J2第23節 湘南×熊本@平塚
前々節は昇格圏内をキープし続ける千葉を2-0と撃破し、7試合ぶりの勝利を挙げたものの、前節は中位に付ける大分に1-3で敗れるなど、なかなか調子が上がってこない湘南。そろそろリーグも折り返し地点に差し掛かることを考えれば、1つ負けが先行している数字を、五分へ戻しておきたいゲームです。一方、先週の国立ではFC東京相手に5-0と大敗を喫した熊本。前半で退場者を出したとはいえ、試合後選手たちが口を揃えたのは「レベルが違った」というフレーズ。今日のゲームはメンタルのリカバリーが問われる一戦です。
7月最後の日にしては23.6度と相当涼しい中で始まったゲームは、まず熊本にチャンス。2分、「アジリティを期待して」(高木琢也監督)7試合ぶりにスタメン起用された松橋章太が右サイドで縦へ転がし、武富孝介の外を回った市村篤司がクロス。ボールは長沢駿にキッチリ合い、ボレーは当たらなかったものの、敵将の反町康治監督も「相手のストロング」と評した右サイドから形を創ります。
湘南も同じく2分には臼井幸平が右サイドからカットインミドルを枠へ飛ばし、熊本GK南雄太がセーブ。5分も湘南。永木亮太のパスを受けた高山薫が、左から切れ込んで枠の左へ外れるシュート。10分も湘南。菊池大介が思い切りよく放った30mミドルは、南が確実にセーブ。手数を繰り出すホームチーム。ただ、展開自体は「あそこまで下がってくるとは思わなかった」と高木監督が話した湘南が長いボールを多用したのに対して、繋ぐ意識の高い熊本はポゼッションで上回り、わずかに攻勢。
11分には湘南がボールロストを連発した流れから、西森正明が左足でクロスバーを越えるフィニッシュ。13分、武富のミドルは湘南CB大井健太郎の頭に当たり、高く上がるとクロスバーの上にヒット。14分、吉井孝輔のミドルは枠の右へ。ポゼッションの割にはミドルばかりが目立ったにせよ、熊本がある程度主導権を握っていたと思います。とはいえ、皮肉にもポゼッションが災いしてか、長沢と松橋の2トップにボールが入る場面は少なく、逆にシンプルな攻撃を繰り返す湘南に少しずつ流れが移行。
21分、臼井、永木、佐々木竜太と回り、坂本絋司のシュートは熊本のCBを務める福王忠世が体でブロック。25分には熊本に訪れたFKのチャンスを原田が外すと、ホームチームに決定機。29分、福王のパスを受けた西森が緩慢なターンでボールをさらすと、かっさらった永木の前には南とゴールだけ。シュートは枠の左へわずかに逸れ、スタンドからは溜め息も漏れますが、31分にも再び決定機。中盤でのガチャガチャした混線から、坂本が触ったボールを持ち出した永木は独走。今度は慎重に南もかわし、無人のゴールへ流し込んだはずのボールは、諦めずに全力で戻った35歳のエジミウソンが超スーパーブロック。「今までの我々にはあまりない、奪ってからのスピードアップ」(反町監督)で連続した絶好の先制機を生かせません。
さらに45分、菊池の左CKをニアに走り込んだ高山が頭に当てたボールは、ほとんどゴールに入りかけていましたが、ライン上にいた南が驚異的な反応を見せ、足でクリア。湘南からすれば、15分以降は狙いがハマりながらも、ゴールだけが生まれなかった展開。前半はスコアレスで終了しました。
後半はまず熊本にチャンス。49分、長沢の落としから、武富が右クロス。こぼれ球に反応した原田のミドルは、DFに当たってわずかに枠の右へ外れます。すると、ここを凌いだ湘南が歓喜の時を迎えたのは51分。菊池が左へ展開すると、佐々木はカットインしながら強烈なミドルを枠内へ。南も懸命に弾きましたが、ここに詰めていたのは高山。前半からプレーというよりも判断にキレがなく、なかなかゲームに入れていなかった“パイナップルARMY”が大仕事。ようやく湘南がリードを奪いました。
さて、「0対0だったら僕は引かせたと思う」と語った高木監督でしたが、ビハインドを負ったからには前へのパワーが求められる中、61分には松橋と西森を下げて、宇留野純と片山奨典を同時投入。さらに68分には最後のカードとして、吉井とファビオをスイッチすると、武富と長沢を2トップに据えて、その下はファビオ、右に宇留野で左に片山、アンカーにエジミウソンという配置で勝負に出ます。
73分にはエジミウソンを起点に右サイドで市村を経由し、ファビオのクロスに長沢が頭を伸ばしたものの、シュートには持ち込めず。75分前後からはエジミウソンをCBの間に落とし、原田と武富にボランチを組ませ、前線は右から宇留野、長沢、ファビオを並べた3-4-3に切り替え、何とか1点をという姿勢を打ち出しますが、「リードされたことで長いボールを頼りにしてきてくれた」とは反町監督。今日は石神直哉の出場停止を受けて、左SBにはCBもできる山口貴弘が入っていたため、前半から長沢は167センチとDFラインで最も背の低い臼井サイドへ流れていましたが、「自分たちの判断で幸平と健太郎が替わって対応していた」(反町監督)ことでカバー。加えて、176センチのCB遠藤航も10センチ以上高い長沢に堂々と競り勝つシーンも。チャンスを創らせません。
むしろ終盤は湘南に追加点のチャンスが連続。76分には熊本のミスパスから、永木、菊池、佐々木と繋がり、菊池のシュートはゴール左へ。77分、高山のラストパスから佐々木のシュートはゴール左へ。83分、菊池と永木でお膳立てしたハン・グギョンのミドルはバーの上へ。86分、菊池が右サイドから上げたクロスに、佐々木が頭で合わせたシュートは南がファインセーブ。最後までゴールへの意欲は衰えません。
90+2分、熊本のラストチャンス。矢野大輔のフィードをファビオがワントラップボレーを放つも、ボールはクロスバーの上を通過。「非常に気持ちの入ったゲームになった」と反町監督も評価した湘南が、難敵熊本から勝ち点3を奪取する結果となりました。
熊本はあらゆる手を尽くした感はありましたが、ゴールが遠いゲームになってしまいました。「負けるには惜しいなあというゲーム」と高木監督も振り返ったように、チーム力の差はほとんどなかったと思いますが、実はリーグワースト2位の15得点という数字を考えれば、「フィニッシュも含めて、アタッキングゾーンのクロスやクロスの入り方」(高木監督)には向上の余地がありそうです。
勝った湘南は、点が取れそうで取れなかった前半に集中を切らさず、守備陣が破綻をきたさなかったことが「どちらに転んでもおかしくないゲーム」(反町監督)をモノにした要因ではないでしょうか。ようやく底は脱した感があり、「ほとんど横一線」(反町監督)の昇格戦線に再び殴り込む準備は整いつつあるような印象を受けました。 元・AD土屋
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J1第19節 川崎×浦和@等々力
2005年3月12日。J1再昇格を果たした川崎が等々力に浦和を迎え、一時は2点をリードしながら終了間際に闘莉王の同点弾を食らい、勝ち点1を分け合った激闘から早6年。両者が対峙するゲームは常にスペクタクルな展開になる印象が、私にはあります。順位こそ5位と12位の対戦ですが、浦和は現在公式戦8試合負けなしと好調をキープ。好バウトの予感が漂う一戦は、キックオフ直前から雨足が増してきた等々力です。
立ち上がりから綺麗な攻撃を繰り出したのは川崎。3分、小宮山のクサビを小林はダイレクトで落とし、左に開いてジュニーニョのリターンを受けると中へ。DFのクリアを登里がシュートに変えたボールは枠を外れますが、しっかり崩してチャンスを創出します。5分には菊地が左へ正確なフィードを送り、ジュニーニョのクロスはファーへ走り込んだ田坂にピタリ。ボレーはヒットしなかったものの、加速する川崎の勢い。
ところが先制ゴールは唐突に。10分、山田直輝が左へ振ると、柏木は絶妙の浮き球スルーパス。菊地と小宮山の間から一歩前へ出たマルシオ・リシャルデスがシュート体勢に入り、小宮山が懸命に足を伸ばすと、ボールはゴール左スミへ吸い込まれてしまいます。ただ、確かに結果はオウンゴールでしたが、「ゴールに絡むプレーがしたいと思っていた」と話した柏木のパスで勝負あり。浦和が“個”の閃きで1点のリードを奪いました。
さて、エアポケットを突かれる形で失点を許した川崎は、ビハインドにもかかわらずラッシュ継続。11分には小林が繋ぎ、ジュニーニョのラストパスに登里が抜け出すも、飛び出した浦和GK加藤がキャッチ。12分にもジュニーニョとルーキーながらドイスボランチの一角を担う大島僚太のパス交換から、最後にジュニーニョが放ったシュートはスピラノビッチが体でブロック。浦和ゴールへ襲い掛かります。とりわけ、川崎で活性化していたのは左サイド。「(浦和から見た)右サイドは注意しろと言われていた」とは、右SHに入ったマルシオ・リシャルデスですが、その言葉通りに小宮山の果敢なオーバーラップに浦和が手を焼くシーンもしばしば。ゲームはかなり動きのある展開となりました。
ただ、15分を過ぎると浦和がボールを保持する時間が長くなり、同時にゲームは膠着。この理由としては、「コンディションがよくなく、動き切れていなかった」とペトロヴィッチ監督も評した1トップのデスポトビッチにボールが入らず、その下に位置する山田直輝も“受けて捌いて”にはさすがの才を発揮しますが、ゴールへ向かうプレーにまでは至らず。キープしている側にシュートまでの道筋が見つからず、自然とゲーム全体の動きが少なくなっていった印象です。
それでも30分には止まらない小宮山が、左サイドをスルスルと持ち上がって2人をかわし、枠内ミドル。44分にも小宮山のパスから、登里が同じロンドン世代の高橋をぶち抜いて上げたクロスに、走り込んだ山瀬のヘディングはバーの上へ。45+2分には浦和も小宮山のボールロストを起点に、デスポトビッチとのワンツーからマルシオが強烈な枠内シュートを放ちますが、川崎GK相澤に阻まれて追加点とはいかず。45+3分には再び左サイドの川崎。ジュニーニョのクロスに、再びチャレンジした山瀬のヘディングはバーの上へ。スコア上はアウェイチームが上回りましたが、内容はホームチームが一方的に攻め立てるような形で、前半は終了しました。
後半は開始からカードを切った相馬直樹監督。大島に替えて、病み上がりの中村を強行投入。さらに縦へのパワーを強めに掛かります。対する浦和は「プレスを掛けるラインを高めにして、真ん中が数的不利になる前に潰しきろうという形」(ペトロヴィッチ監督)をハーフタイムに指示されますが、さほどうまくいかず、やはり川崎が攻勢。
52分にはジュニーニョのドリブルがこぼれた所を、登里が枠外もシュートチャレンジ。同じく52分、中村のパスをジュニーニョがヒールで繋ぎ、右へ流れながら放った山瀬のシュートは加藤がファインセーブ。53分、中村の左CKは小林が頭にしっかりヒットさせるも、加藤が正面でキャッチ。惜しいシーンを連続して創ります。
54分には浦和に決定機。カウンターからマルシオが右へ展開し、原口のクロスはファーで待っていた山田直輝へ。ワントラップから冷静に繰り出したループは、詰めていたデスポトビッチがオフサイドを取られたため、「2-0にできるチャンス」(ペトロヴィッチ監督)は生かせませんでしたが、1つカウンターの脅威は突き付けます。
川崎も58分、田坂が相手のハンドを誘発させて奪ったFK。自ら直接狙ったボールはクロスバーにヒットし、スタンドをどよめかせるも、63分には浦和がこの日一番のスムーズな連携からチャンス。山田直輝が左へボールを送ると、柏木のパスをマルシオはダイレクトで捌き、デスポトビッチの左クロスはDFに当たり、飛び込んだマルシオの頭にも当たって、最後は相澤がキャッチしましたが、サイドをうまく攻略してみせます。
しかし、65分に山田直輝が田中と交替で下がると、直後の柏木が蹴ったFKから、こぼれを入ったばかりの田中がわずかにクロスバーの上へ外すシュートを放ちはしましたが、リンクマンを失ったことで、浦和の攻撃は停滞。逆に川崎は68分に山瀬とのスイッチでピッチへ登場した楠神が、持ち前の技術とスピードで攻撃の加速スイッチに。
79分には相手のCKから一転カウンター。ボールを持った楠神は長い距離を持ち上がりながら、最高のスルーパスを右へ。抜け出した田中裕介のシュートは、しかしここも加藤がファインセーブ。さらに83分、中村の右CKからこぼれたボール。拾った小宮山の豪快なミドルは、再度加藤がファインセーブ。トップ昇格9年目にしてリーグデビューを果たし、定位置まで掴んだ26歳が好守連発。まさに最後の砦として、「ボールを動かしながら、ゲームの主導権を握ることができた」(相馬監督)川崎の前に立ちはだかります。
90+6分のラストチャンス。福森晃斗の右CKは小林まで届きましたが、少し高さが合わなかったヘディングはヒットせず。「内容は川崎の方がよかった」と指揮官も認めながら、加藤とスピラノビッチを中心に守備の集中が切れなかった浦和が、冒頭に紹介したゲーム以来続いていた等々力でのリーグ戦無敗記録を7に伸ばして、勝ち点3を奪取する結果となりました。
勝った浦和は総シュート5本、枠内シュート2本で勝ち切る効率のよさ。「守らざるをえない形」(ペトロヴィッチ監督)の中で、加藤のファインセーブ連発も光りましたが、同様にスピラノビッチの体を張ったパフォーマンスも出色でした。「チームの中で迷いがなくなってきている」とは柏木。結果が内容を向上させるか。今後の浦和に注目です。
敗れた川崎は決定機も創り出し、「十分なボリュームを持ったゲームができた」(相馬監督)のは確か。正直、今日のゲームはツキに見放された印象で「サッカーとはこういうスポーツ」という指揮官の言葉に頷かざるを得ない気がしました。 元・AD土屋
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J2第22節 FC東京×熊本@国立
日本の夏、国立の夏。学生のフットボールファミリーにとっては、夏休みに入って最初の開催となる今節のJリーグ。首位と5位の上位対決。舞台は聖地・国立競技場です。「若い力の加速がチームの勢いを生んだ」と大熊清監督が語るFC東京。今や不動のスタメンを確保している高橋秀人と田邉草民らの台頭を受けて、「メンバーが固定できてきた」(大熊監督)最近は、前節も岐阜を4-0で一蹴するなど、ようやく“らしい”凄味が出てきました。
対する熊本も、16試合で2敗という数字は、東京、栃木と並んでリーグ最少。高木琢也監督政権も2年目を迎え、着実に昇格争いへ加わるチームにステップアップ。J2の巨大戦力にどう立ち向かうかは、知将にとって腕の見せ所でしょう。
ゲームが始まると、まず先にチャンスを創ったのは熊本。2分、原田拓の左クロスから、ルーズボールがエアポケットに。フリーになった武富孝介のシュートはDFがブロックし、拾ったエジミウソンのボレーはクロスバーを越えましたが、このゲームへ向けられた高い意欲を披露します。しかし、前半の熊本に訪れたチャンスはこれが最後。3分に田邉がミドルレンジからボレーを枠内へ飛ばし、南雄太にファインセーブを強いると、以降は「正直、向こうのレベルがすごく高かった」と原田も認めた、東京の圧倒的な攻勢が続く展開となっていきます。
7分、大きなサイドチェンジを左で受けたロベルト・セザーのカットインシュートは、何とか南がキャッチ。10分、田邉とのパス交換から完全にフリーで抜け出したロベルト・セザー対南は、コースを狭めてシュートを枠の左へ外させた南の勝利。14分、谷澤達也の左FKから森重真人のヘディングはバーの上へ。16分、谷澤の右FKからこぼれを田邉が枠内ボレーも、福王忠世が体でブロック。決定的なシーンが続きます。
東京はあらゆる面が素晴らしかったのですが、特に目立っていたのは「ボールを奪って高い位置で攻撃の起点を創ること」(大熊監督)。まず、「確かにかなり前から来てましたね」と熊本のボランチに入った根占真伍も話したように、1トップに入るロベルト・セザーがプレスを厭わず、その後ろに並ぶ田邉、羽生直剛、谷澤も“横のカーテン”的にラインを創るような守備を敢行。これで熊本はほとんど後ろからビルドアップできず、大きく蹴ってロストの繰り返しになってしまいます。
さらに、東京の繋ぐ意識はサイドアタックに直結。梶山陽平と高橋のドイスボランチを中心に、中央でのパス交換からサイドへ展開という形が多く、片方で詰まったらボランチを経由して、また逆サイドへ展開という流れもスムーズ。加えて20分にはカウンターからロベルト・セザーがしっかり繋いで、羽生のドリブルシュートは南がファインセーブで凌ぎましたが、「向こうはカウンターも最後のシュートまで行っていた」(原田)とあっては、熊本も為す術がありません。
25分、谷澤の左CKから森重真人のヘディングはGKがキャッチ。37分もカウンターから田邉がよく粘ってドリブルから左へ振ると、ロベルト・セザーのフィニッシュは南がファインセーブ。39分、エリア内で羽生が2人に前を塞がれながらも振り切ったシュートは、DFに当たってクロスバー直撃。41分、ゴールまで約30mの距離から中村北斗が無回転で枠へ飛ばしたFKも、南が何とかブロック。この時点までで、東京はシュート12本にCKが10本。一方的な展開ながら、前半は0-0で切り抜けられれば御の字という状況の熊本でしたが、43分に待ち受けていたのは最悪の事態でした。
徳永悠平が右へ振ったボールを、羽生が鋭いクロス。ニアでロベルト・セザーが潰れると、「中がスカスカだったので」全力で戻った根占は、飛び込んできた谷澤に横からチャージ。記者席から見た限りは微妙なプレーで、「僕はレフェリー次第でPKもないかと思う」とは原田ですが、審判交流プログラムで来日しているロバート・マッドレー主審はPKのみならず、根占にレッドカードを提示。これをロベルト・セザーが確実に沈め、熊本にしてみれば先制点を献上した上に、数的不利まで被る格好で前半終了のホイッスルを聞くこととなりました。
迎えた後半も続く熊本の受難。48分、梶山の何気ないクリアに、羽生と谷澤はオフサイドポジション。しかしボールに関与する意志はなく、プレーは流れましたが、福王のヘディングは左方向へ。これを戻った谷澤が拾うと、副審は1つ前のプレーを意識したのか、オフサイドフラッグを上げてしまいます。そちらがボールサイドだったこともあって、フラッグが目に入り、一瞬足が止まった熊本。一方、主審の笛が鳴らないのを見ると、一旦プレーを止めた谷澤はすぐさまボールに反応して右サイドを独走。折り返しを田邉が拾い、ロベルト・セザーからパスを受けた今野泰幸のクロスに、ニアへ潜った羽生は左足インサイドボレーをキッチリとゴール左スミへコントロール成功。あまりにも大きな2点目が東京に入りました。
高木監督も55分にはチョ・ソンジンと武富を下げて、矢野大輔と松橋章太を送り込み、システムも3-4-2にシフトして抵抗を試みますが、「11人でもやっとなのに、1人少ない状況では…」と言及したように、熊本に打つ手はなく、東京が聖地でのびのびと躍動。67分には、エジミウソンに倒されてPKを獲得した谷澤が「♪ヤザー、決めてくれ」と柏時代のチャントを受けて、自ら蹴り込み3点目。73分には田邉がクイックで右へ蹴ったFKを、呼び込んだ徳永がエリア外から豪快にネットを揺らして4点目。
そして、このゲーム最大の歓喜は87分。梶山からのミドルパスを、「一緒にプレーしていたので、私たちは連携が取れている」と信じて裏へ走ったルーカスは「ワールドクラスのトラップ」(大熊監督)で左に持ち出し、丁寧にゴールへ流し込みます。1年でのJ1復帰という、最低にして最大の目標へ向けたラストピースの復帰弾まで飛び出した東京が、「力の差は語り尽くせないぐらいある」と高木監督も脱帽した熊本を粉砕して、堂々首位を堅持する結果となりました。
敗れた熊本が監督、選手と一様に口をそろえたのは、前述していますが「レベルが違った」ということ。対戦する時期の妙もあり、最悪のタイミングで最強の相手と激突した感は否めず、スコアはショッキングかもしれませんが、選手の表情を見てもサバサバした様子。尾を引くような負けではないように感じました。
勝った東京は、「ようやくか」と一言付け加えたくはなりますが、ここに来て突出したクオリティが結果へ結び付くようになってきました。攻守両面ですべてが機能している今のスタイルこそ、おそらくサポーターが待ち望んでいた形。こうなると東京にストップを掛けるのは、至難の業になってくるでしょう。それくらい圧倒的な強さが際立つゲームでした。 元・AD土屋
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J1第4節 横浜FM×山形@ニッパ球
破竹とも言うべき4連勝で、順位も2位まで上がってきた横浜。リーグ2番目となる失点の少なさも目立ちますが、ここに来て3戦連発と調子を上げてきた渡邉の活躍も見逃せません。一方、4試合白星から見放されている山形は、3試合続けてのノーゴールが象徴するように、ここまでわずかに10得点と深刻なゴール欠乏症。降格圏脱出に向けて、得意の三ツ沢から勝ち点を持って帰りたい所です。
公式記録の27.2度という数字よりは涼しさを感じる中でキックオフを迎えたゲームは、電光石火の先制劇。中澤のクリアを大黒が頭で落とし、谷口がスルーパスを送ると、DFの間を擦り抜けた渡邉は独走。GKとの1対1も確実に右スミへ制し、スコアボードに“1”が躍ったのはわずか開始17秒。覚醒したストライカーの4戦連発弾。両チームの今をあまりにもハッキリと映し出すような衝撃。あっという間に点差が付きました。
さて、いきなり嫌な形でリードを許してしまった山形でしたが、10分には秋葉のパスから今シーズン初スタメンとなった宮崎が左足ミドルでチーム1本目のシュートを放つと、直後にも下村が粘って左へ回したボールを太田が繋ぎ、宮沢がGKにキャッチされたもののシュート気味の鋭いクロス。13分には石川の右FKから、こぼれを左へ展開すると、宮崎のクロスに合わせた太田のボレーは横浜の小林に体でブロックされるも枠内へ飛ぶなど、チャンスを連発。ゲームの入りは最悪でしたが、全体のラインもコンパクトに保ち、ボールアプローチでも上回った山形にペースは傾きます。
この流れに関しては、確かに山形もよかったのですが、「先制でちょっと緩んだのか、特にパスミスが多かった」と木村和司監督が苦虫を噛み潰したように、横浜の低調なパフォーマンスに因る所も大。「自分たちの攻撃でミスがあって、そこからカウンターを食らってた」とは中盤ダイヤモンドの底に入った小椋。とりわけ右サイドに位置する中村は、普段のクオリティから考えれば信じられないようなイージーミスの連続。途中からは完全に山形のボール奪取のターゲットになってしまい、34分にはその中村のパスミスをかっさらった宮崎が右サイドからドリブルで切り込み、フリーの太田はシュートを大きくふかしてしまったものの、決定機にまで結び付けられてしまいます。
さらに37分には、エリア外でルーズボールを収めた秋葉がハードヒットさせた左足ボレーは、クロスバーにもハードヒット。そもそも石川が戦列復帰したことで、山形は「左サイドからの攻撃はうまくできていた」(宮崎)上に、横浜はそのサイドでのボールロストが多い状況に、木村監督もたまらず2トップ下の谷口と中村を入れ替える処置。リードは横浜でしたが、ゲームの主導権は山形が握って、最初の45分間は終了しました。
後半はスタートから膠着した展開ながら、リズムは変わらずやや山形。55分には、右サイドから上がった園田の高精度アーリークロスに、飛び込んだ太田はわずかに届きませんでしたが、右サイドも活性化。「相手の思惑通りに進んでいないのは感じてた」と下村も振り返ります。
すると、57分にはやはり左サイドからチャンスメイク。秋葉が溜めて溜めて縦へ送ると、宮沢はDFとGKの間にグラウンダーのクロス。流れたボールを拾った宮崎が思い切り良く右足を振り切ると、軌道は枠を外れていましたが、ボールスピードが速かったために中澤へ当たり、そのままゴールへ吸い込まれます。「とりあえず蹴ったら、当たって入っちゃったみたいな。ラッキーでした」と本人も語った通り、確かに運も味方しましたが、流れを見れば必然とも言うべきゴール。スコアはタイに引き戻されました。
先に動いたのは木村監督。63分に中村と大黒を下げて、小野とキム・クナンを同時投入。なかなか上がってこない全体の機動力へてこ入れを図ります。70分には横浜に決定的なチャンス。小野がドリブルから左へ振ると、そこにはフリーのキム・クナン。ところがフィニッシュは、飛び込んだ山形DFが懸命のブロック。絶好の得点機も生かせません。
こうなると、「足が相当止まっていた」(下村)横浜に対して、山形がラッシュ。73分、石川のピンポイント左クロスに太田が合わせたヘディングは、今日2回目のクロスバー直撃。76分、秋葉の巧みなヒールパスから、追い越した石川のクロスはわずかに中央と合わず。78分、反応の鈍い2人の相手を尻目に、右サイドの深い位置でルーズボールを奪った大久保は中へ。フリーで走り込んだ下村のシュートはバーを越えましたが、勢いはアウェイチームにありました。
そんな中、山形は78分に「彼のクロスを考えると1枚前で使いたかったが、首が痛いということで」(小林監督)石川と小林亮をスイッチ。同時に園田と宮本も入れ替え、「守備的にできる選手」(同)を両SBへ配置することで、指揮官は少なくとも勝ち点1は確実に手に入れたい采配を奮います。
お互いに悠、アーリアジャスールと“長谷川”を3枚目のカードとして切り合い、迎えた4分の追加タイムも着々と経過。三ツ沢をドロー決着の雰囲気が支配する中、94分30秒を回った、まさにラストプレー。カウンターから獲得した右CK。兵藤が蹴ったボール。競った2人のDFより高く高く舞ったキム・クナン。頭にヒットした球体は左のポストへぶつかり、転がり込んだ行方はトリコロールの咆哮。昨年在籍したものの、真価を発揮したとは言い難かった古巣を、絶望に突き落とす痛烈な一撃。勝ち越しゴールと同時にタイムアップ。「最初の15秒と最後の15秒だけのゲーム。こういう勝ち方もあるんだな」とは木村監督。苦しみながらも、何とも好調のチームらしい勝負強さを発揮した横浜が、着実に勝ち点3を積み上げる結果となりました。
「中身は何もない。結果オーライにしちゃいけん」と指揮官も吐き捨てた横浜は、確かに見るべき部分の少ない90分プラスアルファに。「途中から4-4-2のドイスボランチにして、自分たちもブロックを作った方が、こういう相手にはバランスが良くなっていたかもしれない」と小椋。その見方は一理あるように感じました。
敗れた山形は、率直に言って「もったいない試合」(小林監督)の一言。2度のクロスバー直撃など、ツキに見放された面もありました。ただ、最後の失点の伏線になったのは、少し雑な攻撃から食らったカウンター。「バランスをもう少し考えていれば勝ち点1は取れたはず」(小林監督)なのも確かであり、ディテールではあるものの、だからこそ“3”なのか“1”なのかを突き詰めないと、結局“1”を獲得するのも難しいという厳しい現実を、改めて痛感させられるゲームになってしまいました。 元・AD土屋
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J2第20節 京都×栃木@西京極
J1からの降格チームであり、新監督に日本代表のコーチを務め、甲府を昇格に導いた経験を持つ大木武氏を招聘したことで、今シーズンの有力な昇格候補と目されていた京都が苦しんでいます。現在は直近の連敗含む3戦勝ちなし。トータルでも3勝3分け8敗の17位と、まさかの下位に低迷。何とか浮上のキッカケを掴みたい所でしょう。一方、8勝4分け2敗の2位と昇格圏内をキープし続けている栃木は、ここ7試合負けなしと、もはや上位の貫禄すら付いてきた印象。対照的な両チームの激突は、18時キックオフでも暑さの残る西京極です。
立ち上がりから、なかなかお互いに攻撃の手数を出し切れない中、7分には京都に決定機。渡部博文の「安易に出したパス」(松田浩監督)をかっさらった京都は、高い位置からカウンター。伊藤優汰のラストパスに、内藤洋平がコースを狙ったシュートは右ポストを直撃。中山博貴がこぼれに詰めるも、カバーに入った栃木DFが何とかクリアで逃れましたが、栃木からすれば嫌なゲームの入り方になってしまいます。
ただ、それでもチャンスを創り出すのは勢いの為せる業か。10分には角度のない所から、チェ・クンシクがシュートを枠へ飛ばすと、2度目のチャンスは確実に。15分、右サイドから杉本真が入れたアーリークロスを、うまい体の使い方で収めたチェ・クンシクは、コースを狭めるべく飛び出したGK水谷雄一の股間を射抜く、冷静な一撃。アウェイチームが、先にゴールを記録しました。
さて、決してリズムは悪くないにもかかわらず、先制を許してしまった京都ですが、失点以降もいい形は創ります。20分、エリア内で収めたドゥトラのシュートは、わずかに枠の左へ。22分、中盤ダイヤモンドの右に入った駒井善成が右へ流し、3トップの右を務める伊藤を追い越した、3バックの右を務める酒井隆介のクロスはDFがクリア。23分、駒井が右へ振ると、伊藤はピンポイントで折り返し、力んだドゥトラのシュートはヒットしませんでしたが、完全に栃木を崩してチャンスを量産します。
