週末の2日間(3月21日、22日)に各カテゴリーの昇格組の試合を見て回った。まず、J1昇格のモンテディオ山形がFC東京に、J2昇格のカターレ富山が東京ヴェルディにそれぞれ挑戦した試合。そして、JFL昇格の町田ゼルビアが、同じJリーグ準加盟組のニューウェーブ北九州を迎え撃ったホーム開幕戦である。結果は、昇格組がそろって討ち死にという結果に終わったのだが、それぞれ違った戦いを挑んだ3試合を比べてみることで、いろいろなことが見えてくるような気がした。
山形は、昇格組と言っても、開幕戦でジュビロ磐田に6ゴールを奪って大勝。2戦目も引き分けて無敗のまま味の素スタジアムに乗り込んできた。連敗スタートになったFC東京が、しっかり守ってきたので攻め崩せはしなかったが、山形がやりたいこと(正確に言えば「やりたくても、できなかったこと」)は理解できる、そんな試合だった。カターレ富山も、しっかり守った上で、後半の最後の時間帯に攻めも見せて引き分けに持ち込んだかと思われたが、後半のロスタイムに東京ヴェルディの大黒将志に決められてしまった。攻めの形を作れない非力さはあるが、しっかりしたチームだった。これらの、J1、J2昇格組の試合に比べると、町田ゼルビアは残念ながら完敗だった。とくに、前半はまったくいいところなく、JFL入りで1年先輩の北九州にあっけなく先制ゴールを許してしまった。
この日は日本中で強風が吹き荒れる一日だったが、町田市立陸上競技場は小高い岡の上にあり、また周囲に大きなスタンドもないため、風がそのまま通り抜ける。前半風下にたった町田は、まず、この風によって持ち前のパスを分断されてしまった。大きく蹴っては風に押し戻され、つなごうとしてはパスがブレて相手にカットされる。その繰り返しとなった。
一方の、北九州の方は長いパスをつないだスケールの大きな攻めを見せた。風の中では、こちらの方が有効だ。そして、16分の北九州の先制ゴールも、町田のパスミスを拾ったもの。中盤でパスをカットし、そのまま縦パスを入れて宮川大輔が入れ替わり、ボールは流れてしまったが、これが飛び出してきた町田のGKの逆を取る形となったのだ。その後も北九州が攻勢を続けたが、シュートがなかなか枠をとられることができず、1点差のまま前半が終了する。
強風以外にも、町田には気の毒な事情もあった。ゴールゲッターの勝又慶典が、試合前のアップのときに故障して欠場してしまったのだ。予め欠場が分かっているなら、戦術的にも、精神的にも準備できるが、試合開始直前のエースの故障は痛い。そして、これが精神的に尾を引いた。
だが、町田にとっての本当の敵は、北九州でもなく、強風でもなかったのかもしれない。JFL昇格。そして、ホームでの開幕戦ということで、気持ちが入りすぎているように、僕には見えたのだ。その結果、無用なファウルが増えて、自らリズムを分断してしまう。たとえば、空中戦での競り合いで肘を使う場面も何度かあった。そういうことが続くと、レフェリーの印象も次第に悪くなっていく。
だが、後半に入って、町田は立ち直った。もちろん、風上に立ったことも大きな要因だが、風は前半ほど強くは吹かなかった。むしろ、試合のリズムに、そして、JFLという舞台に(あるいは勝又の不在に)慣れたことがいちばんの要素だったのではないか。本来の、ワンタッチ、ツータッチのパスをポンポンとつないでいく形を作り、チャンスは作った。ラストパスやシュートの精度が高ければ得点につながったはずだ。ただ、気持ちが攻めに傾いた分、守備のケアが薄れ、カウンターから抜け出されて、65分に追加点を奪われる。攻め込まれながらも、あのあたりで、きちんと点を取ってくるあたりは、北九州の試合運びも見事だった。
J2昇格(=JFL4位以内)を目指すという目で見たら、町田の今の力ではなかなか難しいような気がする。そんな試合だった。だが、後半に自分たちのやりたいサッカーはある程度実現できていたし、なにしろ、この試合でのいちばんの問題は経験不足、自信不足だったのだから、これから経験を積むことで解決可能と言うことになる。
昇格組の3試合を見た同じ週末、土曜深夜には、マンチェスター・ユナイテッドがフルアムに敗れる試合を見た。マンUは、前節にリバプール相手にホームで1−4という、信じられないような大敗を喫しており、これで連敗ということになった。プレミア、CL、FAカップ等々の連戦の肉体的、精神的疲れも大きいのだろう。そして、CLでインテルを破ったことで気持ちにスキが生じ、そこをリバプールに衝かれて大敗。その心理的なダメージが残ったまま戦って、よもやの連敗を喫したのだろう。まるで気持ちが入っていない試合だった。
あのマンチェスター・ユナイテッドのようなチームでも、そういうことはあるのだ。町田ゼルビアが、JFLのホーム開幕戦という舞台に舞い上がり、気持ちが入りすぎて力を発揮できなくても、不思議ではない。
だが、J1昇格組のモンテディオ山形も、J2昇格のカターレ富山も、自分たちを失うことはなかった。また、JFLで1年戦った経験のあるニューウェーブ北九州は、強風という悪コンディションの中で、じつに落ち着いた試合運びを見せた。もしかしたら、地域リーグからJFLという全国リーグ(つまり、3部)に昇格することは、JFLからJ2、あるいはJ2からJ1への昇格以上に難しいことなのかもしれない。
町田ゼルビアの今の戦力では4位以内は難しいかもしれないが、JFLは前後期合計34試合の長い戦いである。この戦いを終えるころには、逞しさを身につけることができるのかもしれない。全国リーグという新しいステージでの戦いは、まだまだ、始まったばかりである。
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授


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