Jリーグが23日、若年層のプロ選手(23歳以下の選手)に、より多くの試合出場機会を提供することを目的とした「若年層プレーヤー改革プロジェクト(略称=JUMP)」を発足させると発表した。メンバーにはJリーグの羽生英之事務局長、ガンバ大阪から出向中の上野山信行Jリーグ育成担当、風間八宏筑波大学監督ら13人の専門家が含まれている。昨年の北京五輪で反町康治監督(現湘南)率いるU−23日本代表が3戦全敗勝ち点ゼロの惨敗を喫したことがきっかけで「18〜22歳の選手により多くのプレー機会を作らなければ日本サッカー界の未来が危うい」という危機感が一気に上昇。それがこのプロジェクトの始まりにつながったようだ。
反町監督とは北京五輪の後、何度か話すことがあったが、確かに若い世代のプレー環境に警鐘を鳴らしていた。
「日本の若い世代は選手としての成熟が遅れている。世界を見ればメッシ(バルセロナ)もウォルコット(アーセナル)も10代後半で世界トップに上り詰めているのに、日本の場合はほとんど試合に出ていない。高校生やユースの頃までは年間100試合近いゲームをこなしてタフな環境で鍛えられているのに、18歳になった途端、試合をしなくなる。イビチャ・オシム監督もプロ選手を伸ばしたいなら、90分ゲームを年間100試合しないとダメと言っていたが、多くのU−23世代の選手が年間3〜4試合しかしていない。それでは伸びるはずがない」とズバリ語ったのだ。
今度のプロジェクトのリーダー的存在になると見られる原博実前FC東京監督(Jリーグ技術委員)も現状を問題視していた1人。原氏にもつい先日、大迫勇也(鹿児島城西→鹿島)の今後について意見を伺う機会があったのだが、こんな話をしていた。
「去年の高校選手権で得点王を取った大前元紀(流通経済大柏→清水)が、昨シーズンのJリーグでたった2試合にしか出られなかったように、若手の出場機会が著しく少ない。大迫の場合は鹿島のオリヴェイラ監督が若手起用に積極的なだけにチャンスはあるだろうが、もし使う可能性が低いと判断するなら、他チームへレンタルに出してでもプレー機会を確保すべき。場合によっては、大学に貸し出す『逆強化指定制度』を作って、大学で鍛えてもらうのもいい。いずれにしても、Jクラブには、取った選手をきちんと育てる責任があると思う」と。
原氏は98〜99年に指揮を執った浦和レッズ時代には18歳だった小野伸二(ボーフム)を開幕スタメンに抜擢し、19歳の永井雄一郎(清水)や22歳だった山田暢久(浦和)をチームの軸に据えるなど若手にチャンスを与えた。梶山陽平や平山相太、徳永悠平らを重用したFC東京時代も同様だった。それゆえ若い選手への思いは人一倍強いのだろう。
中村俊輔(セルティック)を1年目から使った横浜のアスカルゴルタ元監督、17歳の稲本潤一(フランクフルト)を抜擢したヨジップ・クゼ元監督のように、かつてのJリーグには斬新な若手起用をする指揮官が少なくなかった。が、今のJ1には入替戦があり、リスクを冒してチャレンジしている余裕はない。どの監督も確実に「勝利」という結果を出すために、計算できる中堅以上の日本人か外国人選手に依存したがる。こうした傾向も若手が軽視され始めた一因だろう。
2006年からサブの人数が、5人から7人に増えたこともマイナスに作用している。控えに入った若手はスタメン組と一緒に動く。つまり、1週間コンディション調整をするだけだ。試合勘の不足を補うために練習試合を組むことはあっても、公式戦に出ることはほぼない。欧州ではカップ戦でメンバーを落として戦うことは当たり前だが、日本には「ベストメンバー規定」があるから、そういう試合にも出られない。サテライトリーグも十分に機能していないうえ、今季からはアジア枠も導入された。今後、ますます若手出場のチャンスは減るだろう。
このままでは日本サッカーはいつか必ず行き詰まる…。反町監督はたびたび苦言を呈し、原氏らも危機感を口にしてきた。それがやっと具体的な取り組みにつながった。動き始めるのが遅い印象は残るものの、何もしないよりはずっといい。
Jクラブがまずやるべきことは、原氏も話しているように、若手選手を使うか使わないかを早い段階で判断すること。戦力から外すと決めたなら、たとえ3ヶ月でもいいからレンタルでどこかに出すべきだ。稲本もかつてウェストブロムウィッチからカーディフへ3ヶ月間レンタルされ、それで戦えるコンディションを取り戻したと話していた。ダラダラと選手を抱えるだけ抱えて放置するのが一番よくない。そういうケースを極力減らす努力を求めたい。
元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。


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