京都が攻撃的に出ていけた理由は主に2つ。1つは「こぼれをドゥトラに拾われて、ターンされることが多かった。彼をフリーにし過ぎた」と栃木の松田浩監督が話したように、チームトップスコアラーの久保裕也が期末テストのために試合を欠席する中で、3トップのセンターに入っていたドゥトラが時には中盤まで降りてボールを引き出したりと、広範囲に渡って基点創りに奔走。「CB2人がドゥトラへチェックに行かず、見ているシーンは問題だった」と松田監督も話した部分については、当のCB大和田真史も「ドゥトラ1人にラインを下げられることが多かった」と振り返るなど、ドゥトラへの対応で後手を踏んだ感は否めません。
もう1つは、「ドゥトラはCB2人が見て、3トップのサイドはSBに任せた」(大和田)栃木に対し、特に3トップの右に入った伊藤が自由を謳歌。伊藤はかなりワイドに張り出していましたが、「駒井や内藤さんがドゥトラとの間に入って、受けたボールを僕にくれたのでやりやすかった」とは本人。大和田も「伊藤にボールが収まっているイメージはあった」と認めています。
結果としてスコアは0-1で栃木がリードしていたものの、「あまりにも前半からミスが多かった」(松田監督)栃木に、「今まで出たゲームの中で、前半は一番楽しかった」と伊藤が話した京都。結果と内容が相反する形で、45分間は終了しました。
後半は負傷の影響と、「3バックの外側をうまく使ってくれれば」という指揮官の思惑で、栃木はスタートからチェ・クンシクと廣瀬浩二をスイッチしましたが、流れは変わらず。57分には、またも右サイドを崩して獲得した右CK。チョン・ウヨンのボールはDFがクリアしましたが、拾った中山の鋭いクロスを秋本倫孝が折り返し、ドゥトラのヘディングはGKキャッチ。61分には中山、内藤、駒井と繋いで、伊藤の狙いすましたシュートはバーの上へ。やや膠着状態ではありましたが、ペースは京都が握っていました。
ところが伊藤に対して「だんだんボールがもらえず、仕掛ける位置が低くなってきた」と判断した大木監督が、62分にその伊藤を下げて中村太亮を送り出すと、「向こうの選手交替で流れがこっちに来たかなと思った」と松田監督も言及したように、流れが一変。64分にリカルド・ロボがエリア内でさすがの切れ味から枠内シュートを飛ばすと、杉本に替えて松田監督が2枚目に切った水沼宏太というカードも加速装置に。67分には、その水沼が右サイドで素晴らしい縦パス。走った廣瀬のクロスにロボが合わせるも、ボールはゴール左へ。74分、鋭い出足でボールカットした本橋卓巳がそのままボレー。栃木が攻勢を強めます。
大木監督も74分には安藤淳に替えて中村充孝を投入。75分には水沼の左クロスから高木和正が、76分には高木のCKから大和田が、それぞれチャンスを外し、以降は京都も持ち直しますが、思いの外に失われた“12分間”の影響は大きく、決定的なチャンスは創れません。
そして終了間際に迎えた京都のラストチャンス。90+2分、自ら倒されて獲得したFKのスポットに立ったのはドゥトラ。目的地までは約25m。静まり返る西京極。走り出す9番。すると、ボールは左に弧を描いて描いて、目的地へ見事到達。爆発するピッチ、ベンチ、スタンド。「最後までよく戦ったと思う」と大木監督も語った京都が劇的な同点弾で、勝ち点1を強奪する結果となりました。
栃木は「全体としては低調な出来」と松田監督が渋い表情を浮かべたように、普段はあまり見られないようなイージーミスが多く、自ら流れを手放してしまったような印象です。ただ、それでもアウェイで勝ち点1を積み重ねたのは、内容を考えれば十分な成果。上位チーム特有のしぶとさを感じました。
京都は「悪くないゲームだった」と大木監督が話した通り、大半の時間で主導権を握ってゲームを進めており、最初の決定機をモノにしていれば、あるいは大勝の可能性もあったはず。それでも最終盤に追い付いてのドローは、今後への“キッカケ”として十分な要素でしょう。駒井、伊藤、酒井とルーキーも確実に計算できる戦力へと成長しているだけに、一度波に乗り切ればまだまだ上位への道は閉ざされていないと思います。 元・AD土屋
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J1第2節 大宮×広島@NACK5
今シーズンのJリーグ七不思議に入って来そうなトピックスは“ホーム未勝利の大宮”。4勝6分け3敗の10位と、数字だけ見れば決して引っ掛かることのない成績にもかかわらず、ホームに限ってみれば3分け3敗という現状。サポーターのためにも、そろそろ勝ち点3という歓喜をNACK5にもたらしたい所です。
対する広島は、前節のG大阪戦で打ち合った末に5-3で敗北。今日の一戦を「美しさではなく、どうしても3ポイントを取りに行くゲーム」(広島・ペトロヴィッチ監督)と位置付け、リアリスティックに勝ち点を拾う意識を、ある程度選手に徹底させた様子。そしてゲームは、そんな広島の意図が色濃く反映された展開になっていきます。
4分、石原が置いたボールをイ・チョンスがミドル。7分、東、石原と繋いでイ・チョンスがミドル。9分、石原が粘って残し、上田がミドル。12分、ラファエルが右へ展開すると、受けた東の左足アーリークロスに、ラファエルが頭から飛び込むも西川キャッチ。13分、村上の左クロスを森崎和幸がクリアし損ねたボールは、あわやオウンゴール。15分、上田の右CKはエリア外で待つ村上に渡り、ワントラップからのシュートはDFがブロック。17分、右サイドから上田が上げたクロスに、ラファエルが合わせたヘディングは枠外。ラファエルのパートナーには石原を起用し、イ・チョンスを左SHに回す「攻撃的なチームには攻撃で上回らなくてはいけない」という指揮官の言葉通りに、大宮が圧倒的に攻め立てます。特にここまで名前がよく出てきていることからもわかるように、今シーズン2試合目のスタメンとなった石原が積極的にボールを引き出し、チームにいいリズムを生み出していました。
一方の広島は20分、森崎和幸の鋭いタックルから李が左へ回し、ムジリが無理矢理打ったミドルがファーストシュート。「前の3枚が攻撃の所で早くボールを失うシーンが多かった」というペトロヴィッチ監督の言葉も確かにその通りですが、そもそもチームとして勝負させていたポイントは基本的にミキッチの右サイドくらい。3バックの中央を務める森崎和幸も「サイドでボールを持たれても、最後の所は体を張ろうと思っていた」と話しています。
こうなるとボールを保持している時間は長いものの、相対的な意味で“持たされている”ような大宮は「前半はミドルシュートが多いので、決定的な所まで行けていない」と鈴木淳監督も話したように、広島のブロックを切り崩すような仕掛けに乏しく、かなりゲームは膠着状態に。35分にはイ・チョンスが巧みなステップで左サイドをえぐり、折り返したボールをラファエルがフィニッシュへ持ち込むも、枠を捉えられなかったシーン以外は、ほとんどチャンスらしいチャンスも創れないまま、前半終了のホイッスルを聞くことに。「前半で点を取られたら負けると思っていた」(森崎和幸)広島からすれば、納得のスコアレスで45分間を終わらせることになりました。
ハーフタイムを挟み、迎えた後半のファーストチャンスを結果へ結び付けたのは広島。49分、3対3のカウンターに対して、やや淡泊な大宮ディフェンスの対応から得たCK。森崎浩司の蹴ったボールに、マーカーを完全に外して頭を振ったのは盛田。元ストライカーのJ1通算3ゴール目は、チームのプランを考えてもかなり大きく、かなり重要な一撃。チーム3本目のシュートで、広島がスコアを動かしました。
さて、最初の被決定機で先制を許してしまった大宮。失点直後は少し押し込まれたものの、56分にカウンターから東、シュートを打ち切れなかったイ・チョンス、村上と繋がり、最後は石原がバーの上へ外したとはいえ、惜しいシーンを創出すると、再び攻勢に。57分にも石原とラファエルで回すと、DFが触ったボールを東が枠へ飛ばし、西川のセーブに阻まれますが、スタジアムを沸かせます。
すると61分、キム・ヨングォンに当たったような形のボールは、前線にいたラファエルの元へ。スルーパスに石原が抜け出すと、飛び出した西川と接触して転倒。西村雄一主審はPKを指示します。絶好の同点機に、キッカーはラファエル。ゆっくりとした助走から左へ蹴られたボールは、しかし完璧に読み切った西川が完璧なセーブ。「みんなに迷惑かけたくない気持ちが強かった」という守護神のビッグプレーが飛び出し、ゴールを許しません。
以降も構図は変わらず、「DF3人とGKも含めて、後ろだけでも我慢しようと話していた」(森崎和幸)広島は、最後の局面一歩手前でしっかりチャンスの芽を潰す意志統一を見せ、危ないシーンもそれほどありません。71分には広島の最終ラインで信じられないパスミスが発生しましたが、石原はシュートを打つまでにもたついてしまい、枠へ飛ばせず。
79分には青木に替わって藤本、84分にはイ・チョンスに替わって渡邉と、選手も入れ替えながら、なんとか1点を返そうと大宮が前掛かりになる中、「守備でしっかり全員が集中して戦った」(ペトロヴィッチ監督)広島の堅陣は揺るがず。90分に追加された4分も潰し切ったアウェイチームが、「我々は決して相手よりベターではなかった」と指揮官も認める中、粘り強く勝ち点3を持ち帰る結果となりました。
敗れた大宮からすれば、「選手がよく頑張ってくれて、非常に良いゲームができた」という鈴木監督の言葉にも頷けるような内容だったと思います。ただ、シュート数も17対5と圧倒し、ボールも長く保持しながら、手元に残った勝ち点はゼロ。振り返ればラファエルのPK失敗よりも、前半にあった決定機逸が最後まで響きました。
勝った広島は、「決して良い勝ちであるとは思っていない」とペトロヴィッチ監督は話しましたが、おそらく今日のプランから考えれば、パーフェクトに近い勝ち点3奪取。完封の立役者と言っていい森崎和幸は「この時期は運動量も上がらないが、こういう勝ち方もしていければ、涼しくなった時にパスサッカーもできると思う」と長いスパンで考えた際に、この勝利が持つ意味の捉え方を披露。夏の戦い方という面では、単にいい悪いということではなく、非常に興味深い内容と結果のゲームだったと思います。 元・AD土屋
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J2第19節 湘南×東京V@平塚
4試合続けて無得点での4連敗を喫し、ズルズルと順位が下がってきてしまった湘南。4試合ぶりに帰ってきたホーム平塚でなんとか負のスパイラルを脱出したい所です。対する東京Vは5点、4点、3点と3試合で12ゴールを奪う好調をキープ。特に前節は水戸に前半で2点を先制されながら、終わってみれば3点を奪い返しての大逆転勝利。順位も9位まで浮上するなど、現時点ではJ2屈指の勢いを有しています。実は5勝3分5敗で勝点18同士の対戦。現状の混戦模様を考えれば、勝った方が上位に食い付いていく可能性の高いゲームは平塚です。
湿気の高いコンディションもあってか、お互いに攻撃の手数も少なく、少しフワッとした雰囲気で立ち上がったゲームは、唐突に動いたスコア。10分、マラニョンがラインの裏へうまく抜け出し、戻ったマーカーも何とかクリアしたものの、ルーズボールにいち早く反応したのは飯尾一慶。左足で右スミを確実に射抜き、アウェイの東京Vがチームの好調そのままに先手を取りました。
さて、またもビハインドを背負ってしまった湘南。前線の顔触れも試行錯誤が続く中、今日は「機動力を生かすことが大事かなと感じて」と反町監督が説明した佐々木竜太と高山薫の2トップでスタートしましたが、ここと周囲のコンビネーションがなかなか合いません。「相手の2トップがポストタイプではないので、前へ行き過ぎないようには考えていた」と話したのは東京Vの高橋祥平。その高橋と土屋征夫で組むCBは2人とも前へ強いタイプですが、どちらかと言えば独力での突破に特徴を持つ相手2トップをうまく封殺。16分には菊池大介が放った枠のわずか左へ外れるミドルと、20分には中盤で囲まれた小林祐希のロストから、高山にドリブルシュートを許した2つのシーン以外は、チャンスを創らせません。
すると30分、「タクマくんの所でボールが収まるのでやりやすい」と左SBの和田拓也も称賛する阿部拓馬が、ラインブレイクの才も発揮。小林がDFラインの裏へ最高のミドルパスを落とすと、並走していたマーカーを置き去り、飛び出したGKの頭上をフワリと破るループで、ゴールを陥れます。全体的にボールを持つ時間が長かったのは湘南だった印象ですが、スコアは東京Vの2点リードという形になりました。
嫌な流れを断ち切れないホームチーム。ただ、アジエルだけは右サイドから中央辺りをうまく漂い、可能性を感じるプレーを披露します。これには川勝良一監督も「マラニョンの守備が遅れてて、アジエルに(和田)拓也の前を使われた」と言及。当の和田は「アジエルに付きっきりになってしまった」と状況を振り返ります。
するとおそらく反町監督が2トップに期待したであろう“個”の発露は35分で、やはり右サイドから。鎌田翔雅が裏へ入れたボールを、ややルーズな対応になった和田と体を入れ替えた高山が中へ送ると、ニアで潰れた味方を尻目に、ファーで待っていた佐々木が素早くプッシュ。2トップの持ち味がよく出た一発。スタジアムがようやく揺れます。さらに43分にはトリッキーなFKから、アジエルが左へ振ったボールを高山が折り返すと、大井健太郎が放ったボレーは東京Vの人垣がブロック。流れをわずかに引き寄せます。
ところが、これを持続させられないのが苦しい現状か。45+2分、飯尾のリターンを受けた阿部がエリア内へ侵入すると、湘南CB遠藤航と接触して転倒。かなり微妙なシーンではありましたが、福島孝一郎主審が指し示したのはペナルティスポット。「自分が取った時は自分で蹴ろうと思っていた」阿部がGKの逆を付いて確実に加点。1-3でアウェイチームが小さくないアドバンテージを得て、前半は終了しました。
「相手が前半で3点取れたということは、我々も取れるということだ。強い気持ちを持って戦え」と指揮官から檄を飛ばされた湘南。後半スタート早々の46分には、右サイドから鎌田が入れたグラウンダーのアーリークロスを、高山がダイレクトでシュート。ボールはクロスバーを越えたものの、まずは気持ちを見せて残りの45分間へ入ります。それでも50分には和田が左サイドからカットインミドルを枠内へ飛ばすと、54分にも菊岡拓朗の左CKを土屋が高い打点でヘディング。4点目には至りませんが、東京Vもペースを簡単に渡しません。
58分に反町監督が1枚目の交替策。苦しいゲームとなった高山を下げて、今シーズン2試合目の登場となる中村祐也をピッチへ送り出します。これで少し前線にリズムが生まれ、64分には左サイドでその中村が直接FKを狙うシーンを迎えるなど、2点目への期待がスタジアムへ確実に高まる中、71分にカウンターから菊岡のスルーパスへマラニョンが反応。1対1は西部洋平に軍配が上がったものの、「スピードや判断をできるだけスピーディーにして、相手の背中で勝負する」(川勝監督)東京Vにチラつかされるナイフも脅威となったか、湘南はいい流れの時間帯が続きません。
79分には石神直哉とアジエルに替えて、田原豊とルーカスを投入し、3-4-3にシフトした湘南は直後の80分、佐々木の強引な突破から、菊池が枠の右へわずかに逸れる決定機を迎えましたが、以降は「苦しかったけど、気持ちで負けたら終わりだと思ってたんで」と笑った高橋の奮闘も含む、東京V守備陣の集中は切れず。「連戦の最後、ここで連勝を止めたくない」という監督の想いに応えた東京Vが怒濤の4連勝を飾る結果となりました。
勝った東京Vで目立っていたのは飯尾のバランス感覚。「マラニョンとチビ(飯尾)はお互いが入れ替わるということで、固定ではない」と話す川勝監督も「チビが気を利かせている」と認めたように、後半は少しアジエルのケアも含めてか、飯尾が左サイドをケアする時間が長く、これが奏功した形で、前半は突かれていたサイドにうまく蓋。アジエルも決定的な仕事はできず、79分に交替を余儀なくされてしまいました。先制弾も含めて、飯尾の貢献度は非常に高かったと思います。
さて、これで5連敗となった湘南は、「こういう流れのよくない時に、簡単にゴールまで運ばれてしまう」(反町監督)ことも目に付きますが、まずチームから覇気が感じられません。七夕仕様のユニフォームも流れを変えることはできず、サポーターも短冊に願いとして書き込みたいことだらけであろう現状を、どう打破するかは歴戦の将・反町康治にとって腕の見せ所です。 元・AD土屋
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J2第2節 千葉×湘南@フクアリ
前節、栃木との頂上決戦は激闘の末にドロー。首位奪取とはいかなかったものの、絶対的なターゲットであるオーロイを欠きながらも、代役の久保裕一が奮闘を見せ、一定以上の内容を保っていたことは、千葉にとって1つ今後に向けての指針となり得るゲームだったはずです。逆に、現在3連敗と下降傾向にある湘南。特にここ2試合は、無得点の上に連続4失点と安定していたはずの守備が崩壊。嫌な流れをせき止めるためにも、アウェイとはいえ負けは許されない一戦と言えるでしょう。
湘南がエンドを入れ替え、千葉のキックオフで始まったゲームはまず2分、伊藤大介の左FKをオーロイが頭で落とし、佐藤勇人がワントラップから左足ボレーをバーの上へ。9分、伊藤の今度は右CKから、ニアへ走り込んだオーロイのボレーは大きく枠の右へ。11分、オーロイのポストプレーから、伊藤を経由して深井正樹が放ったミドルは、湘南GK西部洋平がキャッチ。最初の15分はチャンスの数で言うと、千葉が上回ります。
ただ、千葉の攻撃は「最もやり方が徹底しているチーム」と湘南の反町康治監督も話したように、当然オーロイへのロングボールが基本的には最優先。「セットプレーの時は僕が競って、CBがセカンドを拾い、流れの中からはCBが競って、僕がセカンドを拾うという話はしてた。前半は割とよくできていたと思う」とは、4-1-4-1の中盤1枚アンカーを務めた松尾直人。確かに、攻撃の大半がオーロイに入れてからということを考えれば、2回のセットプレーを含む3回のピンチというのは決して多くない数字。湘南からすれば、「プランに向こうが合わせてくれた」(反町監督)という感覚が、確かにあったかもしれません。
そうなると、“よい攻撃はよい守備から”。13分に放った松尾のミドル、19分に田原豊が強引に打つも菊池大介に当たったミドル、さらに23分にも坂本が放ったミドルと、この3本すべてにラストパスを出していたアジエルが、うまくボールを引き出し始め、流れは湘南へ。加えて23分のシーンはアジエルの守備が起点になってのチャンスと、10番の精力的なプレーがチームへ推進力を与えます。
すると26分、臼井幸平のフィードにマーク・ミリガンと並走していた田原は、エリア内で体を入れ替えて一歩前へ。直後、ミリガンともつれて倒れるも佐藤隆治主審のホイッスルは鳴らず。激高する湘南ベンチ。反町監督も珍しくテクニカルエリアを出て抗議しますが、当然判定は覆りません。それでも34分には石神直哉、菊池、田原、アジエルと繋いで、最後に受けた田原はシュートまで至りませんでしたが、かなり綺麗な形も創出するなど、「ゲームプラン上は悪くない」(反町監督)湘南の方が、ゴールの匂いを漂わせていたと思います。
そんな中、ゴールが生まれるのは一瞬で。38分、湘南は自陣深い左サイドで千葉のプレスを受け、クリアを中途半端に中へ。「あそこは反応が遅れた」と松尾も振り返る場面でボールを収めたのは、そこまでほとんどゲームに入れていなかった米倉恒貴。至近距離からのシュートは、西部が抜群の反応で弾き出しましたが、こぼれを見逃さなかった深井がプッシュ。「半分は米倉のゴールだと思います」と照れた得点ランク単独トップの9番が一仕事。千葉が先制ゴールを挙げました。
さて、前半の最後に気になるシーンが。45+3分、湘南のCK。キッカーの永木はCBの大井健太郎が上がってくるのを待っていると、主審はそれを待たずにホイッスルを吹き、前半を終了させます。確かに追加タイムは2分と掲示されており、所定の時間を過ぎているので、その判断は問題ないと思いますが、実は直前に石神が長い時間倒れ込んでいました。湘南側はアピールしていましたが、主審は気付いてか気付かずか、ゲームを止めずに続行。そしてCKは認められずという経緯。おそらく一度ゲームが止まっていれば、CKを蹴ることができたであろうことを考えると、湘南にしてみれば何とも言えない一連になってしまいました。
さて、前半の45分間を「湘南の4-1-4-1の形でどこにスペースが生まれるかを見つけることが、あまりうまくいってなかった」と感じていた千葉のドワイト監督は、後半開始からの交替を決断。オーロイを下げて、前節はスタメン出場した久保を送り込みます。この采配が、結果的にペースを千葉にグッと引き寄せる要因となりました。
「大きくサッカーは変えてない」(深井)ものの、元々「(伊藤)大介はいっぱいボールに触ってリズムを創るタイプで、ヨネや勇人とポジションチェンジすると右サイドが生きて、逆サイドの自分も生きる」と深井が話したように、右にいる伊藤がいい意味で流動的に動き回ることが、千葉にアクセントを加えているのですが、オーロイより機動力に優れる久保が、自らの下に並ぶ3枚と有機的に絡むことで、長いボール以外の選択肢が一気に広がります。
すると57分、次のゴールは地上戦で千葉。深井のパスを受けた米倉が左サイドから折り返し、久保の前を通過したボールに飛び込んだ佐藤のシュートは、西部の脇をかいくぐる追加点に。キャプテンの今シーズン初ゴール。平日にも関わらず、9228人も詰め掛けた観衆の大半を占める黄色が沸騰。点差は2点に開きました。
まずは1点を返したい湘南も、64分に2枚替え。菊池と坂本絋司を下げて、ルーカスと平木良樹を投入。中盤もダイヤモンドにシフトして、2トップと、その下に置いたアジエルで反撃を試みたい所でしたが、「ボールを収める所で収められなかった」と指揮官も振り返ったように、前半から孤立しがちだった田原は、布陣変更を経てもチームの基点にはなりきれず、75分にピッチへ登場した高山薫も、カンフル剤とまではいきません。
一方の千葉は「大人のサッカーができたのではないかと思う」とドワイト監督も満足そうに語った通り、後半はある程度余裕を持ってゲームをコントロール。深井も「2-0になってからは、そこまで動かないでもサッカーできた」と手応えを掴んだ様子。ゲームは2点差が付いたままで、終了のホイッスル。「ホームでエンターテイメント性の高いゲームができた」とドワイト監督も納得の内容で、千葉が湘南に快勝を収めました。
敗れた湘南は泥沼の4連敗。オーロイはうまく消していたものの、「オーロイじゃない所からの失点だったので悔やまれる」と松尾が話したように、ペースを握っていた中での失点が最後まで響いた格好です。ただ、2点目は完全に崩された形。「後半になって地力に優る方がだんだん優位性を保ってしまった」と反町監督が話したように、現状では少し力の差があったのではないでしょうか。
勝った千葉は「自分たちが主導権を握れる時間が長くなってきた」という深井の言葉にもあるように、“オーロイ以外”が攻撃の形と替わりの選手両面で出てきている印象です。本来、選手層はJ2でもトップレベル。ハッキリした形のベースに彩りが加わってきた今の千葉は、パレットに出された様々な色が、調和の取れた1つの色にうまく混ざりつつある状況に似ているのかもしれません。 AD土屋
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J2第18節 千葉×栃木@フクアリ
7勝2分け2敗、勝ち点23で並ぶ2位と1位の直接対決。わかりやすい204センチのターゲットと、普通では考えられないロングスローワーを得て、J2の序盤戦を席巻した千葉。一方、松田浩監督らしいキッチリとした4-4-2スタイルはベースに持ちながら、ゲームの流れを見て選手たちがフレキシブルに修正を図れる領域まで確実に到達している栃木。共に黄色を基調とした、関東に本拠地を置くチーム同士の対峙。おそらくここまでのJ2全体を見ても、最大のビッグマッチでしょう。ゲーム前から両チームのサポーターもヒートアップ。栃木のCB渡部博文も「アップしている時から絶対に勝ちたいという、いいモチベーションになった」と話す最高の雰囲気に包まれた一戦は、栃木のキックオフで幕が開きました。
ゲームはいきなりフルスロットル。2分、大久保裕樹のロングスローをチェ・クンシクが頭でフリックすると、右足のアウトサイドで押し込んだのはリカルド・ロボ。千葉のお株を奪うかのような形から、最後はさすがの嗅覚を見せたブラジル人ストライカーの先制弾。いきなり栃木が先制します。これで勢いに乗った栃木は猛ラッシュ。4分、左サイドのタッチライン際で粘り強くマイボールに収めた水沼宏太のシュートは千葉GK岡本昌弘がファインセーブ。そのCKから、鈴木修人の蹴ったボールは、水沼が頭で合わせるも当たりが弱く、岡本がキャッチ。6分、パウリーニョの縦パスを高木和正がヒールで流すと、リカルド・ロボのボレーは枠の右へ。4本のシュートを序盤に集めます。
「立ち上がりはよくなかった」というドワイト監督の言葉を聞くまでもなく、苦しい展開を強いられた千葉。オーロイを出場停止で欠く中、「オーロイがいなかっただけで他は変わらない」(松田監督)「オーロイがいてもいなくても同じようなやり方」(水沼)と2人が口を揃えたように、スタイルは一緒。9分に伊藤大介の左CKは、二アの混戦からクロスバーにヒットしますが、この辺りから流れが一変します。
シュートこそなかったものの、ジワジワと千葉が押し込み始め、サポーターが創り出す「一種独特の雰囲気」(松田監督)もホームチームを後押し。すると25分、栃木のクリアを拾ったファン・ゲッセルが左へ振ると、「ファーストタッチが真ん中に入って、ファーに蹴るのが難しかったので、アウトにかけてニアを狙った」深井正樹のミドルは、イメージ通りの完璧な軌道を描いてゴールに突き刺さるゴラッソ。スコアは振り出しに戻されます。
止まらない千葉特急。34分、青木良太のスローインから、久保裕一が左サイドをドリブルで運んでクロス。DFに当たり、フワリと中央へ浮かんだボールを、走り込んだ米倉恒貴がボレーでプッシュ。「いいリカバーをすることができた」とドワイト監督も評価した逆転劇。スコアは引っ繰り返りました。
10分過ぎからかなりの劣勢に陥った栃木。「久保へのロングボールが多く、ポジション間が開いてしまって、セカンドを拾えなかった」とはCBの渡部。そのセカンド奪取で後手に回ったボランチの鈴木は「ウチの2トップを相手のボランチまで戻らせるのかどうかを、ハッキリさせればよかった」と詳細な補足。鈴木は攻撃面でも「もっと簡単に裏のスペースを使えれば」と、攻守両面でうまく回らなかったチームを振り返ってくれました。
ただ、そこで終わらないのが首位に立っているチームの証か。37分、チェ・クンシクのパスから鈴木が右クロスを送り、水沼がヘディングを枠へ飛ばすと、わずかに引き戻したゲームの波をしっかりキャッチ。40分、那須川将大の右FKはゴール前で混戦に。左へ流れたボールに反応したリカルド・ロボは、なくなった角度などものともせず、豪快に千葉ゴールをぶち抜く同点弾。様々なエッセンスが凝縮されたような前半は、スペクタクルという面でも申し分のない4ゴールが生まれる45分間。首位攻防にふさわしい展開で、ハーフタイムを迎えました。
後半はスタートから「まず1回落ち着こう」と声を掛けた松田監督が交替策。負傷を抱えるチェ・クンシクと廣瀬浩二を入れ替え、前の機動力を高めます。52分は栃木。高木の右FKはサインプレー。大外でフリーになっていた大久保は、ワントラップからシュートを放つも、揺れたのはサイドネットの外側。56分も栃木。カウンターから高木のクロスが中央でこぼれると、拾ったパウリーニョのミドルはわずかにバーの上へ。62分は千葉。カウンターから米倉が右へ送ると、佐藤勇人はすかさず逆サイドへ。フリーの久保はオフサイドになりましたが、チャンス創出。どちらもペースは取り切れない中でも、特に守から攻への切り替えはお互いに速く、カウンターが大事な要素となっていきます。
65分には千葉。伊藤、米倉、青木良太とボールが回り、久保のシュートは栃木GK武田博行が弾き出し、ゴールならず。69分は栃木。これもハーフカウンターから水沼のパスを鈴木が粘って前へ。上がっていたSB宇佐美宏和のクロスはファーへ流れてしまったものの、双方チャンスの芽は覗かせます。
