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【所長】桜井 智野風
(サクライ トモノブ)

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2008年03月17日

『日本フィギュアスケートが強い理由?』

先日の四大陸選手権での高橋大輔選手、浅田真央選手の圧倒的な強さは目を見張るものがありました。そして、3月17日から開催される『世界フィギュアスケート選手権』での活躍も期待されます。このように、最近フィギュアスケート界では日本人選手の活躍が特に目立ちますが、これには何か理由が隠されているのでしょうか? 今回はその日本人選手の強さについて科学的に紐解いていきたいと思います。

えっ!ボクシングよりも長いの?
みなさんフィギュアスケートの演技している時間をご存知ですか? 男子・女子ともショートプログラムは2分50秒。フリースケーティングは男子4分30秒、女子4分間というとてつもなく長い時間なのです。フリーはボクシングの1ラウンド(3分)よりも長いことになります。フィギュアスケートはきれいに美しく踊ることから、持久種目として捕らえる人は少ないと思いますが、実は非常に過酷なスポーツなのです。

フィギュアはアジア系の選手に向いている
よくフィギュアはアジア系の選手に向いているという意見を聞きます。大柄なヨーロッパやアメリカの人にくらべて、小柄な日本人は氷の上を跳んでクルクル回ったりするには、ちょうどバランスのとれた身体であると表現するコーチもいます。確かにトリノ五輪で活躍したアメリカのエース、ミシェル・クワン選手は中国系、アルベールビル五輪金メダルのクリスティ・ヤマグチ選手は日系4世でした。男性でも高橋大輔選手は身長165cm、58kgと男子大学生としては決して大きな身体ではありません。ではどうして小柄なアジア系の選手が有利なのでしょうか?

持久力勝負!
 アジア系の民族はアメリカやアフリカの民族に比べて持久力に優れた筋組成をしているといわれます。これはアジア系の民族の祖先は農耕民族であり、獣を捕らえて暮らしていた狩猟民族ではなかったことにその起源があるようです。狩りをする際、獣を捕らえるために速く走ったり、遠くまで石や槍を投げたりすることが必要でした。これは瞬発力やスピード能力が優れる速筋(※1)を保持していなければいけません。しかし、農耕民族は作物の育成や刈り込みのために長い時間同じ作業を続けなければいけなかったわけで、これが遅筋(※2)と呼ばれる持久力に優れた筋肉を持つことが子孫に遺伝されたと思われています。

話を戻しますと、スケートは4分に及ぶ長い時間を跳んだり回ったりし続けなければなりません。これは全身、特に脚の腿の筋肉に大きな負担をかけることになります。皆さんが椅子から立ったり座ったりすることを4分間続けていることを想像してください。いかに持久力が必要なことであるかは用意に想像がつくと思います。

跳べば着地(着氷)しなくてはならない・・・
 もう一つ、身体が小さいことが有利な点があります。ひとたびジャンプした身体は氷の上に降りなくてはなりませんが、この降りるときに脚にかかる重量は体重の3~6倍ともいわれています。ましてやすごいスピードで回転してる身体の回転をストップさせながら着氷するわけですから、その衝撃たるやすごいものでしょう。この際も身体を支えているのが大腿部の筋肉ですが、当然体重が重ければ重いほど着氷の際の衝撃は大きくなります。身体が小さく体重が少なければ腿に受ける衝撃も少なく、筋に対するダメージも少ないということになります。1つの演技の中で数十回はジャンプし着氷することを考えれば、少しでもダメージが少ない方が後半のジャンプに余力を残せるということになるのでしょう。

科学的トレーニングに裏付けられた強さ
しかし、いかに有利な体型や遺伝子を持ち合わせていてもそれだけでは大成しません。難易度の高いジャンプ、高速なスピン、ステップなどの激しい動きを身に付けるには相当の技術や筋力が必要となります。最近のスポーツトレーニング技術の発展はフィギュア選手強化にも大きな影響を及ぼしていると思います。特に日本のVTRを使用した動作を解析する技術は世界でもトップクラスです。1秒間を数百~数千コマの分解画像にできるこの技術を用いることで、どの方向にどれくらいの力で跳べば回転が安定するか、そのためにはどの辺の筋肉を強化すればよいのか・・・等のデータを収集することができ、技術向上のためのトレーニングは氷上でなくともトレーニングルームや陸上でできるようになって来ています。昔の指導者の勘に頼っていたところがより明確に指示・提示できるようになっているのです。このようなデータを生かすことで、あまりムキムキしない柔軟な筋肉を手に入れることも可能となるわけです。

世界フィギュアスケート選手権に期待!
このように、身体があまり大きくなく、持久力に富んでいるアジア系の人々はフィギュアスケートにおいて有利な要因を兼ね備えているといえるでしょう。それにも増して、踊りの表現力が豊かになってきている若手選手たちには、更なる世界舞台での活躍を期待したいしましょう。そして、3月17日から開催される世界フィギュアスケート選手権で日本人選手が表彰台の一番上に立つ姿を是非とも見たいですね。


なるほど!ザ!スポーツ用語辞典

<※1>
■速筋(そっきん):
筋肉の色から白筋とも呼ばれる。すばやく筋収縮できるため、瞬発力やスピードを引き出すときに使われる。疲労が起きやすい筋肉。筋肥大がしやすく、高負荷・低回数のトレーニングで鍛えられる。

<※2>
■遅筋(ちきん):
筋肉の色から赤筋とも呼ばれる。ゆっくり筋収縮するため、持久力を引き出すときに使用される。疲労しにくい筋肉。筋肥大がしにくく、低負荷・高回数のトレーニングで鍛えられる。

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