Jリーグの大混戦は、いっこうに終結の見込みが立たない。首位の鹿島アントラーズから6位のFC東京までが勝点3差。残留争いの方も、17位のジェフユナイテッド千葉と11位の京都サンガFCの間が勝点差わずかに5。京都と16位東京ヴェルディの差は4である。優勝争いにも残留争いにも絡んでいないのは、最下位決定のコンサドーレ札幌を含めてたったの5チームということになる(このうち、ガンバ大阪にはACL優勝、そしてクラブワールドカップでのマンチェスター・ユナイテッドへの挑戦という大目標がある)。

ただでさえ、長いシーズンの疲労がたまってくる終盤戦。優勝やら、残留やらのプレッシャーのせいで、さらに足が止まってしまうチームが続出だ。「激しい競り合いになれば、これまでも何度も優勝を経験し、勝利のメンタリティーを身につけている鹿島が有利か」と思っていたが、鹿島もやはり第31節のアルビレックス新潟戦では無得点引き分けと重圧にあえいでいる。

ほとんど優勝争いから脱落しかけて挑戦者の立場に置かれていたFC東京は、溌剌とした戦いぶりで鹿島とG大阪を連破したが、「優勝」が現実的なものになってくると、どこまでその溌剌とした戦いを貫けるか定かではない。逆に、浦和レッズのようにチームが崩壊したかのような報道をされたチームや、勝ち星からすっかり見放された名古屋グランパスも、他チームが付き合ってくれているおかげで、依然として優勝戦線に踏みとどまっている。

一方で、下位チームの中でも、大宮アルディージャのように上位を食って勢いをつけているチームがあるかと思えば、東京ヴェルディのように戦意喪失かと思えるような戦いぶりのチームもあり、しかも、大宮にしても今の勢いが最後まで続く保証はない。リーグの終盤戦も、こうなってくるとハイレベルな技術や戦術が輝くスペキュタクラーなゲームは期待できないだろうが、選手たちの、あるいは指揮官たちのハートが試される死闘を楽しむことができる。昇格争いのJ2も同じである(こちらは、候補がかなり絞られてきた)。

しかも、その間に日本代表の試合があり、それに伴って1週間の中断と天皇杯という他の大会まではさまっているから集中を維持するのも難しいことだろう。天皇杯について言えば、敗退が決まったチームは試合がなくなるのだ。

そういえば、日本サッカー協会の犬飼基昭会長が天皇杯4回戦で主力を温存して敗退した大分と千葉について、またまた「最強チーム論」を持ち出して激怒しているらしい。犬飼さんというのは、よほど「最強チーム論」がお好きな御人らしいが、ルールに書いてないことを根拠に「来年度の出場権云々」を取りざたするのは、明らかに行きすぎといわざるをえない。

そもそも、天皇杯の5回戦は11月15日に行われるのだ。もし、「天皇杯こそが日本で最も権威ある大会であり、最強チームを出すべし」というのなら、出場チームは代表選手の招集を拒否する権利があるということになる。こういう日程で天皇杯を主催している団体の長が、一方で「最強チーム論」を振りかざすというのは、明らかに論理の矛盾というものであろう。

……閑話休題。

さて、こうしたJリーグの大混戦ぶりについて、「だから、Jリーグのレベルが落ちているのだ」と言う人が多いらしい。が、しかし、それはまったく論理的ではない。「今のJリーグのレベルが高いか低いか」ということと、リーグが混戦になっていることとは、まったく論理的な因果関係はない。レベルの高い混戦もあれば、低レベルの「どんぐりの背比べ」の状況もありうる。

結論的に言えば、今のJリーグのレベルは、それほど低くはないと思う。もちろん、中には技術的にも戦術的にも見るに耐えないような試合とか、やる気がまったく感じられないようなシラけた試合もあるが、それはどんなリーグにもあるものだ。FC東京が鹿島相手に攻め勝った試合などは、世界のどこに出しても恥ずかしくないようなアグレッシブな好ゲームだったし、ACL準決勝のG大阪と浦和の試合なども、ヨーロッパのチャンピオンズリーグ(ただし、グループリーグ段階)にも劣らないゲームだったと思う。

TVの中継でヨーロッパのチャンピオンズリーグのゼニト対バテの試合を解説した直後に、浦和対G大阪のセカンドレグを生観戦したが、「いや、こちらの方が絶対に面白い」というのが実感だった。「やればできるのだから、このレベルの試合を毎週やってほしい」とは思うが、Jリーグのレベルは、国際的なスタンダードで比べても、それほど低いわけではない。

もちろん、ヨーロッパの「3大リーグ」(だか、「4大」だか、「5大」だか知らないが)のトップクラス(マンチェスター・ユナイテッドとかチェルシーとか、レアルとか、インテルとか……)と比べたら、もちろん比較にならないほどのレベルの違いがある。それは当然。あちらは、豊富な資金力にあかせて、世界中から選手を買い集めて作ったチーム。Jリーグはたった3人という外国人枠に縛られ、日本人主体で構成されているチームなのだから、そもそも比較する方がおかしいわけだ。

そもそも、「大混戦だからレベルが低い」という意見が多いのも、ヨーロッパに対する無批判な追従のような気がする。ヨーロッパのリーグ戦は、イングランドのプレミアの「ビッグフォー」のように絶対的な強さを誇るチームが2〜4チームあり、現実的にそれ以外が優勝する可能性はほとんどないというのが普通になっている。だから、欧州サッカーを礼賛する人たちは、「Jリーグもそうあるべき」と思っているのだろう。

だが、最初から「優勝の可能性があるのが3チームや4チームだけ」というのは、けっして健全なリーグ戦の姿ではないし、ヨーロッパのリーグがそんなふうになってしまったのも、1990年代にヨーロッパのサッカー界がビッグバンを起こしてからのこと。それ以前のイングランドのフットボールリーグなどは、1部22チームのどこが優勝してもおかしくないような状態だった。ヨーロッパのサッカーバブルも、(金融危機などなくても)いずれは崩壊するはず。もちろん、ヨーロッパのサッカーは長い伝統を持っており、見習うべきことは非常に多いが、ヨーロッパのすべてを礼賛するという態度は見直した方がいい。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授