71分、ドワイト監督が1枚目のカード。久保を外して青木孝太を送り込み、前線でターゲットとなる選手のタイプを変えてきました。75分は一瞬のエアポケット。狡猾なリカルド・ロボが突如放ったミドルは、何とか岡本がセーブするも、流れと関係なく訪れたリカルド・ロボの決定機。一瞬の怖さを植え付けます。83分は千葉。山口慶のフィードを、深井がドリブルから左へ送ると、米倉の決定的なシュートは武田が飛び付いて阻止。86分には栃木。途中出場の河原和寿が左へ展開し、リカルド・ロボのクロスを自ら受けましたが、シュートは打ち切れません。最後までお互いに攻める姿勢を見せ合った好ゲームは、それ以上スコア動かず。「J2の中でもトップレベルのゲームをすることができた」とドワイト監督も言及する内容で、お互いに勝ち点1を分け合う結果となりました。
トータルで見れば、「相手の時間帯が今までのゲームで一番多かった」(高木)「ある程度自分たちのリズムで進めることができた」(深井)と2人が話したように、千葉のペースで進む時間の長いゲームだったと思います。それでも、先制して一時は逆転されながら追い付く展開は、栃木にとって「最低限の結果」(水沼)であり、「できれば勝ちたかったのが正直な気持ち」(松田監督)とのこと。この言葉が今シーズンを明らかに昇格のチャンスと捉えているチームの意識を表していると思います。次に両者が相見えるのは、10月23日の第32節。その時もこのカードが首位攻防戦として注目を集めている可能性が十分にあることを予感させる、素晴らしいゲームでした。 AD土屋
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J2第18節 東京V×岡山@味スタ
共に3勝3分け5敗同士で14位と15位。前節は富山に今シーズン最多となる5ゴールを奪って大勝。その流れを継続させて1つでも順位を上げていきたい東京V。一方、「前節は自分たちのよさを出せず、腑甲斐ない戦いをしてしまった」と影山雅永監督が振り返ったように、ホームで水戸に0-1で敗れた岡山。こちらもなかなかメンバー構成が安定せず、試行錯誤が続いている印象です。
さて、ゲームが始まるといきなり動いたスコア。6分、左サイドから菊岡拓朗がニアへ落としたCKを、岡山のチアゴがクリアしきれず、揺れてしまったゴールネット。記録上は菊岡のゴールとなりましたが、限りなくオウンゴールに近い形で東京Vが先手を取ります。さらに畳み掛ける緑。9分、小林祐希が右へ展開すると、森勇介はドリブルで縦へ運び、グラウンダーで最高のクロス。走り込んできた河野広貴は左足アウトで面を合わせるようなボレー。ボールはニアサイドを滑るように貫きます。高いイメージのシンクロと、それを具現化する高い技術。間違いなくJ1クラスのゴラッソで、点差が開きました。
早くも2点を奪われた岡山は、チアゴへボールを入れる意識は窺えますが、長いボールの精度も低く、前で収まりません。また、共にレフティの千明聖典とキム・ミンキュンで組んだドイスボランチも、捌くばかりで縦へのスイッチを入れられず。結果、18分の近藤徹志が入れたフィードをチアゴが強引に持ち込んだ可能性のない枠外シュートと、21分に右サイドから後藤圭太が上げたクロスに、臼井仁志が合わせたヘディングの2本が前半に記録されたすべてのシュート。かなりの劣勢を強いられる展開となりました。
ただ、「早い時間帯で点が入ったので、落ち着いてプレーできた」(川勝監督)東京Vもややイージーなミスも少なくなく、ゲーム自体のペースはかなりダウンしてしまいます。そんな中で次に生まれたゴールは岡山の致命的なミスから。34分、左から阿部拓馬が上げたクロスを、絞っていた小林優希は難しい高さのボールだったとはいえ、クリアしきれずに小さく落としてしまいます。狙っていた河野の素早いシュートは右ポストを直撃しましたが、こぼれ球を河野が自らプッシュ。3-0という大差が付いて、45分間は終了しました。
前半は「まったく自分たちのサッカーができなかった」(影山監督)岡山は、47分に右サイドで澤口雅彦が付けたボールを、Jリーグ初スタメンとなった清水ユース出身のルーキー石原崇兆がクロス。臼井は空振り、シュートシーンにはならなかったものの、ようやく初めて形らしい形を創出すると、51分にもチアゴ、千明と繋いで、最後は臼井が枠の右へ逸れるミドルにチャレンジ。ここに来て、攻撃の時間が出てきます。
ところが60分に次のゴールを決めたのも東京V。左サイドの高い位置で和田がドリブルからバックパス。河野のピンポイントクロスに、ファーサイドで合わせたのは、彼女が来日したばかりだというマラニョン(エルゴラ・田中直希記者情報)。プライベートも充実したブラジル人ストライカーの今シーズン初ゴール。実質、勝負は決しました。
東京Vは2点目が右から森のクロス、4点目が左から河野のクロスと、両サイドからゴールに繋がる形を創りました。これに関して「今まではサイドにボールが入った時にガス欠していたので、そこから早くボールを入れたいと話していた」と川勝監督。サイドから一発のクロスで決め切るパターンが出てくると、当然得意の中央突破も効果的になるはずで、そういう点ではイメージという意味でも非常に大きな2つのゴールだったのではないでしょうか。そして61分、ゴールを決めたマラニョンに替わって、ピッチへ登場したのは高木善朗。オランダ・エールディヴィジのユトレヒトへ移籍する18歳の国内ラストゲームに、スタンドからも温かい拍手が送られます。
“キビダンゴ”のチャントで選手を鼓舞するなど、東京まで駆け付けたサポーターのためにも、何とか一矢は報いたい岡山。65分には臼井に替えて、東大卒のルーキー久木田紳吾を投入。66分にはチアゴのショートコーナーから石原が切れ味鋭いドリブルを見せ、1人かわして上げたクロスは何とかDFがクリア。68分には小林のFKから、澤口のヘディングはわずかにバーの上へ。71分、小林の右CKはGKがキャッチ。ここに来て、セットプレーからチャンスを創り出します。
さらに71分には「イライラさせることができたと思う」と川勝監督も話したチアゴと岸田裕樹がスイッチ。75分、澤口の右クロスに岸田が下がりながらうまく当てたヘディングは枠の上へ。79分、澤口が右サイドで粘って折り返したボールを、キムはダイレクトでシュートに変えるも、わずかにゴール左へ。80分、小林のCKから、澤口のヘディングはバーの上へ。「俺たちはもう少しやれるという姿勢を見せられた」と影山監督も語ったように、この時間帯は岡山が反攻。特にほとんどのチャンスに顔を出していた澤口の奮闘ぶりは圧巻。このゲームでは彼が最も気持ちの入ったプレーをしていたと思います。
残り時間で言うと、85分に投入されたアポジがその俊足で場内をどよめかせ、89分には千明がミドルで東京VのGK柴崎貴広にセーブを強いると、ゲームの終了を告げるホイッスル。東京Vがホームのサポーターに大勝での勝ち点3をプレゼント。高木のメモリアルゲームに華を添える結果となりました。
勝った東京Vは、イージーミスからリズムを壊すシーンもあったものの、押し込まれた後半の時間帯は4点をリードしてから。「チームとして行く所と行かない所の統一感を持とう」(川勝監督)という課題は、今日のゲームでいうとある程度クリアしていた印象です。前述した2点目は軽くJ2レベルを凌駕した、驚異的なゴール。個の力は抜群なだけに、チームとして確実にステップアップしていけば、まだまだ上位を十分に狙えるチームという印象を持ちました。 AD土屋
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J1第17節 柏×G大阪@日立台
今シーズン初めての完敗をホームで磐田に喫して迎えた前節の福岡戦は、苦しみながらも勝ち点3を獲得。再び訪れた水曜開催のホームゲームで、連勝を飾って首位固めといきたい柏。一方、ACL敗退以降はなかなか結果が付いてこないゲームが続き、2試合消化が少ないとはいえ、順位も8位と中位に甘んじる中で、9ゴールとチームのみならずリーグのトップスコアラーだったアドリアーノの中東移籍が決定。「少ないオプションでガンバらしさを構築していく」と西野朗監督は話しましたが、指揮官としては何とも頭の痛い所でしょう。
さて、開始29秒でレアンドロ・ドミンゲスがいきなり飛ばしたミドルが打ち合いの号砲。3分、縦パスをカットした加地がそのまま持ち込み、平井のシュートはゴールネットを揺らすもオフサイド。9分、村上の縦パスを茨田がクロスに変えたボールは、ニアへ入り込んだ北嶋がバックへッドで狙うも、DFがブロック。ハイテンションの攻防が続きます。
すると最初のゴールが生まれたのは、このCKから。10分、レアンドロが蹴ったボールは中央を抜けてファーサイドへ。フリーになっていた田中が、迷わずダイレクトで左足を振り切ったシュートはゴール右スミへ一直線。2試合ぶりのホーム勝利へ向けて、幸先良く柏がリードを奪いました。
「そう簡単には崩し切れない、バランスのいいレイソル」(西野監督)に先手を取られたG大阪でしたが、まったく怯まず。11分、遠藤の右FKから平井が一度は空振りしたものの、再びチャレンジしてチーム初シュートを枠に飛ばすと、すぐさま生まれた同点弾。14分、二川のパスを受けた宇佐美は、右サイドから左へ縦断しながらドリブルで運び、中に切り返すとパスを選択。遠藤は冷静に1人をかわすと、ゴール右スミへ丁寧なシュートを置きにかかり、見事成功。早くもお互いに1点ずつを奪い合う展開になりました。
以降も、16分と20分共にうまく合わせた北嶋のボレーや、22分にカウンターから遠藤が繋ぎ、最後は宇佐美がカットインから強烈な枠内シュートを放つなど、スピーディーな展開は変わりません。ただ、そんな落ち着かない展開を嫌ってか、4-2-3-1でスタートした布陣から、20分前後に中盤をダイヤモンド気味に組み替えて4-4-2にシフトした柏は、確かに守備こそ一定の安定感を取り戻したものの、25分にカウンターから茨田が放ったミドルが前半最後のシュート。G大阪の攻める時間が長くなっていきます。この要因は、やはり「遠藤をフリーにしてしまうシーンが多かった」(柏・ネルシーニョ監督)こと。3列目からスルスルと上がってくることの多かった遠藤に対して、柏は誰が掴みに行くのかが曖昧に。29分には加地とのパス交換から、飛び出してきた遠藤がわずかに枠の左へ外れたシュートをお見舞い。さらに「2トップの方がガンバのサッカーはできる」と話したイ・グノや二川、宇佐美もサイドでバイタルでとボールタッチが増加し、これで「ガンバに創らせてはいけないパスのリズム」(ネルシーニョ監督)が生まれ、攻勢になっていった印象です。共にスピーディーに攻め合う流れだったのは間違いありませんが、ペースはG大阪に傾いて、前半は終了しました。
後半は再びシステムを変えて、「相手のドイスボランチに茨田とレアンドロをマンツーマン気味に付けた」(大谷)柏。しかし、その効果がハッキリと判明する前にゴールを挙げたのはG大阪。51分、左サイドから下平の上げたクロスがファーに流れると、拾った遠藤は後ろへ。加地は自らカットインすると左足でシュート。DFに当たったこぼれをプッシュしたのは平井。なかなか攻撃のいい流れに乗れなかったものの、一発で起用に応えたストライカーの逆転弾。リードは入れ替わりました。
さて、逆転を許した柏でしたが、失点前から全体的に流れはよくなり、攻撃の手数も増えていました。失点後も58分にジョルジ・ワグネル、レアンドロ、大谷と回り、茨田のミドルはわずかにゴール右へ。60分にも、田中のラストパスを受けたレアンドロが、左へ持ち出しながら枠を捉えたシュートは、藤ヶ谷がファインセーブ。決定機も創出します。
ところが次にゴールが記録されたのもG大阪。62分、うまくマークを外した遠藤が右へラストパス。イ・グノは右への持ち出しが1つ多く、角度がなくなってしまいましたが、「思い切り打とうと思って」振り抜いたフィニッシュは、ニアサイドを豪快に看破。1-3。G大阪が2点にリードを広げました。
「中盤をニュートラルに持っていって、チャンスを創る」(ネルシーニョ監督)という狙いは体現されつつあった中で、一瞬の隙から突き放された柏は、66分に2枚替え。北嶋と大谷を下げて、工藤と兵働を投入。するといきなり直後に左サイドを崩し、田中の折り返しはフリーのレアンドロに渡ると、シュートは藤ヶ谷にキャッチされましたが、2度目は外さないのが10番のスナイパー。1分後の67分、茨田のパスを引き出したレアンドロは、躊躇なくミドルにチャレンジ。DFに当たってか、わずかにコースの変わった弾道は藤ヶ谷を通過し、ゴールネットへ。またも点差は1点に縮まります。
これで流れは完全に「選手を替えてチャンスも創り、攻撃もスピーディーになった」(ネルシーニョ監督)柏。69分には兵働のスルーパスから工藤が抜け出すも、シュートは藤ヶ谷の正面。74分には疲労の色濃いワグネルを橋本と入れ替え、攻守両面でバランスを整えつつ、勝負に出ます。この勢いに西野監督もたまらずイ・グノを下げて内田を中盤に投入。「レアンドロがカウンターを狙ったり、2トップに近い所にいたので、まずそこを掴ませる」(西野監督)と、トレスボランチの4-3-1-2にシフトしますが、効果薄。78分には武井の不用意なロストから、橋本を経由して、受けたレアンドロは中央をドリブルで運び、枠内へミドル。同点、そして再逆転をも期待する雰囲気が日立台に満ち溢れます。
そんな中、決着は突然に。80分、二川が右サイドで何気なく始めたFKが内田、山口と渡って左へ回ると、下平はギアを一段上げて縦へ運び、思い切りよく放ったミドルがゴール右スミを確実に捕獲。56試合目にしてJリーグ初ゴールとなった伏兵のダメ押し弾が飛び出し、「突き放せたことが今日の収穫だと思う」と西野監督も話したG大阪が、首位の柏を打ち合いの末に撃破する結果となりました。
スペクタクル度の高い好ゲームだったと思います。柏も前半に一度は手放した流れを、後半に入って完全に取り戻し、敵将も最後は「5-4-1にしてディフェンシブに戦わざるを得ない状況だった」と認めるなど、敗れたものの首位に立っている理由をある程度は証明したのではないでしょうか。ただ、やはりトータルではG大阪の方が一枚上手。「非常に厳しい試合だったが、今の状況下でやれることは100%出し切って戦えた」と西野監督が話したように、2点を奪われながら4点を取るスタイルは「ガンバと言えばガンバ」(西野監督)。現時点での実力差がそのままスコアに反映されたようなゲームという印象を受けました。 AD土屋
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J2第17節 草津×京都@正田スタ
FC東京、千葉と昇格の本命候補に挙げられている強豪を相次いでホームで撃破。ここまで5位とJ2の“台風の目”的な存在として注目を集めている草津。一方、大木武新監督を招聘し、1年でのJ1復帰を目標に掲げながら、ここまでわずか2勝しか挙げられず、19位とあまりにも苦しいスタートとなった京都。今日は「凄く緊張していたけど、チームの力になれると思っていた」という33歳の鈴木慎吾と、「結果を残すことだけを考えていた」という18歳の伊藤優汰が揃って今シーズン初スタメン。前節の勝利で得た流れにうまく乗りたい所です。
さて、ゲームは4分に熊林親吾のクロスにアレックスが、13分にはまたも熊林の今度はCKから御厨貴文が、共にヘディングで枠を狙いましたが、ゴールとはいかず。ただ、手数は草津が出しますが、全体としては「前半の入り方が非常に悪い」(草津・副島博志監督)「試合の入り方としては非常によかった」(鈴木)と2人が口を揃えたように京都ペース。特に3トップの右に入った伊藤と、中盤の右サイドに入った加藤弘堅のコンビネーションがよく、草津の左サイドを崩しにかかります。
すると14分に生まれた先制ゴールも、やはりそちらのサイドから。加藤のパスを受けた伊藤は「スピード勝負だと思って行ったら、うまいタイミングで抜けた」とドリブルで切れ込み中へ。加藤のシュートは草津のGK北一真が弾きましたが、最後は中山博貴がプッシュ。流れをしっかり結果に繋げた京都がリードを奪いました。
その後も変わらず京都攻勢。押し込まれた草津はファウルやクリアで逃げるのが精一杯という場面が続き、鈴木と加藤が精度の高いプレースキックでゴール前を脅かします。草津も30分には櫻田和樹のパスを受けて、ここまで沈黙を余儀なくされていたラフィーニャが反転ミドルを枠へ飛ばしますが、京都のGK水谷雄一が何とか防ぐと、直後に追加点。31分、草津の最終ラインで生まれたイージーな連携ミスから、内藤洋平が左へ繋いだボールを、走り込んだ鈴木は「気持ちを籠めて」得意の左足で左スミへグサリ。ゴール後、一直線にベンチへ走り、大木監督に抱き付いたシーンについては「自然と走って行っちゃった。新人のような喜び方で恥ずかしいんですけど」と照れ笑い。チーム最年長のベテランが挙げた今シーズン初ゴール。アウェイチームが点差を広げました。
まったくと言っていい程に攻撃の手を繰り出せなかった草津。1つの停滞した要因は中盤での劣勢だったと思います。京都のシステムは3-4-3でしたが、中盤はダイヤモンドを採用していたものの、右の加藤と左の鈴木は中に絞る場面が多く、ボランチの櫻田も「僕とマツさん(松下)の周りに4人いるような感じ。どんどん選手が湧いて出てくるような感じだった」と述懐。アウトサイドは3バックと3トップのサイドプレーヤーがしっかりケアしていたため、中盤の4枚が広い範囲でのセカンド奪取に貢献したことで攻撃の厚みをもたらし、草津には「判断とサポートの遅れ」(副島監督)を誘発させてパスワークを分断。キーマンの熊林もほとんどボールに触れないとあれば、自然と草津の攻撃は鎮火。40分に松下が枠へ飛ばした30m近いFKも、水谷がファインセーブで阻止。京都からすれば100点満点に近いような内容で、前半は45分が経過しました。
ところが後半は一転、立ち上がりから草津が圧倒的にペースを握ってしまうのだから、サッカーはわかりません。46分、ラフィーニャからのパスを萬代宏樹はシンプルにはたくと、エリア外で受けた櫻田は「思い切り打っておこうと」果敢にミドルへチャレンジ。ボールはゴール左スミへ豪快に飛び込み、本人も「7年間で敷島では初めてのゴール」と語る記念弾は、すなわち追撃弾。たちまち点差は1点に縮まります。
前述したように、このゴールで流れは一気に草津へ。52分、ゴール右、約25mの位置からラフィーニャが狙ったFKはカベがブロック。56分、60分と続けて熊林が狙ったFKはシュートまで繋がらなかったものの、「相手の勢いに負けた訳じゃないけど、押し込まれてしまった」と鈴木が振り返ったように、京都は一気に苦しい展開を強いられます。
ペースが入れ替わった理由の1つには、「前の選手の球離れがよくなったので、攻撃がスピードアップした」(櫻田)ことが挙げられそうです。実際に46分のゴールも、萬代が簡単に落とした所から。ボールの回りが速くなったことで、京都も前半ほど的を絞り切れず、結果として選手間の距離が開いてしまったために、それが攻撃面での「ボールを貰いに来る選手がいない」(大木監督)という部分にも繋がり、攻守両面で機能性が低下してしまいました。
イケイケの草津。61分、萬代、熊林と回してラフィーニャのシュートは水谷がファインセーブ。そして62分、櫻田が左へ展開したボールを、熊林は細かいステップワークから中へ上げると、完全にフリーとなった萬代がヘディングでゴールへ流し込みます。千葉戦、東京V戦と連続ゴールをマークしていた萬代の3戦連発弾。到来したビッグウェーブを見事に乗りこなした草津が、あっという間にスコアを振り出しへ戻しました。
「逆転できそうな雰囲気」(松下)が充満したスタジアム。67分には萬代、ラフィーニャと繋いで、アレックスのシュートはわずかにゴール左へ。73分、熊林のロングスローから松下がボレーで狙うも、水谷がキャッチ。確かに3点目が入りそうな雰囲気は草津にありました。ところが再び流れを京都へ引き戻したのは、大木監督の采配。75分、鈴木に替えて、「ボールを受ける選手を置くために(中山)博貴を下げて、(中村)太亮で盛り返して行こうと。」(大木監督)送り出されたのは中村太亮。すると76分にはゴール前の混線から、その中村太亮が強烈な枠内シュート。ここは北に阻まれましたが、直後の77分にもチャンス。中村太亮からパスを受けた中山が左サイドを切り裂き、「マイナスに来るなと感じて」走り込んだ伊藤が左足を振り抜くと、揺れたネット。18歳のJリーグ初ゴールは大きな勝ち越し弾。次の1点は耐えに耐えていた京都が狙いを体現して記録しました。
リードを許した草津は79分に熊林のCKから、アレックスの放った強烈ボレーも水谷がファインセーブで阻止。81分には永田拓也と櫻田を下げて、田中淳とリンコンを投入しましたが、指揮官も「あまり機能しなかった」と認めたように、交替は奏功せず。逆に「ボールを受ける選手を置くために中山を下げて、太亮で盛り返していこう」というプランが当たり、84分には伊藤のクロスから中村太亮がフリーでヘディング。北にキャッチされましたが、完全に形勢を引っ繰り返すと、87分に生まれたダメ押しゴール。軽率なキープを見せた田中から草津陣内深くでボールを奪った内藤が中へ。受けた伊藤の「コースはなかったけどDFの股下を狙った」シュートは、ゴールネットに到達。「シュートを打つタイミングは独特。非常によかったと思う」と大木監督も評価したルーキーの2発で、京都が今シーズン初の連勝を決める結果となりました。
時間帯によってどちらに流れが来ているかが、かなりハッキリしていたゲームでした。全体の流れとしては、草津が逆転していてもおかしくなかったと思います。そんな「いわゆる負けパターン」(鈴木)を若手の力で跳ね返しての勝利は、ひょっとすると京都にとってターニングポイントになり得る、大きな勝ち点3奪取となるかもしれません。 AD土屋
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J1第16節 川崎×広島@等々力
今節最大の注目カード。序盤こそなかなか安定しない戦いが続いていたものの、ここに来て5試合連続負けなしで5位まで浮上してきた川崎。対するはそのスタイル上、どうしても攻撃陣に注目が集まる中、今シーズンは柏と並ぶリーグ最少の7失点と守備陣の安定感が光り、3位に付けている広島。上位同士の直接対決です。
攻撃的なスタイルのチームが顔を合わせるとあって、立ち上がりからのフルスロットルを予想していた所もあったのですが、実際は相当スローな立ち上がり。5分に川崎は稲本の鋭い縦パスから、山瀬のシュートがDFに当たってGKにキャッチされるシーンを創り、17分にはバイタルでルーズボールに反応した稲本が、西川にファインセーブを強いる左足ミドルを飛ばしましたが、この2つのシーンだけが開始30分までの両チームで、ゴールの匂いを感じさせたシーン。ボールキープは6対4か、あるいは7対3くらいの割合で川崎に分があったものの、そこまで川崎が攻勢だとも言い切れないような展開が続きます。
広島の攻撃が機能しなかった要因の1つは、佐藤、李、森崎浩司で形成した前の3人にまったくボールが入らなかったこと。単純に「簡単なミスが多かった」(李)こともありますが、川崎のCBを務めた井川が「ナビスコでやっていたので、修正できた所はあった。SBとも声を掛けて受け渡しはうまくできていたと思う」と話したように、割と最近に広島と対戦した経験から、ある程度は相手の動きを把握していたことがプラスに働いた様子。ライン間のスペースもドイスボランチと確実に監視し、ほとんど自由を与えなかったために、「前線でのコンビネーションもよくなかった」とペトロヴィッチ監督も触れた通り、3人のコンビネーションを完全に分断。さらに「相手の特徴でもある、切り替えの所で負けていなかった」(田中裕介)ことも、磐石のカウンター対応に繋がっていた印象です。
34分には李がこのゲームで初めて前を向いて仕掛けると、スルスルと抜け出しますが、柴崎が鋭い読みでインターセプト。すると直後の35分、柴崎が左へ回したボールを小宮山はダイレクトでアーリークロス。ニアへ走り込んだ矢島は、ヒール気味のアウトサイドで枠へ飛ばすと、ボールはクロスバーを叩いてゴールの中へ。「川崎もそれほどチャンスらしいチャンスがあったとは思えないが…」とペトロヴィッチ監督は話したものの、ワンチャンスをしっかりゴールへ結び付けた川崎の技術と狡猾さはやはり特筆すべきポイント。その前から少し主導権を握り始め、活性化していた左サイドを使った形というのも見逃せない部分でしょうか。川崎からすれば望外とは言いませんが、それに近い1-0というスコアで、前半の45分間は終了しました。
後半はペトロヴィッチ監督もスタートから決断。リーグ戦初スタメンの右WB石川大徳を下げて、ミキッチを投入。すると47分には森崎浩司のパスを受けたミキッチが、マイナスにピンポイントの折り返し。中島には川崎DFが寄せたためにシュートは打てませんでしたが、1つ形を創ると、48分にも森崎浩司が左へ展開。山岸のアーリークロスは佐藤のヘディングシュートへ。ようやく広島にこのゲーム初シュートが記録されるなど、「後半はいい形で入った。攻撃がうまく行き始めた」と指揮官も言及。52分にはトミッチとムジリを入れ替え、畳み掛ける態勢を整えます。
一方の川崎は「どうしても受けてしまって、ボールを保持できなくなった」(相馬監督)打開策として、54分には小林に替えてジュ二ーニョがピッチへ。すると10番は55分に小宮山のクロスへ合わせたヘディング、57分には左足ミドルと、交替直後から推進力をチームにもたらすさすがのパフォーマンスを披露。そして58分に飛び出したビッグプレー。広島が狙ったクサビを抜群の出足で奪った菊地は、そのまま全速力で最前線へ。左サイドから矢島が上げたクロスに、そのまま突っ込んだ菊地のヘディングがゴールに突き刺さります。言わば2人だけで完成させた「クラシックなカウンター」(ペトロヴィッチ監督)でしたが、その一連の鮮やかさは最高級。リードが広がりました。
少しリズムも取れてきた所で痛恨の2失点目を喫した広島は、最初の45分間に比べれば格段にボールも回るようになり、67分にはショートパスを繋いだ流れから獲得したCKを森崎浩司が蹴り入れ、盛田が頭で枠の上へ飛ばすシーンも創りましたが、「パスミスが多いのはウチのサッカーじゃない」と李も語った通り、イージーなミスからカウンターを受けるシーンが頻発。71分にはカウンターからジュニーニョ、山瀬と回して、田坂のシュートは懸命に戻った森崎和幸が体でブロック。事なきは得たものの、逆にピンチも増えてしまいます。
対して「全体の運動量も落ちて、自分たちでボールを動かせなくなっていた」と判断した相馬監督は、72分に矢島と中村、82分に稲本と横山をスイッチ。最終盤に向けててこ入れを図るも、ここからは広島が意地の反攻。83分、ムジリが右へ大きく展開すると、追い付いたミキッチのクロスを佐藤が頭で狙うも枠外。85分、森崎浩司のミドルパスを井川がクリアミスすると、高萩はダイレクトでシュートを放つもヒットせず。88分、佐藤の巧みなポストプレーから、山岸の素晴らしい左足クロスは、ムジリわずかに届かず、万事休す。「みんな慣れてきて、自分の色をわかってきた」と小宮山が話したように、かなりチームとしてもうまく回り始めている川崎が、2試合ぶりのホーム勝利をサポーターへ届ける結果となりました。
広島は連戦を見越して、ややターンオーバー的にメンバーを入れ替えましたが、「何人かはいい出来だったが、何人かは期待していたプレーではなかった」とペトロヴィッチ監督も明言したように、ハマらなかった部分のパワー不足がそのまま敗因に繋がったような印象です。さらにペトロヴィッチ監督は「自分たちができないことまで始める傾向が見られた」とも言及。次のホームで迎える山形戦で真価が問われそうです。
勝った川崎は「今日は菊地だったけど、2試合で6人がゴールしているし、誰からでもゴールが取れることを証明できた」と井川。攻守両面で「今までやってきたことが形になってきた」という田中裕介の言葉も頷けます。しかも、前節、今節とどちらも絶対的支柱の中村をスタメンから欠いての連勝。そこからも川崎の成熟度が着実に上昇している印象を受けました。 AD土屋
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J1第15節 柏×磐田@日立台
7勝1分け1敗。2位の広島に“1ゲーム”以上のポイント差を付けて、首位を快走する柏。上位対決となった前節も横浜FM相手にシュート4本での完勝を収めるなど、昨シーズン途中から取り組んできた“J1を見据えた戦い方”が間違っていなかったことを、圧倒的な結果で証明し続けています。
そんな柏と対峙するのは、3勝4分け2敗で7位に付ける磐田。小林裕紀、山田大記とセンス溢れるルーキー2人が早くもチームの主力として大車輪の活躍。今日は山崎のU-22代表選出を受けて、前線では金園英学がリーグ戦初スタメンに抜擢され、試合開始のピッチには大卒1年目トリオが勢揃い。若い選手が多いため、伸びしろという意味でも楽しみなチームです。
