スポーツ科学研究所とは

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桜井所長がスポーツの裏側を解りやすく科学で教えてくれる。もっと楽しく、もっと身近にスポーツを感じること間違いなし!!

【所長】桜井 智野風
(サクライ トモノブ)

桜井 智野風 プロフィール
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2008年03月04日

『なぜ、マラソン選手は倒れてしまうのか?』

お正月の箱根駅伝や、先日の大阪国際女子マラソンの福士選手(※1)に見られるようなレース途中でのアクシデント……。テレビのアナウンサーや解説者は「あー脱水症状ですね……」と話しているが、なぜあのような症状が引き起こされるのか? 今回は、最近皆さんがよく目にしている、駅伝やマラソンでのレース途中のアクシデントについて科学的に紐解いてみましょう!

そもそも脱水症とは?
脱水症というと、「暑い環境で起こるもの」という概念がありませんか? 
しかし、寒い中でも脱水症は発生します。気温が低い中でのスポーツ活動は、「暑くないから喉は渇かないだろう……」と水を用意せず飲まないことがありますよね。特に冬は水を飲まないことに加え、乾燥した空気の中で運動することで汗をかいてもすぐに蒸発してしまい、汗をかいている自覚が無いことが多いのです。汗をかいているのに水分を摂取しなければ・・・当然脱水になるわけです。

選手はレース前に水を飲まないの?
「脱水症状」と聞くと、「水を飲まないからなるんでしょ」と考える方も多いと思います。確かに水を飲まないで運動するとなりやすい事は確かですが、十分な水を飲んでいるのに脱水症状に陥る事もあるんです。世界一流のランナーである福士選手や1ヶ月に何百kmのランニングを練習としてこなす大学の駅伝ランナーが、小学生やランニング初心者のように水を飲まずにレースに臨むことなどありえません。ではなぜ脱水症状になるのでしょう?

緊張がもたらすエネルギーの蓄積不足
「食後はリラックスしていた方が消化吸収にはいい」などということは、皆さんも良くご存知だと思います。これは気持ちを穏やかにすることにより自律神経のひとつである副交感神経が働き、内臓の臓器の活動が活発になるからです。しかし極度の緊張状態におかれると、もうひとつの自律神経である交感神経が活発に働き食べた食物の消化吸収を妨げます。これはどんなに栄養のある食物を食べてもその栄養を通常のように吸収できず、エネルギー(特にパワーの源である「糖」)の蓄積に支障をきたすことも考えられます。テレビに中継され注目を集める箱根駅伝やマラソンは、参加選手たちへ過度の緊張を与えていることは十分に考えられます。

気温差が招くエネルギー消費の増大
人間は気温が低く寒い状態におかれると、体温を維持するために様々な行動をとります。そのひとつに「シバリング」があります。このシバリングとは意識しなくても身体がブルブル、ガタガタと震える状態を言います。このシバリング時に使われるエネルギーは脂肪ではなく「糖」なのです。糖は食物として食べる事により筋肉中や肝臓に蓄積されますが、蓄積できる量に限界があります。人間の脳はエネルギーとして糖を使いますので、糖の不足は思考能力の低下にもつながります。レースへの緊張から食べた糖がエネルギーとして蓄積できていない状態に加え、寒さに打ち勝つために過剰に糖を消費したり、レース前半にハイペースで走るあまり、筋肉はハイパワーな出力を強いられ糖を多量に使用してしまえば、脳の機能にも影響を及ぼす事になるわけです。選手が自分の意思で立ち上がれないほどになってしまうのは単なる筋肉の疲労だけでなく、脳から全身への命令機能が低下していることも考えられるわけです。

どうすればいいのか?
単なる水(ミネラルウォーター)の摂取だけでなく、容易に消化吸収できるような液体の栄養飲料水を利用することです。辛くなりかけている選手にはミネラルウォーターを提供するのではなく、糖質を含む飲料を摂取させることが重要でしょう。

3月9日の『名古屋国際女子マラソン』に注目!
さて待望のオリンピック女子マラソンの最終選考レースですが、気候的に涼しい状態であれば誰でも勝つ可能性があるのではないでしょうか。しかし、少しでも気温が上がったり湿度が高かったりした場合は、過酷な状態のレースで勝った経験があり、緊張などにより無駄なエネルギーを使うことが少ないであろうベテランの高橋、原選手あたりが有利になるかもしれません……。


なるほど!ザ!スポーツ用語辞典

<※1>
■福士選手:
本名、福士加代子(ふくしかよこ)。青森県五所川原工業高校出身で、現在は実業団のワコールに所属。3000m、5000m、ハーフマラソンで日本記録を持つ日本陸上長距離界のエースで、北京オリンピックはトラック種目での出場を目指す。インタビューなどでのパフォーマンスも注目されている。

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桜井先生!今日も勉強になりました。次回も楽しみです。

投稿者 網走ASA : 2008年03月04日 18:47

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