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J SPORTS J.LEAGUE

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1207ajista.jpg3年越しの復讐に燃える黄か、清冽なる下克上を狙う青か。来年の立ち位置を鮮明に分ける90分間のデスマッチ。昇格プレーオフ決勝は、3年目にして初めての舞台となる味の素スタジアムです。
トップディビジョンから遠ざかって早5年。過去2年は昇格プレーオフという魔物に魅入られ、国立と鳴門大塚で涙を呑んできた千葉。臥薪嘗胆のJ2で戦う5シーズン目は初めて前年と同じ指揮官で開幕を迎えたものの、その鈴木淳監督は6月で解任という結末に。それでも、後を継いだ関塚隆監督が手腕を発揮して、過去5シーズンでは最高位となる3位でプレーオフ決勝へ。このレギュレーションが採用されてから唯一の"皆勤賞"を卒業すべく、3度目の正直にドローでも昇格というアドバンテージを携えて挑みます。
クラブ史上初めてJ1という大空を舞ったフライトは、3年で一旦の終焉を。それから2年を共に10位という結果で終えると、クラブが16年ぶりに呼び戻した指揮官は、前身のNEC山形時代を知る石﨑信弘監督。シーズン序盤はなかなか結果が出なかったものの、「メッチャしごかれました」と宮阪政樹も苦笑する厳しい練習の成果が、3バックの採用と共に終盤戦へ来て一気に開花。先週のプレーオフ準決勝では、後半アディショナルタイムにGKの山岸範宏が決勝ゴールを叩き込むという、脚本家なら企画段階で突き返されるドラマチックなシナリオに導かれ、堂々とこのファイナルへ。2年ぶりとなる6位からの下克上完遂はもうすぐそこです。まっさらなピッチへ入場してきた22人の視界が捉えたのは、黄色と緑で彩られたコレオの真ん中にはためくエンブレムと、咲き誇る振り回しタオルマフラーの中央に浮かんだ2つのビッグフラッグ。歴史の証人は35504人。日本最高峰のステージを懸けた一戦は、千葉のキックオフでその火蓋が切って落とされました。


立ち上がりからピッチを支配する「プレーオフ独特の雰囲気」(石﨑監督)。4分は千葉。去年のプレーオフ敗退はベンチで迎えた佐藤勇人がCKを獲得すると、中村太亮が右から蹴ったボールは直接ゴールへ向かうも山岸がパンチング。5分も千葉。町田也真人が奪った右FKを中村が蹴るも、山岸がしっかりキャッチ。7分も千葉。中村、町田とボールが回り、谷澤達也が抜け出しかけるも、ここは「最初ははっきりしたプレーをするということをみんなに心がけさせた」という石井秀典が果敢なタックルで回避。「立ち上がりの入り方に非常に気を付けていた」(町田)千葉がスタートはやや攻勢。
9分は山形。「本当に勝ちたいという気持ちを持った方が勝つ」と言い切った石川竜也の左FKは山﨑雅人に届くも、シュートには至らず。13分も山形。再び左から石川が蹴ったFKはそのままファーに流れ、ここもフィニッシュには持ち込めず。「どうしてもなかなかボールを繋げないとか、お互いに蹴り合ってしまうとか、そういう所が今日のゲームは余りにも多過ぎたんじゃないか」とは石﨑監督。攻撃の時間が長いのは千葉。セカンドも含めたボールアプローチの速さは山形。15分を回っても両者に記録されないシュート。
19分は千葉。森本貴幸のポストプレーから、山口慶が右サイドで縦に付けると、運んだ幸野志有人は角度のない位置からシュート気味にクロスを上げるも、ボールはクロスバーの上へ。22分は山形。キム・ボムヨンが左からロングスローを投げ込み、こぼれを拾った石川のリターンをキム・ボムヨンが上げたクロスは、千葉のGK高木駿がファンブルしてCKに。千葉からすれば嫌な流れの左CKは、「スタメンは今日の昼の12時ぐらいまでわからなかったですけど、自分が入ってもやれるという自信はあった」と語る今シーズンの公式戦では2試合目のスタメンとなった林陵平のオフェンスファウルで回避。前半の半分を過ぎても訪れないフィニッシュ。
25分のファーストシュートは千葉の決定機。町田と谷澤の連携で手にした左CK。キッカーの中村が蹴り込んだボールは、中央でフリーになっていた166センチの町田へドンピシャ。「ちょっと来るような感じはしていたので、当たった感触は良かった」ヘディングはわずかに枠の左へ外れましたが、ようやく生まれたスリリングなシーンにどよめくスタンド。熱戦の導火線に火は点いたのか。
「お互いプレッシャーを掛け合う中で、アバウトでもDFラインの背後にというのは相手にとってストレスだと思うし、逆に向こうも裏に蹴ってきたことに対しても、ウチのDFラインや僕らはストレスを感じていた」と話したのは千葉において不動のボランチを務める佐藤健太郎。ある程度はいつもと違うスタイルでも、"背後"は一歩間違えればそのままチャンスに直結。「どうしてもこういう状況だと蹴り合うシーンが凄く多かったし、相手もこっちも中盤に当ててそこからというのはなかった」と林も振り返ったように、シンプルな縦の応酬が。
27分は山形。川西翔太が左へ振り分け、キム・ボムヨンが入れたクロスへ、成長著しい山田拓巳が突っ込むもオフェンスファウル。30分は千葉。右サイドで幸野が1人かわして中へ付けると、町田がトラップで前を向くも寄せた當間建文が確実にカット。33分は山形。宮阪が放り込んだ左FKから、フリーの山﨑がバックヘッドで狙ったシュートはクロスバーの上へ。35分は千葉。スローインの流れから中村が左クロスを強引に。小さいクリアに幸野が反応するも、滑ったキム・ボムヨンが目に入ったのか左足のシュートはヒットせず、山岸が丁寧にキャッチ。続く「本当にプレーオフの決勝というような、ゲームが落ち着かないような状態」(佐藤勇人)。
唐突な、故に狂喜。37分、石川、宮阪、キム・ボムヨンと3人が絡んで獲得したのは2本目のCK。スポットに立った宮阪の「太亮がゴールを狙って結構良いボールを蹴っていたので、ちょっと悔しかったから直接狙った」軌道は枠を捉えるも、高木が懸命にパンチングで回避。ただ、ボールは再び宮阪の足元へ。「そんなに中は見えていなかったけど、誰かに当たればと」右足で振り抜いたクロスを、中央で待っていたのは山﨑。ほとんどスタンディングで当てたヘディングは、右のポストを叩いてゴールネットへ転がり込みます。「最初は外れたと思ったので、喜ぶのがちょっと遅れたんですけど、最終的にはザキさんのゴールへの強い想いというか、そういうみんなの想いというのをボールに乗せてくれたんじゃないかなと思う」と宮阪も振り返った一撃。チームキャプテンの咆哮に、連なるチームメイトの咆哮。当然、その伝播はアウェイのゴール裏まで。「勝たなければJ1昇格がない」(石﨑監督)山形がスコアを動かしました。
「ウチの普段の感じではなかったけど、やられる感じはなかった」(山口慶)中で、ビハインドを追い掛ける格好となった千葉。43分には高い位置でボールを奪った谷澤が、そのままドリブルからミドルを放つもボールはクロスバーの上へ。逆に45+2分には山形にビッグチャンス。石川の左FKをファーで石井が折り返すと、飛び込んだ當間のヘディングはヒットせずに枠の左へ外れましたが、あわや2点目というシーンを。想像通りとも言うべき重苦しい最初の45分間は、山形が1点のリードを手にしてハーフタイムへ入りました。


