

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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