2009年01月07日
『ヘディングシュートを成功させるためには・・・』
2008年9月に始まったワールドカップアジア最終予選。日本は現在2勝1分でオーストラリアに次いで2位につけています。先日のカタール戦では、FW陣の2ゴールに続き闘莉王選手の素晴らしいヘディングシュート(以下:ヘディング)が決まり、アウェーで3-0の勝利をおさめました。日本代表戦を見ていると、セットプレーから中澤選手、闘莉王選手などの相手を抜いてのヘディングが目立ちます。ではこのヘディングの上手い下手には何が関与しているのでしょうか? 今回は(ジャンプからの)ヘディングについて科学的に紐解いてみましょう。
踏み切った瞬間にカラダが進む方向は決まってしまう。
ジャンプしてヘディングをするとき、私たちが行きたい方向とは違う方向に向かってジャンプしてしまったら・・・。身体をひねろうが手の向きを変えようが、外から何らかの力が働かない限り、身体重心(※1)の向かっている方向はコントロール不能となり、最初に踏み切った方向に着地することになります。つまりは一度踏み切ってしまえば身体の向かっている方向は空中では変えることができないわけです。ですから、ボールが来ると思った方向にジャンプしたにもかかわらず、違う方向に行ってしまった場合、頭の動かせる数十平方センチメートルの範囲でしか調整はできないことになります。
空中に長い時間とどまることはできない。
ジャンプのために一度踏み切れば、その時点から我々の身体は重力により下方に引っ張られることになります。身体の動かし方で空中での滞空時間が増すことはありません。空中でコントロールできない進行方向と同様に、滞空時間もジャンプした後では変えることはできないのです。ヒトがジャンプしてからの滞空時間は、ジャンプする高さが1mの選手でもせいぜい0.9秒程度です。これには体重は関係ありません。
ジャンプし空中に放り出された身体が最高点でボールと出会うのは滞空時間の半分である約0.4秒後、その前に蹴りだされるボールを見て様々な計算をしてジャンプする方向を決めるために約0.3秒とすれば、合計で0.7秒前後の短い時間の中でヘディングという一つの作業を完了させなければならないわけです。
どうすれば成功するか・・・?
では、どうすればヘディングは成功するのでしょうか? それには、0.7秒をいかに上手く使うかが鍵になってきます。まずは、0.3秒で行われる踏切の判断です。これには多くの練習や試合によって多彩なパターンのヘディングを経験し、成功した踏切イメージの記憶を増やすことが重要です。これにより0.3秒を少しでも短縮することができれば、踏切前にセンターリングのボールの行方を観察する時間を延長することが可能となります。
そして、空中での0.4秒間のボディーコントロールです。これには身体感覚というイメージの蓄積が重要になります。これはサッカーだけでなく、器械体操や水泳など、地面に接していない「浮く」感覚の体験・経験がイメージづくりには重要であるようです。
ただ漫然とヘディングの練習をしているだけではだめ。たくさんの良いヘディングを経験することと、他のスポーツや運動にもチャレンジすることが、イメージとしての記憶のレパートリーを増やします。試合中の華麗なヘディングには脳内の記憶が大きく関与しているのです。
なるほど!ザ!スポーツ用語辞典
<※1>
身体重心:
何か物体を一点で支えたときに、ちょうど釣り合う点を重心と呼びますが、人間の体の場合、「気をつけ」の立位姿勢でちょうどへその辺りとなります。また、手や足の位置を変化させることによりこの重心の位置は動くことになります。
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2008年04月17日
『変化するミドルシュートの秘密』
2010年のワールドカップ大会の3次予選も山場を向かえ、今後の動向から目が離せません!もう負けられない日本チームの健闘を祈るばかりです。さて、日本チームが苦手とも言われる「ミドルシュート」ですが、近年のサッカーでは中央突破やサイド攻撃と同じぐらいこのミドルシュートは攻撃の重要な選択肢になってきています。ドイツワールドカップではミドルシュートでのゴール数が増えたとも言われますし、本田選手(U-23日本代表・名古屋→オランダVVV)のフリーキックがなんどもニュースで放映されてもいました。今回はミドルシュートに関してお話しましょう。
どうしてミドルシュートが増えたのか…?
ミドルシュートを蹴りやすいボール
どうしてドイツのワールドカップあたりからミドルシュートが重要な戦術として考えられ始めたのでしょうか?これは流行などではなくて、「選手が放ったミドルシュートが入りやすくなった」と言い変えることができます。なぜ入りやすくなったのか?これは用具の変化にポイントがあるのです。そう、ボールの改良です。一昔前まではサッカーボールというのは黒の正五角形と白の正六角形の皮で縫い合わせたものが主流でしたが、現在のボールはプロペラ形の皮を使い色もカラフルになりました。当然縫い合わす皮の数が少なくなり縫い目が消失しました。これによりボール表面の凸凹がなくなり空気抵抗が少なくなったわけです。ではこのボールがどうしてミドルシュートを蹴りやすいのでしょうか?
ボールが変わると何が変わる?
ボールが空中を飛んでいる時、ボールには「地球の引力」、「空気の力」が働きます。この2つをうまくコントロールできればミドルシュートが有力な武器になります。まずは「引力」ですが、蹴られた後のボールのスピードが遅ければ、ボールはたちまち引力によって地球にひきつけられ、地面を転がるボールになってしまいます。つまりはこの引力に打ち勝つように力強く速いボールを蹴りださなくてはなりません。速く振り下ろされた足が、しっかりとボールに食い込むことで、ボールの反発が高くなりスピードのあるボールが蹴りだされます。昔のボールは縫い目がたくさんありその部分は硬いわけですから、そこを蹴ると足がボールに食い込みにくくなり高い反発が得られませんでした。しかし、新ボールは縫い目も少なく表面も滑らかなため足との接触がスムーズで食い込みも大きく、更にボール自体の重さが軽くなっていることや、雨や湿った芝の上でも水を吸い、重くなることも少なくなったことにより、よりスピードがあり引力に打ち勝つボールが蹴りやすくなったのです。
次に「空気の力」をうまく使うために、新しいボールはどのような特徴を持っているのでしょうか?先ほど述べたように新ボールは空気抵抗が非常に小さくなっています。新ボールを回転しない状態で勢いよく前に飛ばしてみると、飛んでいくボールの前面には規則正しい気流が生じます。この気流はボールの後ろ側に勢いよく回り込み、そこで乱気流を引き起こします。この乱気流がボールに微妙な変化を引き起こすのです。無回転のボールを蹴りだせば新ボールはキーパーの予測できない変化を起こし、ゴールに吸い込まれることとなるのです。
用具の進歩を追う技術
このように、スポーツの用具はパフォーマンス向上のために改良されるわけですが、この改良の先端にいるのは、最初は一握りの超一流選手であることがほとんどです。一流選手の高いスキルに合わせて製品は開発され、やがては一般の市場に下りていくことになります。すなわちほとんどの選手においては、商品にあわせて自分の技術を改良することになるわけです。まさにメーカーの研究・開発した商品が技術の向上をもたらしていると言っても過言ではありません。近い将来、子供のころから新ボールを蹴っている若手日本人選手がワールドカップに出場し、自在に変化するミドルシュートを武器に活躍する姿をみたいものですね。
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