2006年12月28日
奈緒子 - 天才ランナーを取り巻く一大物語
これにて2006年のスポーツマンガ道場は終わりです。最後にご紹介するのは駅伝マンガの大傑作です。それでは皆様、よいお年を。
坂田信弘・中原裕『奈緒子
』小学館(2004)文庫全25巻
駅伝は究極のチームスポーツだと思っています。選手が走り出したら、誰も何もしてあげられない。ミスをカバーしてあげることもできないし、怪我をしようが倒れようが変わってあげることもできない。
1人の選手が完走できなかった瞬間、チーム全体の敗北が決まる。そんな過重な責任を、実際に走る選手たちは背負っている。選手たち支えるのは、タスキに込められた人々の想いだけ。『奈緒子』はそういった想いの数々を過剰な程に描きます。
「みんなの頑張りが---みんながつないでくれたタスキが力をくれてる!俺の足はこのタスキの重さを知ってる!だから言ってるんだ……もっと行け、走れって!!」(『奈緒子』文庫第14巻 P97より)
故郷波切島の仲間の、チームメイトの、指導者の、家族の想いを背負って雄介は走り続ける。そこにはスポーツマンガらしい、というより数あるスポーツマンガの中でも傑出した感動がある。
しかし、『奈緒子』は常に悲しい。いつ壊れるとも知れない雄介の鬼気迫る走りは不吉で、幼少時に雄介の家族に悲劇をもたらした奈緒子には消えることのない陰りが付きまとう。
雄介の野郎、走ってやがる……自分のためじゃなくみんなのためにな。(中略)生きるってのは悲しいな。(『奈緒子』文庫第15巻 P163より)
でも結局雄介は、周りの人間を幸せにしていく存在なのだと思う。爽やかな感動と、深い悲しみの両面をぜひ味わってほしい。
■初出:『ビックコミックスピリッツ』小学館(1994~2003)
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『奈緒子』
【ストーリー】
中学まで天才中距離ランナーと言われていた壱岐健介は、長崎県波切島で漁師をしながら地元の高校で陸上部監督を務めていた。経済的事情で高校に進学せず陸上を断念した健介は、2人の息子に夢を託していた。長男の大介には勉強を、次男の雄介には走ることを。
雄介は小学校1年生にして、島の誰よりも足の早い子供だった。雄介がリレーに出場する運動会の当日、東京から来た篠宮一家に頼まれて健介はしぶしぶ船を出したが、娘の奈緒子が海に落ちてしまう。飛び込んで奈緒子を助けた健介だが、船に激突され溺死する。この時から、波切島を舞台にした雄介、大介、奈緒子の長い物語が始まる。


