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2007年09月11日

漫画道場・番外編vol.4 『プロレススーパースター列伝』 byスポーツアナウンサー市川勝也

ichikawa.gif人間が、ひとりのおおいなる存在として人の前に立ち、その対する者を包み、あるところで圧し、なお教え込んでしまう…。本来、日本における「武道」には、「たたかい」ということを超えた上にそんな「凄み」があったように思う。己の体力的数値や戦闘能力により相手を傷つけるのではなく、相対するものを自らの心の世界へと引き入れ、諭す。究極は「真剣勝負」、まさに読んで字のごとくであるから言うまでも無いが、それを可能とした「強さ」を含めたなか、数々の強者を魅了し、育てていく…。

この夏、亡くなったカール・ゴッチという「存在」の日本プロレス界、ひいては格闘技界での貢献度を例えてみるなら、こんなふうにしてその種を蒔いたというところだろうか。通称「プロレスの神様」。神と評されたこの稀に見る実力者が、引退後も現実社会とはかけ離れた「プロレス」とかかわり続けたこと、そしてその現役時代、本場・アメリカではショーマンシップを要求されるスタイルに嫌気がさし、闘う機会にめぐまれなかったことはファンの間では周知のエピソードだ。

「神様」は「プロレス」には愛されなかった・・?いや、それは完全に当たりではないだろう。少なくともわが国・日本という、前述の風土・体質に伝道師としてフィットした事実はある。そしてJ SPORTSでもオンエアされている修斗やシュートボクシングという格闘技にも与えた影響は計り知れない。「誇張せずに、真実を」…。こう訴えたゴッチの教えは、もちろんエンターテインメントに流用されず、しかし確固たる礎として残る。さらに「レスリングは人生と同じ、誰かを打ちのめすことで学ぶのではなく、打ちのめされて学ぶんだ」とある意味武道的な価値観を披露していた。失われつつある「武道」の精神とは…。晩年、ほぼ日本人以外にこの「凄み」を伝えることはなかったというゴッチの方向性に、我々は今一度、見るべきところがあるように思える。

「私は真のレスリングの強さを教えたいんだ!」しかし「強さ」だけでは生きられない、
ということも誰より伝えたかったのがゴッチではなかったか…。

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2007年07月12日

漫画道場・番外編vol.3 『キャプテン』 byスポーツアナウンサー市川勝也

ichikawa.gif25年ぶりくらいだろうか、「キャプテン」を読み返してみた。自分自身野球をプレイすることに熱中し、でも少年野球のひとつ上(つまり漫画の題材にもなっている中学野球)のレベルにまったくついていけず、ろくな努力もせずに「だめだなこりゃ・・・」とさじを投げかけた頃。球拾いでボールが見つからず、「オレなにやってんだろ?」だった頃。そんな自分とは正反対に、ひたすら純粋に練習を重ね、力をつけていく登場人物達を見るのが嫌になり、たしか10巻くらいで読むのをやめた「キャプテン」。なにかふり返りたくない過去の自分の情けなさをもう一度たどるかのような作品を今、どう感じるか?なんて少し大袈裟だが、ひとつの思いを持って読み返したのである。

けっこう時間がかかった。読み応え満点、なかなかヘビーだ。驚いたのは、ほとんど練習と試合の場面、つまり野球をしているシーンで構成されていること。人物をとりまく環境やサイドストーリーはほとんどなく、ただひたすら練習、試合、そしてまた練習。野球漫画なんだから当たり前だろ、というムキもあるだろうが、「実際ここまで野球ばっかりかなあ?」と思えるほどなのだ。女性キャラもほぼゼロ、あのストイックな「あしたのジョー」にさえ白木葉子や紀ちゃんが出てくるのに・・。

大抵こうした作品はハナシに厚みがなく、感情移入もしづらい。ところがこの「キャプテン」はどうだ?その法則を完全無視するかのようにブ厚く(熱く)成り立っている。馬鹿正直なまでに野球に集中する人物達がグラウンドで球を追いかける姿・そのものが彼らの性格であり、表現だということだろうか。