さて、ゲームが始まると好調そのままに勢い良く飛び出したのは柏。いきなり1分、田中の突破から奪ったCK。ジョルジ・ワグネルのキックに、合わせた村上のヘディングはクロスバーの上へ。4分、レアンドロ・ドミンゲスの右FKに、二アで北嶋のバックへッドはDFがブロック。5分、レアンドロの右CKから、川口がパンチングしたルーズボールを、栗澤がボレーで狙うも枠の上へ。それでも積極的な仕掛けから獲得したセットプレーで、柏が攻勢に出ます。
ところが、10分に磐田が駒野、山田と繋いで創った前田のシュートチャンスを、栗澤が間一髪のタックルで凌いだ辺りから、ペースは緩やかに磐田へ移行していきました。この日の柏は攻撃的な中盤がレアンドロを中に置いて、大津は左に開かせる、少しいびつなボックスを採用。右サイドを少し空けるような形でゲームに入ります。「ミーティングでそこはしっかり言われていた」(藤田)という、「レアンドロがかなり中に絞るので、そのスペースを使おうということ」(ジウシーニョ)。これだけなら、おそらく他のチームも当然実行してくることですが、この策を磐田がより有効なものにしていた理由は、前線からの激しいプレッシング。特にドイスボランチの一角を担う小林が「レアンドロの位置は、那須さんと2人でかなり確認していた」と話したように、「柏の攻撃の中心」(磐田・柳下正明監督)であるレアンドロへのプレスがかなり速く、前を向く状況を創らせません。ここでスイッチが入らない柏は全体的にパスワークがブレ始め、逆に磐田は「奪ったボールから左サイドをうまく使える」(藤田)状況に。左サイドの活性化は、さらに右サイドの勢いも生み出し、「サイドの主導権が取れて、ウチのリズムになった」と小林。磐田が流れを掴みます。
すると18分に駒野がドリブルからカットインミドルを放ち、菅野のファインセーブを引き出すと、2分後に歓喜。20分、右サイドから駒野が中へフィードを送ると、ファーへ流れつつあったボールを、村上と入れ替わりながら収めたのは金園。バウンドを合わせて振り切ったボレーが、豪快にネットを揺らします。0-1。アウェイの磐田が先手を取りました。
さらに磐田の狙いが完全にハマったのは28分。ハーフウェー付近で、柏CBの増嶋に前田が激しいプレスを掛けてボール奪取。金園がドリブルでエリア内まで運び、最後は必死に戻った増嶋のスライディングを受け、シミュレーションでイエローカードをもらうという、やや不可解な判定でゴールは生まれませんでしたが、高い位置で奪ってフィニッシュまでという狙いを、一歩手前まで体現します。
磐田の前にほとんど相手陣内までボールを運べなくなった柏。たまらず、ネルシーニョ監督も30分過ぎにはレアンドロを少しサイドに押し出し、左右対称のボックスにシフト。ここからは少し磐田が対応で後手を踏み、柏はむしろ中央を効果的に活用。40分には栗澤が北嶋とのワンツーから枠内シュート。さらに44分は決定機。大谷のクサビを大津がヒールで落とし、田中のシュートはわずかに枠の右へ。磐田ゴールを脅かします。しかし45分、ゴールキックの流れから磐田のチャンス。フィードを金園が右へ丁寧に落とし、駒野が上げたクロスはニアへ飛び込んだ前田にピタリ。「柏がクロスに弱いというのは言われていた。狙い通り」とは藤田。磐田にしてみれば、最高の時間帯に生まれた追加点。リードが広がり、ハーフタイムに入りました。
2点のビハインドを負った柏。ネルシーニョ監督も後半開始から2枚替え。田中と大津を下げて、ホジェルと茨田を投入。「もっと前からハメてボールを奪っての攻撃」(ネルシーニョ監督)を指示します。これで多少持ち直した柏は攻撃の手数も多くなり、押し込む時間が続きますが、うまくいかないチームを象徴するようなシーンは55分。中央左寄り、ゴールまで約25mのFK。好機にサポーターの期待も高まる中、レアンドロはキックの直前に足を滑らせ転倒。スタンドは溜め息に包まれます。
そして58分、レアンドロ、栗澤と回ったボールを茨田がシュートに持ち込むと、キャッチした川口は素早く左へ展開。サイドをフリーで駆け上がったパク・チュホは、完璧なグラウンダーのボールを中へ送り、難なく前田がプッシュ。理想的な形で、理想的な3点目。今日の流れから考えても、勝負は決しました。
せめて1点は返したい柏も、70分には「どうしても前掛かりになって、守備のスペースを空けていた」(ネルシーニョ監督)ワグネルと橋本を入れ替え、いくつかチャンスは創りましたが、周囲となかなかプレーが噛み合わないホジェルがブレーキに。藤田が「ペナルティエリア内で持たれるのは嫌だったけど、ボランチとうまく挟めたので簡単に落とされるシーンはなかった」と話せば、そのボランチの小林も「CBとコミュニケーションが取れて、ホジェルへの対応はすぐ修正できた」と言及。こうなると柏はあまり機動力のない2トップで変化を生み出すのは難しく、決定的なチャンスは創れずじまい。ネルシーニョ監督が「文句なしにジュビロの勝利」と認め、柳下監督も「非常にいいプレーをしてくれた」と振り返ったゲームは、最後まで集中力が切れず、運動量も落ちなかった磐田の完勝で幕を閉じました。
ゲームの潮目を分けたのは、前半終了間際の逸機とゴールだったと思います。結果論ですが、田中のシュートが入っていればタイスコア。柏にすれば後半のカードの切り方も変わっていたはずです。柳下監督も「1-0でリードしてて、危ない場面があったが、相手がシュートを外してくれた直後に2点目が入ったのがこういう結果になった」と言及していました。ただ、それを含めても今日の磐田はほぼパーフェクトな内容。「前節は負けたが、選手たちもすぐに切り換えて柏戦に向けて準備できていたので、相当気合が入っていた」という指揮官の期待に、最高の結果で応えてみせました。 AD土屋
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J2第16節 湘南×栃木@平塚
現在、6試合連続負けなし。しかも連勝で2位まで浮上してきた湘南。今日のスタメンにも今シーズンの新加入組が6人も顔を揃えるなど、昨シーズンとはまったく別のチームと言っても差し支えなさそうなメンバー構成ですが、9試合でわずかに3失点という守備面の数字も、大きな変化と言えるでしょう。
一方、開幕3連勝で首位に立つなど、目標として掲げる“J1昇格”を明らかに現実のモノとして捉えている感のある栃木。ここ最近は勝ったり負けたりで、順位も4位に下がってはいるものの、上位は勝ち点差が非常に詰まっているため、1回勝てば一気にジャンプアップが可能なだけに、アウェイとはいえ結果を出したい一戦です。
さて、やや湘南がボールキープの時間を長く持ちながら立ち上がったゲームは、6分に水沼宏太がパウリーニョとのパス交換から、枠内へ左足で飛ばしたのが栃木のファーストシュート。10分には石神直哉の35m近い無回転FKが枠の左へ外れたのが、湘南のファーストシュート。なかなか動きが出てきません。そんな中、12分に突如として巻き起こった栃木のショートカウンター。右サイドを駆け上がった水沼はリカルド・ロボとワンツーの形から抜け出すと、そのままシュート。ここは湘南のGK西部洋平がセーブしましたが、こぼれに反応したロボは豪快にゴールネットを揺らします。実はノーゴールが6試合も続いていたロボ。それでも「ゴールができないのは起こり得ること。自分の力を信じていた」という言葉を証明するゴールは、貴重な先制弾。アウェイの栃木がリードを奪いました。
チームのスタイルを考えても、早い時間帯での得点は栃木にとってかなりのアドバンテージかなという個人的な認識があったのですが、「先制直後はここ5分を集中しようと言っていた」とはCBの渡部博文。この数試合は失点で流れを手放すことが多かったようで、まずは5分間をしっかり乗り切るのが最優先事項。そして、その5分間を無失点で切り抜けると、栃木の湘南に対して敷いたプランが間違っていなかったことを立証する時間が続きます。
栃木の最終ラインは、右から宇佐美宏和、渡部、大久保裕樹、那須川将大が並びましたが、これは今シーズン初めての組み合わせ。松田監督は「高山が今の湘南の攻撃を牽引している選手なので、彼のスピードを消そうという編成」と説明。「CBのどっちがスピード対応かという話はしていなかったが、間合いを空けることを考えてやった」と渡部が話したように、抜群のスピードを誇る高山には距離を取ることでうまく対応。高山本人も「足元の周りも含めて、スペースがないのは常に感じてた」と言及。まずはキーマンの1人を流れから消し去ります。さらに、栃木ではなくてもどのチームも潰しにかかるであろうアジエルに対しては「まず裏をケアして、持ったら間合いを詰める」(渡部)ことを徹底。ラインを下げることも辞さず、裏のスペースを埋め尽くし、さらにバイタルへの侵入はパウリーニョと鈴木修人のドイスボランチと共同監視。これでJ2屈指の司令塔は下がって受けることが多くなり、一発でやられる恐怖はかなり軽減。「前半はやられる気がしなかった」という渡部の言葉を待つまでもなく、シュート2本という数字以上に湘南を抑え込んだ栃木の1点リードで、前半は終了しました。
この状況下で策士・反町康治が動かない訳はありません。後半開始から、田原豊と岩尾憲を同時投入。システムも「4バックでやっていると相手の思うツボ」と、4-4-2から3-4-3へシフトして反撃態勢を整えます。すると、53分にはビッグチャンス到来。田原が果敢なプレスで渡部からボールを奪うと、自らドリブルで切れ込み、重いシュート。栃木GK鈴木智幸が弾いたボールは、再び湘南へ。右サイドから鎌田翔雅が上げたクロスを、ここも田原がヘディングで狙いましたが、立ちはだかる鈴木智幸のファインセーブ。追い付けません。
直後には栃木に決定機。55分、湘南のキャプテンマークを巻いた遠藤航が自陣でボールロスト。奪ったチェ・クンシクが右へはたき、ロボは西部もかわしてフィニッシュ。戻った鎌田は懸命のカバーでゴールを死守したものの、湘南にしてみれば集中力を欠いた軽率なプレー。流れを掴み切れません。また、システム変更自体も、松田監督が「3-4-3のチームは少し前の3連戦でやっていたので、多少印象に残っていたかもしれない」と話し、反町監督も「相手の8枚のブロックが引いたのは思い通り。そこで3バックのサイドにいる遠藤と鎌田にドリブルで持ち出すアクションを話したが、アジエルが引いてきて近いところでパス交換していたら相手は何も怖くない。能動的にやったつもりだけど、積極性があまり見られなかった」と言及するなど、栃木がうまく対応。「前の人数が多ければ多いほど、ゾーンは難しくなる。後半は多少マンツー気味にやった所はある」とは渡部。この辺りの柔軟性は、ただ4-4-2を“やらされている”だけではないことをよく現しているのではないでしょうか。
そして69分、高木和正のCKから相手のクリアを拾うと、鈴木修人は縦にフィード。走り込んだ渡部が、飛び出した西部の目前でバックヘッドを敢行すると、ボールはゆっくりとバウンドしながらゴールへ飛び込みます。「今までのゴールは全部修人さんのパス」と話す渡部は、これでチームリーディングスコアラーのロボに並ぶシーズン3ゴール目。点差が広がりました。
苦しくなった湘南は70分に3枚目のカードを決断。坂本絋司を下げて、菊池大介を右のWBへ投入。直後のFKは田原にピタリと合ったものの、「2回もゴール前3mでキーパーにパスしているようじゃ、ゲームには勝てない」と指揮官も辛辣な言葉を発したように、またも鈴木智幸のファインセーブを引き出す、正面へのヘディング。「全体としては非常にウチらしい、カチッとした試合をやってくれた」と松田監督も評価する内容で、栃木が快勝を収める結果となりました。
栃木は相当“いいサッカー”をやっていたと思います。いわゆる「ディシプリンを持った」(松田監督)典型的な4-4-2のスタイルではあるものの、渡部が話してくれたように守備面ではゾーンとマンツーマンを柔軟に使い分けるなど、ただやらされているサッカーではないことも、実際にスタジアムで見てわかりました。例えばバルサのような派手さはない分、あまり表現として使われることはないかもしれませんが、この日の栃木のようなスタイルも“いいサッカー”と言うべきだなあと個人的には思いました。 AD土屋
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J1第14節 大宮×浦和@NACK5
2008年9月21日以来となる、NACK5スタジアム大宮でのさいたまダービー。実は前回も取材に訪れていたのですが、その時は凄まじい雷雨によって開始13分で一時中断。50分近く経ってから再開するという、かなり珍しいゲームだったのをよく覚えています。今日は懸念されていた雨もすっかり止んで、気候的にも絶好のコンディション。オレンジと赤でスタンドは埋め尽くされました。
3勝3分け2敗と白星こそ先行するものの、実は3勝すべてをアウェイで挙げており、「こればかりはどうしようもないというか、何とも言えないです」と鈴木淳監督も苦笑いを浮かべた大宮は、ダービーでホーム初勝利を掴み、中位脱出を図りたい所。対する浦和はいまだ1勝の14位と苦戦が続く中で、スタメンに大きな変化。「(ナビスコの)山形戦で素晴らしいプレーをした。自信を持って使った」とペトロヴィッチ監督が評したGK加藤順大がリーグ戦デビューを果たします。お互い上昇へのステップにしたいダービーは19時3分、大宮のキックオフでスタートしました。
まずはホームチームが先に枠内シュート。2分、右サイドから渡部が左足の正確なクロスを上げると、ラファエルのヘディングは加藤に届きます。さらに8分、ゴール左約25m強の距離からイ・チョンスのFKも枠を捉え、加藤がファインセーブ。14分、バイタルでボールを拾ったラファエルはドリブルしながら、こちらも枠内へしっかりシュートを飛ばし、加藤を攻め立てます。浦和も16分に反撃。マルシオ・リシャルデスが左へ回し、高橋からのリターンを受けた原口がフィニッシュを取り、チーム初シュートを放つと、3分後にもチャンス。数本のパスを繋いで、最後は鈴木の右アーリーに飛び込んだ高崎は頭に当て切れず、シュートとはいきませんでしたが、形は創ってみせます。
スコアは0-0で推移していく中、全体で見ればややペースを掴んだのは大宮。ペトロヴィッチ監督が「向こうはロングボールをラファエルに入れて、イ・チョンスが裏に抜けてセカンドを拾う」と話し、鈴木監督も「前半は長いボールでDFラインの背後を突いて、セカンドをうまく拾えた」と振り返ったように、長いボールを強力2トップが収め、東と藤本がそこに絡んでいく形をある程度徹底。22分にはイが、29分にはラファエルがフィードからフィニッシュまで持ち込むなど、リズムを引き寄せます。
すると36分、渡部のパスからラファエルが無回転ミドルを放ち、ここも加藤のファインセーブに阻まれましたが、直後にビッグチャンス。右サイドでスローインを受けた渡部は「シンプルなクロスも面白いなというイメージ」で右足の切り返しから、左足でクロス。「その前にも似たようなシーンがあり、DFの前へうまく入れていたのでゴールが決まるような予感はしていた」ラファエルのダイビングヘッドが炸裂。ホーム初勝利へ向けて、幸先良く大宮が先制しました。
決して悪い訳ではない浦和は、39分にも鈴木の右アーリーが高崎へ。トラップまではうまくいきましたが、一瞬もたつくと飛び出した北野にキャッチされ、シュートは打てず。40分にエジミウソンが強引に放ったミドルはバーの上へ。内容はほとんど互角に近い中でも、2トップがより機能した大宮が1点をリードしてハーフタイムへ入りました。
ペトロヴィッチ監督1人目の交替は後半開始から。高崎に替えて、負傷明けの田中をピッチへ送り込みます。ただ、後半も先にチャンスをモノにしたのは大宮。53分、上田の右CKを中央で完全にマークを振り切り、フリーになった深谷が余裕のダイビングヘッド。「毎週毎週トレーニングで確認しているが、毎回同じように簡単に相手がヘディングできる状況になるのは信じられない」とペトロヴィッチ監督も呆れ気味に語った浦和のルーズな守備を突いて、大宮がリードを2点に広げました。
ところが直後にまたもゲームは動きます。55分、ギャップで受けた田中は左へ。1人気を吐いていた原口のクロスにマルシオが走り込むと、藤本に倒されたという家本政明主審の判定で浦和がPK獲得。エジミウソンが確実に沈め、たちまち点差は1点に戻りました。結果としてPKを招くシーンも起点になった田中の投入は奏功しました。鈴木監督が「田中の所が剥がされることが多くなり、マークが曖昧になって押し込まれた」と話し、ボランチの青木も「田中が1.5列目みたいな感じで、ある程度マークをハッキリさせようと話していたが…」と言及したように、比較的自由な位置取りでボールを引き出す田中を大宮は捕まえ切れず、これが右のマルシオと左の原口のボールタッチが増えた要因にも繋がり、浦和の攻勢が続きます。
64分に上田のCKをまたも深谷が枠へ飛ばしたヘディングは、高橋がライン上で決死のクリアを見せるなど、流れも浦和へ。67分には柏木のラストパスからエジミウソンが右ポストにぶつける豪快なシュート。完全に形勢は引っ繰り返りました。これに関しては鈴木監督が明快に理由を答えています。曰く「前半の攻撃が単調になってしまい、浦和を走らせることができず、後半はキツくなるだろうと予測していた」とのこと。浦和は長いボールの対応にDFラインこそ苦慮していたものの、中盤より前は比較的ディフェンス面での負担は重くなく、これが後半のスタミナ維持に結び付いたのは確かだったと思います。逆に大宮は「もう少しコンパクトにやりたかったが、DFラインをどこまで下げられるかは難しい所。セカンドボールが拾えなくなった」と青木。70分に東が広い視野からお膳立てした決定機も、イのシュートは枠外へ。苦しい時間が続きます。
ペトロヴィッチ監督も72分に最後のカードを決断。鈴木に替えてマゾーラを前線に投入。田中が右SH気味に移り、超攻撃的布陣で一層の圧力強化。勝負に出ました。ここで魅せたのは、今やチームの絶対的な主力として、常に気持ちを前面に押し出しながらプレーしてきた20歳の若武者。78分、宇賀神とのパス交換からトップスピードにギアが入った原口の高速スラローム。エリア内で一旦は倒れながら、そのまま左足を振り切ると、執念は結実。ゴール右スミに突き刺さったボール。「気持ちだけで決めた」と語る一撃は、まさにワールドクラス。衝撃的な同点弾で、スコアは振り出しに戻りました。
ここからは打ち合い。82分は浦和。マルシオのCKがこぼれ、拾った永田のスルーパスからマゾーラのフィニッシュは北野がファインセーブ。85分は大宮。後方からのフィードをイがフリック。石原が左へ回すと、イのシュートは右ポスト直撃。跳ね返りを途中出場の金久保が押し込むも、こちらも途中出場の渡邉が最後に触ってしまいオフサイド。93分も大宮。坪内のクサビを金久保がワンタッチでフリーのイへ。シュートを放つも、懸命に戻ってブロックしたのは柏木。両指揮官が「見ている皆さんには喜んでもらえたのではないか」と口を揃えたゲームは2-2。勝ち点1ずつを分け合う結果となりました。お互い最後まで攻撃的な姿勢を貫いた、ダービーの名にふさわしい好バウトだったと思います。 AD土屋
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J2第15節 草津×千葉@正田スタ
引き分けなしの4勝4敗。今シーズンのJ2では間違いなく最大のビッグチームであるFC東京に土を付けたかと思えば、下位チームにあっさり負けたりとなかなか安定した結果を出すまでには至らない草津。今節の相手は東の横綱であり、首位を快走する千葉。「上位についていけるか下位に飲み込まれるかの分岐点になる」(草津・副島博志監督)一戦です。一方、前述したように6勝1分け1敗と確実に勝ち点を積み重ね、首位をキープしている千葉。どうしてもオーロイに注目が集まりますが、攻め上がりを自重するSBも含めて、きっちり築いていく守備ブロックも強固。現時点では間違いなく昇格の最有力候補と言えるでしょう。注目の関東対決は正田醤油スタジアム群馬です。
まず先に攻勢を取ったのは千葉。3分、青木良太が左サイドを駆け上がってクロス。フリーのオーロイが長い左足を振ったボレーはヒットしませんでしたが、5分にもルーズボールを拾った伊藤大介が枠内ミドル。続いて9分、熊林親吾のミスパスを奪った深井が、ドリブルからやはり枠内シュート。積極的なチャレンジが続きます。
ただ、当然最初は規格外の高さを生かすスタイルに、どれだけインフォメーションがあっても戸惑う部分はあったと思いますが、徐々に慣れてきた10分あたりからは、草津も冷静に対応。「ロングボールの出所を抑える」(副島監督)部分では、「DFラインの選手が深い位置にいる時は追わなくていいから、ちょっと高い位置に来たらプレッシャーを掛けてくれと言われていた」とFWの萬代宏樹。これは2トップのパートナーを務めるラフィーニャも同様で、プッシュアップに専心していた最終ラインと最前線をコンパクトに保つための施策。それが遵守されたことで、「セカンドボールもうまく拾えていた」(櫻田和樹)草津が少しずつ守備から攻撃のリズムを創り始めます。
13分、松下裕樹の縦パスを萬代が収め、アレックスが右へ展開。上がってきた古林将太のクロスはGKにキャッチされたものの、1つ形を創ると、2分後には決定機。15分、右サイドをアレックスと萬代で崩し、最後は熊林が右スミギリギリにコントロールしたボールは、岡本がファインセーブ。千葉ゴールを脅かします。
以降は19分に伊藤がゴール左寄り約25mのFKを枠に飛ばし、草津GK北一真にファインセーブを強いたシーンと、28分にカウンターからアレックスのミスクロスがクロスバーを直撃したシーンくらいが、攻撃の見せ場。なかなかオーロイの“次”を生かしきれない千葉と、長いボールの飛びかう展開にストロングの中盤を使いきれない草津。膠着した流れになってしまいます。
40分には伊藤の縦パスから深井が飛び出したGKの鼻先でシュートを放ちますが、カバーに入った永田拓也がクリア。42分、伊藤のCKを3戦連発と絶好調の“ストライカー”竹内彬が頭で狙うも、DFがなんとか掻き出し先制ならず。最初の45分はスコアレスで終了しました。
迎えた後半、先に動いたのはドワイト監督。2列目に入り「孤立してしまうシーンが多かった」(伊藤)マット・ラムに替えて、太田圭輔を投入します。そして50分に動いたスコア。ゴールを奪ったのは、ベンチが動かなかったホームチーム。左サイド、アレックスのパスを受けたラフィーニャが深くえぐって柔らかい浮き球で折り返すと、全速力で飛び込んできたのは褐色の弾丸アレックス。脅威のブラジリアンコンビが炸裂。草津が先手を取りました。さらに54分、松下と熊林のパス交換から、オーバーラップの古林がマーカーを切り返しで翻弄すると、フィニッシュまで。勢いが出てきました。
さて、なかなか攻撃のリズムが創れない千葉。「もっと2列目がどんどん飛び出してくると思っていたが、そうでもなかった」と松下が指摘したように、後半開始からの交替も効果は薄く、シュートも打つことができません。すると、64分に「1-0で負けていたので、前線にパワーを持ちたい」とドワイト監督が切ったカードは久保裕一。下がったのは太田。わずか19分間のプレーとなった太田には、なんとも言えないゲームになってしまいました。
4-4-2にシフトし、「動きながら基点を創れる」(伊藤)久保が入ったことでダブルターゲットを得た千葉でしたが、それでも「ヒデ(中村英之)とミク(御厨貴文)がファーストDFでしっかりアタックしてくれるので、オーロイの所でサンドできていた」と櫻田。DFラインも高い位置をキープし続け、全体の集中も切れずに時間を経過させていきます。そんな守備陣に攻撃陣が最高の形で応えたのは80分。ラフィーニャを起点に高速カウンター発動。熊林が粘って左へ繋ぐと、駆け上がる永田の前には広大なスペース。余裕を持って中へ入れたボールを、トラップする余裕を見せたラフィーニャが思いっきり叩き込み、スタンド沸騰。2-0。リードを広げます。
止まらない敷島劇場。90分、松下から回ったボールを櫻田は絶妙のスルーパス。走った萬代はGK岡本より一瞬早くボールに触り、少し角度はなくなったものの、自らゴールラインと平行にドリブルして、無人のゴールへプッシュ。直後にはオーロイのポストプレーからPKを与え、深井に1点は返されましたが、「1点で終わらず、2点目3点目と攻める姿勢を最後まで保てたことに、チームとしての成長を感じた」と指揮官も納得の表情を浮かべた草津が、今シーズン初めての2点差勝利で首位千葉を粉砕する結果となりました。
千葉はドワイト監督も「ウチが完全に主導権を握った試合ではなかった」と認めたように、オーロイというよりも、そのセカンド奪取も含めて2列目がうまく機能せず、攻撃の形を創りきれませんでした。「焦る気持ちはあったが、トーレ(オーロイ)で競り勝てる部分はあるんで」と伊藤が話したように、常に強烈なファーストオプションがあるため、なかなかセカンドオプションに踏み切るタイミングが難しいのは確か。このゲームで言えば、セットプレーで威力を発揮するロングスローワーのミリガン不在が小さくない影響を与えたと言えるでしょう。
勝った草津は、186センチの中村をCBに入れましたが、オーロイとの身長差は18センチ。それでも「他の選手がオーロイに競り勝っているシーンを映像で見たら、早めにジャンプした方が勝てる確率は高かった」と中村。もちろん競り負ける場面もありましたが、試合終了のホイッスルが鳴ったのと同時にピッチへ倒れこむほど食らい付く姿勢を前面に押し出し、オーロイから自由を奪ったプレーは特筆すべきものでした。「いい運動量でやれたと思う。動きの質が上がった気がする」とは中村同様、勝利の瞬間にピッチへ倒れこんだ櫻田。草津にとっては今後に向けて大きな手応えを掴む1勝になったようです。 AD土屋
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J1第13節 甲府×山形@中銀スタ
前節の横浜FM戦は、前半での4失点が響いて大敗。小瀬に帰還してのホームゲームでは、名古屋戦に続いて確実にホーム連勝となる勝ち点3を獲得したい甲府。一方、大きな注目を集める中で行われたみちのくダービーはホームで手痛い黒星を喫し、現在3試合連続で完封負け。「同じような順位のチーム」(秋葉)を叩いて、何とか浮上のキッカケを掴みたい山形。ここまで1勝同士。勝ち点6の13位と勝ち点4の17位が対峙する一戦は、梅雨入りを改めて実感するような冷たい雨の中でキックオフを迎えました。
「立ち上がりはよくなかった」と甲府の三浦俊也監督も認めたように、いいゲームの入り方をしたのは山形。2分、佐藤が左へ展開すると、廣瀬を経由して宮本がクロス。ダニエルのクリアに遭ったものの、以降も速いボールアプローチで、セカンドも含めてボールを回収。そこからうまくサイドに基点を創り、攻勢の時間が続きます。
山形でアクセントになっていたのは、このゲームがJリーグ初スタメンとなった左SHの伊東。サイドにこだわることなく積極的にボールを引き出し、13分には左サイドからグラウンダーの素晴らしいサイドチェンジで廣瀬のシュートをお膳立てするなど、CBの園田も「いい活力剤になってくれた」と認めるパフォーマンスで、チームに推進力を与えます。本来、山形は守備のタスクがはっきりしているため、割と個人のプレーエリアが決まってくるのですが、伊東は広範囲に顔を出しながらリズムを創る、チームの中でも希有な存在。このゲームでは、そのプラス面がよく出ていたと思います。
ところが、好リズムも暗転。21分、山形の左SBを務める小林がイージーなパスミス。阿部のカットから、犬塚が左へ展開。永里を追い越して受けたボールを、吉田がクロス。ハーフナーが競り合ったこぼれを永里がシュートに持ち込み、これは山形GK植草がよく弾きましたが、いち早く反応したハーフナーが頭でプッシュ。「自分たちのペースでできない時間が15分前後続いた中での先制点」(三浦監督)で、甲府がリードを奪いました。
「最近は個人のイージーミスで失点を食らってるのが凄く多い」(小林監督)中、山形はこのゲームもパスミスをキッカケに失点。「3連敗している中での失点で、嫌な感じが脳裏をよぎった」とは園田。またかというような雰囲気は正直あったと思います。ただ、過去3試合と違ったのは躍動していた伊東の存在。26分、スローインの流れから、古橋がボールをキープ。宮本の上げたクロスが密集の外に流れると、そこにいたのは伊東。巧みにバウンドを合わせて叩いたボレーは、飛び付く甲府GK荻を破ってネットへ到達。「失点して硬くなるなって言ってもなっちゃう中で、チームを助けてくれた」と指揮官も称賛する伊東のJリーグ初ゴールが飛び出し、ゲームは振り出しに戻りました。
