スポーツ科学研究所とは

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【所長】桜井 智野風
(サクライ トモノブ)

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卓球のスポーツ科学一覧

2008年06月05日

『時速280kmの小さなボールを、なぜ打ち返せるのか?』

卓球は2.74m×1.525mのテーブルを使いネットを挟んでボールを打ち合う競技ですが、男子の一流選手のスマッシュは時速280kmにもなるといわれています。つまり2mに満たない前方から新幹線が飛んでくるのと同じということになるわけです。一流選手はこのボールをしっかりと打ち返すわけですが、どうして280kmもの小さなボールを「見て」「判断して」打ち返すことができるのでしょうか?

動体視力
「速く動く物や人を相手にするスポーツ選手は動体視力が優れている。」という話をよく耳にします。プロ野球のホームランバッターは新幹線に乗車中、通過する駅のポスターの字を読み取ることができるとか、高速道路ですれ違う車のナンバープレートを正確に読み取ることができるという話も、スポーツ選手の優れた動体視力の話に、より一層真実味を持たせているようです。では卓球選手は、動く物を眼で追いかけて正確に察知するこの「動体視力」が優れているのでしょうか?

ボールを見ていない?!
「相手が打つ時は、相手のラケットの角度やスイングをよく見て、どちらに来るか予測をし動いてレシーブする。」普通に考えると常識的な文章ですが、一流選手も相手が打つ瞬間は相手のラケットを見ているのでしょうか?答えはNOです。最近の研究では相手がスマッシュを打つとき、打つ瞬間を見ていないことがわかってきました。ではどこを見ているのか?相手全体を「ボーッ」とみているようです。これを「周辺視(※1)」と呼びます。

なぜ「ボーッ」とでいいのか?
人は一生懸命「見よう」とすれば、逆に身体は緊張してしまいます。視野を調節するためには眼球の後ろにある筋肉を細かく動かし、眼球の動きを調節しなければなりません。これも一つの運動です。この眼の運動に集中しすぎると肝心な手足の大きな筋肉への命令がおろそかになり、次の動きがスムーズに行えなくなります。ですから一流選手は視野を狭くして一点に集中させるよりも、周辺をボヤーッと見ることで肝心な身体の動きをスムーズにしているわけです。

周辺視は経験とトレーニングの賜物
しかし、卓球の初心者が相手をボーッと見ていても、打ってきたボールに反応することは当然できません。一流選手の脳の中では、相手の動きのパターンがいくつもインプットされていて、こんな動きをすると相手はここに打ってくるとか、こんなステップでこっちに動けば次はこんなスマッシュが来る。といった情報処理を行っています。これは多くの経験と練習により得られた技術であり獲得には時間と努力が必要です。つまりは、相手をボーッと見ることにより動きの全体像をとらえ、相手が打ちこんで来るであろうと思われるところに視線を先回りさせておくのです。眼でボールを追っても間に合わないから、さまざまな情報処理能力で先まわりをしているおかげで、時速280kmのスマッシュも打ち返すことができるというわけです。

卓球の一流選手は、動体視力が良いことよりも、周辺視に長けていることが重要なんですね。


なるほど!ザ!スポーツ用語辞典

<※1>
■周辺視:
一つのものを注視する際にその周りのものも同時に把握する能力



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