2008年07月03日
『100m走と身長との間の関係は?』
先日アメリカで行われたリーボック国際陸上競技大会においてジャマイカのウサイン・ボルトが100mを9秒72というすばらしい世界最高記録で走り抜けました。この選手、身長が196cm、脚の長さも約1m弱の長身です。一般的に身長が高い人は100mのような瞬発的な種目に向かないと思われていますが、果たして身長と100m走の間にはどのような関係があるのでしょうか?
世界の一流スプリンターの平均身長
過去の100mで1968年以降(9秒台)の世界記録保持者の身長を調べてみると、ほとんどが170~180cm台であり、190cmを大きく上回る選手は彼が初めてです。今年度の100mの世界上位10位にランキングされる選手の平均身長は約182cm、同じように200mは約185cmと少々200m選手の方が高い傾向にありますが、190cmを越える選手はまだまだ稀です。
速く走るための条件
ヒトが速く走るためには大きく2つの条件が影響します。一つはストライド(歩幅)、もう一つはピッチ(回転数)です。当然、大きな歩幅で回転数をあげれば速く走れるわけですが、どちらか一方だけでも向上すれば記録の伸びは期待できます。
高い身長の人は動きが鈍いのか・・・?
「身体が大きい人は動作が鈍いから・・・」とよく言われます。本当にそうなのでしょうか? 走っている選手の脚の動きをよく調べてみると、ピッチの速さを導き出す股関節周りの角速度(※1)は、身長の高い選手も低い選手もあまり変わりません。

例えば、前回のアテネオリンピック100m日本代表であった171cmの土江選手は、1秒間に約5.3歩のピッチを誇り世界でも最も速いピッチといわれていました。世界の一流選手を見ると、昨年の大阪世界陸上100mで優勝した183cmのタイソン・ゲイは1秒間に4.9歩。前100m世界記録保持者の190cmのアサハ・パウエルは1秒間に5.0歩とピッチにそれほどの差がないことがわかりますね。ヒトのピッチは、どんなに速くとも1秒間に約5歩が限界といわれています。
ストライドの差が100mで…
日本の陸上短距離界のエースである末續選手の身長は178cmであり、推定した脚の長さは約80cmです。これに対し、世界記録を樹立したウサイン・ボルトは196cmで推定は93cmとなります。末續選手のストライドは最大で250cmといわれますので、同じ比率でボルト選手のストライドを計算すると、290cmとなります。なんとその差は1歩で40cm! 単純にこの差で100mを走るとすれば、100mで3~4歩の差がついてしまいます。
つまりは、動きが鈍く見える身長の高い選手でも、脚のピッチさえ落とさなければ、ストライドの違いによって、短距離走においても相当なアドバンテージとなり得るのです。
ウサイン・ボルトの世界新記録は、今後の陸上界に長身スプリンターが現れる幕開けかもしれません。オリンピックでの世界最速の熱き戦い、そして世界新記録に期待しましょう。
なるほど!ザ!スポーツ用語辞典<※1>
角速度:
物体の回転の速さのことで、1秒間に進む角度のこと。
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