2007年01月30日
七三太朗・井深英記『ランナーズ・ハイ!
』秋田書店(2003)全5巻

いわゆる「萌え」るポイントを見出す方もいらっしゃるようです。
『動物化するポストモダン―オタクから見た日本社会』(東浩紀著・講談社新書)という本に、萌えの記号化という話しが出ておりました。「はねた髪」がその一つに含まれていたように思います。確かに「萌え」キャラであろう、女子マネージャー夕奈(名前がまたそれっぽい)や主人公の母(若い)の髪が、ぴょこんとはねています。
「某ビジュアル系バンドのボーカル」をモデルにした名ランナーなど、男子キャラもかっこいい子がたくさん出てきます。主人公の広美(男)は、可愛い系のもやしっ子。2人暮らしの母の手料理に感動して涙を流すような心優しい少年です。この辺は「ショタコン」な方を刺激するのでしょうか。
斯界については詳しくないので、スポーティな部分に行きます。
上述したような絵柄とは裏腹に、内容は結構なスポコンマンガです。スポーツマンガの原作を数多く手がける七三太朗(なみ たろう)の作品だけに、トレーニングの描写なども細かく描かれています。
陸上のトレーニングというのは走ることばかりでなく、飛んだり跳ねたり、結構色々な動作を入れるものです。本作ではスキップやバンザイ走り、ハイハイなど、他の運動部員が失笑するトレーニングが出てきて興味深い。効果についてもうちょっと解説がほしいところです。
走っている時の感覚描写にも同意するところ大でした。
「ちょっとだけ我慢して走ってるとね(中略)その小さな炎はあっという間に全身に行き渡って それまでの重い体がウソのように軽くなるんだ」(『ランナーズ・ハイ!』 第4巻 P179)
走るのは気持ちいいんだってことを思い出させてくれる、萌え系スポコンショタコンマンガです。
■初出:『月刊少年チャンピオン』秋田書店(掲載年不明)
【ストーリー】
網野広美と高原宅斗は保育園時代からの同級生。中学校に入学し、部活を決める時期が来た。リトルリーグで野球をやっていた運動神経抜群の宅斗は、従兄弟の誘いで陸上部へ。それを追いかけて、小児喘息のためにこれまで運動をしたことのない広美も陸上部に入ることに。50mもろくに走れない広美は陸上部でやっていけるのか!?
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2006年12月28日
これにて2006年のスポーツマンガ道場は終わりです。最後にご紹介するのは駅伝マンガの大傑作です。それでは皆様、よいお年を。
坂田信弘・中原裕『奈緒子
』小学館(2004)文庫全25巻

駅伝は究極のチームスポーツだと思っています。選手が走り出したら、誰も何もしてあげられない。ミスをカバーしてあげることもできないし、怪我をしようが倒れようが変わってあげることもできない。
1人の選手が完走できなかった瞬間、チーム全体の敗北が決まる。そんな過重な責任を、実際に走る選手たちは背負っている。選手たち支えるのは、タスキに込められた人々の想いだけ。『奈緒子』はそういった想いの数々を過剰な程に描きます。
「みんなの頑張りが---みんながつないでくれたタスキが力をくれてる!俺の足はこのタスキの重さを知ってる!だから言ってるんだ……もっと行け、走れって!!」(『奈緒子』文庫第14巻 P97より)
故郷波切島の仲間の、チームメイトの、指導者の、家族の想いを背負って雄介は走り続ける。そこにはスポーツマンガらしい、というより数あるスポーツマンガの中でも傑出した感動がある。
しかし、『奈緒子』は常に悲しい。いつ壊れるとも知れない雄介の鬼気迫る走りは不吉で、幼少時に雄介の家族に悲劇をもたらした奈緒子には消えることのない陰りが付きまとう。
雄介の野郎、走ってやがる……自分のためじゃなくみんなのためにな。(中略)生きるってのは悲しいな。(『奈緒子』文庫第15巻 P163より)
でも結局雄介は、周りの人間を幸せにしていく存在なのだと思う。爽やかな感動と、深い悲しみの両面をぜひ味わってほしい。
■初出:『ビックコミックスピリッツ』小学館(1994~2003)
【ストーリー】
中学まで天才中距離ランナーと言われていた壱岐健介は、長崎県波切島で漁師をしながら地元の高校で陸上部監督を務めていた。経済的事情で高校に進学せず陸上を断念した健介は、2人の息子に夢を託していた。長男の大介には勉強を、次男の雄介には走ることを。
雄介は小学校1年生にして、島の誰よりも足の早い子供だった。雄介がリレーに出場する運動会の当日、東京から来た篠宮一家に頼まれて健介はしぶしぶ船を出したが、娘の奈緒子が海に落ちてしまう。飛び込んで奈緒子を助けた健介だが、船に激突され溺死する。この時から、波切島を舞台にした雄介、大介、奈緒子の長い物語が始まる。
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高橋しん『好きになるひと
』小学館(2000)全1巻

作者はかつて山梨学院大の選手として箱根駅伝に出場したそうです。異色の経歴の持ち主ですね。
本作は初期の作品を1999年に書き直した短編集です。そのうちの「ANCHOR」「歩いていこう。」「好きになるひと」が陸上をテーマにしています。
「ANCHOR」ではタスキの重みを感じる緊張感を、「歩いていこう。」では恋人のために走るマラソンランナーの想いを、「好きになるひと」では先輩男子に憧れて陸上部に入部した女の子の気持ちを描きます。
陸上そのものよりも、選手や関係者の一瞬の感情を丁寧に描いた作品集になっています。
■初出:「ANCHOR」『ビッグコミックスピリッツ増刊』小学館(1991)、「歩いていこう。」『ビッグコミックスピリッツ増刊』小学館(1993)、「好きになるひと」『ビッグコミックスピリッツ増刊』小学館(1993)
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箱根駅伝の前に陸上マンガをいくつか読んでおきましょう。
高橋由佳利『なみだの陸上部
』集英社(2001)文庫全2巻
少女マンガはほとんど読んだことありません。この作品も、女の子の髪型が変わっただけで誰だかわからなくなるなど、悪戦苦闘しながら読みました。
本作の主人公るう子は中長距離の選手です。表紙ではなぜか高跳びをしておりますが。陸上では天才肌なのでぐんぐん成長していく。800mから10000m、駅伝を経て、最後はマラソンまでたどり着きます。
スポーツマンガといえばライバル。少女マンガといえば恋愛。というわけで、陸上800m中学記録保持者のしのぶが、恋と陸上のWライバルとして、るう子の前に立ちはだかります。
僕はきびきびとして目配りの効くしのぶの方が好きですね。るう子は周りがなんとかしてくれるタイプなので、どうも感情移入できません。
■初出:『りぼん』集英社(1985)
【ストーリー】
才能あふれる中距離ランナーだった小泉るう子は、中学時代に出場した800mの試合で、優勝候補だった有栖川しのぶに接触し怪我を負わせてしまう。そのことがトラウマになり、高校進学後は憧れの野球部員尾花沢のそばにいるため野球部のマネージャーになろうとする。しかし、るう子を知る陸上部部長の北別府慶秋が、るう子をトラックへ呼び戻そうとする。るう子は再び走り始めるのか。
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