クロアチアからドバイ経由で帰国。その後、13日からの3連休は、高円宮杯と仙台カップで若い世代のサッカーを堪能した。

仙台カップでは、U-19日本代表とU-19フランス代表の試合を見たが、大柄なフランス代表がドリブルで強引に攻め込むのを日本のDFがよく頑張ってストップ。前半は、両チームともシュートが0本に終わった。そして、後半に入って疲れからフランスの動きが落ちたところで日本が攻め込んだものの(後半のシュートは日本が13本、フランスが8本)、結局はスコアレスドローに終わった。先日、SBSカップでも日本代表を見たが、あの時は対戦相手がこの年代では圧倒的な強さを誇るアルゼンチン代表であり、点差こそ2-3だったとはいえ完敗だった。その点、相手のフランスが実質的にはU-18代表だったこともあり、後半は日本の攻撃の回数も多くなり、互角の試合だった。

それにしても、ゴールが遠いのは相変わらず。

先発のツートップ(遠藤敬佑=45分で交代=と宮沢裕樹)は、2人とも結局シュートがゼロ。13本のシュートのうち、後半に投入された柿谷曜一朗が3本打ったものの、9本がMFによるものだった。そういえば、先日のフル代表のバーレーン戦(ワールドカップ予選)でも、日本のツートップは前線から激しく相手ボールを追い回すなど、守備面で大きく貢献したが、決定的なシュートは田中達也がバーに当てたシュートくらいのものだった。

仙台カップは韓国とブラジルの試合を見てから急いで帰京。そのまま、セリエAの解説の仕事をこなした。ラツィオ対サンプドリア。結局、2-0でホームのラツィオが勝ったのだが、勝負を決めたのはFWの決定力だった。ラツィオは、前半7分に新加入のサラテ(アルゼンチン=21歳)が相手DFを背負ったままターンして先制。後半の27分には、後方からの浮き球のパスをつま先でコントロールしたパンデフが追加点と、2人のFWがいい時間帯に決めた。後方からMFが飛び出しての得点もいいし、セットプレーからの点だって芸術的ではある。だが、やはり、FWの選手が個人の力でゴールを決めてくれれば、ハラハラすることもないし、気持ちがすっきりするものだ。ラツィオ戦の解説では、そんなことを思っていた。

う〜ん、日本にもああいうFWがいたらなあ……。

日本に優秀なストライカーが育たないのは「『横並びを善し』とする日本社会のせいだ」などと文化論的なことを言う人もいるし、もっと極端に「狩猟民族であるヨーロッパ人と農耕民族である日本人の違いだ」などと言う人さえいる。だが、もしそうだったとしたら、もう日本人はサッカーなどやっても無駄ということになってしまう。だいいち、ヨーロッパ人は牧畜民族ではあるが、少なくとも、ここ数千年は狩猟民族ではない。日本に優秀なFWがいないのは、MFとしての技術はしっかり教えていても、ストライカーに必要な技術をちゃんと教えていないからではないのだろうか?もし、しっかりしたシュートのスキル(キックのテクニック)がありさえすれば、ゴール前で失敗を怖れて躊躇することもなくなるだろうから、シュート数も増える。要点は、「中盤とは違って、精度の高い、強いボールを蹴る技術」だ。

さて、そんなことを思いながら高円宮杯を見ていると、それなりのセンターFWがいるチームも多い。これは、ここ数年の傾向だ。10年ほど前までは、日本では優秀な少年はMFをやることがほとんどだったが、最近は大きさのある選手がFWとしてプレーしているチームが多くなっている。僕が見た試合では野洲高校の坂本一輝は市立船橋との試合で、後半だけで1人で4得点も決めてみせてくれた。そして、ガンバ大阪の期待の宇佐美貴史も桐光学園高校戦でハットトリックを決めた。とくに宇佐美の3得点はミドルシュートあり、ドリブルシュートありとそのテクニックの多彩さをたっぷり見せてくれた。とくに、彼の3点目(チームの4点目)などは大塚翔平との間で浮き球でワンツーを決め、返ってきたボールを浮かせてDFをかわして、落ち際をボレーでたたいた素晴らしいゴールだった。

FC東京U-18の重松健太郎もいいゴールを決めていたし、不発に終わったが桐光学園にも瀬沼優司という大型FWがいる。彼らをうまく育てていければ、いつか日本の決定力不足も解決できる日が来るかもしれない。そして、そういうスターFWが1人でも登場すれば、それに憧れて多くの少年たちがストライカーを目指すようになるはずだ。彼らをどう育てていくのか。これは、それぞれのチームの指導者だけではなく、日本のサッカー界全体で考えていくべきだろう。

たとえば、宇佐美はまだ16歳ながらすでにU-18チームのエース格なわけだが、彼をもっと上の世代に入れて鍛えるべきかどうか……。宇佐美はU16日本代表の一員としてU-17ワールドカップカップを目指すのだが、飛び級でU-19日本代表に入れてもいいのではないだろうか? あるいは、得点力不足で悩みを深めているガンバ大阪のトップチーム昇格させてみてはどうなのだろうか?いつの時点で、クラブでも代表でも宇佐美を上の世代に挑戦させるのか。もちろん、なんでもかんでも早く上の世代のチームに入れるべきというものでもない。その選手のテクニックのレベルやフィジカル的な要素を考えないといけないだろう。また、メンタル的なこと、つまり精神的な強さも考慮しなければいけない。上の世代の厳しい環境で育てるべきなのか、それとも同世代の王様である方がいいのか……。

当分は若手FWに期待してみよう。もっとも、これまでの例を思い起こせば、裏切られるケースも多いのではあるが……。

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授