以降は40分にショート、ショート、ロングというシンプルな3人目を生かす形から、ハーフナーが完全にラインの裏へ抜け出しながら、トラップしきれずにチャンスが潰えたシーンはありましたが、全体的には山形ペース。この理由として大きかったのは園田と石井で組む山形のCBコンビが、ハーフナーに入るクサビをことごとく遮断していたこと。特に園田は「ほとんどマンツーマンでやってる感じ」だったハーフナーとの空中戦にも「競る前に離れて、距離を取ってから行った。どう行けば勝てるかは徐々に掴めた」と手応えを語ったように、互角以上の勝率。キーになるセカンド奪取も佐藤と秋葉を中心にして優位に立ち、「前半に危ないやられ方はほとんどなかった」と秋葉も語るなど、結果的には「前半は山形のペースだなあと思った」と三浦監督も話すような45分間となりました。
後半スタートから動いてきたのは、その三浦監督。内田に替えて、「攻撃に停滞感を感じたので、タメを創ったり周りの選手を生かしたりすることを期待して」片桐を投入。すると、48分には早速片桐が右サイドで阿部とのパス交換から対面のDFを1人かわすと、アーリークロス。ハーフナーが頭で落としたボールはクリアされたものの、名古屋戦でもゴールを生み出したホットラインがいきなり見られました。53分には小林監督も1枚目の交替を決断。1トップ下の古橋を船山へ入れ替えます。54分も甲府のチャンス。替わったばかりの船山が軽いプレーでボールロスト。阿部、山本と繋ぎ、吉田の左クロスに合わせたハーフナーのヘディングは当たりが薄く、植草がキャッチしますが、サイドをしっかり攻略。手数は甲府が多い中、お互いサイドに収まるポイントがあるため、互角の攻防が続きます。
山形が迎えたビッグチャンスは61分。左サイドで船山からパスを受けた伊東のクロス。ニアの密集からボールを持ち出したのは長谷川。GKも外し、至近距離から枠へ飛ばしたシュートの帰結は、ゴールカバーに入っていた山本の頭によるクリア。ゴールを決めるのにも匹敵する、キャプテンのビッグプレー。勝ち越しは許しません。ここからゲームは膠着。62分、甲府は負傷の犬塚を諦めて保坂を投入。68分、山形はゴールを決めた伊東と宮沢をスイッチ。77分、甲府は永里を下げて、切り札の柏をピッチへ。ただ、いずれの交替策も劇的に流れを変える要因とはなり得ず、どちらも攻撃をシュートまで繋げることができません。
85分は甲府。市川の右クロスから、二アで阿部が巧みにフリックしたボールは、飛び込んだハーフナーもわずかに届かず。そして90分には山形にビッグチャンス。攻撃に人数を掛けていた相手の裏を取ったカウンター。抜け出したのは長谷川。追い掛けるDFはわずかに1人。中にはフリーで船山。しかし、選択としてはワーストに近い、距離があり角度のない位置から放たれたシュートは、サイドネット外側にヒット。チームも自身もゴールが遠いだけに「プレッシャーが掛かっていたのかな」と秋葉。92分に片桐のCKを信じられない打点の高さで叩いた阿部のヘディングも、わずかに枠の右へ逸れ、タイムアップ。共に勝ち切れない現状を象徴するような1-1というスコアで、ゲームは終了しました。
87年生まれ、J2でブレイク、守備に特徴のあるチームの長身ターゲットと、共通項の多いハーフナーと長谷川。この2人がどれだけ機能するかがゲームの流れを左右すると予想していたのですが、それぞれ園田とダニエルに封じ込まれ、ポストワークは不発。それでもハーフナーはゴールへの嗅覚を発揮し、長谷川は2度の決定機を失敗。その部分が結果に与えた影響は大きなモノとなりました。スケールの大きさは十分で、日本人にはサイズを含めても珍しいタイプの2人なので、是非フル代表に到達するようなパフォーマンスを今後も期待したいと思います。
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J1第12節 山形×仙台@NDスタ
![201105230056000[1]yamagata2.jpg](http://www.jsports.co.jp/tv/foot/201105230056000%5B1%5Dyamagata2.jpg)
![201105230115000[1]sendai8.jpg](http://www.jsports.co.jp/tv/foot/201105230115000%5B1%5Dsendai8.jpg)
仙台にとって「震災後、初めてブーイングで迎えられた試合」(仙台・手倉森誠監督)。通算で34回目を数える今回の“みちのくダービー”は、その開催自体に大きな意味合いを持つ特別なダービー。モンテディオ山形とベガルタ仙台。東日本大震災で甚大な被害を受けた東北地方に本拠地を置く、たった2つのJリーグクラブが、震災後初めて激突するという、東北のサッカー界、あるいは東北のスポーツ界にとっても歴史的なゲームはNDソフトスタジアム山形で行われます。
1勝1分け4敗の17位。第9節では今シーズンのJ1を席巻している柏にここまでで唯一となる黒星を付けたものの、ここ2試合は磐田と大宮に連敗。なかなか勝ち点が伸びない中、何とか流れを変えたい山形。3勝3分けの3位。前節の磐田、前々節のC大阪と共に後半アディショナルタイムの失点で勝ち点2を逃してしまいましたが、バランスの取れた戦い方でいまだ無敗を続ける仙台。置かれている状況は対照的ですが、まだ序盤戦とは言っても、このゲームの結果いかんが今後に大きな影響を与えるのは間違いない所。キックオフ前には雨も上がり、スタジアムを埋め尽くした青と黄色は18008人。13時4分、関口がボールを小さく蹴って、ダービーの火蓋は切って落とされました。
3分、仙台のファーストチャンス。リャン・ヨンギを起点に、太田が左へ繋ぐと、パク・チュソンは精度の高いクロス。赤嶺のヘディングはヒットせず、GK植草がキャッチします。6分に角田の強引なミドルを挟み、14分にはまたも左からチャンス。これもリャンを起点に、関口を経由して赤嶺のクロス。前節ゴールを決めている右SBの菅井が走り込み、宮沢が間一髪でクリアしたものの、「前半にいくつか続いたクロスは怖い感覚」と小林伸二監督も話したように、仙台がサイドを意識した形からチャンスを創出します。ただ、このシーンだけを抽出すると、仙台がきっちり回してサイドを攻略していた印象を受けるかもしれませんが、実際は割と手数を掛けずに長いボールを使うシーンが多く、山形も立ち上がりから「シンプルに前へ前へ入れてくる」(手倉森監督)形を選択したために、序盤はお互いに慎重な時間帯が続きます。
17分は山形。長谷川が粘り強いキープから左へ展開。小林のクロスを仙台ディフェンスがクリアすると、宮沢がボレー。ゴールとはいきませんが、ようやく1本目のシュートを記録します。19分は仙台。2人のDFが寄せる間をぶち抜いたパクが中へ。赤嶺の落としを太田が枠内へ。23分も仙台。左サイドからパクがここもいいクロスを上げると、飛び込んだ菅井のヘディングは叩きつけ過ぎ、GKにキャッチされましたが、磐田戦でもゴールを生み出した、左SBのクロスに右SBが飛び込むというシーンが見られました。さらに25分にも仙台は怒濤の4連続CKを記録するなど、サイドの攻防も含めてこの時間帯までは、ある程度仙台が主導権を握っていたと思います。ところが、仙台が前半で記録したシュートは、この一連のCKから角田が放ったヘディングが最後。少しずつ山形が持ち直し、展開も五分に近い所までは引き戻すことに成功しました。
実際、「前半はいい入りができた」と小林監督が話し、「前半は全体的に押し込めていたと思う」とボランチの佐藤も言及したように、山形からすれば自らの右サイドから多少攻められるのは想定内。また、確かに攻撃の手数は食らったものの、中央をしっかり締めることで、仙台に決定機と呼べるようなシーンはほとんど創らせておらず、これも冷静なゲーム運びを実行できた一因でしょう。こうなると、山形にも勢い。30分、植草のロングキックを長谷川が頭で繋ぎ、廣瀬のクロスは宮沢がわずかに届かず。32分、自ら得たFKを直接狙った古橋のシュートはカベに当たりましたが、スタンドの青を湧かせます。「ロングボールでボランチとCBの間を広げさせられ、セカンドを拾われて苦しい時間帯はあった」と手倉森監督も話し、「セカンドの反応はこっちの方がよかった」と石井。シュート数は4対7で仙台が上回りましたが、25分過ぎからはある程度狙いがハマり出し、いくつかのチャンスも創り出せていた山形にとっては、スコアレスながら「立ち上がりと終了間際の失点が多い」(石井)という課題もクリアするなど、決して悪くない45分間だったようです。
ところが、ハーフタイムを挟むと「ボールに行けず、後半は入りが悪かった」(小林監督)山形を尻目に、1本のセットプレーを生かしたのは仙台。52分、リャンが右サイドから入れたFKを角田が頭でクリーンヒット。ボールはクロスバーを激しく叩きましたが、こぼれ球に誰よりも早く反応したのは白の25番。「元々は攻撃的なMFの選手。そういう感覚はゴール前に行けばある」と手倉森監督も認める、山形出身の菅井がダービー初ゴール。アウェイの仙台が先制ゴールを奪いました。
これで3試合続けてビハインドを追い掛ける形になった山形は、1枚目のカードとして59分に宮沢と伊東をスイッチ。62分にはその伊東が小林とのコンビネーションから、左サイドを崩しての折り返しは、中と呼吸が合わずにチャンスは潰えたものの、好機を演出します。それでも、リードを奪った上に「CBとボランチの間を後半は修正した」(手倉森監督)仙台は守備に比重を置きながら、少ない手数でカウンターというスタイルを徹底。中でもボランチに入った角田は、厳しい局面でのスイープや、セカンドを奪取する出足の良さで、存分に持ち味を発揮。山形の中盤に自由を与えません。
70分には古橋の右CKを石井が完璧に頭で捉えたものの、ボールは枠のわずか左へ外れ、山形最大の決定機も同点とはいかず。小林監督も71分には古橋を下げて下村を投入。秋葉を1トップ下に移し、下村と佐藤のドイスボランチで勝負に出ますが、「判断が遅れて、いいタイミングで前にパスを出せなかった」と佐藤が話したように、テンポアップするような前へのボールが入らず、ボールの回し自体も遅くなってしまい、なかなかシュートへ持ち込むまで至りません。さらに85分には長身FWの大久保を送り込み、パワープレーを試みると、その直前くらいから不思議と山形が風下になるような風が吹き始め、長いボールがしっかりゴール前まで入らない状況になってしまいます。逆に仙台はここ2試合の課題として挙がっていた「最後の時間の使い方」(手倉森監督)も、コーナー付近でのボールキープに加えて、「ボールを繋ぎながら時間を使うこと」(同)にチャレンジし、確実に時計の針を進めることに成功。そして93分11秒、ゲームの終演を告げるホイッスル。0-1。みちのくダービーはアウェイの仙台が凱歌を揚げました。
負けた山形は「前半凄く頑張ってくれた」と指揮官も認める内容ながら、後半のファーストピンチでFKから手痛い失点。以降は「少し冷静じゃなくなったのかなあ」と佐藤が話したように、「最近は点が取れていなかったので1点が重い」(小林監督)中でほとんどチャンスを創れず。キックオフ前には青い星のコレオグラフィでチームを鼓舞したゴール裏のサポーターに大ブーイングを浴びる結果となってしまいました。
勝った仙台は14回目となるダービー勝利で無敗をキープ。「無失点に抑えたことは非常に大きい」と手倉森監督が話したように、前節3失点を喫した守備陣の奮起で、3試合ぶりの完封勝利。ここまで来ると、もはやこの躍進はフロックで片付けられないでしょう。現在の両者における勢いが如実に現れたダービーだったと思います。 AD土屋
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J1第12節 横浜FM×甲府@日産
前節は広島と打ち合いを演じた末に3-2で敗れ、今シーズン初黒星を喫した横浜。それでも昨シーズンは苦しんだ渡邉が前線で軸として定位置を確保。また、新加入の谷口や小林も既に欠かせない戦力として躍動するなど、4位という現在の順位も頷ける安定感を誇っています。対する昇格組の甲府は、昨シーズン王者の名古屋を小瀬に迎えた前節で3-1とようやく今シーズン初勝利を記録。残留という大きな目標に向けても、アウェイとはいえ、上昇気流に乗って勝ち点を持ち帰りたい一戦です。26度、快晴という絶好のコンディションながら、観衆は17151人と少し寂しい数字。空席の目立つ日産で、ゲームはキックオフを迎えました。
4分、中村の縦パスに、持ち前でもある相手DFラインとの駆け引きから抜け出した大黒。中への折り返しはDFにカットされましたが、2分後にはさらなるチャンス。6分、やはり谷口の縦パス1本から、渡邉がまったくのフリーで抜け出します。甲府GK荻がファインセーブで凌ぎ、スコアは動かなかったものの、ボールを回しながら縦へとシンプルに蹴り込む形から、横浜が続けてチャンスを創出。すると11分、横浜が奪ったCK。キッカーの中村から「ニアに立っとけ」と言われた谷口は、ニアサイドのゴールカバーに入った伊東とハーフナーの間へ潜り込み、難なくヘディング。谷口の移籍後初ゴールが飛び出し、ホームチームが先手を奪いました。さらに14分、やはり中村の縦パスから谷口が抜け出すもオフサイド。ただ、常に裏を狙っているタイプの大黒と渡邉で組む2トップに加え、今日は中盤ダイヤモンドの頂点に入った谷口が、いずれも開始15分までに1本のパスで裏を突く形を体現。「ラインの間でアクセントになりながら、相手が前に出てきたら裏に出ることは話していた」と中村。狙いがハマります。
そして次のゴールも横浜。17分、大黒からパスを受けた谷口はドリブルから右へラストパス。渡邉は飛び込んだ永里を冷静な切り返しでいなすと、さらなる冷静さでゴール左スミを射抜くフィニッシュ。攻撃的なタスクを託された3人で奪った追加点。2点差が付きました。こうなると止まらないトリコロール。19分には中村が右足のミドルを枠へ飛ばし、甲府ゴールを脅かすと、3度目の歓喜は25分。渡邉が左へ展開したボールを、上がってきた波戸は切り返して中へ。しっかり走り込んでいた渡邉がワンタッチでコースを曲げ、大黒が鋭い腰の回転から左足ボレーを叩き込みます。これで早くもアタッカートリオ揃い踏み。大きな大きな3点目が横浜に入ってしまいました。
さて、シュートを1本も打てないままに、3つの失点を重ねてしまった甲府。「前からのプレスが効かなかった」とは左SHの永里。「最終ラインもよくなかったけど、ボールの出所にプレスが掛からず、いい状態で蹴られてしまうシーンが多かった」とは右SBの市川。やはりプレスがうまく掛けられず、「サイドも使われ、中も使われてキツかった」と左SBの吉田が振り返った状況になってしまったのは、チームの共通認識。さらにドイスボランチの一角で「テルさんとは2枚でコースを切りながら、前の中盤の選手も見ながら」守備に奔走した保坂は、「プレスの行き方が中途半端だったというのは感じた。結果的にだけどああなるんだったら、ラインを落としても良かったし、行くならもっとタイトに行ってもよかったと思う」と話しています。そういう意味でも、「自分が思うようなことをやってくれた」と木村和司監督も称賛した谷口の、少し浮いたポジショ二ングが甲府に混乱をもたらしたのは間違いなく、それは攻撃のユニットが機能したことで「相手のFWの良さを出させてしまった」(甲府・三浦俊也監督)ことにも繋がってしまいました。
甲府も37分にはCKを獲得し、38分には永里がやや強引な左足ミドルで実質チーム初シュートを放っても流れは変わらず。逆に40分、栗原の正確なクサビを谷口は完璧なボストプレーで右へ。開いた渡邉がクロスを上げると、ニアへ飛び込んだ大黒が確実に頭でゴールへ流し込みます。クサビ、ポストプレー、開いてクロス、ニアに入ってヘディング。まるで練習の1コマかと見紛うほどの、基本的なプレーと動き方を忠実に実行して奪った4点目。大差が付いたとはいえ、内容を考えれば決して驚きではないスコアで、両チームの平等な45分間はコントラストを描きました。
正直、「前半で決まったな」(木村監督)「ゲームは前半で決まってしまった」(三浦監督)と両指揮官が話した中での後半45分間に、取り立てて見るべきシーンがなかったのは仕方がないことでもあり、少し寂しいことでもありました。あえて甲府で光明を見出だすとすれば、後半スタートから投入された2人が悪くないアピールを見せたことでしょうか。右SHに配された柏は、持ち前のドリブルを生かしながら積極的に突破を試みます。また、片桐も最初は左SH、途中からはボランチとしてよくボールに絡み、64分には無回転ミドルでチーム初の枠内シュートを記録するなど、攻撃のリズムを生み出していました。とはいえ、実際ゲームの流れを劇的に変えるまでには至らず、4点ビハインドでの登場ということを考えれば、少し物足りなさは残ります。
一方の横浜は「ハーフタイムで監督に『ここからやっと久々に“ちゃぶれる”時間が来たな』と言われた」(中村)後半で、決定機に数えられそうなシーンは2回ほど。87分には途中出場のキム・クナンがDFをかわしてシュート。荻が弾いたボールに、こちらも途中出場の長谷川が飛び込むも、荻がファインセーブ。92分にも兵藤とのワンツーからキムがフリーで打ったシュートはバーの上へ。「後半も5点目6点目を取りにいけと言ったんですけど、言うことを聞かんかったね」と木村監督も苦笑するなど、あまり収穫を得られるような45分間にはなりませんでした。そういう意味でも少し消化不良というイメージを残しつつ、横浜が勝ち点3と得失点差プラス4を上積みして、ゲームは終了しました。 AD土屋
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J1第11節 川崎×鹿島@等々力
川崎と鹿島。2005年の川崎再昇格以降、リーグとナビスコを合わせて18回の対戦は、川崎の9勝2分け7敗とかなり拮抗していますが、そんな結果以上に、2008年リーグ戦の等々力、2009年ナビスコの等々力、さらに2009年リーグ戦の荒天による延期と再開試合など、印象に残るゲームの多い両者の対峙。5試合を終えて2勝3敗と黒星が1つ先行するなど、まだ相馬直樹新監督のスタイルが浸透しきっていない印象の川崎と、ACLを並行して戦う中で、リーグ戦は1勝1分け1敗という成績もさることながら、3試合で7失点と守備に綻びが見られる鹿島。お互い「勝ちが欲しいゲーム」(相馬監督)は等々力です。
まず勢い良く飛び出したのは川崎。5分、矢島が岩政から体でボールを奪い取り、サイドネット外側へぶつけるシュートを放ったのが猛攻の号砲。6分、田中裕介のスローインから矢島、ジュニーニョと繋いで、山瀬のシュートはGK正面もゴールへの意識を前面に打ち出します。すると10分、早くも3本目となるCKを中村が少しゴールから離して蹴り込むと、菊地が頭を伸ばし、こぼれたボールに反応したのはジュニーニョ。これが小笠原の股間をすり抜け、ゴールに転がり込みます。ケガで出遅れたエースの今シーズン初ゴールで、いきなり川崎が先手を取りました。
なおもホームの進撃。12分、中村のボール奪取から矢島のシュートは枠内へ。15分、再び中村のボール奪取からジュニーニョの枠内シュートは曽ヶ端がセーブ。17分、ジュニーニョが右へ展開し、田中裕介のクロスに矢島が合わせるも、岩政が何とかブロック。18分、CKの流れから中村が右クロスを放り込み、登里のシュートは曽ヶ端がキャッチ。川崎の一方的な展開になってしまいます。
「前半の鹿島は眠っているように見えたが」という会見での質問に対して、「僕も同意する」とオズワルド・オリヴェイラ監督が話したように、あらゆる面で後手に回った感のある鹿島でしたが、特に気になったのは攻守の切り替えの遅さ。24分には小笠原が蹴ったFKをクリアされて浴びたカウンターに対して、リアクションが極端に遅く、青木はやむを得ずイエローカード覚悟のファウルで流れを切りましたが、ストロングとも言うべき部分で相手に上回られる鹿島らしくない時間が続くと、31分に川崎が追加点。中村からパスを受けた矢島は、狭い局面から優しいラストパス。「ヤジがいい所にボールを落としてくれた」という山瀬は、やや角度のない所からサイドネットへ一刺し。曽ヶ端は一歩も動けず。リードは2点に広がりました。
鹿島も39分、相手のミスからカウンター。西、遠藤が絡み、野沢の左足ミドルは枠を捉えたものの、相澤が好セーブ。ようやくフィニッシュを取りましたが、前半はこれが流れの中から生まれた唯一のシュート。内容を考えれば妥当か、あるいは川崎にもっと点が入っていてもおかしくない展開で、45分は終了しました。
「もったいない前半」と切り捨てたオリヴェイラ監督がハーフタイムに檄を飛ばしたのは、火を見るより明らか。すると後半開始わずかに13秒。右サイドから野沢が入れた低空クロスに、頭から飛び込んだのは興梠。ボールはわずかにゴールの右へ外れましたが、ここから鹿島が牙を剥いて襲い掛かります。49分にも小笠原、興梠、野沢、大迫とパスが繋がり、獲得したCKは岩政が頭に当てきれなかったものの、止まらない勢い。そして50分、後方からのフィードを大迫が競り勝つと、興梠は右へ。野沢がグラウンダーで絶妙のクロスを送り、遠藤が確実にゴールへ流し込みます。攻撃的なポジションを務める4人全員が絡んで奪った一撃。等々力の雰囲気が一気に変わりました。
直後の51分には川崎。小宮山の縦パスに抜け出した登里が左からマイナスに折り返すと、ジュニーニョのフィニッシュが枠の右へ外れる決定機はありましたが、以降のペースは完全に鹿島。要因としては「こちらのラインが下がり、足が止まってルーズボールが拾えなくなった」ことを相馬監督は挙げています。これを「鹿島は大きな展開が増えて、味方の距離が離れてしまった」と補足するのは川崎のゴールマウスを守る相澤。この鹿島に長いボールが増えたことは、川崎のラインを間延びさせて、中盤でボールを拾うための人数とスペースを確保する効果と同時に、中盤で頻繁に起きていたイージーなミスを奪われてのカウンターを激減させる効果も、結果的にではありますが併せ持っていたように感じました。
60分には相馬監督が最初の交替。登里を下げて「ルーズボールが拾えない中盤を助ける」狙いで横山を投入し、中村を1列前へ押し出します。62分、伊野波が右へ蹴ったフィード。野沢はトラップミスを南米のプレイヤー並みに生かし、浮き球で中へ入ると左足シュートを枠の左へ。63分、右サイドから遠藤がカットインしながら打ったシュートは、DFに当たってなんとか相澤がフィスティング。72分、野沢の左CKを二アで合わせた興梠のヘディングは、またも相澤がファインセーブ。水際でリードを保ちます。勝負を賭けたオリベイラ監督の決断は77分。大迫と体の重さを隠せなかった小笠原に替えて、カルロンと増田を同時投入。直後にはカルロンが高さを生かして頭で繋ぐと、遠藤の右足シュートは枠の左へ逸れましたが、同点ゴールが生まれそうな雰囲気は十分に感じられました。
ところが、次のゴールは同点弾ではなく、ダメ押し弾。78分、鹿島陣内で相手の浮かせたボールを柴崎晃誠が跳ね返すと、中村はワンタッチから刹那、最高のスルーパス。「感覚でダイレクトでコースを変えた」小林のシュートは、ゴール左スミへ転がり込みます。2戦とも途中出場ながら、ホーム連発となった小林のスーパーサブ襲名ももちろん称賛の対象ですが、やはり中村のキラーパスは圧巻。大きな1点が川崎に入りました。
苦しくなった鹿島は82分、野沢に替えてルーキーの柴崎岳を投入。92分にはスローインの流れから、その柴崎岳がヘディングで前へ送り、カルロンが自ら放ったシュートのこぼれ球を押し込んで1点差までは詰め寄りますが、反撃もそこまで。96分6秒、激闘に終止符を打つホイッスル。「今日はどうしても勝つという気持ちが表れていた」と指揮官も言及した川崎が勝ち点3を手にする結果となりました。
鹿島はやはり「戦うとか機動性とかシステムとか戦術的なもの以前に、気持ちを入れて試合に入らなければならない」とオリヴェイラ監督も嘆いたように、前半の不出来が全て。後半にあれだけペースを奪還するのは強いチームにしかできないことですが、それ故に残念な勝ち点0となってしまいました。
川崎は山瀬に待望の加入後初ゴールが生まれ、小林も自身の地位を確立するようなダメ押しゴール。「少しずつ形になり始めてきたのかな」と山瀬も話した攻撃面に、一定の手応えを感じた様子。「やりたいサッカーを相手は関係なしにしてやれるようにしていきたい」(相澤)というレベルまで、もう一息の所まで来ているような印象を受けました。 AD土屋
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J1第11節 新潟×柏@ビッグスワン
5試合を消化した時点で2勝3分けと負けなし。失点もリーグ最少タイの2失点と、堅い守備をベースに上々のスタートを切った新潟。ただ、攻撃の中核を担っていたチョ・ヨンチョルとブルーノ・ロペスが共に負傷欠場。さらにスタメンが予想された川又も体調不良を訴えたため、黒崎久志監督は酒井高徳の弟で18歳のルーキー酒井宣福を起用してきました。一方、ビッグスワンへ乗り込んできたのは昇格組ながら堂々の首位に位置する柏。前節も浦和相手に完勝を収め、その猛威はJ1を席巻中。ディフェンスリーダーを務めるパク・ドンヒョクの離脱も、増嶋が代役以上の活躍で完全にカバー。磐石の布陣でこの一戦に臨みます。
ゲームは6分、木暮がほとんどフリーで左サイドからアーリークロスを放り込み、三門がわずかに届かなかったシーンと、9分に北嶋のポストからレアンドロ・ドミンゲスが右へ展開し、酒井宏樹のクロスが中と合わなかったシーンが、20分までに両チームが創出したすべてのチャンス。ほとんど動きのない展開が続きます。
当然、「失点が少なく速いカウンター」(柏・ネルシーニョ監督)を特徴とするチーム同士の対峙と言う面もありましたが、それ以外にも両SBが共に積極的なオーバーラップを敢行する所や、ドイスボランチはバランスを重視し、そこまで前に出ていく回数は多くない所など、両者は非常に似た部分の多いチームという印象。加えて「相手SBへプレッシャーに行くため」(栗澤)に、柏の攻撃的な中盤に入ったレアンドロと大津もワイドに開いたポジションを取ったことで、システム的にも一般的な中盤ボックスの4-4-2同士となり、完全にマッチアップする状態。これも動きの少ない展開の一因になったように感じました。
ところが、「システム上、マンツーマンになる分、個の力はウチの方があるのでチャンスは増えるかなと思っていた」と栗澤。そして、ゲームを動かしたのもその“個”の輝きでした。23分、左サイドの深い位置からジョルジ・ワグネルのスローイン。レアンドロと相手DFが競り合ったルーズボールへ飛び込んだワグネルは、巧みなコントロールからボールを浮かしてDFを外すと、利き足とは逆の右足一閃。直後、激しく揺れたゴールネット。「レイソル対策でスローインからああいうコンビネーションがあるとは言っていた」ものの、「ブラジル人は浮き球の処理に長けている所はある」と黒崎監督も認める技術の高さを発揮したワグネルのゴールで、柏が先手を取りました。
追い掛ける展開となった新潟は35分、三門、ミシェウと繋いで、木暮がダイレクトでスルーパスを狙い、酒井宣福が感じ切れなかったものの、意図ある惜しいシーンを創り出すと、「35分くらいまではコントロールしていたが、その後の7、8分は相手のペースに陥ってしまった」とネルシーニョ監督も言及したように、42分にも連続してCKを獲得するなど、反攻態勢に入ります。45分には木暮が左サイドから右足で上げたクロスを、エリア内へ走り込んだ本間が落とすと、ミシェウがボレー。ヒットせずに柏GK菅野が難なくキャッチしましたが、ボランチの飛び出しというゲームをブレイクする要素から、1本目となるシュートを新潟が記録して前半は終了しました。
ハーフタイムを挟むと、ネルシーニョ監督は「ニュートラルにする力が弱まっていたので、守備をもう少し前から仕掛けよう」と明確に修正。51分には木暮のサイドチェンジから、ミシェウがフリーになりかけたシーンも、察知した大谷が圧巻のスイープ。「隙がなくてやりづらかった」とは本間。新潟はシュートまで持ち込むパワーを出させてもらえません。ただ、北嶋が「オーガナイズされた守備にやりにくさはあった」と言及したように新潟も守備面での破綻はなく、膠着した時間が経過していきます。こうなると、当然ではありますが、ゲームを揺り動かすキーファクターはセットプレー。そして今シーズンの柏には、そのセットプレーで威力を発揮するレフティがいるのです。61分、左サイドでFKのポイントに立ったのはワグネル。左足から放たれた軌道は、鋭い弧を描いて近藤の頭にヒット。0-2。ゲームの流れを考えると、決定的とも言うべき2点目を今シーズンの「レイソルの武器」(黒崎監督)で柏が強奪しました。
なんとか反撃の糸口を掴みたい新潟は70分に小林と長谷部を、76分には酒井宣福と加藤を相次いでスイッチ。木暮を前線に押し出し、三門がボランチへスライド。SHは右に長谷部、左に加藤を配し、変化を付けたものの「2点入ってしまってからは前に出ていけなかった」と指揮官も振り返ったように、チャンスメイクまで至らず。逆に81分には酒井宏樹の縦パスから、完全にフリーで抜け出した途中出場の工藤が、熾烈なFWのポジション争いへ自身をアピールする冷静なゴール。「1勝1勝自信を積み上げていっている。これからの自信に繋がる大きな勝利」とネルシーニョ監督も満足そうな表情を浮かべた柏が、首位らしい磐石のゲーム運びで、アウェイから勝ち点3を持ち帰る結果となりました。