特訓の最中、「おれたちみたいに素質も才能もないものはこうやるしか方法はないんだ」と自らを評する最初のキャプテンは谷口(正確には本作中二人目だが)。いやいや、体格や技術はなくとも、「努力する才能」にあふれている。自分にはこれがなかった・・なんて気付きながら読み進んでいくと、またあることを発見。歴代キャプテンは谷口のあと、丸井・イガラシ(なぜかカタカナ表記)・近藤と続く。が、彼こそが主人公!という存在はいないのである。谷口は物語の基礎を作り象徴的に印象に残るし、丸井は卒業後もOBとして強引なアドバイスとともに登場し続ける。天才肌だがじつは人一倍の練習量をほこるイガラシに自由奔放な近藤・・・と個性は豊かだが「主役はこいつだろうな・・」とは断定できない。日本選手権を制覇した時期のキャプテン・イガラシなのかなあ?ん~そうとも言い切れない。このあたりは読んだことのある人に聞いてみたい気がする。いろいろな意見があればそれもまた面白そうだし、その人の性格も垣間見えるだろう。話せる人はそう多くないかも知れないが・・。

ちなみに1972年から1978年までこの作品を連載していた「少年ジャンプ」の当時のスローガンは「友情・努力・勝利」だったそうだ(初めて知った・・)。口にするとしたらやや赤面・・にも感じてしまうが、シンプルである。明快である。本当はこれでいいんじゃないか?と思える。「キャプテン」はそれを愚直なまでになぞった。そして今、この時代だからこそ思い出したい作品だ。運動会の徒競走に順位をつけず、子供達に「負けることから感じる」能力を奪い取った結果、何が残ったのか・・?転んでもいい、うまくいかなくてもいい、「ならどうする?」があればいい。そんな単純で、ゆえに強力な志を「キャプテン」は持っている。そう、この世間に、「キャプテン」が足りない!と思わせる強い力を。

※「キャプテン」は、「J SPORTS STYLE movie」で絶賛配信中!

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漫画道場・番外編vol.2 『一球さん』 byスポーツアナウンサー高橋大輔

無邪気の前には、どんな邪気もかなわないのだと思いました。

先日、J SPORTS STYLE movieの「スポコン!道場」という番組で、「モーニング」編集長の鯉渕さんとお話をさせていただいた時に、水島新司先生に関するいろいろなエピソードをお聞きしました。

忙しい毎日の中、自ら野球チームを主宰し、今現在でも年間100試合プレーしている。しかし、原稿の締め切りに遅れた事は無い。

草野球で200勝を達成した時には、自費で名球界入りパーティーを催した。

インタビューで「史上最高の打者は誰か?」という質問に「山田太郎」と答えた。

原稿を受け取るために球場で待ち合わせていたが、待ち合わせ場所にはおらず、一般人が絶対に入れない室内練習所で王監督と談笑していた。

等々…

水島先生は野球に対してすごく真剣で無邪気なんだと思いました。だから、フィクションなのにウソが無い。突っ込みどころ満載なのに、突っ込みどころが無い。「一球さん」を読んでいると、そんな不思議な感覚になります。

真田一球に対し様々な感情を抱く周りの人間達。そして、彼らを磁石のように引き寄せ、魅了してしまう…真田一球の人間力は読んでいてとても気持ちが良いです。

野球に対して真っ直ぐで、人に対して真っ直ぐで、自分に対して真っ直ぐな一球。

私はいつから愛想笑いが出来るようになったのだろう?

いつから色々な事を計算するようになったのだろう?

いつから手を抜く事を憶えたのだろう?

いつから信じる事よりも先に、疑う事を考えるようになったのだろう?

真田一球を見ていると、そんな事を考えさせられます。

※高橋大輔さんが出演中の「スポコン!道場」は、「J SPORTS STYLE movie」で絶賛配信中!

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2007年06月25日

番外編 矢野武氏が読む『野球狂の詩』

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久しぶりの投稿はスペシャルバージョン。ラグビーや格闘技の実況でおなじみの矢野武さんが、『野球狂の詩』に関して寄せてくださったコラムをお届けします。