後半のファーストシュートは青白。49分、キム・ボムヨンからのリターンを宮阪が左のハイサイドへ落とすと、最後方から駆け上がった石川の折り返しを川西がダイレクトで叩いたシュートはクロスバーの上へ越えるも、「オーバーラップも掛けたいし、攻撃の部分で貢献できたらと思っている」というベテランレフティの演出で、まずは山形がサイドから良い形を創出します。
52分は千葉。中村の右CKは山岸がパンチングで弾き出し、千葉が押し返したボールはオフサイドの判定。55分は山形。石川の左FKを石井が頭で折り返すも、高木がきっちりキャッチ。56分は千葉。左から中村が入れたFKを、ニアで山口智が薄く当てたヘディングは枠の上へ。59分は山形の好機。川西、當間とボールが回り、山田はヒールで繋ぐと、當間はエリア内へ侵入。シュートは山口智が何とかスライディングで回避しましたが、3バックの攻撃参加も出てきた山形は「連動して前の3人で行くというのをイメージしている」と林も話した前からの守備に関しても「後半はうまく前からプレスというのは行けていた」と宮阪が認めた通り、よりスムーズに。守備陣の攻撃も、攻撃陣の守備も、うまく噛み合い始めた山形に傾くゲームリズム。
60分も山形。石川の右CKは高木がキャッチ。62分も山形。石川が左の裏へフィードを通すと、縦に抜け出したキム・ボムヨンのクロスは高木が何とかセーブ。65分も山形。相手GKのキックを前に出てインターセプトした山田はそのままドリブル開始。谷澤と中村の間を果敢に突き進み、最後は谷澤のファウルで倒されたものの、J1を経験している生え抜きの25歳が披露する積極性。
その山田のサイドはこの一戦の重要なキーポイント。千葉のストロングは明らかに左サイドであり、すなわち中村のオーバーラップとクロス。それはもちろん山形も織り込み済みで、「去年一緒にやっていた太亮なんで、僕らは同い年だけど、負けたくないという気持ちは僕より強いものがあったと思う」と宮阪も認めた山田は、「とにかく今はチームが勝つために自分ができることをやろうと思っていた」とキッパリ。続けて「自分のプレースタイルとは今日はちょっと違ったけど、左サイドを抑えるという意味ではある程度合格点は与えていいのかなと思う」と言及したように、心中覚悟で中村を抑え込むことに成功します。
66分には目まぐるしい攻防。右CKを石川が蹴り込むと、高木のパンチングから一転、千葉の高速カウンター。右サイドで谷澤が繋ぎ、受けた幸野は左へ大きくサイドチェンジ。町田と松岡亮輔は1対1。町田のカットイン、カットイン。一瞬置いて狙ったシュートは、しかし松岡が体でブロック。こぼれたボールも松岡が大きくクリア。コンディション不良でプレーオフ準決勝を欠場したボランチが、必死の対応で危機回避。スコアは変わらず。残された時間はあと20分。
73分は山形。中村とのパス交換でファウルをもらったのは「『自分が自分が』と難しいことをするのが頑張るということではなくて、周りをうまく使いながら良いポジションを取ってとか、それを連続しさせていくことがチームとして望ましいと思う」と語る佐藤健太郎。中村の左FKをニアで森本がフリックすると、松岡が懸命にクリア。拾った佐藤勇人が戻し、山口慶の右クロスに山口智が宙を舞うも、最後はしっかり競りに行ったキム・ボムヨンがオフェンスファウルを奪って危機回避。この一連を受けて、「後半の途中から千葉の左サイドの谷澤と中村の所で崩しが入ってきたので、それに対してこのままではやられるかなと」判断した石﨑監督は、両チーム通じて初めての交替を決断。殊勲の山﨑を下げて、ロメロ・フランクをそのままシャドーに投入し、サイドのケアにも余念なし。
76分に川西のパスから宮阪が思い切ったミドルを枠内へ飛ばしたシーンを見届け、関塚監督もようやく1人目の交替に着手。77分、町田に替わってピッチへ解き放たれたのは切り札のケンペス。リーグ戦13ゴールとチームのリーディングスコアラーでもある9番に託された、昇格へと続く扉を開けるために必要なゴールという名の鍵探し。
78分は千葉のビッグチャンス。中村の左FKはクリアされましたが、相手ボールを山口智が高い位置で奪い返すと、そのまま中央へ。走り込んだ谷澤のミドルは枠を捉えるも、山岸が横っ飛びで掻き出すと當間がヘディングで間一髪のクリア。79分も千葉。ケンペスが粘って取った右CKを中村が入れるも、林が高さを生かして確実にクリア。80分も千葉。中村が左サイドで縦に送り、走った谷澤がエリア内で仕掛けるも、當間が何とかスライディングでクリア。そのCKを中村が放り込み、キム・ヒョヌンが高い打点のヘディングで叩くも、混戦から石井が大きくクリア。残された時間はあと10分。
2人目の交替は先に千葉で85分。幸野と田中佑昌のスイッチで、サイドのギアを大きくチェンジ。後に山形で87分。松岡と舩津徹也のスイッチで、中盤のパワーとスピードを再度増強。89分は千葉。森本、ケンペスと2トップが絡んだお膳立てのパスに谷澤が走り込むも、飛び出した山岸が大事にキャッチ。「後半15分くらいから普段足が攣らない俺も攣ってきましたからね。攣らない俺が何でこんな攣ってんだと思った」という林もこの時間で前線から必死のチェイス。アディショナルタイムは4分。J1か、J2か。その明確な境界線はあと240秒とわずかで。
90+1分は山口智もキム・ヒョヌンも含め、「最後はみんなヘディングの強い選手が上がって来ての放り込み」(石井)に打って出た千葉の決定機。飛び出した山岸より一瞬早くボールに触った森本が右から折り返すと、反転したケンペスがきっちり枠内へ収めた左足シュートは、しかし全力で戻った山岸がファインセーブで仁王立ち。拾った谷澤は4人のDFが囲い込み、何とかクリア。直後も千葉のフィニッシュ。田中が相手のクリアを頭で差し戻し、ケンペスが競ったこぼれを山口智がエリア内へグラウンダーで。マーカーを弾き飛ばした谷澤の反転シュートは、ここも山岸ががっちりキャッチ。「今年は浦和でなかなかチャンスが掴めなくて、言葉は悪いかもしれないですけど、モンテディオ山形に拾ってもらった感じはある」と準決勝後に語った守護神のオーラは、試合前にゴール裏を包んだビッグフラッグの炎そのもの。「本当に彼がチームに入ってくれたおかげで一つにまとまった」と指揮官も認める山岸を中心に、途切れない山形ディフェンスの集中力。90+2分には最後の交替カードとして走り切った川西をイ・ジュヨンに入れ替え、きっちりと時間を使いながら待ち侘びるその瞬間。
佐藤勇人が大きく蹴り出し、ケンペスが頭で繋いだボールに山口智が反応するも、石川と石井が2人でカバーに入り、ボールがゴールラインを割った94分30秒、味の素スタジアムを切り裂いたファイナルホイッスル。「サッカーには技術とか戦術とか体力とか色々な要素があると思うが、その中で特にこの終盤にかけて選手が良くなってきたのは、その戦う気持ちの所。今の山形の選手はJ1に出したら技術、戦術の所でかなり劣ると思うが、"戦う"部分に関してはどこよりも強くなったんじゃないかなと思う」と石﨑監督。調布の空に響き渡る山形の凱歌。6位でプレーオフへ滑り込んだ青白の侍が、虹の向こうに待っている4年ぶりのJ1復帰を勝ち取る結果となりました。


「この1年間戦って、本当に色々な選手が試合に出たんですけど、全員がハードワークした結果、J1昇格という形に繋がったんじゃないかなと思います」と石﨑監督が話した通り、山形の昇格はまさにチーム力の勝利だったと思います。この一戦のキックオフをピッチで迎えた11人の内、開幕戦にもスタメン出場していたのは4人のみ。今や欠かせない戦力となった山﨑と川西の2シャドーも、スタメンに定着したのはチームが3-4-3を基本布陣にシフトした9月からであり、3バックの中央を務め上げた石井もリーグ初スタメンは22節でようやく。「ディエゴの代わりをよくやってくれたんじゃないかと、本当に彼以上の仕事を今日はしてくれたと思う」と指揮官から名指しで賞賛された林に至っては、昨シーズンに負ったケガの影響もあってリーグ戦のスタメンは1試合もありませんでした。ただ、その林が「どんな時も真摯に取り組んできたから今日90分ピッチに立てたかなと思うし、自分の力というか、それは色々な人の支えがあったんですけど、そういうのが今日のピッチを引き寄せたと思うので、これからの教訓になると思います」と笑顔を見せれば、石井も「常に試合に出られない時でも、僕自身がまずは腐らず、どんな状況でもしっかりやるというのは意識してやっているので、そういう姿を見て、たぶん今は出ていない選手もそういったモチベーションでやってくれていると思う」とキッパリ。そして彼らがそういう姿勢でトレーニングに臨んでいたのは、おそらく「選手のサッカーに取り組む所というのを一番大事にしていきたい。サッカーを上手になりたいとか、試合に勝ちたいとか、さらに上のレベルに行きたいとか、そういう気持ちの部分を強く持ってもらわないと」という想いで指導に当たる指揮官を見ているから。「来週も凄い練習をすると思うんですけどね」と苦笑いしながら宮阪が口にした練習の先に待つ今年最後の大一番が終わった横浜の空に、再び山形の凱歌が上がっていても、決して不思議ではありません。      土屋


