スポーツ科学研究所とは

PHOTO

桜井所長がスポーツの裏側を解りやすく科学で教えてくれる。もっと楽しく、もっと身近にスポーツを感じること間違いなし!!

【所長】桜井 智野風
(サクライ トモノブ)

桜井 智野風 プロフィール
  • RSS2.0
  • ATOM

月別アーカイブ

ラグビーのスポーツ科学一覧

2008年01月22日

世界の大型ウィングはなぜ速い?

『世界の大型ウィングはなぜ速い?』

100mを10秒台で走れる!?
ここ数年の流れとして、世界的にラグビー強豪国のウィング選手の大型化が目立ちます。ジョナ・ロムー(元オールブラックス)やオーレリアン・ルジェリー(※1)は身長190cm以上で体重は100kgを軽く超えます。日本では十分フォワードとしてプレーできる程の体格です。しかし、彼らは100mをなんと10秒台で走るスピードも持ち合わせているのです。「身体が大きく重いのに速く走れるわけが無い……」。今回は、そんな常識を打ち破る彼らの身体が一体どうなっているのかを科学的に紐解いてみましょう!

歩幅?それとも脚の回転?
ヒトが速く走るためにはどうしたらよいのでしょうか?これは非常に簡単なことで、歩幅(ストライド)を大きくして、脚の回転(ピッチ)を早くすればいいわけです。「そんなこと当たり前だろ!」と言う方もいるかも知れません。そのとおり、これは基本中の基本なのですが、これが以外に忘れられている事でもあります。

身長が高い選手は当然脚も長く、ストライドが大きくなります。身長が20cm変わればストライドもその90%程度は変わってしまいます。つまり身長200cmと180cmの選手は1歩で15cm以上違うこともありえるわけです。この2人がゴールラインから反対のゴールラインまで約100m走ったとすればなんと3歩も差が出てしまう計算になります。

「じゃあ身長が低い分、ピッチを上げればいいのでしょ?」。確かにそうですが、残念ながらピッチはオリンピック代表の短距離選手も小学生もそれほど差がありません。どんなに速くても1秒間に5歩が人間の限界とも言われています。つまりは今のピッチのままストライドを長くすることが、スプリントが速くなる近道と言えるでしょう。

ストライドを大きくするためには、走っている時の滞空時間を伸ばすことが必要です。身体を弾ませることが必要であり、この力は腿(もも)を構成している大腿四頭筋(※2)、大腿二頭筋(※3)の筋力が重要となります。チーターなどの速く走る動物を思い出してください。脚の付け根の部分の筋肉が大きく発達している割には、地面に接地する部分は細くなっていませんか。このように身体を地面から浮かべ速く移動させるためには腿が発達することが重要なんですね。

知らず知らすのうちに、速くなるためのトレーニング
特に、ラグビーは走っている最中に、タックルに来た敵に横や後ろに引っ張られる場面が多々あります。これを踏ん張って前に進むことも練習の一環なのです。実は陸上のスプリンターの練習メニューには、ゴムや紐などで後ろに牽引されながら前に走る練習がありますが、ラグビーではまさにこの練習を毎日しているようなもので、特にバックスの選手は知らず知らずのうちにスプリントを強化するトレーニングをしていると言うことになります。また、バーベルを担いで行うスクワットは、これはまさに腿を鍛えるトレーニングです。皆さんもスクワットを行った後の筋肉痛は腿部に起こり、ふくらはぎにはあまり起こらないはずです。つまり腿を鍛えるスクワットトレーニングは走る動作のためには非常に重要なトレーニングになるのです。

ラグビー以外でも、2007年に行われた大阪世界陸上で100m(9秒85)・200m(19秒76)を制したタイソン・ゲイ選手(アメリカ)など海外の有名スポーツ選手を見ても、腿が太い割にふくらはぎは細いことに驚かされることがあります。「走る」というパフォーマンスのためには発達した腿が生み出す大きなストライドが重要となります。大型化している世界のウィング選手は自らの重い体重に見合ったしっかりした腿の筋肉を持っています。これが海外大型選手のスピードの秘密ですね。


なるほど!ザ!スポーツ用語辞典

<※1>
■オーレリアン・ルジェリー:
1980年9月26日生まれ。193cm、104kg。JSPORTSで放送中のハイネケンカップ07/08に出場しているクレルモン・オーヴェルニュ(フランス)に所属している。

<※2>
■大腿四頭筋筋(だいたいしとうきん):
腿の前側の筋肉。体で一番大きく、強力な筋肉であり、跳躍系の種目に重要な部分。スピードケートの選手はこの筋肉が発達して太く見える。

<※3>
■大腿二頭筋:
腿の後側の筋肉。「ハムストリングス」といわれ、走る種目に重要な部分。肉離れや筋肉痛を起こしやすく、トレーニングが難しい。


この記事へのリンク | ラグビー | コメント (0) | トラックバック (0) | ページトップ

2007年12月27日

ラグビー選手の太い首のなぞ・・・?

