2007年02月07日
『がんばれ元気』 - ハングリーな時代の父子鷹ボクシング
小山ゆう 『がんばれ元気
』 小学館(1998) 文庫全16巻
数あるボクシングマンガの中でも、屈指の名作ではないでしょうか。『ユリイカ』の松本大洋特集号を読んでいたところ、氏も「大好きで100回くらい読ん」だとのこと。
いかにも70年代の劇画調スポーツマンガといった趣で、ヘビーでハングリーなボクシングの世界を描きます。
主人公元気は、父がどさ回りのボクサーなため、子ども預かり所のようなところで暮らしている。元気は父が世界チャンピオンになることを純真な心で信じています。
どさ回りといえば、『あしたのジョー』の矢吹丈も一時身を置いた場所です。それによると、どさ回りの興行はボクサーにとっては墓場のような場所で、世界チャンピオンを目指すようなボクサーが本来行くところではありません。のっけから不幸の匂いが漂います。
実際元気は、幼少時から大切な人を何人も失う悲劇的な人生を送ります。しかし彼は曲がることもなく、真っ直ぐに育つ。スポーツマンガ界屈指の人格者です。
中学を卒業した元気は、父と抱いた世界チャンピオンという夢を叶えるために上京します。上京前の数年は、お金持ちな母方の祖父母宅に身を寄せ、裕福な生活を送っていました。そんな日々を捨て、寿司屋で出前持ちをしながらボクシングジムへ通う日々。
亀田家伝統(?)の「世界のジャブ」というトレーニングをご存知でしょうか。棒(Wikipediaによると箒のようです)の先にグローブを着けて、ブンブンと打ち込むあれです。その「世界ジャブ」や、通過する電車の乗客の顔を見分けて動態視力を鍛えるなど、古風でハングリーな特訓を繰り返し、めきめきと頭角を現していく。
数々の悲劇を飲み込みながら勝ち進む元気は、いよいよ世界への階段を昇り始めます。
今のボクシングもハングリーなのでしょうけど、時代が時代ですからハングリーさが違います。本当に燃え尽きるまで戦い、朽ちていくボクサーがほとんどです。勝つことが、そのまま相手の人生を壊すという恐怖。
「おれの方がもっともっと罪ぶかい男だよ・・・大勢の男の夢をたたきつぶして・・・」(『がんばれ元気』 第16巻 P10)
絶望的な孤独と恐怖に耐え、世界の舞台へ向う元気の姿は切なく、読み進めるのがもったいないとすら感じます。「あのときの子どもがここまで来たか」という感慨に耽ること間違いなしです。
【余談】
本作は「元気、ダウン」など、章タイトルが内容を説明し過ぎるケースが散見されます。「言うなよ!」と思いました。初めて読む方はなるべく章タイトルを見ないように読み進めることをオススメします。
■初出:『週刊少年サンデー』小学館(1976~1980)
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『がんばれ元気』
【ストーリー】
どさ回りのボクサーである父と一緒に旅をする息子の元気。世界チャンピオンになるという父の言葉を信じ、自分もプロボクサーを目指してトレーニングに励む。親子の夢は叶うのか。