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DSC_0622.jpgファイナルへ行けるか、行けないか。90分後に訪れる結末はわずかにこの2つのみ。サックスブルーとモンテブルーの相克は前者の聖地・ヤマハスタジアムです。
18勝13分け11敗の4位。94年にJリーグへ参入して以来、初めてJ2を戦う1年となった2014年シーズンは茨の道。確固たる信念に貫かれた湘南と松本に自動降格を許し、最終節では千葉にも追い抜かれ、4位で昇格プレーオフへ回ってきた磐田。5年ぶりの日本帰還となったペリクレス・シャムスカ監督は既に前任者。苦境の中で新指揮官に就任した名波浩監督も、初采配となった愛媛戦こそ勝利で飾りましたが、最後は6試合未勝利でレギュラーシーズン終了と、チームに劇的な変化をもたらすまでには至らず。最後のホームゲームとなるこのセミファイナルは、色々なものを払拭するラストチャンスです。
18勝10分け14敗の6位。3シーズン経験したトップディビジョン陥落から早3シーズン。今年は前身のNEC山形時代にも指揮を執っていた石﨑信弘監督を16年ぶりに呼び戻し、6位で堂々とこのプレーオフへ進出してきた山形。中盤戦までは二桁順位が定位置だったにも関わらず、百戦錬磨の名将に率いられたハードワーク軍団は夏過ぎから一気にスパートを掛け、大外からまくってプレーオフ圏内へ。勢いを削がれかねない最終節の敗戦も、ベストメンバーで臨んだ水曜日の天皇杯で千葉に勝ってきっちりリカバー。4日前と同じ「勝ち抜かなくてはいけない、勝ち切らなければいけない」(山岸範宏)セミファイナルで、4日前と同じ結果を手に入れるための準備は整っています。スタンドはアウェイゴール裏の一角を除いて鮮やかなサックスブルー。勝利だけを求める11,239人の観衆が見守る中、天下分け目のセミファイナルは山形のキックオフで幕が上がりました。


先にチャンスを掴んだのは山形。2分に山田拓巳が右サイドで獲得したFK。石川竜也が蹴ったボールは、磐田のGK八田直樹にキャッチされましたが、3分にも久々のスタメン起用となったロメロ・フランクがCKを獲得すると、宮阪政樹が左から蹴り込んだキックも八田のパンチングに阻まれたものの、「どっちも強いのでチャンスになるとは思っていた」と石川が話すセットプレーから2つのチャンスを創出します。
一方の磐田もまずはセットプレーから窺うチャンス。4分には伊野波雅彦のフィードに走った山崎亮平が右CKを奪い、小林祐希のキックは川西翔太がニアでクリアするも好ボールを。9分にも小林の右CKを、森下俊の離脱を受けてCBを託された藤田義明が折り返し、最後はDFにクリアされましたが、少しずつ勢いを持って立ち上がったのはホームチーム。
すると、10分にはその磐田に決定的チャンス。左サイドで前田遼一と山崎が絡み、SBの岡田隆が上げたクロスはこぼれるも、エリア内で山崎が強引に持ち込んだシュートは、山岸が素晴らしい反応でファインセーブ。13分にも右サイドで松井大輔が一旦奪われたボールを執念で奪い返し、駒野を経由して小林が右足で放ったミドルは枠を捉えられませんでしたが、フィニッシュまできっちり取り切る磐田の攻勢。
14分の決定機は山形。中央でボールを受けた川西は前を向き、少しドリブルで運びながら右へスルーパス。「當間くんから良い声もあって、なるべく自分が前に行けるように声も出してくれていた」という山田がそのまま狙ったシュートは飛び出した八田が体でセーブしましたが、「この前の試合と同じような形。翔太くんから良いボールが来ているのでアレは本当に決めなくてはいけなかった」と山田も振り返ったように、4日前の決勝ゴールとまったく同じ流れから、ワンチャンスの脅威を磐田のディフェンスラインへ突き付けます。
一進一退。21分は磐田の怒涛。序盤からそのドリブルがアクセントになっていた山崎を起点に小林が中へ繋ぎ、宮崎智彦のミドルは山岸が懸命にセーブ。こぼれに突っ込んだ前田のシュートも山岸が弾き出し、再び山崎が枠へ収めたシュートも山岸が体でブロック。「チームメイトには『自分たちは失うものは何もない。とにかく自分たちらしさをピッチの上で思い切り出そう』ということは伝えた」という守護神がここはゴールマウスに仁王立ち。24分は山形。中盤でボールを拾ったロメロ・フランクが、ドリブルから左足で狙ったミドルは枠の左へ。膠着に近い状況下で、少しずつアウェイチームにも躍動感が。
歓喜と沈黙が同時に訪れたのは26分。左サイドでキム・ボムヨンが中へ入れたボールを、藤田と連携が取れなかった八田のクリアはディエゴにヒット。このボールを右サイドで拾った山田は「相手もあまり揃っていない中でディエゴが見えたので、タイミング良くシンプルに上げた方が良いなと思って」そのままクロス。中央で待っていたディエゴがヘディングで叩き付けたボールは、ゴール右スミへ弾み込みます。歓喜のアウェイゴール裏と、沈黙のそれ以外すべて。「チームの戦術の柱」と山岸も認めるエースの先制弾が飛び出し、山形がファイナルへ向けてわずかに一歩抜け出しました。
失点を受けて前に出るしかなくなった磐田は31分、松井のパスから宮崎がシュートフェイクで中へ。小林のシュートがDFに当たったリバウンドへ山崎が反応するも、果敢に飛び出した山岸が一瞬早くボールに触ってオフェンスファウル。36分は山形。川西が右サイドへ振り分けると、ここも上がってきていた山田のクロスは伊野波雅彦が何とかクリア。38分も山形。キム・ボムヨンが粘り強くボールを右へ回し、ディエゴのグラウンダークロスは山﨑も一歩及ばず。40分は磐田。スタメンに抜擢された田中裕人のパスから、宮崎が叩いたミドルはDFをかすめてゴール右スミを襲うも、飛び付いた山岸がファインセーブで回避。41分も磐田。小林、山崎、松井とスムーズなパス交換が行われ、走りこんだ駒野友一の左足ミドルは枠の上へ。出し合う手数。次のゴールは果たしてどちらに。
45分は山形に絶好の追加点機。ショートカウンターから山﨑のミドルパスをトラップした川西は、もはやホットラインとも言うべき山田へシンプルに。その山田のクロスをエリア内で収めたディエゴは、素早い反転から左足一閃。ゴールへ向かったボールは、しかしポストに弾かれてピッチへ戻ってくると、アディショナルタイムに沸騰したヤマハ劇場。
45+2分、右サイドから駒野が中央へ優しく転がすと、ここで待っていたのは再三ミドルにトライしていた宮崎。「後ろ3枚の内の余っているディフェンダーがいるし、チャンさん(石井)がそこには俺たちが行くからということを言ってくれていたので、ある程度ケアはできていたんですけど」とは宮阪ですが、ポッカリ空いたバイタルで宮崎が打ち切ったミドルはDFに当たってラインの裏へ。いち早く反応していた山崎が、左へ流れたボールをきっちりゴールへ流し込みます。「やはり笛が鳴るまで集中して戦わなくてはいけない場面だったと思う」と石﨑監督。ほとんどラストプレーで磐田が1点を強奪し、タイスコアで最初の45分間は終了しました。