プロ野球協約第83条 (不適格選手)
球団は以下に挙げるものを、支配下選手とすることは出来ない。(1)医学上男子ではないもの (2)<以下略>

"野球狂の詩"は、水原勇気という繊細な天才投手が"女"であるが故に様々なドラマが生れる。

「寮生活は?」、、「汗かいたアンダーシャツは?」、、。

実際に入寮の時にボストンバッグの中には"ブラジャー"も描かれている。

鬼コーチに「それでも男か!」と怒鳴られたとしても、、男じゃない。

『ジャイアンツは紳士たれ!」という言葉があるが、、いうなれば、、淑女?。

たった一人の"異性"の登場で、プロ野球人の"当たり前"が"当たり前"ではなくなる。

何より水原勇気は、世間に在りがちな"男にコンプレックスを持つが故の男勝り"ではなく、ルックスも"宝塚歌劇団"的ではない、、、だから良い。

発想は突飛にして、生れるドラマは現実的、、、だから良い。

名前も良い。

"水原勇気"、、、「女を武器に使わない!かといって男勝りでもない。」

なのに"凛"として感じるのは"水原勇気"だからか?

そういえば主題歌も、"巨人の星"の軍歌風でもなく、"キャプテン"の校歌風とも違い、なんとスキャット、、、これがまた良い。

水島新司の漫画の中で"女性プロ野球選手第一号"が誕生してから15年後、、、平成3年、、『"プロ野球協約第83条の(1)』は、削除されたそうです。

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2007年03月22日

『ササナキ』 - サッカー風味忍者学園青春マンガ

ゴツボ×リュウジ『ササナキ』 角川書店(2004) 全4巻

ササナキ

『ササメケ』の続編。さらに美男美女が増強。今度の美男子は忍者です。さらには中学MVPの美男選手も加わり、チームのほぼ全員が美男美女に。サッカーを楽しみにするより、好みの男の子、女の子でも探してください。

序盤は生徒会長選挙や忍者合戦が続き、中盤からようやくサッカーへ。しかしここでも主人公楽市は1点も取れず、相変わらず彼女もできません。主人公のはずが存在感が限りなくゼロへ近づいていきます。変わりに目立つのは、やはり天才美男美女たちです。

後半は忍者技が炸裂しまくります。主人公の存在感と共に、サッカーの存在感も雲散霧消。「脱力系サッカー風味青春グラフィティ」が「脱力系サッカー風味忍者学園青春グラフィティ」へと進化(?)した作品です。

画像:(C)ゴツボ×リュウジ/角川書店

■初出:『少年エース』富士見書房(2004~2006)

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ササナキ

【ストーリー】

校長が不祥事で逮捕された県立竹生島高校はサッカー部も活動停止に。変わりに幅をきかせるのは新聞部だった。サッカーを奪われた楽市は果たして!?

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2007年03月20日

『ササメケ』 - 脱力系サッカー風味青春グラフィティ

ゴツボ×リュウジ『ササメケ』 角川書店(2002) 全5巻

ササメケ

人格の破綻した美男美女ばかり登場する、濃密なお笑い青春サッカーマンガです。端々に書き込まれたギャグが濃厚で、初めはとっつきにくかったのですが、慣れ始めると一気に引き込まれます。

キャラクターは、食玩好きで練習にも試合にもほとんど現れない天才MFのキャプテン、幽霊と話しが出来てしまうひきこもりエロDF、男ばかり追いかけているサッカー部マネージャーなどなど。単行本の帯にある「脱力系サッカー風味青春グラフィティ」という言葉の通り、ガチンコサッカーマンガではありません。

スポーツマンガとして読むと、才能の悲哀を感じさせます。チームには4人の主力がおり、うち2人はまごう方なき天才です。主人公は小学生時代に注目された「元・天才」ですが、高校では一瞬のきらめきは見せるもののほとんど活躍できない。ついでに、美男にもかかわらず彼女もできない。

話しが進むに連れて、主人公がどんどん凡才に見えてきます。ラストでの主人公と天才2人の落差は甚だしく悲しい。青春ギャグ漫画なので面白くは読めるのですが。多彩な読み方を許容する懐の深い作品です。

画像:(C)ゴツボ×リュウジ/角川書店

■初出:『少年エース』富士見書房(2001~2004)

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ササメケ

【ストーリー】

天才サッカー少年だった長浜楽市だが、留学したイタリアでは通用せずに失意の帰国。編入した県立竹生島高校のサッカー部から勧誘を受けるが、サッカーから距離を置こうとする。退屈な田舎で怠惰な日々を送る楽市は、再びサッカーの世界へ戻ってくるのか!?

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