2009年Jリーグの開幕まであと2週間。各チームは最後の総仕上げの時期に突入している。この週末には鹿島や清水などでプレシーズンマッチが行われたが、私は22日の「ちばぎんカップ(柏レイソル対ジェフ千葉戦)」を取材した。
小春日和となった日立台のスタンドは黄色一色に染まった。両者ともに大勢の観客の中で戦うのは久しぶり。柏にとっては今年元日の天皇杯決勝でガンバ大阪に苦杯を喫して以来。千葉の方は奇跡のJ1残留を決めた昨年12月6日のFC東京戦から2ヵ月半ぶりとなる。新シーズンの行方を占ううえでも、このダービーマッチは意味あるものだった。
柏は石崎信弘監督が退任し、昨季までヘッドコーチを務めていた高橋真一郎監督が昇格した。新指揮官は前任者と同じ「走るサッカー」を追求している。GK菅野孝憲、DF古賀正紘、FWフランサ、李忠成といった中核メンバーは昨季と変わらないが、2年ぶりにアルセウを復帰させ、中盤のてこ入れを図った。その新戦力が2月13日の東京ヴェルディとの練習試合で右膝後十字じん帯を損傷。全治4ヶ月と診断されてしまった。「アルセウはいろいろあったので、私も積極的にコミュニケーションを取って信頼関係を築いてきた。その矢先のケガだっただけに、彼の不在をマイナスにしないようにしたい」と高橋監督は話すが、同じボランチの大谷秀和もケガで開幕には間に合わず、ベテランの山根巌も出遅れている。それゆえ指揮官は今、中盤の構成に頭を痛めているようだ。
一方の千葉は、鹿島の2007・2008年のリーグ連覇に貢献したMF中後雅喜、大宮で中核を担っていたボランチの佐伯直哉、柏でコンスタントな働きを見せたMFアレックス、東京Vで準レギュラーとして活躍したDF和田拓三ら現実的な補強を実施。アレックス・ミラー監督の選択肢も確実に増えた。今回のちばぎんカップはセンターバックの柱の1人である池田昇平が負傷欠場し、守備陣の選手層をチェックする絶好の機会となった。
柏の基本布陣は4−4−2。ボランチには杉山浩太と栗澤僚一が入った。杉山は広い視野と展開力を備えた攻撃的な選手で、栗澤は豊富な運動量をベースに守備もできるタイプ。指揮官はこの2人で中盤を落ち着かせようとした。千葉も同じ4−4−2。最終ラインは右から坂本将貴、和田、ボスナー、青木良太という並び。ボランチには下村東美とアレックス、右MFには10番を背負う工藤浩平、左MFには深井正樹が入った。FWは古巣にリベンジを果たしたい谷澤達也と日本代表から戻ったばかりの巻誠一郎のコンビだ。
序盤は柏ペース。「魔法使い」の異名を取るフランサを中心に攻撃のリズムを作る。開始7分には、相手最終ラインの乱れを見逃さなかった杉山が鋭いスルーパスを前線へ送る。これはオフサイドか否か微妙な判定だったが、菅沼実が抜け出し、GKとの1対1を確実にゴール。早々と先制した。
柏はこの直後にも2度、相手DFラインの裏を突き、決定機を作った。この不安定な守りにしびれを切らした千葉のミラー監督は和田と青木の位置を交代した。青木のセンターバック起用で最終ラインは落ち着きを取り戻したが、攻撃は外をうまく使えずこう着状態に陥っていた。そこで指揮官は深井と谷澤のポジションを変え、谷澤を左のワイドな位置に張り出させた。これで柏の守りは混乱。谷澤を見るのが蔵川洋平なのか、杉山なのか、太田圭輔なのかはっきりしなくなった。フリー状態の谷澤につられ、柏の中盤はズルズルと下がってしまう。これで下村やアレックスがボールを持てるようになり、千葉は小気味よいパス回しでリズムを作り始めた。そして前半41分に工藤からのパスを受けた谷澤がゴール。前半は1−1で折り返した。
これで後半は千葉が主導権を握るかと思われたが、柏は確実にチャンスをモノにする。11分には右サイドで交代したばかりの村上佑介の折り返しがDFとGKに当たってこぼれたところに栗澤が詰め、2点目をゲット。この3分後には途中出場のポポが抜け出し、強引に上げたクロスに李が飛び込んで3点目を奪った。「ポポが入ってきて非常に守りにくくなった」とミラー監督も悔しがった。千葉は巻にいいクロスが入らず、攻撃の形が作れずじまい。期待の新戦力である佐伯、中後らも見せ場なく終わった。
柏にしてみれば、手ごたえを得られる一戦だっただろう。フランサ、李らはまずまずの仕上がりで、村上とポポ、若い大津祐樹という切り札も機能した。心配された杉山と栗澤のボランチは守備面ではやや不安が残ったものの、攻撃面では申し分ない働きを見せた。これは高橋監督にとっても大きいはずだ。
千葉の方は守備陣の不安定さ、攻撃陣の連係不足など修正点がいくつか浮き彫りになった。それでもイングランド流の速いサッカーの意識づけは進んでおり、積極的にゴールを狙う意欲も全体に見られた。攻撃陣は個性的な選手が揃うだけに、もう少し時間をかければ、面白いチームになる可能性はある。ミラー監督の手腕があれば、間違っても昨季序盤のようなことにはならないはずだ。
今後2週間でどれだけチーム力を上げていけるか。開幕が一段と楽しみになってきた。
元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。


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