息を吹き返した磐田のラッシュ。47分に駒野が入れた左FKはDFに跳ね返されるも、直後の左CKも駒野が高精度のボールを中央に送り込むと、藤田のヘディングは何とか山岸がキャッチ。51分に小林が右サイドから全力で叩いたボレーミドルは、山岸を越えてから急降下してクロスバーに激しくヒット。52分にも松井が残し、小林が左に流れながら放ったミドルは山岸がキャッチ。54分と55分の連続CKを経て、56分にも粘って粘って運んだ山崎が左へ送り、シザーズから前田が打ったシュートは枠の右へ。「後半の立ち上がりというのはほとんど相手に攻め込まれていた」と宮阪。滲ませるJ1への強烈な執念。
山形へのさらなる追い討ちは57分。「ハーフタイムに右のモモ裏に違和感があると聞いていて、やってみるけどダメだったら早めにということだった」(石﨑監督)ディエゴが、自らピッチへ倒れ込んでプレー続行不可能に。同じポジションには中島裕希が投入されましたが、リーグ戦14ゴールのトップスコアラーを欠いた中で、絶対に1点が必要な30分近い残り時間を強いられます。
集まった山形イレブン。「ディエゴが交替するタイミングで担架が入って間があったし、後半始まってそれまでがジュビロのプレッシャーをかなり受けながらのゲームだったので、『1回チームがまとまって、まずはシンドイけどこれを耐えて、ゲームを落ち着かせよう』と。ただ、ディエゴはチームの戦術の柱なので、彼が交替してしまうことによってチームメイトの精神的なダメージをとにかくなくそうとは思いました」と山岸が話せば、「『慌てないで行く』ということと『1点取りに行くんだぞ』ということは言っていた」と宮阪。確認し合った自らの意思。
61分は山形。山田、山﨑とボールが回り、中島のシュートは左へ逸れてタッチラインを割りますが、これが山形にとっては後半のファーストシュート。63分は磐田。セットプレー崩れから石井秀典が中盤のラインでボールを失うと、GKの位置を確認して50m近い距離から狙った小林のロングシュートは戻った山岸がキャッチ。「やられる感じはあまりなかったけど、なかなか点を取れるチャンスはないなと思っていた」とは石川が話したように、ゲームリズムは変わらず磐田。
石﨑監督の決断は67分。山﨑に替えて送り出したのは伊東俊。「トリッキーでスピードのある選手を入れれば、磐田もディフェンスラインが疲れていたし、チャンスが生まれるのではという狙い」で送り出された10番が、すぐさま決定機を創出したのは73分。自らを起点に発動したカウンター。山田、伊東、中島とテンポ良く繋がったパス回しから、伊東は完全に抜け出して1対1を迎えましたが、抜群のタイミングで間合いを詰めた八田が今度はビッグセーブで仁王立ち。頭を抱えたイレブンとベンチとゴール裏。スコアボードの数字を変えられません。
74分に名波監督は2枚替えを断行。いつも以上に闘志剥き出しで戦っていた松井と田中を下げて、松浦拓弥とフェルジナンドをピッチへ解き放ち、"ドローでもOK"という15分間へのマネジメントを。「同点ではウチはその時点で終わりだった」石﨑監督は、77分に最後の交替を。ボランチで奮闘したロメロ・フランクを下げて、萬代宏樹を中島と並べる2トップの一角へ投入。その下に川西と伊東を配し、中盤は宮阪のワンボランチにして、「リスクを冒して点を取りに行く」姿勢を鮮明に。
78分は磐田。小林の横パスが宮崎を経由し、フェルジナンドの強烈なミドルはクロスバーの上へ。81分も磐田。駒野の左FKを藤田が合わせたヘディングは枠を捉えるも、山岸が決死の超ファインセーブでボールはポストに。84分も磐田。キム・ボムヨンの中途半端なクリアを拾ったフェルジナンドが、躊躇なくミドルレンジから狙ったシュートは當間建文がブロックして枠の上へ。止まることなく刻まれていく時間。残されたのは5分間とアディショナルタイムのみ。
86分は山形。キム・ボムヨンの左ロングスローは混戦も、宮崎が大きくクリア。87分は名波監督も3枚目のカードを。MVP級の活躍を見せた山崎が下がり、戦列へ帰ってきた白星東に託されたゲームクローズ。チャンスらしいチャンスもないまま、経過していく時間にも「僕自身は意外と落ち着いていられたというか。何でわからないですけど」と宮阪が話し、「シーズン中も後半持たれるというか、押される試合はたくさんありましたし、そこで最近はある程度耐えられているので、そんなに不安はなかった」と山田。掲示されたアディショナルタイムは4分。すべてはあと240秒で。
石川が放り込んだボールに伊東と八田がもつれ、岡田が懸命に掻き出したCKは90+2分。「コーナーになった時にタツさんの方を見たら、『オマエが蹴りに行け』みたいなジェスチャーをされたんですけど、僕が蹴るよりもタツさんが蹴った方が絶対良いと思ったので、『タツさんが蹴りに行ってください』とは言いました」と宮阪。コーナースポットに向かう石川は「この前の天皇杯のCKみたいな、ゴールから離れた所で合わせようかなとは思っていた」とイメージを。中央には「とにかくドローでは我々が敗退というレギュレーションだったので、残り時間でチームとして、チームの勝利のために自分が何ができるかという所で、何も考えずにゴール前に行った」背番号31の姿も。
「本当決まって欲しいという気持ちを籠めてボールを蹴りました」(石川)「相手のフリーマンの前に飛び込んで行こうと思ったら、ポンっていたんですけど、とにかくすらせてコースを変えれば中で何かが起こると思って触った」(山岸)「ちょうど僕は後ろにいたので軌道が見えていて、触った瞬間には入るなという感じだった」(山田)「ゴールに吸い込まれていくとは思わなかったので、入った瞬間はまったく自分では見えていなかった」(山岸)「点で合ったし、ボールの軌道もあそこに入っちゃうんだという感じ。なかなかあんな所に普通は飛ばないですからね。普通じゃありえないから」(石川)「『ホントか』と。まさかとは思いましたけど、興奮し過ぎて何が何だかわからなかった」(山田)「一番後ろで見ていたと思うんですけど『ああ、スゲーな』と」(宮阪)「ちょっと笑っちゃった」(石川)「ボールがゴールの中に静止している所を見たらみんなに潰されていたので、『入ったんだな』と思いました。人生で初めてなので、本当はゴールを取った後に走れたりしたらカッコいいんでしょうけど、そういうのにまったく慣れてなくて、ただただうつ伏せになっていただけでした(笑)」(山岸)。「みんなの気持ちが乗り移ってゴールに吸い込まれたと思います」と指揮官も話した決勝弾は、おそらく世界でも類を見ないGKによるサヨナラ逆転ゴール。山形がファイナルへと駒を進める結果となりました。


「いつもイシさんが『サッカーは何が起こるかわからない』と言っていた」と宮阪が話した通り、サッカーの美しさと怖さが恐ろしいまでに凝縮された90分間と4分間だったと思います。「今日の90分を通して内容を振り返るだけのメンタリティではないので、細かいことは割愛しますが、"奇跡を呼ぶ力"が山形にはあって、僕らにはその力がなかったということだと思います」という名波監督の言葉だけですべては十分かなと。勝ったのは山形。「僕らはまだ何も掴んでいないですし、何も決まっていないので、また1週間良い準備を、勝つための準備をして、味スタでまた千葉から勝利を掴みたいなと思います」と力強く語ったのは山岸。12月7日、15時30分。味の素スタジアム。ジェフユナイテッド千葉とモンテディオ山形がJ1昇格へ残された最後の切符を懸けて戦います。     土屋


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J2第42節 京都×岐阜@西京極

November 25, 2014 12:02 AM | » permalink

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1123kyoto.jpg様々な想いが重なり合うシーズンの42試合目。8位の京都と18位の岐阜が、掛け値なしの勝ち点3のみを目指して対峙する一戦は西京極です。
2年連続3位という十分過ぎるほどの成績を残しながら、2年連続で"プレーオフ"という魔物に飲み込まれる格好で昇格を阻まれてきた京都。3度目の正直を期して迎えた今シーズンは、バドゥ監督の下で昇格プレーオフ圏内ラインを上下する順位が続くと、18節でクラブはその指揮官の解任という決断を。後任に就いた地元出身の川勝良一監督は「ここ5、6試合見ていても安定的にゲームができているし、90分最後まで戦うというのが出てきたと思う」とチームへ小さくない変化をもたらしたものの、一度も昇格プレーオフ圏内へは浮上することなく、勝利した前節の長崎戦後に来シーズンの昇格の可能性は消滅しました。ただ、そんな状況下でも確かな熱量を持つサポーターが集結した最終節は勝利のみが求められる一戦。紫の誇りを懸けた90分間に挑みます。
21位という順位で何とか残留を果たしたのは1年前。日本サッカー界が誇るカリスマ指揮官のラモス瑠偉監督に率いられ、確実に意識とプレー面での改革が進み、ホームの観客動員をとってみても昨年の2倍近くに跳ね上がるなど、新たなクラブに生まれ変わりつつある岐阜。第36節から悪夢の5連敗で順位を大きく落としましたが、前節のホーム最終戦では昇格を決めている松本に3-1で快勝。既に引退を発表している木谷公亮と美尾敦のサッカーキャリアを笑って締め括るためにも、このゲームを落とす訳にはいきません。試合前のピッチでは幼稚園生や小学生が芝生の上でボールを蹴り、キッズチアの女の子たちも華麗なダンスを披露。勝利と同じくらい大切なものは、次世代へ繋ぐ明確なバトン。10717人が見つめる中、今シーズンのラストゲームは岐阜のキックオフでスタートしました。