新潟は主力の不在も含めて、うまくチームが回らないゲームになってしまいました。それを象徴するようなシーンは83分。イージーなパスミスで自らレアンドロにボールを渡してしまった千葉が、ふてくされたようにタラタラ歩いて守備対応に移ります。その後、千葉は大野との交替を命じられましたが、黒崎監督の「何回もミスをしたので替えた」という言葉を待つまでもなく当然の交替。千葉はなぜ自分がここまでリーグ戦全試合でフル出場していたかを改めて考える必要があるでしょう。猛省を促したいと思います。
柏は前半に先制、セットプレーで追加点、途中出場の選手がダメ押しと、まさに強いチームの勝ち方で首位キープ。「こういう相手から点を取って勝てたのは、強くなってきたかなと思う」とは北嶋。いよいよ勢いもホンモノの予感を帯びてきています。 AD土屋
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J2第11節 湘南×愛媛@平塚
2勝1分け1敗の3位。ある程度スタートダッシュに成功した感のある湘南ですが、ここ2試合は共に無得点。反町康治監督もシステムを4-2-3-1から、開幕戦以来となる巻佑樹と佐々木竜太の2トップを敷いた4-4-2へシフトして、ゴールを強く意識した布陣でゲームに臨みます。一方の愛媛は、2連勝の後で現在は2連敗中。ただ、前節の千葉戦もやや不可解な判定で退場者を出してから、終盤に勝ち越しを許す展開。チームとしての戦い方がハッキリしている好チームなのは間違いありません。平塚の気温は26.1度。まるで初夏を思わせるような快晴の中、キックオフを迎えました。
ゲームはかなりスローペースな立ち上がり。11分。ルーズボールを拾った石神直哉が無回転ミドルを枠へ飛ばし、愛媛GK川北裕介が弾き出したのが両チーム通じて最初のシュート。全体的には少し湘南の方が比率として攻撃の時間が長かったものの、主導権を取り切るところまでは至りません。わずかに湘南が攻勢に出ていたのは、やはりアジエルの存在。彼がボールを持った時には周囲もスイッチが入り、前へと飛び出す人数も多くなっていくのは間違いないでしょう。逆に愛媛はそのスイッチを入れる選手がなかなか見つからず、「体力的にも前から行けず、中途半端な形になった分、押し込まれた」(渡邊一仁)部分があり、その差が湘南攻勢の要因だったと思います。
25分、そのアジエルがFKを短く出し、永木亮太のリターンを受けると、DFラインの裏へ絶妙のロブ。佐々木竜太はわずかに届かず、シュートは打てませんでしたが、10番が愛媛に脅威を突き付けます。とはいえ、強みが弱みに変わるのもサッカーの面白い所。33分、愛媛のカウンター。高杉からボールを受けた渡邊は「アジエルが守備をあまりしないのはわかっていたので、ボールを奪ったらそのスペースを突ける」とやや中央左寄りをフリーで運ぶと、浮き球の勝負パス。このボールが「どうしても押し込まれるので我慢しようと思っていた。形は狙い通り」という内田健太に届きます。GK西部洋平の位置取りがうまく、「思い切り打つか、浮かすか、ちょっと迷った」内田は前者を選択し、豪快に枠を外してしまいましたが、劣勢の中で浴びせた一太刀。そして、これは両チーム通じて前半唯一の決定機。「前半は相手にスペースを与えたものの、そんなにクリティカルなチャンスは与えなかったと思う」とはバルバリッチ監督。シュート数も湘南の2に対して、愛媛は3。かなり膠着した展開で、最初の45分は推移しました。
後半はスタートから湘南に動き。佐々木を下げて、ルーキーの高山薫を前線に送り込みます。すると49分、アジエル、ハン・グギョンと繋いだボールを左サイドの深い位置で受けた高山は、華麗なシザーズで縦に抜け出しクロス。GK川北が何とか抑えたものの、「左右のスペースに走って、ペナの横から基点になれ」という指揮官の指示を早速実行してみせます。そんな高山が主役の座に躍り出たのは59分。自陣左サイドでボールを奪った湘南は、坂本がシンプルにはたくと、前を向いたアジエルはフリー。全力で裏へ走り出した高山のスピードを、最大限に生かしたシルクパスがフワリ。高山対川北。勝ったのは高山。「予想以上に嬉しかった」というルーキーのプロ初ゴールを、なんと8人がゴール裏まで走って祝福。反町監督も「あそこで決めないのが高山で、決めちゃったら高山じゃない」と笑顔。湘南が先手を取りました。この失点に対して、バルバリッチ監督は「ボランチが2人とも前に出てしまい、そこを突かれて失点してしまった」と会見で2度も言及。これには当のボランチを務める渡邊も「確かにそれは監督から言われてる。体力的なモノから来る集中の欠如だったかもしれない」と認めています。バルバリッチ監督からすれば、かなり悔しい失点だったようです。
追い掛ける格好となった愛媛は、失点の直前に内田を下げてジョジマールを投入していましたが、「期待していた程の効果は得られなかった」(バルバリッチ監督)ために、なかなかチャンスを創り切れません。77分には赤井秀一、杉浦恭平と続けて決定的なシュートを放つも、共に西部がファインセーブ。スコアは動かず、時間が経過していきます。愛媛2枚目のカードは78分。杉浦に替えて福田健二。そして、この交替がさらなるドラマを巻き起こすことになりました。
前述したようにジョジマールがうまくゲームの流れに乗れず、攻め手を欠いていた愛媛。ところが、この交替で「フクさんが入って、前に簡単に入れるってハッキリした」と渡邊。長いボールが増える中、「3連戦の最後のゲームで、気温が上がってきてというのはあった」(反町監督)からか、湘南は全体的にラインが下がり、受けるような時間が続いてしまいます。そして迎えた87分、「フクさんには練習から前に蹴れって口酸っぱく言われてた」渡邊が正確なフィード。受けた福田は「僕もその部分は自信を持ってる」と、胸で正確なポストプレー。1人、2人、3人。左から右へキックフェイントでスライドしながら3人を振り切った齋藤学は、冷静に左スミへ転がすフィニッシュ。「1人の力で試合の流れを変えることができる」とバルバリッチ監督も称賛する、新エースがもたらした歓喜。両者が勝ち点1を分け合って、ゲームは終了しました。
愛媛は「ケガ人が多くて、非常に編成が難しかった」(バルバリッチ監督)中でも、コレクティブな戦い方が印象的でした。選手に話を聞いていても、相手の特徴とそれへの対策がよく整理されていることがわかります。これで3試合勝利からは見放されていますが、キッカケ次第では上位に食い込んできても不思議はないでしょう。
湘南もこれで3試合勝ちなし。「思い切りの悪さがチームに閉塞感を与えている所がある」と反町監督が話したように、90分間で放ったシュートはわずかに5本。本数が多ければいいという訳ではないにしても、「ピッチの最後の3分の1に入った時の潔さ」(反町監督)は課題として残りました。失点はリーグ最少をキープしているだけに、あとは攻撃陣の爆発が待たれる所です。 AD土屋
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J1第10節 柏×浦和@国立
柏にとっては2年ぶりに開催された聖地国立でのリーグ戦。ホームゲームで24222人と発表された観衆の数字と、アウェイゴール裏を埋め尽くしたファナティックな“赤”が、J1の舞台へ帰ってきたことを何より如実に証明しています。おなじみ柏のソウルソング“柏バカ一代”に対しても、コールリーダーの話には耳を傾け、歌が始まると同時に大音量の浦和レッズコールで打ち消しにかかる辺りはリスペクトの現れ。ゴールデンウィーク最後のゲームは、降りしきる雨をモノともしない熱狂の中で幕を開けました。
電光石火。先制は柏。右サイドで酒井がレアンドロからのリターンを素早くクロスに持ち込むと、ニアへ飛び込んだのは2戦連発弾でスタメンの座を勝ち取った北嶋。ゴールネットが揺れたのは、開始わずかに56秒。「取るべき人が取ってくれた」と大谷も話す、エースの3戦連発弾で、ホームチームがいきなりアドバンテージを奪取しました。そして、この1点は柏にとってゲームプランを一層思い通りに運ぶための、大きな要素となったのです。
立ち上がりの15分くらいまでを全体で見れば、ポゼッションで上回っていたのはやや浦和。7分には原口がミドル。8分には柏木のCKから、原がヘディングシュート。16分にはマルシオ・リシャルデスの縦パスを、うまく反転した原がフィニッシュ。先制ゴール以降は、3分にレアンドロがミドルを放った以外にチャンスのなかった柏を、手数でも上回ります。ところが、「浦和が攻めてくれれば攻めてくれるほど、ウチのチャンスだと思ってやってた」と話したのは柏不動のボランチ栗澤。この発言の真意は、ネルシーニョ監督が明らかにしてくれました。曰く「浦和が攻撃に出た時は柏木が上がって、山田が1人アンカーで残る。その山田の両脇にスペースが空くので、相手のサイドバックと2列目、トップの連携をブロックしてニュートラルにすれば、奪った後に山田の周囲のスペースへ効果的にボールを入れてカウンターができる。そういうトレーニングは積んできた」と。浦和はここ最近採用していた4-3-3から、柏木と山田暢久をドイスボランチ気味に置く4-2-3-1でスタートしましたが、柏も「3トップなのでサイドに基点を創られると厳しくなる」(栗澤)と攻撃的な中盤をいつもより外側に配置。これにより、「マークに付く人をハッキリできた」(栗澤)ことで、まずはサイドでの攻防で機先を制します。これを嫌がってか、原とマルシオは比較的中央に位置を取りましたが、結果として流動的過ぎることで、フォローを得られなかったエジミウソンが孤立。マルシオも埋没する中で、ボールの集まった柏木が前に出ていくのはいわば必然だったとも言えると思います。これに「1点目を取ったことで相手が多少前がかりになった」(大谷)部分もプラスされ、柏の前にズラリと好条件が揃いました。
そして、まさにそのカウンターが発動したのは21分。浦和のCKを跳ね返すと、自陣からレアンドロは左へ最高のロングパス。受けた大津が短く繋ぐと、エリア外から「低く抑えて打とうと思っていた」ジョルジ・ワグネルのミドルがゴールの左スミ下へ突き刺さります。形こそ相手のセットプレーを奪ってからだったものの、カウンターからの結実という面ではまさにネルシーニョ監督の狙い通り。点差が広がりました。
以降もボールを握りながら、前が手詰まりになった浦和は22分という早さで宇賀神を下げて野田を投入する荒療治に出ましたが、「もうちょっとカウンターが速くて、前に出てくると思っていた」と増嶋が話したように、なかなか縦へ加速するスイッチが入りません。一方の柏は34分、レアンドロのスルーパスから大津のシュートは枠の左へ。39分、大津のパスを受けたレアンドロがダイレクトではたいたスルーパスはわずかに北嶋届かず。さらに41分、自陣でボールを奪うと栗澤が繋ぎ、レアンドロのパスはまさに孤軍奮闘を強いられた柏木がクリアしましたが、このカウンター時に柏が掛けた人数は、守る浦和の倍。「奪った後のレアンドロが空いた所を突いていこうと言っていた」(栗澤)狙いも、それまでのチャンスすべてにレアンドロが絡むなど完璧に体現。攻守でポイントをしっかり押さえた柏が2点をリードして、45分間は終了しました。
後半も先にチャンスを創ったのは柏。47分、大津が左サイドで粘り、ワグネルのクロスは田中がヘディングで枠へ飛ばしましたが、山岸がファインセーブ。さらに51分には再びレアンドロを経由した高速カウンター。フィニッシュには結びかなかったものの、後半もカウンターが大きな武器になり得ることを証明します。まずは1点を返したい浦和は58分、右サイドでマルシオからボールをもらった原が強烈なミドルを枠内へ。59分、またも右サイドで柏木が溜めると、上がった高橋のクロスは柏DFがクリア。この前後から原と高橋には積極性が出始め、右サイドが活性化してきますが、もう1つアクセントが足りず、決定機を掴むまでには至りません。
ペトロヴィッチ監督は65分、スピラノビッチに替えてエスクデロを投入。山田暢久がCBに下がり、柏木をアンカーに、その前へエスクデロ、マルシオ、原、原口を並べる4-1-4-1気味にシフト。67分には原がドリブルで華麗に2人を置き去るも、3人目の大谷がスイープ。68分、エスクデロの右クロスを、二アでエジミウソンがすらし、マルシオが走り込むも、シュートは力み過ぎてヒットせず。2点が重くのしかかります。
70分、ネルシーニョ監督が切った1枚目のカードはワグネルに替えて橋本。すると橋本はいきなり71分、74分に積極的なオーバーラップから田中の決定機を演出するなど躍動します。一方、77分にペトロヴィッチ監督が切った最後のカードはマゾーラ。これで、攻撃的なポジションには原口、エスクデロ、マゾーラとドリブラー3人が並びましたが、率直に言って機能していたとは言い難いと思います。
逆に、冴えまくるネルシーニョ采配。83分、レアンドロの左FKを二アでその8分前に投入されていた澤がヘディング。山岸が辛うじて触り、ポストに跳ね返ったボールはDFがクリアしましたが、そこにいたのは「彼は今、ゴールの匂いがすごくしているのでしょう」と指揮官も笑顔で言及した北嶋。3-0。勝敗は決しました。浦和も92分、相手が一瞬見せた隙を突いて、最後まで戦う姿勢を見せていた原口が1点を返しましたが、時すでに遅し。「戦術をしっかり理解して、90分継続して遂行できた」とネルシーニョ監督も認める完勝で、柏が早くもシーズン4勝目を挙げる結果となりました。
浦和は個人のプレーは規則的なのに、チームとしてのプレーが規則的ではないように見え、強烈な個の組織化に苦しんでいる印象です。特に今日もかなり突かれていた、攻守のトランジションの遅さは致命的。厳しいゴールデンウィークとなってしまいました。
勝った柏はスカウティングも含めて、あらゆることがハマった、まさに完勝。ネルシーニョ監督も「今シーズンの5試合の中でも、今日は戦術面で一番良い内容だった」と手応えを語りました。J2を戦ってきた昨シーズンから確実に積み上げてきたベースも、さらにワンランク上がってきている太陽王。“日の出の勢い”はまだまだ止まりそうにありません。
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J2第10節 東京V×FC東京@味スタ
3年ぶりの再会はJ2での対峙。共に昇格を唯一の目標に頂く東京VとFC東京。東京ダービーが味スタに帰ってきました。ただ、東京に本拠を置くライバルという以上に、J1復帰にとって蹴落とさなくてはならないライバルという側面も強い両者の激突。スタジアムを埋めた“東京サポーター”は28832人。この一戦でしか歌われないチャントが渦巻く中、20度目となるキックオフを告げるホイッスルが吹かれました。
先にチャンスを掴んだのはFC東京。4分、最終ラインで少しもたついた深津に激しく寄せた梶山がボール奪取から、足を伸ばしてオープニングシュート。前節から戦線復帰した土肥が辛うじて弾き出しますが、まずは勢いを表出させます。5分は東京V。ユースから昇格したルーキーの小林がシンプルに縦へ。走った平繁はカバーに戻った森重と入れ替われず、オフェンスファウル。ここは結果的にシュートまで至らなかったので、あまり印象に残らないシーンだったかもしれません。ただ、これは“繋ぐ”スタイルを標榜する東京Vが隠し持った狙い。「後ろの4人のカバーの関係がうまくいってないように見えたし、森重と今野の間が空く」(川勝良一監督)というのはインフォメーション済み。実際に平繁が抜け出したのはCBのまさにど真ん中で、狙い通りの動き出しだったのは間違いありません。
6分はFC東京。阿部の左クロスを、高松が頭で叩いたボールは枠の左へ。14分は東京V。河野、菊岡、井上と回して、河野の左クロスを平繁はシュートまで持ち込めなかったものの、ヴェルディらしいスタイルを見せ付けます。15分はFC東京。右サイドから中へ付けた椋原のパスを高松がエリア内で収め、徳永を経由した羽生の左足ミドルは枠の左へ。15分まではダービーらしい、チャンスを創り合う展開となりました。
ところが、以降は「相手の流れの時間がいつもより長かった」と阿部が話したように、東京Vへ流れが傾きます。1つの要因は1トップ下へ入った河野が、幅広くボールを引き出したこと。ともすればそれは課題ともされているようですが、この前半に関しては動きの少ないFC東京の中盤をアクティビティで上回ったことは、リズムを生み出すことに繋がっていた印象です。もう1つの要因は「やれないことはないなと感じた」という小林の存在。5分のように縦への脅威をちらつかせながら、時間帯では繋ぎの潤滑油にも。このユース出身の2人のレフティが、ペースを引き寄せる上で小さくない役割をよく果たしていたと思います。さらに、平繁の負傷を受けて28分からピッチに登場した平本は、いきなり1分後に菊岡のフィードを受けて裏へ。最終的には森重のカバーに遭いますが、替わったばかりの平本もしっかりCBのギャップに潜る狙いを体言したように、東京Vはやりたいことがハッキリしていました。
一方のFC東京は「自分たちが持ってる時も崩す所まではいかない」と今野が話したように、攻撃はかなり手詰まり。こちらの要因は「2トップにほとんどボールが入らず、高い位置で基点ができなかった所」(大熊監督)。特にロベルト・セザーは果たすべき役割が明確に見えず、ピッチを浮遊。「ウチはCBが強いので、プレスバックしても潰せる」と東京Vのボランチを任された小林も話すなど、FC東京のアタッカー陣を消し去りつつ、縦と横を使い分けながら攻めた東京V優勢で45分間は終了しました。
後半も勢いは東京V。50分には河野が獲得したFK。菊岡が入れたボールを土屋が完璧なヘディングで枠に運びますが、ここは今野が必死にクリア。先制とはいかないものの、決定機を掴みます。苦しいFC東京に追い打ちを掛けるような判定は54分。エリア内で倒れたロベルト・セザーに対して、飯田淳平主審はシミュレーションと判断し、イエローカードを提示。前半にも1枚もらっていたため、35分近くを残して退場となってしまいました。
ここがゲームの潮目。結果として、この退場によってゲームの流れは一転、ほとんど五分か、あるいはややFC東京ペースに変化します。FC東京側からすれば「1人少なくなってやることがハッキリした」(椋原)のが好転した形。59分には高松に替わって谷澤が入り、鈴木を最前線に押し出した4-4-1にシフトすると、61分にはその鈴木が足元でボールキープする土肥に激しく襲い掛かり、あわやというシーンを創出。さらに68分、羽生に替えてペドロ・ジュニオールを1トップに送り込んでからは、一層戦い方に統一感が出てきます。逆に東京Vは「もっとチーム状態に余裕があれば、外をうまく使って相手を引き出したり、攻撃の人数に厚みを増せたが、多少焦りはあった」と川勝監督。小林も「ゴールを狙う意識が強過ぎて、前へ前へになってしまった」と話しています。また、「前半飛ばしたこともあって」(川勝監督)全体の運動量が低下したタイミングも、FC東京に10人でのゲームリズムが出始めたのと結果的にマッチした印象。まさに「サッカーにありがちな1人少なくなった方が頑張る」(川勝監督)要素が重なって、ゲームが変容したのだと思います。
78分、FC東京に訪れたビッグチャンス。右サイドで谷澤からのリターンを受けた椋原のクロスは絶妙。ペドロ・ジュニオールの頭にピタリと合ったものの、ボールはゴール左へ。アウェイ側の青赤が頭を抱えます。81分、鈴木のCKをファーで今野が叩いたボレーは、土肥が何とかキャッチ。攻勢はFC東京。さらに最終盤には思わぬアクシデント。所定の90分を回ってから、土肥が負傷によりプレー続行不可能に。既に3枚のカードを使っていた東京Vは「DF陣は絶対変えたくなかったので、身長もあるからアイツが。結構やりたそうでしたけど、逆に(笑)」(土屋)と平本が色の違うユニフォームを着込み、ゴールマウスに立ちます。時間は96分。谷澤の蹴ったCKは、ゴール前で混戦になりましたが、なんとかシュートを打たれる前にDFがクリア。98分41秒、終了を告げるホイッスル。東京ダービー第1弾は両者譲らず。スコアレスドローという決着を迎えました。
東京Vは前半の出来からすれば勝ち点3を奪いたかった所ですが、「シンプルだけどゴールに向かう所は多少見えてきた」と指揮官も話したように、繋いでいく中でも縦へ一気にスピードアップする形から何回かチャンスを創れたのは収穫。連敗も3でストップするなど、上昇の兆しになり得るゲームだったのではないでしょうか。
一方、やや深刻なのはFC東京。平山、米本、石川と絶対的とも言うべき中心選手の離脱は確かに痛い所ですが、そういう時のために大量補強を敢行したはず。特にボランチはJ1と比べても見劣りしない選手層を誇るにも拘らず、徳永を起用せざるを得ない辺りに、チーム作りが思うように進んでいない現状が垣間見えます。また、4試合を終えてわずかに1ゴールしか奪えていない攻撃面も課題が山積み。しばらく茨のJ2道が続くかもしれません。
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J1第9節 川崎×磐田@等々力
再開幕初戦はホームで仙台に劇的な逆転負け。金曜日のゲームも昨シーズン王者の名古屋に完封負けと、連敗を喫してしまった川崎。何とか悪い流れを変えたい相馬直樹監督は、故障で出遅れていた“王様”ジュニーニョのスタメン起用を決断。さらに、稲本の負傷欠場を受けてボランチには中村を配置し、SHも右に田坂、左に山瀬とメンバーに変化を付けてきました。一方、磐田のスタメンは前節からCBのイ・ガンジン、左SBの山本脩人、前線の山崎と3人が変更点。開幕3試合で1勝2分けとある程度結果が出ているだけに、アウェイとはいえ勝ち点3を持ち帰って一層の自信に繋げたい所。水色を基調とするチーム同士の一戦は小雨の等々力です。
ゲームは非常に慎重な立ち上がり。お互いに単発で終わる攻撃が多く、なかなかシュートシーンを創れません。先にいい形を迎えたのは磐田。9分、後方からのフィードを前田が頭で落とすと山崎が繋ぎ、小林のミドルはDFにブロックされますが、シンプルに前田に当てて展開というチームの核となる狙いから、チャンスを生み出します。すると20分にも磐田に好機。川崎DFのクリアを拾った駒野が前田に付け、左へ展開したボールを山田がクロス。DFのクリアでCKになりましたが、速い攻撃で川崎を脅かすと、駒野が蹴ったCKは前田が頭でジャストミート。相澤のファインセーブが飛び出し、先制とはいかなかったものの、決定機を創出しました。
さて、20分までシュートを小宮山の強引なミドル1本に抑えられていた川崎は、「仙台戦と名古屋戦は中、中からの攻撃が多かった」(井川)ことから、「もっとサイドから攻めようと話していた」(柴崎)にも拘らず、2トップを除いてSHも含めた8枚のブロックで守る相手を引き出す仕掛けに欠け、狙いを体現できません。そんな中、流れを変えるプレーが見られたのは22分のシーン。自陣でボールを持った中村の裏を狙ったシンプルな縦パスに、走ったジュニーニョは潰され、チャンスにはならず。それでも直後、中村のスルーパスから左サイドを抜け出したのはまたもジュニーニョ。クロスは中と合いませんでしたが、「2人の縦への意識はアクセントになる」と井川。この辺りの時間帯から急激に中村のボールタッチが増え、それに比例して川崎の攻撃が勢いを増していきます。24分、山瀬のパスを収めた矢島が繋ぎ、ジュニーニョのシュートはバーの上へ。26分、中村が小宮山とジュニーニョを連続して壁に使うワンツーから、最後は捕まりましたがエリア内へ侵入。28分、左サイドで小宮山と山瀬のパス交換から、最後は中村がバーを越えるミドル。小宮山、山瀬と左サイドの2人が躍動。中村を中心にチームのリズムが生まれます。
すると、その傾いた流れを加速させるシーンが訪れたのは30分。田坂へのファウルを犯した山本脩人に西村雄一主審が提示したのは、2枚目のイエローカードと、それに伴うレッドカード。磐田は残り60分以上を10人で戦うことになりました。柳下正明監督は山田を下げて金沢を送り込み、4-4-1にシフトして対応。36分、小宮山とのワンツーから山瀬の折り返しは、ジュニーニョに合うもシュートがヒットせず。45+1分、ゴール左、約25mの位置から中村のFKは枠のわずか右へ。スコアレスとはいえ、攻の川崎、守の磐田という形がより明確になって、前半は終了しました。
ハーフタイムを挟んでも、当然流れは変わらず。「もう攻められるのはしょうがないので、前と後ろをコンパクトにした中で踏張ろうと」(那須)いう磐田を、川崎が押し込みます。48分、中村の右CKを菊地が頭で競り勝つと、ボールはフリーのジュニーニョへ繋がるも、ヘディングはゴール左へ。51分、またも中村の右CKから、最後は小宮山が放ったボレーはバーの上へ。53分、山瀬が左サイドをドリブルで切り裂き、上げたクロスへ飛び込んだ矢島のヘディングは枠に飛ばず。56分、前半途中でケガの田坂と交替した登里と田中で右サイドを崩すも、矢島はシュートまで持ち込めず。62分、中村の高速縦パスを受けた矢島が、右へ流れながら打ったシュートは枠の左へ。「サイドは機能していたと思うし、仙台戦や名古屋戦よりフィニッシュも増えていた」とは柴崎。「10人になってからもバランスよく守備していた」とは柳下監督。攻守の構図こそハッキリしていたものの、お互いにこのシチュエーション下では決して悪くないパフォーマンスを披露しながら、時間が経過していきます。
71分、中村の縦パスをジュニーニョがうまく引っ掛けて、シュートを放つも枠の左へ。78分、中村が山瀬とのパス交換から左へ送ると登里はフリーでしたが、トラップが大きくなり川口がキャッチ。直後にもジュニーニョのラストパスから登里が抜け出すも、飛び出した川口がファインセーブ。日本を背負った守護神の貫禄。スコアは動きません。
79分、相馬監督の決断。「左サイドからかなりクロスが上がっていたので、クロスに入る人数を増やしたい。右サイドから思い切って突っ込めばチャンスが来るからと送り出した」小林が、登里に替わってピッチへ登場します。84分には磐田に決定機。駒野のFKから、一瞬のエアポケットを見逃さなかった前田が左足ボレー。ボールはわずかに枠を逸れましたが、後半最初にして最大のチャンス。2年連続得点王の怖さを垣間見せます。逆に川崎が掴んだ決定機は87分。左サイドで2人を外した中村がクロスを入れると、飛び込んだのは小林。まさに指揮官の采配ズバリ。ところが頭に当てたボールは枠を捉えられず。等々力にため息が広がります。
時間は90分に突入。もはや万策尽き果てかけたかに思われた時、突如としてスタジアムに訪れたのは歓喜と熱狂。左サイドから小宮山が上げたクロス。ジュニーニョのシュートはDFがブロック。再びジュニーニョのシュートもDFがブロック。「よく覚えてないけど転がってきた」ボールをプッシュしたのは、右から詰めていた小林。「途中から試合に出ても、なかなか結果が出せずに悔しい想いをしていた」ストライカーのJリーグ初ゴールは、チームに勝ち点3をもたらす貴重な貴重な決勝弾。川崎が土壇場で連敗をストップする大きな勝利をモノにする結果となりました。
磐田は「後半44分まで非常に良い仕事をした」という柳下監督の言葉が全て。チームのスタイルとして、前線が1枚になると攻め手が相当限られるのはやむを得ず、ドローで十分という戦い方は奏功していましたが、最後の最後で決壊してしまいました。ただ、「全員で守る意識はできていた。戦う姿勢は今後に必ず生きる」と那須。守備面では一定の手応えを掴んだようです。
川崎は前述したように、サイドを使う意識の高さが攻撃のバリエーションを増やした印象。特に決勝点にも繋がった左サイドは、山瀬に小宮山と単騎でもコンビネーションでも崩せる2人がかなり効いていました。「今日の勝利をキッカケにできれば、自分たちの自信に繋がる」と柴崎。川崎にとっては、苦しみながらも結果と自信を手に入れた価値のあるゲームだったのではないでしょうか。
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J2第9節 草津×熊本@正田スタ
3月5日の開幕から2ヵ月弱。Jリーグの中で最も遅い「待ちに待ったホーム開幕」(草津・副島博志監督)を迎えた正田醤油スタジアム群馬。アウェイ開催の2試合を経て、ようやく自らが熱量を注ぎ込む戦士たちを目の前で応援する機会を得た草津サポーターを中心に、スタジアムへ集まったフットボールジャンキーたちは3258人。“俺達に出来る事を”と“共に歩もう”の間に日の丸をあしらった横断幕が掲出される中、その場にいた全ての人々による黙祷が捧げられ、ゲームはキックオフを迎えました。
