1−1のスコアで始まった後半の立ち上がりの47分にリードを許したものの、前半の失点と同じように、すぐに追いついた日本代表。「これで立ち直れるか」と思われたが、57分にマレク・アルハウサウィの個人技で3点目を奪われて、準決勝での敗退が決まった。

この3点目の場面、抜け出してきたマレクに阿部勇樹が対応し、さらに中澤佑二がカバーに入ろうとしたものの、マレクの一発の切り返しで、2人がはずされてしまったもの。かなりショッキングな形での失点だった。

オシム監督は、昨年の代表監督就任以来、2トップの相手には3バックで戦ってきた。ジェフ時代も、オシム監督は相手のトップにマンマークを付け、1人余らせる形で戦っていた。

ところが、アジアカップ直前のコロンビア戦から、2トップ相手にも2ストッパーで戦うように変わったのだ。オシム監督は、いずれは、4バック(2ストッパー)でやりたかったのかもしれないが、なぜこのタイミングで切り替えたのかといえば、おそらく「アジアの相手ならそれで抑えられる」と考えたのだろう。

だが、サウジアラビアの2トップは、想像以上に強力で、意外にもコンディションも万全。さらに、日本の守備を研究して、よく準備ができていた。サウジアラビアのアンジョス監督は「ボランチが攻撃に上がるので、その裏にスペースができるのが日本の守備の問題」と指摘した。

3バックがいいか、4バックがいいか、それはどちらとも言えないことだが、2ストッパーで戦うのなら、そのストッパーは阿部でよかったのだろうか?

中澤はストッパーのエキスパートだが、阿部は本来はボランチの選手だ。阿部以外にも、オシム監督は、たとえば今野泰幸などボランチの選手を最終ラインで起用する。3バックでたえずカバーがある状態なら、それでもいいかもしれないが、2ストッパーで戦う、つまり相手の2トップと絶えず2対2の形になる状況では、やはりストッパーのエキスパートを起用すべきだったのではないだろうか。

ついでに言えば、両サイドバックの加地亮と駒野友一も、どちらかといえば攻撃的な能力を評価して起用されている選手たちで、守備力では弱いところがある。たとえば、サウジアラビア戦の1点目。FKからのヘディングの競り合いで加地が負けたところが勝負だった。

アジアを相手にするW杯予選に向けて、今後、システムという意味でも、選手の人選という意味でも、攻撃と守備のバランスを見直す必要があるだろう。

攻撃面も、もどかしさが残った。サウジアラビア戦の2ゴールは2人のストッパーのよるもの。頼みの高原直泰が抑えられてしまった日本の攻撃陣は機能せず、中盤では圧倒的に優位に立って、ボールを回し続けたものの、シュートの形まで行かなかった。

ドリブルで崩す、ミドルシュートを狙うなどの工夫も必要だったはず。もっとも、これは意図的なものでもある。今回のアジアカップのテーマは、あくまで「中盤でのボール回し」だったのだ。サウジアラビア戦前日の記者会見で、中村俊輔は「個人で突破を狙うべき場面でも、今はパス回しを優先している」と語っている。

30度をはるかに超える暑さの中での試合。選手が動き回ることは不可能な状況で、「ボールを動かし、相手の選手を走らせ、疲労を誘う」という戦い方に習熟することが、今大会のテーマだった。そして、その部分で大きな進歩を示したのは間違いない。パス回しはきわめてスムースだった。将来、ワールドカップ予選で暑い場所での戦いを強いられることが何度かあるだろうが、そのときに、今大会の経験が生きてくるはずだ。

最後の突破の部分に関しては、オシム監督は今のところ準備に入っていない。今後のテーマなのだろう。大会中の練習でも、その方向性を垣間見ることができたが、最終ラインの裏に選手がタイミングよく飛び出して、複数の選手がフリーになるような攻め方を模索するのではないか。

「トレーニングの時間が足りない」と嘆くオシム監督にとって、アジアカップはワールドカップに向けての準備の場だった。

連日、ほとんど休養なしに、かなりハードなトレーニングが行なわれた。貴重なトレーニングの時間を休養に当てるわけにはいかないのだ。試合前のウォームアップのときも負荷のかかるトレーニングが行なわれた。大会を勝つためのトレーニングではなかったのだ。

そういう意味で、3週間のベトナム合宿はじつに貴重なチーム強化の場となった。将来のワールドカップ予選で、この経験が生きることがあるに違いない。そして、合宿最後の練習試合(サウジアラビア戦)で、現段階の課題が攻守両面ではっきり示された。あのまま、優勝してしまうよりも、その方が良かったのかもしれない……もちろん、これは負け惜しみなのだが……。

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後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授