先にこの一戦への意欲を打ち出したのは岐阜。4分に高地系治が左から蹴ったCKは酒井隆介にクリアされましたが、5分にもやはり左から高地が入れたCKは関田寛士まで。ヘディングはヒットせずに、京都のGK杉本大地がキャッチ。7分にも高地とのワンツーからナザリトが単独で抜け出し、GKともつれながらエリア内で転倒したプレーはノーホイッスルだったものの、直後の右CKも高地が鋭いボールを蹴り込むなど、まずはシンプルにハイサイドを取った岐阜がペースを掴みます。
9分には岐阜に最初の決定機。難波宏明のシュートはDFにブロックされるも、宮沢正史がヘディングで前方に送ったボールは比嘉諒人へ。シュートは体を投げ出した杉本がファインセーブで回避しますが、惜しいチャンスを創出。11分は京都もボランチに入った駒井善成が右へ振り分け、工藤浩平のクロスをファーでドウグラスが折り返すも、DFがきっちりクリア。12分は再び岐阜。難波が左足のミドルを枠の左へ。流れは変わらずアウェイチームに。
16分には京都にファーストシュート。石櫃洋祐の左CKは跳ね返されるも、大黒将志が拾って左へ。石櫃が再度上げたクロスに、右SH起用となったドウグラスが得意のヘディングで飛び込むと、ボールはクロスバーを越えたもののようやく1つフィニッシュまで。「最初は付き合っちゃってウチもロングボールが多くて、その中でちょっとバタバタした」(工藤)立ち上がりを経て、やはり工藤が「相手のプレッシャーを避けられたのがそのくらい」と振り返った15分前後から、ようやくボールが回り始めた京都にも攻撃のリズムが。
20分は京都。石櫃の左CKはヘニキがクリア。21分も京都。石櫃が左から蹴ったCKは、ニアへ駒井が突っ込むも頭にしっかり当たらずゴールキックに。22分も京都。石櫃が速いボールで放り込んだ右FKは、岐阜のGK川口能活が何とかキャッチ。直後も京都。伊藤優汰が左サイドをドリブルで運び、そのまま放ったシュートは枠の左へ外れるも、流れの中から初めてのフィニッシュが。28分も京都。駒井が左へ展開し、比嘉祐介が裏を狙ったスルーパスは、読んでいた木谷が懸命にクリア。「徐々に相手も下がって、ボールも回ったかなと思う」と話す工藤と駒井を中心に、ボールがしっかり動く京都へ傾いたゲームリズム。
ややロングフィードというよりは単調なクリアが増え、なかなか攻撃の手数を出せなくなった岐阜のチャンスは30分。駒井と比嘉祐介がお見合いしたボールを比嘉諒人がかっさらってドリブル開始。必死に戻った比嘉祐介と比嘉諒人が1対1で向き合った"比嘉対決"は前者に軍配が上がりましたが、一瞬の隙を見逃さずに突き付けた鋭利なカウンター。ゴールの可能性を感じるチャンスは岐阜が多く創ります。
33分には見応えのある局面が。中央でボールを持った工藤は「常に狙っていて欲しいと思っているし、それで点になる」という大黒へのスルーパスを敢行。大黒も素晴らしい動き出しで裏を完全に取っていましたが、ここはCBでパートナーを組む木谷も「ポテンシャルだけ考えたらJ2にいる選手じゃない」と評価する関田がギリギリでカット。35分は岐阜のビッグチャンス。益山司が右からフィードを送ると、受けた難波はヒールで後方へ。走り込んだ高地の枠内シュートは杉本がワンハンドのファインセーブで応酬するも、やはりゴールへの迫力で上回るのはアウェイチーム。
38分は京都。カウンターから工藤が左へ流すと、「特にウチの右サイドの方には結構グイグイ来る選手もいた」と高地も言及するなど、果敢な突破へのチャレンジが目立っていた伊藤がここもドリブルシュートを枠の左へ。41分は岐阜。益山が縦に付けたボールを、高地は2人の間に絶妙のソフトパス。ヘニキのクロスは石櫃に弾かれるも、エリア付近でのコンビネーションは良好。45+3分は京都。中盤を完全に制圧した工藤がドリブルから右へラストパスを通し、右に流れながら駒井が打ったシュートは川口がキャッチ。基本的には膠着した展開ながら、京都も少しずつ盛り返したものの、わずかに岐阜がゲームリズムを手にしていた前半は、スコアレスのままでハーフタイムへ入りました。


泣いても笑ってもシーズン最後の45分間に、躍動感を持って入ったのは「全員が木谷選手や美尾選手のためにいい結果を残したかったし、勝利をプレゼントしたかった」とラモス監督も話した岐阜。47分、高地の右FKは杉本がキャッチ。51分、高地が右からショートで始めたCKを、森勇介が返したボールは高地のオフサイドを取られましたが、紙一重の好連携。52分、益山を起点にヘニキが右へ送ったボールを、難波は左足で中央へクロス。ナザリトのワントラップシュートは枠の左へ外れたものの、「監督からも入り方のことを言われていたので、たぶんそこを全員でしっかりやろうというので、ああいう風にできていた」と高地も認めたように、岐阜がゲームリズムを持って後半がスタートします。
逆に「セカンドボールの潰し合いで負けていた」と工藤も話した京都は、前へと出て行くパワーが打ち出せずに得点ランクトップを独走する大黒も孤立気味に。55分と57分に石櫃が続けて放り込んだFKもシュートには繋がらず、61分に駒井がドリブルから繰り出したスルーパスに大黒が反応するも、「ちょっと目を離したらいつもオフサイドラインギリギリの所を狙っているので、その逆にこっちも意識すればオフサイドになるし、そういう意味ではオフサイドもいっぱいあったからやっていて楽しかった」とその大黒との駆け引きを振り返る木谷のラインコントロールがわずかに優り、大黒がオフサイドに。最終ラインで繰り広げられるギリギリの攻防は見応え十分。
沸いたスタンド。ラモス監督の決断は2枚替え。難波宏明と森勇介の替わりにピッチへ駆け出したのは、遠藤純輝と美尾敦。京都に在籍していた美尾には試合前にも大きな拍手が送られていましたが、交替時には両ゴール裏のみならず、メインスタンドからもバックスタンドからも大歓声が。美尾の引退試合は61分にキックオフを迎えます。
62分は岐阜。ナザリトのポストプレーを受け、高地がミドルレンジから狙ったシュートは枠の右へ。63分も岐阜。ルーズボールを収めたヘニキが、思い切って打ったミドルは枠の右へ。シュートこそ外れたものの、「しっかり繋ぐのか弾くのかというのは大きいと思う。質というか弾き方も相手の嫌な所に弾くというか、相手はそういう所が上手かった」と工藤が言及したように、ヘニキが披露した効果的なセカンドへの対応もあって、続く岐阜のペース。
なかなか攻撃のギアが上がらない京都でしたが、「ここで5チーム目だけど、京都で監督をしたことは物凄い印象に残る半年というか、選手が本当に素直で明るいし、いいまとまりを持っているのでね」と語る川勝監督の采配ラストゲームで、このまま引き下がる訳には行かず。70分、ドウグラスが左へ送ったボールを伊藤が中央へ戻し、駒井のミドルは枠の左へ外れましたが、ようやく後半最初のシュートが記録されると、71分にもカウンターからドウグラスが右へ送り、工藤のクロスは木谷がクリア。72分に石櫃が蹴った右CKはナザリトにクリアされますが、掛かり始めた前へのエンジン。
すると、74分には決定的なシーンが。工藤と共にボールへよく絡み、京都のアタックを牽引していた駒井が右へ展開したボールを、受けた石櫃は浮き球でマーカーをかわしながら中央へ。良い位置で待っていた大黒がフリーで放ったダイレクトシュートは、しかしクロスバーの上へ消え、絶好の先制機もゴールを陥れるまでには至りません。
78分は京都。伊藤の右FKがこぼれると、拾った工藤は柔らかいロブでラインの裏を狙うも、大黒の目前で飛び出した川口が何とかキャッチ。78分にラモス監督は最後のカードとして、左SBへポジションを移していた比嘉諒人と野垣内俊をスイッチ。80分は京都。石櫃の左FKへ飛び込んだドウグラスのヘディングは、川口がしっかりキャッチ。81分は岐阜。右サイド、ゴールまで約25mの角度のない位置から、ナザリトが直接狙ったFKはわずかにクロスバーの上へ。同じく81分には川勝監督も1人目の交替を。比嘉祐介に替えて三平和司を投入し、1点を取りに行く姿勢を鮮明に。今シーズンもいよいよ残りは10分間とアディショナルタイムへ。
83分は京都。石櫃の右CKにニアへ飛び込んだ大黒のヘディングは、叩き付け過ぎて枠の右へ。85分は岐阜。ヘニキがさすがのボールカットから反転し、少し運んで打ったミドルはクロスバーの上へ。直後も岐阜。ナザリトのパスを引き出した美尾は、タイミングを計ってスルーパス。走った遠藤の目前で石櫃がクリアしましたが、美尾のセンスはやはり秀逸。双方がスコアを動かせないまま、刻々と近付いてくる別離の時。
89分の決定機は岐阜。高地が浮かせたボールを遠藤が執念で残すと、後方から走り込んだナザリトはそのままかっさらって縦へ。間髪入れずに繰り出したシュートは枠を捉え、あらゆる人が息を呑んで見守るスタジアムに響いたのは、ボールとクロスバーが奏でる乾いた金属音。惜しいシーンは何度も生み出すものの、どうしても1点が奪えません。
90+1分は京都。別格のパフォーマンスを披露し続けた工藤が左へ送り、ドウグラスが上げたクロスを左足で叩いた大黒のボレーはクロスバーの上へ。「いつもどんな練習をやっても楽しそうにボールを蹴れるとか、そういうのをもっともっと若い人も観てほしい。こっちも勉強になったし、尊敬できる選手の1人」と指揮官も評した大黒も、この日はゴールを奪えず。
90+2分は岐阜。益山が右から投げ入れたロングスローは中央で混戦を生み出すも、反応していた美尾もシュートは打てず。90+3分は京都。石櫃が左から蹴り込んだFKも中央で混戦になりましたが、岐阜の中ではチーム最古参となった野垣内が大きくクリアすると、程なくして松尾一主審が吹いたのは様々な終わりを告げるホイッスル。「0-0だったけど勝ってもおかしくなかったし、またはどこかでやられたら負けてもおかしくなかったというか。良い試合だったんじゃないですか」と木谷が話したように、どちらにも勝つチャンスのあったリーグ最終戦はスコアレスドロー。両者が勝ち点1ずつを分け合う結果となりました。


