ここ最近、どうもガンバ大阪に目が向いてしまう。ユース時代から10年以上見続けている明神智和、山口智、遠藤保仁、加地亮、播戸竜二らがいて、西野朗監督も柏レイソルを率いた頃からよく知っている。私にとってはもともと「親近感のある集団」ではある。そんな彼らがFIFAクラブワールドカップ(FCWC)でマンチェスター・ユナイテッドに真っ向から挑んだことで、一段と興味が沸いてきた。世界の恐ろしさ、レベルの高さを痛感した選手たちがどう変貌するかを間近で見たくなったのだ。
FCWCを経て、G大阪の面々は「何としても再びアジアチャンピオンになって、FCWCの大舞台にもう1回立ちたい」と強く思ったという。だが、今季のG大阪はJ1・8位。来季のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を得るには、ラストタイトルの天皇杯で優勝するしかない。しかしながら、この12月の過密日程は想像以上にハードだった。1週間で3試合を消化したFCWCの後、25日の準々決勝で名古屋グランパスに勝って4強入りを果たしたが、選手の体はとうに限界を超えていた。すでに二川孝広、佐々木勇人が故障離脱し、遠藤も右足首痛を悪化させた。明神も腰痛の爆弾を抱えている。「痛いところのない選手はいない」と山口も嘆いたほど。それでも名古屋戦から中3日で、29日には準決勝の横浜F・マリノス戦に挑まなければならなかった。しかも試合会場は東京・国立競技場。彼らは再び関東遠征を強いられたのだ。
そんな状況ゆえに、いい内容のサッカーができるわけがない。中澤佑二、栗原勇蔵らを擁する横浜相手だけに、本来なら「堅守対多彩な攻撃」という構図になるはずだったが、この日はG大阪の動きが重く、得意のパス回しも2〜3本でカットされてしまう。遠藤も全く動けず、攻撃の起点になれない。狩野健太や兵藤慎剛、長谷川アーリア・ジャスールら豊富な運動量で攻め込んでくる横浜に対し、後手に回る時間帯が長かった。J1でワースト4位の49失点を喫したシーズン中のG大阪なら、このリズムに我慢しきれず早々に失点していた可能性が高い。けれども今季終盤になって、彼らは「粘り強い守備」を身につけた。FCWCでもアデレード・ユナイテッド、パチューカに対して1-0で勝利を飾っているように、「どんな状況でも絶対にゴールだけは割らせない」という意思統一が山口中心に出来上がったのだ。
その堅守が横浜戦でも出た。山口と中沢聡太はFW金根煥に仕事らしい仕事をさせず、セットプレー時も絶対に中澤をフリーにしなかった。加地は対面の小宮山尊信を確実に止め、普段は守備を苦手としている安田理大もオーバーラップの回数を極端に減らして体を張り続けた。そして彼ら4バックを献身的にサポートしたのが明神だ。「明神は言葉も出ないくらいのダメージを受けている。本当に素晴らしかった」と西野監督も絶賛する働きぶりで、最終ラインを支えていた。延長後半も残り3分というところで山崎雅人が鋭いゴールを奪って辛勝できたのも、手堅い守りがあったからだ。「前線と中盤、最終ラインがコンパクトになって、ボールを取れるようになった。守備の共通理解が目に見えて向上している」と試合後の加地も嬉しそうだった。
ACL再挑戦への強い意欲が結実するかどうか。それは2009年元旦のファイナルに懸かっている。その相手は柏レイソル。西野監督、明神、中沢にとっては古巣だ。「サポーターにブーイングされるだろうね」と明神が苦笑いを浮かべたほど、2つのクラブには深い因縁がある。コンディションだけを比べたら、明らかに柏に分がある。今季限りで退任し、来季からコンサドーレ札幌の指揮官となる石崎信弘監督のラストマッチでもあり、チームは一丸となっている。G大阪にとっては決して簡単な相手ではない。
それでも、勝たなければ意味がない。キャプテンの山口が「正直、体はボロボロ。自分自身感じる以上に疲れていると思う。でも僕らには天皇杯を取るしか道がない。クラブW杯3位のプライドも意地もある。だから満身創痍でも頑張るしかないと思える」と話す。遠藤や橋本英郎が出られるかどうか分からない苦境に陥っているG大阪にはもはや気力しかないだろう。天皇杯決勝戦はG大阪にとって今季61試合目だという。加地はシーズン当初の負傷、遠藤はウイルス性感染症による離脱があって、その全てに出たわけではないが、日本代表の試合を含めれば60試合前後にはなっているはずだ。そのタフなスケジュールを乗り越えてこそ、彼らは1段階も2段階もステップアップできる。そういう意味でも元旦決戦には大いに注目したい。
元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。


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