先に勢い良く飛び出したのは、開幕2連勝と上々のスタートを切った熊本。4分、エリアのすぐ外でボールをうまく収めた長沢駿が、思い切り良く左足を振り抜き、GK北一真の好セーブに阻まれたものの、いきなり草津ゴールに襲い掛かります。さらに15分、地元凱旋となる群馬出身の仲間隼斗が粘って繋ぎ、市村篤司のクロスに頭で合わせたのはここも「高さの部分ではどのチームにも勝てている」と話す長沢。「最初は入るかなと思ったけど少し軌道が逸れていった」(長沢)ボールは左のポストを直撃しましたが、惜しいシーンを創出します。
熊本のシステムは中盤ダイヤモンドの4-4-2。長沢と仲間の2トップで、その下にファビオが入る形を採用する中、「ちょっとビックリしたピッチの悪さ」(熊本・高木琢也監督)とあれば、当然共に190センチを誇る長沢とファビオを目がけたロングボールは第一の選択肢。特に長沢の高さは序盤から効果的で、「セカンドを拾おうとすると中盤も最終ラインも引いてしまう。ある程度全体が下がるのは仕方ない」と副島監督も話したように、草津は自陣へ押し込められてしまいます。ところが、先制ゴールを奪ったのは劣勢の草津。17分、右サイドの深い位置でボールを残したアレックスが中へ送ると、萬代宏樹はスルー。ここへ「スルーと声を掛けて」走り込んだ熊林親吾が右足のダイレクトで叩くと、ボールは右スミギリギリに飛び込むファインゴール。「別に仲良くないです」とスコアラーも嘯く、元ベガルタコンビの巧みな連携で、ホームチームがリードを奪いました。
そして、このゴールが双方の形勢を入れ替える効果をもたらします。草津は、「相手はCBの背後がウイークポイントと捉えていて、そこをスピードのある2トップが狙う」(副島監督)形を多用。また、これが熊本のプレスを外す作用ももたらし、相手に攻撃の時間を与えません。さらに、躍動が目立ったのは右SBに入った古林将太。32分には松下裕樹のサイドチェンジを受けると、積極的なカットインを試み、自らフィニッシュまで。40分にも彼のドリブルが萬代のシュートに繋がるなど、サイドの推進力として機能していたと思います。一方の熊本は、「なるべく近くでプレーすることを言われていた」(仲間)前の3人がなかなか有機的に絡めません。中でもファビオはボールを受けるポイントが掴めず、ピッチを彷徨ってしまう羽目に。「前の3枚は流動的だったけど、CB2人と僕でうまく回しながら我慢して対応した」とは草津のボランチを務める松下。15分以降で熊本に記録されたシュートはゼロ。ゴールを機にバランスを整えることに成功した草津が1点のアドバンテージを持って、ハーフタイムに入りました。
後半開始から動いたのは高木監督。「今日のピッチは彼の持ち場じゃなかった」と仲間に替えて、Jリーグデビューとなる中京大から加入したルーキーの齊藤和樹を投入。「とにかくゴールに向かう動きを意識した」(高木監督)交替で、まずは1点を狙います。すると47分、いきなりそのルーキーにチャンス到来。市村が右サイドの深い位置から中へ折り返すと、受けたのは齊藤。ゴールへのコースも空いており、絶好機に見えましたが、持ち出しを選択し、DFに入れ替わられオフェンスファウル。「意表を突くトリッキーなプレーがある」(高木監督)「足元に巧さがある」(熊本・根占真伍)と2人が口を揃えた特徴を聞けば納得できる部分はあるものの、ルーキーがデビュー戦で見せるファーストプレーとしては消極的。以降、齊藤には数回のチャンスが訪れましたが、いずれも無難なプレーチョイスに終始。この状況で起用されたことからも容易に想像できる期待の大きさと裏腹に、チームの停滞を招く一因になってしまった感は否めません。
50分には後方からのフィードを長沢が落とし、ファビオの左足シュートは枠の右へ。53分にも草津DFラインの連携ミスを突いて、ファビオが独走。DFに背後から倒され、ファウルかと思われたシーンに野田祐樹主審のホイッスルはならず、チャンスは潰えてしまったものの、ファビオに積極性が戻ってきただけに、それをユニットとしての攻撃に昇華できなかったのは熊本にとっても痛かった部分でしょう。それでも攻勢は熊本。63分、片山奨典の左クロスから、こぼれを狙った筑城和人のミドルはクロスバーの上へ。64分、廣井友信のフィードから最後は片山のボレーもクロスバーの上へ。68分、根占のパスを受けたファビオは、コンタクトで1人弾き飛ばすドリブルを披露し、シュートを放つもGKキャッチ。1点が重くのしかかります。
高木監督2枚目のカードは72分、片山に替えて大迫希。3枚目は80分、筑城に替えて、こちらもJリーグデビューとなる大阪教育大から加入した田中俊一。システムも3-1-4-2へシフトして、「ボックスの中にとにかくボールを入れる」(高木監督)姿勢を明確に、最後の勝負へ打って出ます。しかし、「ゴール前にかなり人もいて、ガッチリ守ってきてる感じ」と長沢も話した草津の堅陣はCBの中村英之と御厨貴文を中心に聳え立ち、揺るがず。副島監督もようやく80分に切った1枚目のカードは、「前でのキープ力が欲しかった」とアレックスに替えてラフィーニャ。さらに88分には熊林を下げて、DFの田中淳を送り込むと、92分には古林と佐田聡太郎のSB同士を入れ替える、念の入れよう。93分には田中のロングスローからフリーになった櫻田が、絶好の決定機を決め切れないシーンもありましたが大勢に影響なし。「よくファイトして、集中してやってくれた」と指揮官も称賛した草津が“再”開幕2連勝かつ今シーズンのホーム初勝利をサポーターに贈りました。
1点に泣いた格好の熊本は、昨シーズン飛躍的に向上した組織での守備ブロック形成はほぼ問題なし。あとはいわゆるアタッキングサードの部分ですが、「こういうゲームに出続けるシーズンは初めて」という長沢と、「監督の信頼度を上げて90分間出たい」という仲間の2トップは補完性も高く、コンビが熟成してくれば、ファビオも含めたユニットはJ2を席巻する可能性を十分秘めていると思います。
勝った草津はパワーに強みを持つ相手の攻撃陣に対して「ウチのCBもよく跳ね返したし、うまく凌げたと思う」と松下が話した通り、無失点で終えたのは、19歳の古林に20歳の永田拓也という、非常に若いSBを含んで構成される最終ラインにとって大きな自信になったはずです。「昨シーズンは開幕5連敗が重くのしかかった。そういうイメージを払拭する意味でも結果は凄く大事」と副島監督。季節外れの“空っ風”をJ2前線に巻き起こす準備は十分整っています。
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J1第7節 大宮×柏@NACK5
“日常”という言葉が本来どういう意味を持つのかということを、おそらく日本中が考えていたであろう、この1ヵ月あまりの時を経て、今日“Jリーグのある日常”が我々の下に帰ってきました。ただ、依然として普通の“日常”を取り戻すことも叶わない、たくさんの方々がいることも決して忘れることはできません。試合前に行われた、今回の大震災で亡くなられた方々へ向けた黙祷。大宮サポーターから巻き起こった「頑張れ日本」コール。今シーズンのJリーグはプレーする選手、監督やコーチをはじめとするクラブスタッフ、声援を送り続けるサポーター、そして我々メディアの人間にとっても特別なシーズンであり、その意識は常に持ち続けていかなくてはならないと思います。
さて、大宮は開幕戦の4-2-3-1から、中断期間のトレーニングマッチでも採用されていた4-4-2へシフトチェンジ。柏はおなじみの中盤4枚が中に絞った形の4-4-2で、再開幕に臨みます。 最初にチャンスを掴んだのは柏。開始わずかに1分、茨田が長いドリブルから左へ送り、最後はジョルジ・ワグネルのシュート気味にも見えたクロスはオフサイドとなりますが、開幕戦の好調を維持するかのような出足を見せます。しかし、3分に柏陣内深くでパク・ドンヒョクのクリアをブロックした流れから、渡部がわずかに枠の左へ外れるシュートを放つと、ここからは大宮が圧倒。6分、杉山の右クロスをラファエルが胸で落とし、東の左足ボレーはバーの上へ。16分、上田が開幕戦の鹿島戦でネットを揺らしたのとほとんど同じ、右寄りのゴールまで約25mの位置から繰り出したFKはわずかに枠の右へ。惜しいシーンを続けて創出します。
大宮がペースを握った要因の1つは、2トップの「しっかりボールを収められる」(茨田)技術。イ・チョンスもラファエルも前線に張るタイプというよりは、広範囲に動いてボールを引き出すことが多いタイプ。「ボランチとCBの間で受けて起点を作られたので、そこの受け渡しをスムーズにできれば良かった」と柏のボランチに入った大谷も振り返ったように、柏は相手2トップへ入るボールに的を絞り切れず、後手を踏む格好に。また、その影響もあってか、中盤を務める4枚の距離感が遠く、セカンドもほとんど大宮が奪取。「ボールも非常に動くようになってきた」と鈴木淳監督が言及した通り、上田の配球を中心に大宮が中盤を制圧しました。
もう1つの要素は、バックスタンド側、つまり大宮の左サイドであり、柏の右サイドにおける、サイドの主導権争い。柏で開幕戦から唯一のスタメン変更となった右SBの酒井は、今日がJ1デビュー。「緊張しやすいタイプ」(大谷)ということもあってか、立ち上がりからミスが目立ち、本来の攻撃性を発揮できません。逆に大宮の左SB村上は、19分に青木からのパスを受けると積極的に飛び出し、イ・チョンスからのリターンをエリア内でのフィニッシュに繋げるなど、攻撃面でも推進力を存分に披露。「SBを起点にされてゲームを創られた」とは茨田。中盤とサイドを制すれば、流れは当然大宮に傾きます。
28分には栗澤とワグネルの呼吸が合わず、かっさらった渡部がシュートまで持ち込むも、ゴール左へ。33分、今度は最終ラインの近藤がスリップすると、拾ったラファエルのドリブルシュートは菅野がファインセーブ。こぼれに反応したイ・チョンスをパク・ドンヒョクがエリア内で倒し、微妙なシーンではありましたが木村博之主審はノーホイッスル。45+2分、ラファエルとのワンツーで抜け出した渡部の突進は、菅野が飛び出してセーブ。8対2というシュート数が示すように、大宮ペースで前半は終了しました。
ハーフタイムを挟み、両チームとも選手交替はなし。ところが「相手陣内でスペースが創れず、我々のペースにできなかった」と判断したネルシーニョ監督は、しっかり“魔法”を掛けていました。その“魔法”とはシステムチェンジ。4-4-2から、田中を最前線に置いて、その下に右から茨田、レアンドロ、大津を並べる4-3-3気味の4-2-3-1にシフト。すると、後半開始から2回続けて酒井が深い位置まで切れ込んでクロス。共にキックミスになったものの、「ユースから一緒にやってるので特徴はわかっている」と話す茨田が明確に自身の前へ入ったことで、酒井が積極性を取り戻すと共にサイドの攻防で優位に。また、守備面でも「プレッシャーを掛ける所が明確になった」(茨田)ため、中盤でのボール奪取の増加に比例して、キープする時間も増加。深谷も「相手のフォーメーション変更に対してバタバタしてしまった」と認めています。
そして、乗った流れのままに記録された先制ゴール。55分、右サイドを上がってきた酒井からパスを受けたのは「相手のマークが凄く外れやすくなった」と感じていた田中。ミドルレンジから「ファーサイドに枠を外さないよう意識して」放ったミドルは、DFに当たりながら枠へ飛ぶと、北野は弾くのが精一杯。詰めたレアンドロのシュートが、左のポスト内側を叩いて、右のサイドネットに突き刺さります。45分間で2本だったシュートを、10分間で3本積み重ねての一発。アウェイの柏がアドバンテージを得ました。
前半の攻勢がすっかり影を潜めてしまった大宮。「相手のシステム変更によって、守備より攻撃がうまくいかなくなった」と鈴木監督。サイドの攻防も劣勢を強いられますが、それ以上に頼みの2トップへ縦パスが入らなくなってしまいます。これも柏にとって攻撃の時間が増えたことで、ドイスボランチがある程度余裕を持って2人を迎撃することができたから。「ゲームの中で修正できたのは良かった」と大谷も手応えを語っていました。75分に鈴木監督は1枚目のカードを起用。上田を下げて藤本を送り込み、ラファエルを頂点に置いた4-2-3-1にシフト。80分には左SHに移ったイ・チョンスのクロスから、こぼれをボランチに移った東が狙いますが、菅野がしっかりキャッチ。得点を許しません。さらに大宮は切り札の石原を投入すると、再び4-4-2に戻して勝負。91分、左サイドで泥臭く繋いだボールを東が上げると、石原が驚異的な打点のヘディングを見せるも、菅野がキャッチ。「苦しい時間帯にも慌てないで立て直す力を、去年積み上げられた」という田中の言葉にも納得のウノセロ。昇格組の柏が見事開幕2連勝を飾りました。
大宮は悪くないゲームだったのは間違いありません。完全に主導権を握った前半は圧巻の機能性だったと思います。それだけにそこでゴールを奪えなかったのは痛恨でしたが、「今シーズンずっと言ってきてることが、徐々にできるようになってきている」と鈴木監督。2トップや東、上田、キム・ヨングォンなど個で勝負できる選手が中心を担うなど、今シーズンの大宮は一味違いそうですね。
勝った柏はネルシーニョ采配が相変わらずズバリ的中。前述の田中に加えて、「システム変更がハマったけど、去年から色んなシステムでやっているので混乱はなかった」と大谷が話したように、積み重ねて来たものが着実にチームへ根付いている印象です。上々のJ1帰還を果たした太陽王の勢いは、そう簡単に止まりそうにはありません。
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TM 横浜FC×草津@西が丘
昨日、バルサTVチャンピオンズリーグの収録でJ SPORTSにいらっしゃった平畠さんに教えて頂き、今日は西が丘へ行ってきました。当初のスケジュールではまさに今日の15時キックオフ@正田醤油スタジアムでJ2第7節として開催されるはずだったカード。横浜FCと草津のトレーニングマッチです。この対戦が西が丘で実現するというのは、おそらく今後もまずないと思うので、そういう意味でも非常に貴重なゲームだと言えるでしょう。また、いよいよ再開幕が1週間後に迫ったタイミングとしては、より公式戦に近い意識でのゲームとなるはず。コンコースでも募金活動が行なわれる中、今回の震災で亡くなられた方々へ黙祷が捧げられ、キックオフを迎えました。
横浜FCのスタメンはGKが関憲太郎。DFが右から柳沢将之、パク・テホン、飯尾和也、宮崎智彦。中盤はドイスボランチがルーキーの佐藤謙介と藤田優人で、右SHが寺田紳一、左SHが高地系治。FWは西田剛と藤田祥史です。一方の草津はGKが橋田聡司。DFは右から古林将太、中村英之、有薗真吾、永田拓也。ドイスボランチが松下裕樹と戸田和幸。SHは右が林勇介で、左が熊林親吾。2トップは萬代宏樹とアレックスが並びます。
序盤はまず草津がラッシュ。前線からの積極的なプレスが功を奏し、横浜を押し込みます。6分には左サイド、ゴールまで約30m弱の位置から松下が狙ったFKはカベに当たってゴール左へ。そのCKを熊林が蹴ると、中村の枠へ飛ばしたヘディングは横浜DFが何とかクリア。13分には鮮やかなボール回しから、右へ流れた松下のクロスを熊林がヒールで落とし、萬代がシュート。ボールはクロスバーを越えますが、このシーンにも顔を出した熊林と松下がボールの収め所となり、中盤を掌握した草津は17分にもアレックス、林、アレックスと繋いで、最後は松下の左足ミドルが関を強襲。「15分くらいまではよかった」と松下も話したように、仕上がりの良さを感じさせるプレーを披露します。ただ、先制ゴールを挙げたのは逆に15分くらいまで防戦一方だった横浜。19分、宮崎のドリブル突破から得たCK。高地の蹴ったボールをファーでパク・テホンが叩くと、橋田もよく弾きましたが、こぼれ球を佐藤がプッシュ。ファーストシュートを結果に結び付けました。
最初のピンチで失点を喫した草津も、21分には戸田の縦パスを萬代が落とし、アレックスのミドルは枠を捉えるも、関がファインセーブ。反発力を見せましたが、以降は中盤での優位性をなかなかフィニッシュまで繋げることができずに、少しずつトーンも下がってしまいます。すると、次のゴールを決めたのも横浜。36分、中盤でボールを持った高地はラインの裏へ絶妙なフィード。走った藤田祥史はマーカーを切り返しで軽くいなすと、得意の左足で冷静に流し込むファインゴール。2-0と点差が開きます。ここからは勢いを得た横浜が逆にラッシュ。41分、左から藤田優人の上げたクロスを、ファーで藤田祥史が折り返し、宮崎のシュートは橋田がキャッチ。44分、宮崎のパスを左サイドで受けた寺田がカットインミドルを枠の左へ。45分、佐藤のダイレクトパスから高地のミドルはゴール右へ。藤田祥史へのクサビへ、2列目の寺田と高地や3列目の佐藤がうまく絡んでいく形でリズムを掴んだ横浜が、2点のアドバンテージを得て、1本目は終了しました。
迎えた2本目。横浜は寺田に替えて、ルーキーの荒堀謙次を送り込み、中盤の配置も高地と藤田優人がボランチで、右に荒堀、左に佐藤へシフトします。先にチャンスを創ったのは、ハーフタイムにかなり副島博志監督から檄を飛ばされたという草津。48分、アレックスのスルーパスに抜け出し、GKと1対1を迎えたのは林。ところがシュートを打つタイミングを逸すると右へ流れてしまい、中への折り返しもDFがクリア。最高の決定機もモノにできません。57分も再び草津。何度か積極的なオーバーラップを見せていた古林のクロスがこぼれると、エリア右でボールを拾ったのは林。中央にフリーの味方が控え、ファーサイドも空いていましたが、林の選択は強引なシュート。対峙した飯尾が腹部でブロックし、ここもゴールとはいきません。林は盛岡商業で選手権優勝を経験し、浦和に加入したものの3年間で公式戦出場は6試合にとどまり、今シーズンから完全移籍で加入した21歳。左利き独特のリズムもあり、チャンスにはしっかり顔を出しているだけに、今後実戦経験を積めば草津にとっても強力な武器となりそうな印象を受けました。
さて、前半終盤のいい流れから再び停滞してしまった感のある横浜は62分に選手交替。西田に替わってピッチへ飛び出したのは背番号11。この男の登場には、スタンドも敵味方関係なく大歓声。西が丘も一層華やいだ雰囲気を纏います。すると、直後に横浜が追加点。64分、柳沢の縦パスをゴールラインギリギリで追い付いた荒堀が中へ折り返すと、待っていた佐藤が豪快にゴール右スミへ。開幕スタメンを勝ち取ったルーキーの今日2点目で、スコアは3-0となりました。
決して少なくないサポーターも詰め掛ける中、このままでは終われない草津もようやく66分に反撃。左サイドからロングスローが入ると、こぼれを収めた林がショートパス。これを熊林が難しいタイミングにも拘らず、ダイレクトで右足を振り抜くと、ボールはゴール右上ギリギリをピンポイントで捕獲します。これには草津サポーターも大きな拍手。ようやく紺と黄色の歓喜が広がりました。このゴールも素晴らしかったですが、やはり草津の攻撃における熊林の存在感は絶大。長短のパスを駆使して攻勢劣勢問わず、常に局面を打開する力を発揮していました。ちなみに熊林は試合後、なぜか流れで平畠さんと私に缶コーヒーをおごってくれました。だからという訳じゃないですけど、頑張って欲しいですね。
終盤は両チームとも少しずつメンバーを入れ替えたこともあって、コンビネーションというよりは個での打開が多くなっていきます。68分は草津。フィードのこぼれを拾った萬代のミドルは、鋭い弾道でわずかに枠の左。75分も草津。高地のパスミスをかっさらったリンコンのミドルは関がファインセーブで阻止。なお、リンコンは68分に投入されたばかりでしたが、このシュートで足を痛めて負傷退場。わずか10分弱の西が丘となってしまいました。84分は横浜。中央右からのFK。カズが動かし、高地が止めて、再びカズが狙ったシュートはバーの上へ。87分も横浜。ショートコーナーから野崎陽介のうまく巻いたロングシュートはわずかにバーの上へ。結局、これ以上スコアは動かず、2本目は1対1で終了しました。
3本目は共に大幅なメンバー変更。横浜はGKがシュナイダー潤之介。DFが右から5番の練習生①、森本良、中野洋司、井手口正昭。中盤はボランチが7番の練習生②と14番の練習生③のコンビで、SHは右が荒堀、左が野崎。前線はカズと20番の練習生④。草津はGKが北一真で、114分から伊藤拓真。DFは右から佐田聡太郎、田中淳、御厨貴文、ルーキーの星野悟。ドイスボランチは同じくルーキーの山本啓人と髪を伸ばした櫻田和樹。右SHにU-23所属の横山輝佳、左SHに前田雅文。2トップは山田晃平が少し下がりめに入り、U-23所属の吹田諒と並びます。ゲームは開始早々の92分、右サイドから横浜が崩し、最後は練習生③が豪快にゴール。109分にも横浜がいい形で崩し切り、枠は捉えられませんでしたがカズのシュートへ繋げます。草津は123分、6分前に投入されたU-23所属の白井拓路が上げた左クロスから、前田を経由して、山田のシュートはバーの上へ。131分は横浜。練習生④のパスを受けたカズがシュート。DFの跳ね返りを野崎が狙うも、伊藤がファインセーブ。3本トータルでの結果は4-1で、横浜が勝利を収める結果となりました。
草津は結構メンバーが入れ替わった印象です。昨シーズン終盤に怒涛の4連勝を飾った時の、4試合目の相手が横浜でしたが、「そのゲームと今日の両方でスタメンだったのは俺とクマ(熊林)とアレックスだけですよ」と松下。特にサイドプレーヤーは古林、永田、林といずれも90年代生まれと、かなり若返りました。現状では課題も見え隠れするものの、前述の古林と永田は年代別日本代表も経験していますし、林も含めてポジションをしっかり確保すれば大ブレイクする可能性は十分に秘めています。そしてその3人を初めとした若手の成長が、チームの躍進にとって必要不可欠な要素であるのは間違いありません。
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TM 大宮×新潟@熊谷(3、4本目ver.)
いわゆる主力組の登場となった3本目。このカードはリーグ再開後、3試合目となる5月7日にNACK5でのゲームが組まれています。また、もうおなじみですが大宮の鈴木淳監督は前新潟監督。そして新潟の黒崎久志監督は鈴木監督政権下のコーチであり、元大宮の選手。さらに言えば新潟の白井淳GKコーチも元大宮の選手&GKコーチ。結構、縁のあるチーム同士の対戦です。
メンバーは大宮がGK北野。DFは右から渡部、深谷、キム・ヨングォン、村上。中盤はボランチが青木と上田、右SHが東、左SHが藤本。2トップはイ・チョンスとラファエルです。一方の新潟はGKに東口。DFは右から藤田、千葉、石川、酒井高徳。中盤は小林と本間のドイスボランチで、SHは右が三門で左がチョ・ヨンチョル。前にはミシェウとブルーノ・ロペスが入ります。
まず、最初にチャンスを掴んだのは大宮。3分、村上、藤本、イ・チョンスと繋いで東のシュートは東口を強襲。8分にも藤田のバックパスが弱くなった所に、左SBの村上がダッシュ。間一髪でクリアとなりますが、村上が2つのチャンスに顔を出すなど、積極性を発揮します。ところが徐々にリズムを掴み始めたのは新潟。14分に右でボールを持った三門が素晴らしいサイドチェンジ。チョ・ヨンチョルの落としを受けた酒井はエリア内へ侵入。シュートまでは行けなかったものの、このプレーが象徴するようにうまくサイドの幅を使う形が出てきたことで、攻撃が回り出します。中でも当然と言えば当然ですが、やはりチョ・ヨンチョルの推進力は特筆モノ。黒崎監督も「ヨンチョルは行けちゃうからね。行くなと言う訳には…」と苦笑したように、ある程度ボールを持ったら勝負というのは前提で、実際にそれがチャンスに結び付いてしまいます。鈴木監督も「サイドで的を絞れず、崩されることもあった」と言及していますが、彼をどう封じていくかは今後も対戦相手を悩ます部分でしょう。ただ、試合後に黒崎監督が「サイドに人がいて、真ん中にいなくなっちゃう。外、外に逃げてしまうところはある」と話していたのも、非常に興味深いポイントだと感じました。
さて、大宮は開幕戦で選択した4-2-3-1ではなく、4-4-2でスタート。「チョンスとのプレーは慣れ親しんでいるし、システムは問題ない」とはラファエル。実際、新潟のCB石川が「食い付くと裏を取られるというのもあって、クサビに対して甘くなった部分があった」と振り返ったように、2トップはしっかりボールを収められ、ここからはチャンスの萌芽が見られたのですが、今日の両SHを務めた東と藤本はどちらかと言えばサイドプレーヤータイプではなく、どうしても中央に入ってくることが多かったので、バイタル付近が混雑していた印象です。その影響もあってか、前半はボランチの上田がほとんど攻撃に絡んできませんでした。ビルドアップ能力は最終ラインも含めて非常に高い中で、ややサイドの使い方には課題が残ったかもしれません。40分は新潟。ブルーノが倒されて得たFKを藤田が直接狙うも、バーの上へ。41分も新潟。中盤でミシェウの巧みなヒールを起点に、途中出場の川又が左サイドから絶妙のクロスも、ブルーノのボレーは枠に飛ばず。3本目はスコアレスで45分が経過しました。
4本目はいきなり素晴らしい高精度サイドチェンジの応酬で幕開け。48分、千葉のレーザービームがチョ・ヨンチョルへ。直後、キム・ヨングォンのレーザービームがラファエルへ。Jでも屈指の好フィードキッカーがスタンドを沸かせます。しかし、この直後には新潟がゴール前で信じられないクリアミス。青木のシュートは東口が弾き出しますが、やや直前とは落差のあるプレーでした。51分は新潟にチャンス。うまくボールを奪った千葉からミシェウへ。川又のパスからブルーノが潰れ、酒井のシュートは北野がファインセーブ。そしてこのCKから生まれたゴール。藤田のボールに合わせたのは「狙い通りの所に来たのでバッチリでした」という石川。トータルスコアでも、1-2と新潟が逆転に成功します。
ここからは、大宮の運動量が全体的に低下し、61分には相手のミスを突いてラファエルが、65分にも中央をドリブルで切り裂いてイ・チョンスがフィニッシュまで持ち込むものの、やや単発の攻撃が多くなり、なかなかゴールの可能性が見えて来ない中、輝いたのはやはり10番。70分、少し新潟ディフェンスの対応がルーズになった所を見逃さず、ラファエルが右へ短いラストパス。「角度がなかったけど思い切って打とうと思った」東のシュートは激しくゴールネットを揺さぶります。東も素晴らしかったですが、ラファエルのパスも秀逸だったのは間違いありません。72分には新潟も三門のCK、混戦の中から千葉がカンフーキックボレーで枠を捉えたシュートは北野がファインセーブ。するとその1分後、今度は長いボールを東が落とすと、ラファエルの躊躇なく右足で撃ち抜いたミドルは問答無用の再逆転ゴール。本人も「3ヶ月に1回出るか出ないかのゴール」と笑うゴラッソで、今度は大宮が1点をリードしました。やはりラファエルは一味違いますね。隣で見ていた新潟担当のライターさんとも話していたのですが、ゴールに絡む部分だけではなく、チームへのロイヤリティ、つまり献身性の部分も含めてトータルでの能力はJの外国籍選手の中でも超トップレベル。彼1人を追って観戦してみても、相当面白いのではないでしょうか。
と、ここまではかなり白熱した展開で、スタンドもいい意味で盛り上がっていたのですが、80分にミシェウとイ・チョンスが小競り合いを起こした辺りから、会場の空気も一変。加えて、ちょっとどういう方が担当だったのかはわかりませんが、主審も動揺したのかジャッジが一気に曖昧になり、「イライラしてコントロールを失ってしまった」(石川)のはピッチ上のみならず、スタンドからも怒号が飛び交うような事態に。終盤はスタジアム全体がナーバスさを抱えたまま、ゲームが壊れた状態でタイムアップを迎えてしまったのは何とも残念でした。
「フィジカルコンディションが上がってきたのは大きい」と試合後に語ったのは鈴木監督。大宮は4本通じて見ても、選手層の厚さはかなりのモノがあるだけに、個々のコンディションが整えば開幕戦で一端を示したようなスタイルで1年間走り切れそうな感じは受けました。特に中盤は最激戦区。システム、メンバーの組み合わせ含めて今後が大いに楽しみです。
そして「しっかりとやるべきことはできた。チームとしてここにきていい感じでできている」とは黒崎監督。3、4本目で言えば、内容では新潟の方に少し分はあったと思います。攻撃面はある程度計算できそうな感じですが、「ここの所は失点が多い」と指揮官も語る守備面では、少しエリア内での対応で後手を踏む場面も見られた印象。また、どうしても攻撃力の高い右サイドは守備時に狙われる傾向があるだけに、その対策も1つポイントになりそうです。後は、記者陣からもサポーターからも大人気の川又を少し長めに見られたのは今日の大きな収穫でした。
AD土屋
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TM 大宮×新潟@熊谷(1、2本目ver.)