「選手たちも最後のゲームを勝って終わりたいということで、90分良く戦ってくれたと思います」と教え子たちを称えた川勝監督。「最後も今季の京都らしい結果で勝ち切れなかったけど、後半戦は3回しか負けていないとか、負けない強さが徐々に浸透したりとか、選手も闘う姿勢とか、いい集団だけども勝負事に対しての意識も変わったりだとか出てきたと思う」と手応えも口に。それだけに「京都がいつか強いチームになってくれるという基盤を本当は創りたかったけど、もうちょっとやりたいというのが素直な気持ち」と本音も口にされていました。また、選手へのメッセージを問われ、「大好きなものをやらせてもらうのに手を抜くとか、その日の気分でやるとか、日本人だから照れもあると思うけど、そういうのには違和感がある。やっぱり好きなモノは時間を忘れて熱中すると思うし、子供の時からの競争で限られた人がプロに入ってきているという、最初の原点を常に忘れないでいて欲しい」と語った言葉はまさに至言。川勝監督が率いてきた"6ヶ月"を今後に生かせるかどうかは、来季以降のチームに課された大きな宿題と言えそうです。
ラモス監督の就任初年度は17位という数字が残った岐阜。「全体のことを考えると、5連敗以外はすべてうまく行ったのではないかなと。勝ち切れない試合が残念ながら3つか4つはあったし、ここに負けてはいけない所で負けちゃうとか。でも、来年改善する所は大体分かっているけどね」とその指揮官。来シーズンへの道筋は大枠で見えてきているようです。そして、試合後にはアウェイでも少なくない人数で声援を送り続けたサポーターの前で、現役生活を終えたばかりの美尾と木谷の胴上げも。トラメガでのメッセージを問われて「『ありがとうございました』って。『FC岐阜をこれからもよろしく』ぐらいしか言ってないですけど(笑) 胴上げもいつ落とされるかって(笑)」といつも通りの雰囲気で答えたのは木谷でしたが、その彼も「もちろん去年からも大きく変わったし、良い若い選手もたくさんいるので、ベテランと若手がうまくミックスされればもっともっとよくなると思うし、今年はなかなか順位も期待通りという訳には行かなかったですけど、これからの飛躍の土台になった1年になったと今後思えればいいんじゃないですか」とチームにエールを。激動とも言うべきこの1年が飛躍の土台にできるか否かは、今後の彼ら自身に託されています。       土屋

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DSC_0099.JPG一段と冷え込み、いつ雨が降り出してもおかしくはない天候の中で行われた2014Jリーグヤマザキナビスコカップ決勝。前年まで聖地・国立で繰り広げられていた熱戦は、埼玉スタジアム2002へ舞台を移した。
リーグ2連覇のサンフレッチェ広島は主力選手が移籍。1からのチーム作りとなった今季はリーグ戦で苦戦を強いられているが、今大会では初優勝を狙う。そして7年ぶり2度目の優勝を狙うガンバ大阪はJ1復帰1シーズン目。リーグ戦序盤は苦しみながらも、W杯中断期間を経て覚醒。現在、残り3節で2位と、J1昇格1年目のチームが3冠を狙える位置に付けている。念願のタイトルを獲得するのはどちらのチームか。広島ボールで前半キックオフ。


森保監督が「試合前から程よい緊張感とリラックスを持って臨んでくれた」と話したようにチーム全体が集中し、素早い攻守の切り替えから広島が積極的に攻撃を仕掛けていく。開始3分、広島の攻撃。パスカットからボールを受けた佐藤寿人が中央突破。そのままペナルティエリアまで攻め込むが、惜しくもシュートとはならず。4分、スローインを受けて高萩が右サイドからクロス、佐藤寿人がヘディングでシュートを放ち、ヒヤリとさせるものの枠を捉えることはできない。10分、ガンバ。宇佐美のクロスから米倉が飛び出してペナルティエリアで倒されるが、その前でオフサイドの判定。
そして、ゲームが動いたのは18分。ペナルティエリア内で石原の蹴ったボールが岩下の腕に当たりハンドの判定。広島にPKが与えられる。キッカーは佐藤寿人。右下隅を狙ったボールを東口が読み、当てるもののゴールネットを揺らし20分に広島が先制。佐藤寿人はナビスコカップ通算得点記録を27に伸ばし、単独1位となった。
なんとしても前半のうちに追い付きたいガンバは27分、ワンタッチでショートパスをつなぎ中央突破。良い形で広島のディフェンスを崩し、阿部が左足でシュートを放つもジャストミートさせることができない。33分、宇佐美とパトリックのパス交換から阿部が攻め込みゴール前でシュート。上手くチャンスを作り出すが、塩谷が落ち着いてクリア。ゴールを許さない。
リードを広げたい広島は35分に待望の追加点。左サイドから山岸がクロス。ディフェンスにクリアされるものの、こぼれ球を石原がシュート。ポストに当たり跳ね返ったボールを、ゴール前に詰めた佐藤寿人が拾って本日2点目。ガンバを突き放す。
このまま2対0で前半が終了するかと思われた38分、ガンバが意地を見せる。遠藤が左サイドから中央へドリブルし、パトリックを狙って上げたクロスに上手く頭で合わせゴール。ガンバが1点を返し2対1で前半終了。逆転勝利に望みをつないだ。


前半は通常の中盤に2枚置く布陣ではなく、ダイヤモンド型の変則的な布陣を採っていたガンバだったが、後半から明神に代えて大森を投入。長谷川監督は「前半は中盤をひし形でやって非常に機能した広島との過去の対戦を優先した。前半やられているシーンはミスがらみで決して布陣が機能しなかったわけではない。明神も良く中盤で戦ってくれた。点を獲るには後ろが少し重たいように感じたので、後半は大森を入れていつもの形にした」「前線に入った時のサポートの数が少なかったので、遠藤がボランチに入ることによって前線への供給がより多くなると思った」と戦術変更の意図を説明。戦術変更により後半開始からより上手く機能しはじめたガンバ。
50分、中央でボールを受けた大森がワンタッチでクロスを上げ、パトリックが右足でシュート。強烈な一発だったが林が素晴らしい反応を見せてクリア。続く51分、左サイドから中央へ切り込んだ遠藤のパスを阿部が右足でシュート。これも枠を捉え、林が好セーブを見せるが、サポーターの声援を受け攻め続けるガンバが遂に結果を出す。54分、宇佐美が左サイドから上げたクロスに、パトリックが飛び込んでヘディングでゴール。試合を振り出しに戻す。
この勢いのまま試合を引っ繰り返したいガンバは、休むことなく攻め続ける。63分、宇佐美がドリブルで4人をかわし、ペナルティエリアに切れ込み倒される。きわどいシーンだったがホイッスルは鳴らない。67分、左サイドで大森、宇佐美とつなぎ素晴らしい崩しからゴール前のパトリックへ。上手く飛び込んでシュートを放つが、惜しくも枠を捉えることができなかった。
そして71分、山岸が足を負傷し座り込むがプレイは続行。その間に中央から崩しにかかったガンバが細かくつなぎ、パトリックのパスに合わせた阿部が左足でシュート。林がクリアするものの手前に弾き、そのチャンスを見逃さなかった大森が頭で押し込みガンバが逆転。「けが人が出ているところを突かれて3点目を決められてしまった。勝負どころになる部分で相手にチャンスを与えてしまった」と森保監督。
2点のリードから一転、今度は追いかける立場となった広島は森崎浩司、皆川を投入して得点を奪いに行くが、3点目を決めることはできずそのままゲーム終了。ガンバ大阪がナビスコカップを制し、11月22日の浦和レッズ戦に弾みをつけた。