さあラグビーシーズンの到来ですね! 楕円形のボールを追いかけ、頑強な男と男がぶつかり合うラグビー・・・。今回はこのラグビーの不思議を“筋肉”を中心に科学的に紐解いてみましょう!

生身のヒトとヒトがぶつかり合うラグビーは、身体の作り方にも特徴があります。テレビなどでラグビー選手を見てすぐに目につくのはあの首の太さです。特にフォワード選手のでかい肩幅から伸びる富士山のような首の上に頭がのっています。この“富士山”を形作るのは背中の上部から首にかけて広くのびる僧帽筋(そうぼうきん:※1)と呼ばれる筋肉ですが、どうしてこの僧帽筋が鍛えられた太い首が必要なのでしょうか?

ボディーコンタクトを伴うスポーツ(ラグビー・アメフト・相撲・レスリングetc.)は、コンタクトの際、重要な脳が入っている頭部を保護する必要があります。しかし頭部は約2kgの脳とそこを流れる多くの血液、周りを包む頭蓋骨と、その重量は非常に大きく、身体が倒れる反動により地面に叩きつけられる可能性があります。身体と頭部をつなぐ首は、視界の確保や食べ物の摂取のために頭部を自由に動かさなくてはならないため、非常に細くフレキシブルに出来ています。それに加え、空気を肺に送る気道や食物を胃に送る食道も通っているために、首前面にはあまり大きな筋肉が無く、比較的鍛えにくい部分です。ですからこの首を鍛えるという事は簡単ではなく、逆に鍛え上げると常人には無い形状に変化するわけです。

では、アメリカンフットボールや相撲にはあまり見られないこの富士山のような形状はどうしてラグビー選手には必要なのでしょうか?

その答えはラグビーの「スクラム」にあります。スクラムは肩を組合ったチーム同士が、向かい合うチームと互いの肩を接して前に押し合います。しかし、地球には重力があるために前に押しているバランスが崩れると、その力は下向きの力に変わってしまいます。お互いのチームともに、下に崩れ落ちてしまいスクラムがつぶれるわけです。スクラムをつぶさないように、なるべく力を前に向けるようにするにはどうしたらよいのか?力の矛先であり、力の方向陀である頭を下に向けない事です。つまりは首を鍛えて四つん這いの状態で頭を上に持ち上げる事が必要になるわけです。スクラムを組んでいるときは持続的に力を出し続けなければいけないため、筋肉はアイソメトリック的(※2)な収縮となり首や肩は大きく肥大していくことになります。

鍛えられるのは特に背部の僧帽筋ですが、首の前面にある胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん:※3)も同様に強化されます。その強さは、うつ伏せになり他の選手(80~100kg程度)を頭の後ろに乗せても耐えられるほど。

アメリカンフットボールなどのようにタックルや、相撲の突っ張りなどによる一瞬の危険から頭を守るための防衛策として首を強固にするのとは違い、ラグビーは競技中にも富士山のような肩と首を作るトレーニングをしているといっても過言はないのです。他の競技には無い動きだからこそ、あの太い首が出来るのです。

普段何気なく目にするスポーツも、ちょっと違った視点から見てみると新たな発見があるものです。この『スポーツ科学研究所』では、今後も見慣れたスポーツの新しい見方をご紹介していきます。どうぞお楽しみに!


なるほど!ザ!スポーツ用語辞典

<※1>
■僧帽筋(そうぼうきん):
お坊さんの頭巾に形が似ている事が名称の由来。肩こりの人は、この筋肉の血流が悪いことが多い。

<※2>
■アイソメトリック:
アイソメトリックは『等尺性筋収縮』とも呼ばれ、筋肉の長さを変えないまま力を加えている状態の事をいいます。例えば、腕相撲でお互いの力が同じくらいで勝負の最中に腕が動かない状態のとき、力こぶが出来る筋肉(上腕二頭筋)はアイソメトリックな状態にあるといえます。このアイソメトリックの状態でトレーニングすると筋肉が肥大しやすくなります。

<※3>
■胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん):
いわゆる首筋。首を曲げ回転させる働きを持つ。


この記事へのリンク | ラグビー | コメント (0) | トラックバック (0) | ページトップ