【サンフレッチェ広島 森保一監督】
「試合を引っ繰り返され負けたのは残念に思う。
戦い方を選手に伝えるのは自分の役目だと思うし、
選手の頑張りを勝利につなげてあげられなかった自分の力の無さを痛感している」
「得点を奪った後に相手の気をしっかりと止めて、
失点を防がなければならなかった。
それはただ単純に守るというだけではなく、
相手の勢いを更に上回っていくために
攻撃のこともしっかりと考えていかなければいけなかった」
「この決勝の舞台で負けて今日の試合に限っては敗者になったが、
我々がこの決勝の舞台に勝ち上がってくるまでには
非常に苦しい戦いをチームの総合力、
そして団結力を持ってこの決勝の舞台に来ることが出来た。
選手の頑張りを誇りに思う」
「サンフレッチェに関わる全ての皆さんに
喜んでもらえる優勝を届けようと思っていたが、それが叶わず残念。
優勝したガンバ大阪の選手・スタッフそしてサポーターの皆さんに
優勝おめでとうございますと伝えたい」
【ガンバ大阪 長谷川健太監督】
「0対2になった時はもってないな、また岩下かと思った。
試合前、西村さんに『岩下にはよく言い聞かせたので
どうかレッドカードだけは勘弁してくれ』と
言って試合に入ったが、早々にPKを取られてしまった」
「宇佐美もパトリックもあれぐらい守備をしてくれれば本当に楽なのだが、
決勝戦だからあれだけやったのか、
11月22日のレッズ戦はどうなのかということが今から悩みの種」
「サンフレッチェの選手、チームが素晴らしいサッカーをしてくれたからこそ、
このような結果を得ることが出来たといっていいし、
素晴らしい決勝戦をすることができたのだと思う」
「私自身なかなか手の届かなかったタイトルを獲ることが出来たのは
素晴らしい選手たちがいたおかげ。
また、素晴らしいスタッフがここまで支えてくれたおかげだと思う。
そして、クラブもチームを支えてくれたおかげで
こうしてJ2から上がってきたチームが
まずナビスコカップのタイトルを獲ることが出来たと思うので、
今日ぐらいはみんなと一緒に喜んで、また休んでリフレッシュしたら
リーグ戦に向けてしっかりと準備をしていきたい」


鈴木

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1101fukuoka.jpg「J1というのは本当は自分が一番目標にしていた、自分が一番立ちたいピッチだった」という鐡戸裕史の言葉は、おそらく日本でサッカーをするすべてのプレイヤーの真実。大きな志を抱いて羽ばたいた雷鳥が、1つの辿り着くべき頂を懸けて戦う舞台はレベルファイブスタジアムです。
21勝11分け6敗。57得点30失点。勝ち点74の2位と堂々たる成績で、いよいよJ1昇格へあと1勝まで迫った松本。「なかなか勝ち点3を取るゲームができなかった。そんなに内容的には悪くはなかったけど、やはり現場を預かる人間としては非常に苦しかった」と反町康治監督が振り返った9月の5試合未勝利も、高く飛ぶために必要な助走期間。3勝1分けできっちりリカバーした10月を経て、「日本で一番苦しい練習をしている」と言い切れる指揮官の下、夢を現実にするための90分間に挑みます。
その松本をホームで迎え撃つのは、過去8シーズンに渡ってトップディビジョンでの戦いを経験している福岡。マリヤン・プシュニク監督体制2年目となった今シーズンは、そのプシュニク監督も「我々は良い位置に付けていた時期があった」と話したように、昇格プレーオフ圏内となる5位まで躍進した時期もありましたが、現在は4試合勝ちがなく、順位も12位まで下降。このゲームに敗れると昇格プレーオフ圏内入りの可能性が消滅するため、二重の意味で負けたくない一戦に臨みます。アウェイゴール裏には1000人を超える緑のサポーターの姿が。新たな歴史は創られるのか。注目のナイトゲームは19時4分、松本のキックオフでスタートしました。


開始5秒のファーストシュートは松本。船山貴之の短いパスから、岩上祐三は45m近いキックオフシュートを枠内へ収め、福岡のGK神山竜一がキャッチしたものの、いきなりのチャレンジに滲ませる勝利への欲求。3分に喜山康平が放った右足ミドルを挟み、4分に迎えた決定機。岩上がFKを短く蹴り出し、船山が見舞った強烈なミドルは神山が弾き出すも、左サイドで大久保裕樹が粘って残すと、船山は再びミドル。ここも神山が弾いたこぼれに、飯田真輝が至近距離から詰めたシュートは枠の左へ外れましたが、立ち上がりから松本が「他力ではなく自分たちの力で勝って昇格を決めたい」(岩上)という覚悟を前面に押し出します。
一方、3-4-3気味の布陣でスタートした福岡のファーストシュートは7分。中盤で前を向いた金森健志のミドルは大きくクロスバー上へ外れますが、10分にもチャンス。古巣対決となる左WBの阿部巧が中へ付け、エリア内へ入った金森には田中隼磨が素晴らしいカバーで寄せて、結局ゴールキックに。決定的なシーンには至りません。
松本の狙いとするハイサイド獲得はセットプレーの数と比例。13分、岩上の右スローインを田中が戻し、岩上が上げたクロスはDFがクリア。14分、続けて岩上が投げた右ロングスローはこぼれ、ここも岩上が上げたクロスはDFがブロック。15分のCKはビッグチャンス。右から岩上が蹴ったボールは飯田の頭にドンピシャで当たりましたが、「スーパーセーブ」(岩上)で神山が仁王立ち。20分には福岡も城後寿の右ロングスローを、ニアでイ・グァンソンが合わせたヘディングは松本のGK村山智彦がキャッチすると、22分も松本。岩上の右CKをニアで山本大貴がフリック。最後はDFがクリアしたものの、2度の決定機逸にも「それがサッカーだと思うし、攻められる展開もそんなになかったので、怖いというほどではなかった」と岩上が話せば、「もちろんチャンスだったので決められれば良かったけど、そんなにそこから相手に流れが行くような場面もなかった」と岩間雄大。流れは依然松本に。
23分は福岡。バイタルに潜った金森がうまく落とし、城後が左足で狙ったミドルは村山がキャッチ。25分は松本。岩上の左FKはDFがきっちりクリア。26分も松本。岩上の左スローインを喜山がスルーしたボールも、DFが確実にクリア。29分は福岡。堤俊輔の左ロングスローはオフェンスファウルになりましたが、徐々に手数はフィフティ近く。
31分はゴール・トゥ・ゴール。堤の左スローインを引き出し、中原秀人が入れたクロスを村山がパンチングで掻き出すと、一転して松本のカウンター。運んだ船山が左へ振り分け、岩沼俊介が打ち切ったシュートは枠の右へ逸れましたが、スリリングな攻防が。ただ、松本も前にボールがなかなか収まらず、セットプレーも激減して膠着した展開を強いられます。
「中盤で奪えればチャンスだけど、前に通っちゃうと攻め残っているので、そこは結構紙一重の部分」と松本のボランチを託された喜山が話したように、福岡は酒井宣福、平井将生、金森の3人とそれ以外の選手は前後に分断気味ではあるものの、逆に前へボールが入ると3人が残っているため、松本も「ボランチとディフェンスでそこはしっかりと人数を置いて」(喜山)対応。33分、左サイドで粘った金森のシュートはわずかにゴール右へ。40分にも中盤で良くボールに絡んでいた中原が縦に付け、酒井の落としを中原が自ら狙ったシュートはDFが何とかブロック。42分にも平井が右から蹴ったCKへ、ニアに突っ込んだ酒井のヘディングは大きく枠を逸れるも、チャンスの数は増加傾向に。最初の45分間は双方譲らず。スコアレスでハーフタイムへ入りました。


プレッシャーの掛かるアウェイゲームを0-0で折り返した松本。それでも、岩間が「前半はとりあえず0-0で終われれば、後半は絶対に自分たちの方が走れるし、チャンスを多く創れるという自信はあった」と語り、「今日も前半はゼロで終わって、ハーフタイムにロッカーへ戻った時に、『これは僕らのペースだよ』と声掛けした」と鐡戸も言及すると、「前半ゼロで行ければというのはあるし、たとえ失点したとしても、後半をゼロで抑えれば自分たちは自信がある」と喜山まで。チームの後半へ対する自信を証明すべく、残された45分間へいざ。
47分は松本。船山が左へ展開したボールから、岩沼の左クロスを山本が頭で合わせたシーンはオフサイドを取られましたが、サイドアタックから良い形を生み出すと、50分には岩上の左CK、52分にはやはり岩上の右ロングスローが福岡ゴール前を脅かし、57分にも岩上との連携から岩沼が放り込んだクロスはDFのクリアに遭うも、岩間の「0-0で行ければ後半に自分たちの時間が来るというのはみんなわかっていたし、自分たちのゲームプラン通りかなとは思っていた」というイメージはチームの共通認識。そして、その時は57分。
相手のアバウトなクリアボールを犬飼智也が拾い、大久保の蹴った高いフィードに山本が競り勝つと、反応していた堤がスリップ。ボールを足元に収めた船山は右に流れ、マーカーを振り切りながら右足でズドン。白黒の球体はGKの手を弾き飛ばし、ゴールネットへ飛び込みます。「ウチのエースが決めてくれた」と喜山も話した通り、やはりここ一番で頼りになるのは10番のエースストライカー。沸騰したゴール裏の歌う緑。10番を追い掛けるベンチメンバーも含めた戦う緑。まさに結集した"緑の友"。待望の先制点は松本に記録されました。
このままでは終われないホームチームもすぐさま反撃。61分、左サイドへボールを繋ぎ、平井の鋭いクロスはフリーで走り込んだ金森に届くも、ダイレクトで叩いたシュートはクロスバーの上へ。62分にはプシュニク監督も1枚目の交替を。酒井を下げて坂田大輔をピッチへ送り込み、さらなるギアアップを。68分には平井が左FKを、70分には堤が左ロングスローをそれぞれ放り込み、共に跳ね返されはしましたが、バックスタンドに陣取ったサポーターも一段階上げたボルテージ。
訪れた2度目の咆哮。吼えた主役は「今日は最初から大きなエネルギーを出したと思います。山本以外は(笑)」と指揮官から名指しで標的にされたストライカー。71分、船山を起点に松本が発動した高速カウンター。中央を運んだ岩上は「フナさんは見えたし、後ろから頑張って走っているヤマも見えた」中で、船山へのスルーパスを選択。ここは懸命に戻った中原がタックルで堰き止めましたが、"頑張って走ってきた"山本はボールを誰よりも早くかっさらうと、そのまま強烈なシュートをゴールネットへ突き刺します。「ミスが続いていたので気合を入れてやった」という田中から愛のビンタを食らい、目を覚ました20番がそのまま追加点まで。これが信州松本のフットボール。「前の3人が絡んで点を取れたということは、今年のチームを象徴しているんじゃないかなと思う」と岩上も自賛した一撃で、リードは2点に広がりました。
苦しくなった福岡は73分に2人目の交替を決断。阿部と森村昂太を入れ替え、一層前へパワーと人数を掛けに出ますが、75分には岩上の左FKをニアへ飛び込んだ山本が頭で枠内へ飛ばし、神山のファインセーブに阻まれたものの、あわや3点目というシーンも。77分には堤が左から中へ折り返し、坂田がヘディングで繋ぐと、城後のクロスは枠の上へ。容赦なく進んでいく時計の針。
意地の追撃弾は79分。ここも左サイドを上がってきた堤が中へ戻し、ワンテンポ溜めた森村は優しいスルーパス。エリア内へ侵入した平井を大久保が倒すと、飯田淳平主審は迷わずペナルティスポットを指差します。キッカーは堤。短い助走から選択したのは右。村山も同じ方向を選択しましたが一歩及ばず。1-2。両者の点差は1点に縮まりました。
終盤の失点にも「特に焦りというのはなかったし、まだ自分たちの方が1点勝っていたので、しっかりと耐えつつ、チャンスがあれば狙っていきたいなと思っていた」と岩間。反町監督が1枚目の交替カードとして、86分に山本に替えてピッチへ送り出したのは今シーズン4試合目の出場となる棗佑喜。184センチの長身ストライカーが果たすべき役目はさらなる前からの圧力。しかも守備面の。残されたのは5分間とアディショナルタイム。
89分は福岡。中原のフィードを前線に上がっていたイ・グァンソンがヘディングで狙うも、ボールはゴール左へ。アディショナルタイムの掲示。ボードに浮かび上がった数字は"4"。90+1分も福岡。平井が蹴った左CKはDFが必死に掻き出し、拾った金森のシュートもDFの人垣が決死のブロック。90+2分も福岡。ロングフィードのこぼれを、金森が打ち切ったシュートはクロスバーの上へ。「自分たちは試合中にも楽をしたら勝てないので、ピッチで戦って倒れるまで走るとか、そういう部分はここで鍛えられた部分」と喜山。着々と近付くその瞬間。
90+3分、船山との交替でピッチに駆け出していったのは鐡戸。「サポーターは地域リーグの時から破格の凄い人数で応援してくれていて、その時からやっぱりこのチームはJリーグに行くべきだって思ったし、あの人たちをJリーグに連れて行かなくてはいけないというのは使命として感じた」というチーム最古参となった16番に託されたゲームクローズ。着々と近付くその瞬間。
90+4分、右のタッチライン沿いに完璧なクリアを転がした田中は、相手が蹴り出したボールにも全速力で突っ込み、FKを獲得するという100点満点の時間消費をこの土壇場で。「実は7月頃から報道陣にも選手にも知られていないことだが、明日からしばらくサッカーをすることができない、当分休まないといけないくらい、膝の状態がよくなかった。知っていたのはメディカルスタッフと我々など限られたスタッフだけだった」と反町監督が明かし、「サッカーをやれるような状況ではなかったし、日常生活も大変だった」と試合後に自ら振り返った3番が見せた魂のワンプレー。時計を何度も気にして、落ち着かない反町監督。着々と近付くその瞬間。
94分36秒。博多の森を覆う夜空に吸い込まれたホイッスル。「正直言葉にするというのは少し難しくて、去年からレンタルで移籍してきて、サポーターもそうだしチームのみんなが認めてくれて、今年完全移籍で来たということで責任感もあるし、J1に上げるという気持ちで来たので、そういったことが叶って、夢が叶ったということで色々なことがフラッシュバックした」という岩上はピッチに座り込み、想像もできない"3番"のプレッシャーと戦い続けてきた田中は、その前任者の名前の入ったインナーシャツと共に起き上がれず。そして、その光景を『勝利の街』を歌いながら見つめるのは「かつて同じチームだった選手がアルウィンに来て試合をすると、『この雰囲気ヤバイね』っていつも言ってくれて、その度に僕は凄く幸せな舞台でプレーさせていただいているなという実感は凄くありますね」と鐡戸も感謝を口にした緑のサポーター。「色々な人の力が結集して、こうした好結果を残すことができたと感謝している」と反町監督も認めたように、それぞれがそれぞれにできることを最大限に活かして、1つ1つが欠かせないピースとなった松本山雅の壮大なパズルは、ここに"J1昇格"という1つの大きな完成図を迎える結果となりました。


7年前。東京Vの下部組織で育ち、トップチームへ昇格しながらも出場機会を得られず、当時は地域リーグだった岡山へと移籍することになった喜山。「岡山に行った時はまだ若かったし、ここで結果を出して上に行ければいいと思っていて、実際JFL、J2と岡山ではステップアップできたんですけど、そこでヴェルディに戻って出られなくなってからは自分でも自信はなかったですし、このままどうなって行くのかなというのは正直思った部分はあります。でも、絶対に諦めない気持ちは持っていたし、何とか山雅でチャンスをもらえたので、必死にやろうと。もうここでダメだったら終わりだと思っていたので、そうやってひたすら闘ってきた3年間でした」と当時と今を振り返って話してくれました。
9年前。佐賀大学を卒業後、希望していたJリーグクラブへの入団は叶わず、佐賀県リーグに活躍の場を求めた鐡戸。「自分自身30歳までプロでやれたら上出来だなって、自分のサッカー人生を振り返った時にって、それはあったんですよ。でも、山雅に来て、共にJFLに上がって、J2に上がって、マツさんと同じチームメイトになってそういう大きな目標に乗っかって行く中で、J1というのは本当は自分が一番目標にしていた、自分が一番立ちたいピッチだったし、それが実現できるというのは出来過ぎだと思います」とこれまでの道のりを感慨深そうに語ってくれました。
10年前。やはり東京Vの下部組織から堀越高校に進みながら、所属チームを求めて東京都リーグのクラブに辿り着いた岩間。「本当に始めの頃を思うと大変の一言でしたけど、やっぱり諦めずにやってきて本当に良かったなと思いますし、多くの周りの人に助けてもらったなというのをこの年になって凄く感じますね」と話しつつ、今まで自身を支えてきたものを問うと、「単純にサッカーが好きという部分と、幼稚園とか小学校の頃から夢はサッカー選手になることだったので、もちろんJ1でやるという部分も頭の中にありましたし、そこが本当にブレずにやってこれた結果かなと思います」と笑顔を見せてくれました。
「そういう選手たちの集合体だからこそ、『何とか目標を達成したい』という気持ちがより強かったんだと思います」とは彼らを束ねてきた反町監督。その反骨心については喜山が、「口には絶対に出さないですけど、それはみんなあると思うし、そのぐらい他のチームに負けない練習はしてきた自信があるので、そういうのは常にみんな胸に秘めているというか、そういうチームでもあると思います」とキッパリ。正真正銘の"雑草集団"が稀代の指揮官と極上のサポーターと巡り合い、遂に到達した遥かなる頂。「自分で諦めなければそういう舞台に立てる」(喜山)ことを見事に証明した彼らがいよいよ来シーズン戦う"そういう舞台"は、日本のトップ・オブ・トップ。Jリーグディビジョン1です。       土屋


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