4月23日の再開が2週間後に迫ったJリーグ。再開というよりも、むしろ再開幕という色合いが濃い中、各地でJクラブ同士によるトレーニングマッチが数多く行われています。今日訪れたのは熊谷。Jリーグの公式戦も開催される熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で、大宮アルディージャとアルビレックス新潟が対戦。入場は無料でしたが、義援金活動も行われており、コンコースには募金を呼び掛ける大きな声が響き渡っていました。
さて、ゲームは45分ハーフの2試合という定義だったようですが、ここでは45分×4本のトータルで1試合という形で話を進めたいと思います。いつものようなチャントではなく、大きな拍手に包まれてスタートした1本目。大宮はGKが江角。DFは右から渡邉、福田、坪内、鈴木。中盤は片岡と金澤のドイスボランチに、右SHが金久保、左SHがユースから昇格したルーキー扱いとはいえ、昨シーズンの終盤はリーグ戦でも起用されていた宮崎泰右。2トップは石原と、1月の高校選手権で脚光を浴びた清水慎太郎が入ります。対する新潟は、GKに加入が発表されたばかりの小澤英明。DFは右からキム・スンイル(練習生)、17歳でユース所属の西村竜馬、大野、岩崎陽平。中盤は長谷部と菊地がボランチに並び、SHは右が木暮で左がルーキーの酒井宣福。前線には大島と田中の前橋育英コンビを揃えてきました。
まず最初に目を引いたのは大宮の最終ライン。簡単にクリアできる場面でも丁寧に繋ぐ意識が高く、イージーな判断ミスでボールロストしそうな局面はありましたが、開幕戦のメンバー構成で考えればいわゆる“控え組”に見られたこの姿勢は、今シーズンの大宮を象徴しているように感じます。そして、先に流れを掴んだのも大宮。特に目立っていたのは「縦に速いという長所が出たかな」と鈴木淳監督も言及した宮崎。左サイドを単騎で抜け出すシーンを再三創り、8分にはやはり左サイドを独走して中央へ折り返すと、石原を経由して金澤がミドル。枠は外れたものの、サイドを崩してフィニッシュへと繋げます。しかし、20分には劣勢の新潟に決定機。素早いスローインを田中が収め、3列目から飛び出してきた菊地のラストパスは大島へ。シュートはわずかにゴール右へ逸れましたが、連動性の高い攻撃でした。動き出したゲームへつられるように、動いたスコア。直後の21分、エリア内で前を向いた金久保の選択肢は右へのスルーパス。ふくらんだ清水が右足で振り切ったシュートは、左スミへ豪快に一直線。「こういうゲームでいつも結果を出している」(鈴木監督)18歳の先制弾。大宮がリードを奪います。以降も右の金久保、左の宮崎とまったくタイプの異なる両翼が、異なるストロングを存分に発揮した大宮ペース。30分には宮崎がエリア内で相手との接触にも持ち堪え、石原がフィニッシュまで。37分には金久保のCKから、片岡のヘディングがクロスバー直撃。スコア以上に大宮優勢で1本目は終了しました。
2本目はお互いになかなかチャンスのないまま推移する中、59分に新潟が小澤と替えて渡辺泰広を投入すると、ゴールマウスに立ったクラブ期待のルーキーは途端に多忙を強いられます。いきなり60分、大宮は右サイドで渡邉が1人かわして送ったクロスを石原が、63分には左サイドから宮崎のクロスにまたも石原が、共に頭で合わせ、渡辺がどちらもファインセーブ。新潟も69分には、4分前に送り込まれたばかりのユース所属でありU-17日本代表候補でもある早川史哉が、酒井へ惜しいスルーパスを繰り出すもシュートまで行けず。70分は再び大宮。木原正和の投入で1列上がった渡邉のクロスを、石原がトラップでDFの頭上を浮かせ、放ったボレーは枠の左へ。74分、金久保が中央やや右から放ったFKは渡辺がファインセーブ。積極的に追加点を狙います。ただ、「アレだけチャンスを創りながら決めきれなかった」(鈴木監督)大宮に対して、最後の最後で新潟のアタックが結実。91分、CBの大野が鋭い出足で前へとボールを運び、酒井の左クロスがクリアされたこぼれを長谷部がミドルレンジからボレー気味に叩くと、ワンバウンドしたボールは江角をすり抜け、ゴールへ到達します。2シーズンの期限付き移籍から帰還した、ユース出身のいわば“生え抜き”が最後に大仕事。実質90分を通じて唯一の枠内シュートで1点を奪った新潟が追い付き、1、2本目の結果はドローということになりました。
大宮は前述した金久保と宮崎が出色のパフォーマンス。金久保は昨シーズンも十分活躍しましたし、宮崎はチーム全体を見てもウイングタイプはほとんどいないので、今シーズンはかなり出場機会が増えそうです。新潟では2種登録のCB西村が健闘していました。森保一コーチも「最初はどうなるかと思ったけど頑張ったね」と話したように、J1でもトップクラスの身体能力を誇る石原に苦しめられるシーンが多かったものの、後半は何とか懸命に対応。尻上がりに安定感が出てきたように見えました。また、早川も短い時間の中で随所にセンスを披露。最近はあまり代表に招集されていないようですが、是非U-17ワールドカップのメンバーに入って欲しい選手です。この90分間に関しては黒崎久志監督も「若い選手たちが頑張っているので、底上げはできてきている」と一定の評価。普段なかなか見る機会の少ない選手たちが多数見られて、個人的には非常に楽しい1、2本目でした。こちらが思いのほか長くなってしまったので、3、4本目ver.はまた後ほどアップします。
AD土屋
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TM 川崎×横浜FC@等々力
“
苦しい時こそ俺達川崎は共にアツく支えます!!!”。ゴール裏に掲げられた横断幕のメッセージに共感するフットボールファミリーが、公式戦さながらの15241人も詰め掛けた等々力。今日は川崎と横浜FCのチャリティートレーニングマッチに行ってきました。この両チームで等々力といえば、昨年の天皇杯でも延長にもつれ込む激闘を繰り広げた好カード。しかも45分3本というレギュレーションも、色々な選手を見たいという観点からは絶好の機会。今回の震災で亡くなられた方々へ黙祷が捧げられ、キックオフを迎えました。
川崎はGKが杉山。DFは右から田中裕介、井川、横山、小宮山。中盤はドイスボランチが柴崎と稲本で、右に登里、左に中村。2トップには楠神と矢島が並びます。一方の横浜はGKがシュナイダー潤之介。DFは右から藤田優人、森本良、飯尾、宮崎。ボランチはファビーニョと高地で、SHは右が寺田で左がエデル。前線はカイオと藤田祥史のコンビです。ゲームは9分に早くもエデルが負傷交替となり、井手口正昭が入るなど少しフワフワした立ち上がりとなりますが、この雰囲気を切り裂いたのは、開幕戦でもスタメンに抜擢されるなど相馬監督の信頼も厚い登里。10分、中央から左へドリブルで突き進む彼を、横浜はファウルで止めるのが精一杯。川崎がFKを獲得します。キッカーは中村。中央左寄り、ゴールまで25m弱の距離から14番が気持ちを乗せたボールは、右スミギリギリのネットを完璧な軌道で捕獲。GKは一歩も動けないファインゴール。等々力が1ヵ月ぶりの歓喜に包まれました。
畳み掛ける川崎。14分、中村の鋭いスルーパスを右サイドの深い位置で受けた楠神がエリア内へ侵入すると、藤田優人はたまらずファウル。このPKを矢島がGKの逆を突いてキッチリ沈め、2点に差が広がります。以降もチャンスは川崎に多く、攻勢の時間が続く中で、目立っていたのは登里の積極性。1点目に結び付いたようなドリブルはもちろん、17分には田中裕介の横パスをスルーして、そのまま縦に走り、中村からのダイレクトパスをシュートに持ち込むなど、幅広い動きを披露。さらにその登里と、中村、矢島、楠神の4人が流動的に前線を泳ぎ、常にスペースを創って潜ってを繰り返すと、横浜は後手を踏み続ける格好で、一方的な展開となってしまいます。加えて41分には中村のパスを矢島がダイレクトではたいたパスに、後方から走り込んで来たのはボランチの柴崎。バランスも取れて、前へも飛び出せる柴崎の加入は、中村を攻撃的なポジションで使える点においても、大きな効果を発揮していると言えそうです。結局45分間を終えたスコアはそのまま2-0となりました。
2本目の川崎はGKが相澤。DFが右から田中裕介、菊池、横山、小宮山。ボランチが田坂と柴崎。右SHには静岡学園から加入したルーキーの大島僚太で、左SHが楠神。山瀬と久木野に2トップを組ませます。一方の横浜は右SBに柳沢、左SBに中野、左SHに開幕スタメンを勝ち取った中央大出身のルーキー佐藤謙介と3人を投入してきました。メンバーが入れ替わったこともあってか、お互いになかなか攻撃の形が創れない流れの中で、目を引いたのは川崎の大島。昨年の高円宮杯で初めて見た時にも強いインパクトを受けた選手でしたが、57分にはオフサイドとなったものの山瀬に巧みなスルーパスを通すなど、持ち前のセンスを発揮。自然とコールする機会の多くなったサポーターにも、名前を印象付けるようなパフォーマンスを見せていたと思います。
64分には川崎が3人同時投入。伊藤が右SBに、関西大から加入した大学界ナンバーワン左SBの田中雄大が当然左SBに、吉田がボランチに入ります。そしてスタジアム全体が最高潮と言っていい盛り上がりを見せたのは67分。登場したのは4日前、日本中に、そして世界中に存在するフットボールファミリーの魂を激しく揺さぶるゴールを決めたばかりのカズ。スタンドに向けて手を振る役者ぶりに、川崎サポーターからも巻き起こる「♪カズカズカズカズゴ~ル」のチャント。これにはさすがのカズも「フロンターレの選手に悪いなと思いました」と苦笑いを浮かべましたが、やはり“キング”の存在感は絶大でした。
68分、相馬監督は前線に駒澤大から加入したルーキーの棗佑喜、CBに薗田と、さらに2枚を入れ替えます。この辺りから川崎がややペースを掴み始めると、次のゴールを挙げたのもホームチーム。82分、大島が左サイドからグラスカットの絶妙なパスを送り、最後は山瀬がエリアやや外から豪快なミドルを一刺し。酉年コンビで追加点を奪った川崎が3-0とリードを広げて、2本目は終了しました。
普段なかなか公式戦では見るチャンスの少ない選手が見られるので、個人的にはかなり楽しみにしていた3本目が、実は一番エンターテイメント性に富んでいた45分間。川崎はGKがウズベキスタン遠征から帰国したばかりのU-22日本代表の安藤駿介。DFが右から同じくU-22日本代表候補のルーキー實藤友紀、薗田、伊藤、田中雄大。中盤はボランチに吉田と、桐光学園から加入したルーキーの福森晃斗。右SHが田坂で、左SHが山瀬。FWは棗と、こちらは米子北から加入したルーキー谷尾昴也となりました。横浜はGKが関。DFは右から柳沢、藤田優人、中野、宮崎。中盤は底に佐藤と井手口の大卒コンビで、右が田中雄大と高校の同級生で、同志社大から加入した荒堀謙司。左が野崎。2トップはカズと西田です。
まず先に相手ゴールを脅かしたのは18歳の福森。97分、中央から強烈なミドルを枠へ飛ばすと、直後のCKでも田坂のキックに頭で合わせるなど、CBからボランチへコンバートされた中でシュートへの強い意識を打ち出します。ところが次にゴールが記録されたのは横浜。104分、佐藤のFKはゴール前の密集を抜けると、そのまま右スミへ吸い込まれます。実際はシュートを狙ったわけではなかったと思いますが、SHにボランチと2つのポジションで好パフォーマンスを見せた佐藤へのご褒美ということなら、納得できるようなゴールだったのではないでしょうか。
109分、川崎が2枚替え。再登場の大島と一緒に投入されたのは、U-18に所属する小口大貴。すると左SHに送り込まれたこの16歳は、柔らかいボールタッチと積極的な仕掛けで、大観衆を前に堂々としたプレーを見せ、スタンドを沸かせます。121分には實藤の縦パスに抜け出した棗が、自ら獲得したPKを沈めて点差を再び3点に広げ、こちらもユース所属の萩間大樹が右SBに投入された直後、124分には小口に見せ場。左サイドでボールを持つと、スルスルとドリブルで中へカットインしながら思い切りよくシュート。ボールはクロスバーを大きく越えましたが、その積極性にサポーターからも小口コール。4月29日から始まる関東プリンス2部に向けて、また楽しみが1つ増えました。なお、ゲームは129分、柳沢の右クロスを荒堀が二アでうまく合わせたゴールで打ち止め。4-2で川崎が勝利を収めています。
しかしやはり週末にサッカーがあるというのは、本当にありがたいことですね。カズが「15000人も集まってくれて本当にありがたいし、サッカーはやっぱりいいなとしみじみ感じました」と語った言葉が強く印象に残りました。
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TM FC東京×横河武蔵野FC@味スタ
FC東京と横河武蔵野FC。同じ西東京を拠点にしながら、公式戦ではなかなか対戦することのない2チームが、味の素スタジアムで激突するトレーニングマッチ。試合前には選手も参加した募金活動やオークションが行われるなど、チャリティーマッチ色も十分に含んだこのゲームに集まった観衆は9236人。フットボールファミリーの絆が強く感じられるような“東京ダービー”は、味スタ版の「You'll Walk Never Alone」と今回の震災で亡くなられた方々への黙祷を経て、キックオフされました。
東京はGKが塩田で、DFは右から椋原、森重、高橋、阿部。ボランチは大竹と梶山で、SHは右が羽生、左が谷澤。2トップは平山と鈴木でスタートします。対する横河はGKが飯塚渉。DFは右から鹿野崇史、瀬田達弘、金守貴紀、小山大樹。中盤はボランチが岩田啓佑と桜井直哉。右が林俊介で、左が高松健太郎。2トップはやや引き気味に関野達也が入り、前には「ウチに今までいなかったタイプ」と依田博樹監督も評した、5年ぶりのチーム復帰となる小林陽介。中でも新加入の鹿野は、昨年の関東大学リーグを圧倒的な成績で制した明治大の主力メンバーで、依田監督も「経験も十分あるし、期待しているのは確か」と語る注目選手です。
まずはお互いに相手の出方を窺うような、静かな立ち上がり。ボールキープ率は東京が上回るものの、横河もマイボール時は繋ぐ意識が高く、一進一退の攻防が続く中、先にビッグチャンスを掴んだのは横河。12分、CBの瀬田が右へ流れて送ったクロスを、関野が巧みなポストプレーで落とし、走り込んだ高松が鋭い切り返しで1人かわすと、高橋がエリア内でたまらずファウル。西村雄一主審はPKを宣告します。絶好の先制機。キッカーは関野。短い助走から蹴られたボールは塩田の逆へ。アウェイ側スタンドから誇らしげに巻き起こる“ムサシノ”コール。横河が1点のリードを奪いました。
いきなりビハインドを背負った東京も、17分には羽生のパスから平山が決定的なシュートを放ったものの、その平山と同い年で流通経済大時にはユニバ代表の経験もあるGK飯塚が驚異的な反応でファインセーブ。逆に横河は林が負傷交替を余儀なくされ、都丸昌弘が急遽ピッチに入るアクシデントにも拘らず、18分には岩田の素晴らしいサイドチェンジを受けた鹿野が鋭い突破で右サイドを抜け出し、最後は小林が枠内シュート。場内を沸かせます。20分には鈴木のCKから梶山の枠内ボレーは飯塚がファインセーブ。こぼれを狙った森重のヘディングは瀬田が間一髪でクリア。集中力も切れません。
しかし、ようやく東京の個が炸裂したのは、この流れからのCK。大竹の高精度キックを、平山が頭でズドン。力技で横河ゴールをこじ開けました。それでも25分には椋原のクロスから平山のヘディングがクロスバーを叩くと、跳ね返りに詰めた大竹のシュートは飯塚が何とか飛び付き、再びクロスバー直撃。「ある程度コンビネーションの合った“1本目”の選手たち」(依田監督)は、大半が当初の予定通りに35分で交替となりましたが、1対1というスコア以上に強い印象を観る者へ与えてくれたと思います。
なかなかボールデッドとならず、ピッチサイドへ7人が並ぶ光景にスタンドもザワつく中、横河はDFが右から勝野洋平、熊谷寛、小山、遠藤真仁、ボランチが平岩宗と桜井、右SHが都丸で左SHが長沼圭一、2トップが山下真太郎と、FC東京U-18出身の永露大輔に変わりました。すると、やはり交替の時間帯と途中出場の難しさからか、特に守備時におけるサイドでの連携が乱れてしまい、36分には椋原の右クロスに羽生が見せたダイビングヘッドは枠の上へ。2分後にも鈴木が右サイドを突破し、羽生のシュートは平岩が体で決死のブロック。一気に劣勢を強いられます。そして41分、最終ラインでのパス回しがズレた所を平山に奪われ、梶山が飯塚もかわして難なくゴール。さらに44分には、大竹の狭いスペースを巧みに通したスルーパスから、鈴木の反転シュートで3点目。45分にも谷澤が右サイドをフリーで駆け上がり、最高のクロスに平山が頭で合わせて4点目。「連続して失点したのは反省点」と依田監督。4-1と点差が開いて、前半は終了しました。
迎えた後半はスタートから東京が中村と古巣対決となるGKの廣永を投入。横河もGKがユース出身の藤吉皆二朗に替わります。すると後半も先にゴールを奪ったのはJFLチーム。54分、永露の強烈な左足ミドルをU-18の後輩でもある廣永がファンブル。走り込んだ都丸が押し込み、4-2。2点まで差が詰まります。さらに58分には長沼のアーリークロスを、山下がジャストミートでボレー。今度は廣永がキャッチしましたが、横河が再びゲームの波へ乗り直したように見えました。そんな流れを断ち切ったのは、「観ている人たちが少しでも楽しい気持ちになってくれれば嬉しい」と語ったエース。61分、中村のシュートはGK、谷澤のシュートはDFにブロックされるも、嗅覚鋭く押し込んだのは平山。見事ハットトリック達成の役者ぶり。ゲームは決まりました。
62分、横河は8枚替え。DFは右から花本剛泰、林真人、平岩、遠藤。ボランチが浅川智と常盤亮介で、SHは右が野木健司、左が日本大の関東2部昇格に貢献した新加入の小野祐輔。2トップが加藤と薗部良となりました。一方の東京も66分、既にピッチへ送り出された柳楽、上里に加えて、田邊に下田と同時にU-18から2種登録でのトップ帯同が発表された橋本拳人が登場。今日のボールパーソンを務めていたU-18のチームメイトに「目が合った時、笑われました」と話した17歳が、「初めての味スタ」を踏みしめました。だいぶメンバーも変わり、少しルーズな展開になっていくと、やはり隠し切れない実力差。70分には横河の花本が廣永に好セーブを強いるシュートを放ちましたが、それが横河にとってこのゲーム最後のチャンス。72分、大竹がドリブルでエリア内へ侵入すると、こぼれ球を平山が押し込み、6点目。87分、田邉が右サイドを抜け出し、中央の中村がゴール右スミへ流し込んで7点目。91分には中央やや左25m強の位置から、大竹がFKを直接左スミへ沈めて8点目で打ち止め。最後はホームチームが格を見せた形で、ゲームは終わりました。
さて、横河は練習場が三鷹の市街地にあるのですが、現在の諸事情を考えて照明が使用できない状況に。選手たちはそれぞれ仕事をしながらプレーしているため、本来は夜にしか練習ができない訳です。依田監督は「しばらくは朝の7時から8時でやるしかないですね」と苦笑いされていましたが、JFL自体の開幕時期も現時点ではハッキリしておらず、厳しい環境でのトレーニングを送ることになりそうです。昨シーズンは12位でしたが、今日のゲームを見る限り、十分上位を狙える力はありそうなので、是非今シーズンのJFLを掻き回す存在になって欲しいと思います。
また、本日のゲームは現在福島第一原発事故により味の素スタジアムに避難されている方の中で、95名の方が観戦したということです。「自分たちはサッカー選手なんで元気や勇気を伝えられるようにしたい」と平山が話せば、「僕らはプロじゃないし、やれることはサッカーだけじゃないので、社会貢献も含めてやれることをやっていこうと話しています」と依田監督。個人的にも、サッカーに関わることのできるありがたさを痛感した1日でした。
AD土屋
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J2開幕戦 湘南×岡山@平塚
51試合にも及ぶ激闘の末に勝ち獲った昇格。しかし、勇躍乗り込んだJ1で彼らを待ち受けていたのはあまりにも厳しい日々。突き付けられたのは1年での降格という現実。再びその場所で戦う資格を得るための2011年シーズンが湘南にも訪れました。開幕戦のスタメンには6人の新加入選手と、昨年から出場はしていた2人のルーキー。ベンチの7人はGKの野澤洋輔を除いて全員が新加入。ある意味、まったく別のチームに生まれ変わったとも言うべき湘南が平塚に迎え撃つのは、Jリーグ加盟3シーズン目となる岡山。今シーズンは現役ブルガリア代表でもあるストヤノフが加入し、新しく導入された3バックシステムも評判は上々。楽しみな対戦は、気温18度と春の到来を思わせる陽気の中でキックオフを迎えました。
平塚の緑と青がいきなり弾けたのは、開始わずかに7分。高い位置でボールを奪った湘南は、アジエルがヒールで右へ送ったボールを永木亮太がクロス。すると中で合わせたのは、インターセプトの流れで前線まで駆け上がってきていたCBの大井健太郎。岡山のGKリ・チャンガンも弾き切れず、ボールはゴールラインを越え、湘南に先制ゴールが記録されます。そしてこれは同時に「電光掲示板ができて、初めて我々の得点シーンが見られた」(湘南・反町康治監督)記念すべき瞬間。幸先よく1点のリードを奪いました。続く歓喜。14分、GK西部洋平のフィードを巻佑樹が高い打点のヘディングで流すと、DFより先にボールへ反応した佐々木竜太が、飛び出したGKより一瞬速くボールに追い付き綺麗なループ。「常に点を獲れる選手でいたい」という新ストライカーにも移籍後初ゴールが飛び出し、点差が広がりました。
さて、「立ち上がりが勝負だと言っていた」(岡山・影山雅永監督)中でいきなり2点のビハインドを負った岡山。3-4-2-1に近い布陣を敷く中で、いわゆるWBの位置に入った右の久木田紳吾と左の田所諒は縦のスペースへ入っていく意識も高く、特に田所は何度もサイドで受けてからクロスを上げるシーンを創りましたが、「クロスは湘南の2CBにことごとく捕まってしまった」とは影山監督。「3バックでサイドから早めにクロスを上げてくるのは予想してた。そのボールにも対処できた」とは反町監督。結果、サイドはチャンスを創出する以上に、WBが前へ出た分空いたスペースを使われるシーンが多く、ここが序盤の劣勢に繋がった印象です。
ただ、2失点を喫してからは岡山にも流れが。18分にCKの流れから大道広幸のクロスを後藤圭太がヘディングで枠へ飛ばし、西部のセーブに阻まれましたがいいシーンを創出すると、以降はボランチの千明聖典と2シャドーの一角を占める臼井仁志がよくボールに絡み、ポゼッションではむしろ岡山が優位に。23分には大道のCKから、こぼれをストヤノフが狙ったミドルはわずかにバーの上へ。26分、大道、千明、中野裕太と細かく繋いで、千明のミドルはバーの上へ。32分、大道のCKにまたも後藤が合わせたヘディングは枠の左へ。少しずつゴールの匂いが漂い始めます。
ところが次のゴールも湘南。34分、坂本絋司のパスから中央へ侵入した右SBの臼井幸平は、菊池大介のうまいリターンを受けると、ダイレクトでゴール左スミへ蹴り込むファインゴール。「攻撃に移る時の、前の選手を越えていくスピードやパワーは高い点数」と指揮官も評価した部分が結実した3ゴールで、湘南がセーフティに近いリードを得て、ハーフタイムに入りました。
後半に入ると岡山は「2、3日前まで腿が気になっており、長引いてしまうかの判断で私が決めた」と影山監督も言及したように、ストヤノフが交替で退いてしまいます。40分には絶妙のロングフィードで岸田裕樹の決定機を演出しており、18歳で開幕スタメンを勝ち取った湘南のCB遠藤航も「警戒していた部分ではあった」と話していただけに、精神面も含めて岡山にとっては大きな痛手になったことは否めません。やや膠着した展開が続く中、先に動いたのは影山監督。56分、中野に替えて三木良太を投入。1トップの選手を入れ替えます。
しかし、次にスコアを動かしたのも湘南。57分、巻のパスから岡山DFがクリアしきれず、菊池に当たったボールを、ここも素早い反応で佐々木がプッシュ。「佐々木選手を捕まえることが難しかった」と敵将も認める佐々木の2発目で4-0。その1分後にもエリア内でボールを持った菊池が澤口雅彦に倒されると、村上伸次主審の判定はPK。キッカーは昨シーズン1試合も出場することの叶わなかったアジエル。「自分に自信があったし、自分で決めるんだという気持ちがあった」というキックは中央に突き刺さります。実に2009年9月2日以来、1年半ぶりとなるキングのゴール。とうとう点差は5点まで広がりました。こうなると反町監督も余裕を持った選手交替。71分には「昨日までできるかどうかという状態だった」坂本に替えて平木良樹をボランチへ投入。76分には久々の出場だったアジエルに替えて、「調子を上げてきてサイドもできる」ルーキーの高山薫がデビュー。3枚目は84分、「次の相手にはバスケットボール選手がいるので、場に慣れるという意味では最優先」と永木に替えて186センチのソン・ハンキをCBへ送り込むなど、それぞれ明確な意図での交替も敢行し、ある程度はテスト的な部分にも着手できた湘南が衝撃的とも言えるスコアで開幕勝利を手にしました。
岡山は正直5点差で負けるような内容ではなかったと思います。「自分たちでバタバタしてしまった感はあった。開幕戦に初めて出る選手の、若さの悪い面が出てしまったかな」と影山監督。きっちり組み立てて崩す意図は窺えましたが、少し中長距離のパス精度が低く、サイドチェンジはことごとく引っ掛かっていたので、その部分は改善の余地がありそうです。
そして湘南も5点差で勝つような内容ではなかったと思います。「MFと前線の選手が合ってない。それを合わせるにはちょっと時間が足りなかったところはある」と反町監督が話したように、2トップ、特に巻の能力を考えると、もう少し生かし方が確立されればスムーズに攻撃できる回数も増えていきそうです。ただ、裏を返せばそれだけ伸びしろが残されているということ。次の千葉戦は2節にして、今後の行方を考える上で大事な一戦になるのは間違いありません。 AD土屋
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J1開幕戦 柏×清水@日立台
太陽王の凱旋。2年ぶりとなるJ1へ帰ってきた柏。再びクラブの誇りを取り戻し、日本のフットボールファンにその存在を認めさせるためのシーズンが幕を開けます。対峙するのは、長谷川体制に終止符を打ち、イラン代表監督を務めていたアフシン・ゴトビを招聘。主力の顔触れも大きく入れ替わり、“新生”という印象も強い清水。お互い理由は異なれど、勢いを付けるという意味では「ただの1試合ではない」(柏・ネルシーニョ監督)開幕戦。黄色と一部のオレンジが沸騰する中で、日立台の春が開宴しました。
ゲームが始まると、まずは昨年と同じシステムでメンツも変わらない柏の中盤が躍動。特に2年連続の開幕スタメンに「監督の信頼も厚くなってるなと思う」と話した茨田は、レアンドロ・ドミンゲスと絶妙の距離感で攻撃にアクセントを加えていきます。また、12分には右SBに入った新加入の増嶋がロングスローを投げると、清水GK山本海人のファンブルからあわやというシーンに。今年の新たな名物になりそうなプレーにスタンドもどよめき、雰囲気を一層盛り上げます。さらに、左SBでの起用となった最注目のジョルジ・ワグネルも15分には高精度フィードを一発でレアンドロへ通し、シュートシーンを演出。継続性の持つ強みに新戦力の個も見せた柏がガッチリ主導権を確保しました。対する清水は、システムも昨シーズンの4-3-3から4-2-3-1に変わり、伊藤の1トップで、その下に大前、小野、アレックスが並ぶフレッシュな布陣でしたが機能性に乏しく、イージーなミスも連発。「バックパスに詰めて行こうと話していた。それで相手も慌ててくれた」と柏2トップの一角を占めた田中も言及したように、後ろでのビルドアップも不安定で、「我々は最初の20分間ナーバスになっていた」とゴトビ監督も認める、苦しい立ち上がりを強いられます。
すると21分、「去年からFWとして見ていた。彼は前でやった方が生産性が高い」という指揮官の評価で最前線に入った大津が得たFK。キッカーのワグネルが左足を振り抜くと、「普段から練習しているので自信を持って蹴れた」というボールは完璧な軌道を描いてゴール右スミへ吸い込まれるゴラッソ。ベンチへ一直線に走り出したワグネルを抱擁で迎えたネルシーニョ監督。期待のブラジリアンが挨拶代わりの一発をぶち込み、ホームチームが1点のリードを奪いました。以降も全体のペースは柏。清水も3年目にしてようやく定位置を掴んだ感のある大前こそオーバーヘッドを枠に飛ばすなど体のキレを感じさせるようなプレーを連発しますが、いかんせんグループで崩す意図が希薄。伊藤とその下に位置する小野が絡むシーンもほとんどなく、2人とも孤立してしまうなど厳しい時間が続きます。「選手が変わってもフォーメーションが一緒なら大丈夫」とは茨田。昨年からの上積みも感じさせるパフォーマンスを披露した柏が、攻守に圧倒して45分間は終了しました。
後半に入っても流れは変わらず。「前半は結構裏に抜けていたが、後半は少し中に入ってスペースを空けることを意識した」と茨田が話したように、ワグネルのオーバーラップも回数が増え、逆サイドの増嶋も積極的にスペースへ飛び出すなど、「今日のキーはサイドのスペース」とゴトビ監督も話したサイド攻撃は、柏に一層厚みが出ていきます。62分には増嶋、レアンドロと繋ぐと、最後はワグネルが枠内シュートまで持ち込むなど、両SBが関与してのフィニッシュワークでチャンスを創出。そして迎えた65分、ワグネルのCKが流れたボールを左サイドで大津が拾ってクロス。これをDFがクリアしきれず、パク・ドンヒョクが冷酷に一突き。2-0。点差が広がりました。止まらない太陽の輝き。67分、ワグネルのアーリークロスにファーへ走り込んだ増嶋のヘディングはわずかに枠の右へ外れましたが、流れの中から左SBのクロスに右SBが飛び込むシーンは圧巻。両者共に指揮官の起用へ応えてみせます。すると68分、清水のFKから一転、柏のカウンター発動。人数は柏5人に対して清水3人。ボールを持った茨田は「レアンドロのスピードを止めずにいいパスが出せた」と納得のラストパスを左へ。レアンドロはGKとの1対1も冷静に右スミへ流し込み、3-0。ゲームは決まりました。
もはや混乱状態に陥った清水はカウンターへのケアも散漫。72分にも清水のCKからまるでデジャヴのようなシーン到来。今度は田中が左へ流すと、待っていたのはまたもフリーのレアンドロ。今度はドリブルが大きくなり山本海人に阻まれましたが、4分間に同じようなシーンが2度も連続したあたりに、清水の現状が凝縮されていたように感じました。加えて攻撃陣も55分にはほとんど何もできなかったアレックスに替えて高原を最前線に置き、伊藤を左SHへ移しましたが、高原は体のキレを個人では感じさせたものの、組織へと融合させる段階にはなく、結局チーム全体で見ても後半のシュートは1本のみ。79分にはボスナーが大津への危険なタックルで一発レッドを食らうなど、最後まで攻守が噛み合わずじまい。「前半も後半もレイソルが数段勝っていたと、皆さんも思ったのではないでしょうか」とネルシーニョ監督も語るほど、申し分ない内容を見せ付けた柏が、華々しくトップディビジョンへの帰還を果たしました。
清水は残念ながら非常に辛いスタートを切ったと言わざるを得ません。客観的に見ても「力の近いチーム同士の対戦」(ゴトビ監督)だっただけになおさらでしょう。このゲームに関して言えば、岩下と枝村のドイスボランチが攻守に中途半端だった気がします。キック精度と展開力は別物なので、ここである程度ボールを落ち着かせることができないと、いくら小野を1トップ下へ置いてもゲームを創るのは難しいかもしれません。
逆に勝った柏はもはや阿吽の呼吸とも言うべき、栗澤と大谷で組むドイスボランチのバランス感覚がとにかく秀逸。栗澤はセカンド奪取にゲームメイクにと、とにかく至る所に顔を出し続けてチームのリズムを司り、それを大谷が後方から絶大な存在感で支える関係が完全に確立。この2人の補完関係がJ1でも大きな武器になることも再確認できたと思います「すべての試合が最初で最後と思って、90分で勝つために全てを出し切らなくてはならない」とネルシーニョ監督。この気持ちを持ち続けている限り、柏の躍進は止まりそうにありません。
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J2開幕戦 FC東京×鳥栖@味スタ

19回目となる春の訪れ。ようやくJリーグのある日常が我々の下へ帰ってきました。すべての人が待ち焦がれたシーズンの芽吹きに胸を踊らせる開幕戦。フランスから帰国したその足で向かったのは、創設メンバーとして参加し、昇格という成果と共に1シーズンで駆け抜けた1999年以来となるJ2を戦うことになったFC東京が開幕を迎える味スタ。相手はユン・ジョンファン新監督が就任し、岡本知剛、國吉貴博など積極的に補強した中盤か魅力的な鳥栖。カードとしてもかなり興味深い一戦です。ゲーム前にはスカパラの華やかな演奏で彩られた味スタへ、詰め掛けたフットボール好きの数は「本当にたくさんの人が来てくれた」と新キャプテンの今野泰幸も驚く21408人。長く険しいであろう旅路は14時5分、その第一歩が踏み出されました。
東京はJ2の中で異例とも言うべき大量補強へ踏み切ったにも拘らず、新加入組でスタメンに名を連ねたのは左SBに入ったレンタルバックの阿部巧と、左SHの谷澤達也のみ。指揮官も続投ということもあって、最終ラインでこそパスは回るものの、基本はそこから平山相太の頭と、鈴木達也の裏へ目がけて繰り出すロングボールが多く、18分に鈴木のCKから中村北斗が大きくふかしたシュートがチームのファーストシュート。なかなか攻撃の形を創れません。
対する鳥栖は「もっと緊張するかと思ったけど、予想外にスムーズにゲームへ入ってくれた」とユン監督も話したように、中盤でも岡本と藤田直之のドイスボランチが散らし、両SHの國吉と柳澤隼がボールを受けてアクセントになるなど、むしろ中盤では優勢。大熊清監督が「鳥栖は繋ぐ所は繋ぐし、実力はある」と言うのも頷ける内容を披露します。すると33分には決定機を創出。岡本のクサビを基点に、中央を巧みなパスワークで完全に崩すと、最後は豊田陽平がエリア外から左足でシュート。ボールは激しくクロスバーを叩き、先制弾とはなりませんでしたが、東京サポーターは一瞬色を失ったに違いありません。続く41分にも、岡本が奪ったFK。藤田が小さく出して、30m近い距離を直接狙った國吉のミドルは枠を捉え、塩田が何とかセーブ。そのCKも藤田のキックに、クロスバーを越えはしましたが豊田がフリーでヘッド。セットプレーでも鳥栖にチャンスが生まれます。
「1人1人ミスが多かったし、バランスも悪かった」(今野)東京は、前半終了間際に羽生直剛の横パスへ走り込んだ高橋秀人のミドルが1本目の枠内シュート。頼みの平山もさすがに空中戦では優位に立ちましたが、そのセカンドやそれ以外の部分では、高い危機察知能力を発揮し続けたCBの木谷公亮を中心とする鳥栖ディフェンスがことごとく勝利。流れとしては鳥栖ペースとも言えそうな45分間は、スコアレスで終了しました。
後半開始から手を打ったのは大熊監督。中村を下げて、「回数は少ないが、ボールを運べたり、危険なモノは持ってる」ロベルト・セザーを投入します。これで鈴木が右のSHへ移ったことが結果的に奏功。49分には相手のミスパスを奪った谷澤が右へ付けると、鈴木がフィニッシュ。52分にも相手のミスパスを基点に、またも谷澤のラストパスから鈴木がシュート。どちらもゴールのわずか左へ外れましたが、鈴木の広範囲に渡る動きが東京に欠けていたダイナミズムをもたらし、サイドでの主導権も徐々に獲得していきます。
58分には鳥栖にチャンス。右サイドから田中輝和、國吉と繋いで、エリア内へ侵入した柳澤はDFとの接触で倒れかけますが、バランスを取り戻して倒れずに放ったシュートはDFに当たり、GKがキャッチ。安易に倒れず、シュートまで持ち込んだのは大いに評価されるべきですが、倒れていればPKだった可能性も否定できず、ここは1つのポイントだったかもしれません。
そして訪れた青赤の歓喜。61分、森重が左へ振ったボール。後半に入って一層縦への意識からオーバーラップが増えていた阿部がクロスを上げると、GK室拓哉の伸ばした手と平山の頭とボールがクラッシュ。こぼれ球を谷澤が押し込みます。ややオフェンスファウルにも見え、決めた東京の選手たちも、スタジアムの雰囲気も少し時間が止まったような格好の中、「ああいうのでもゴールはゴールなんで」と笑顔を見せたのは谷澤。苦しみながらホームの東京がリードを奪いました
59分には柳澤に替えてキム・ビョンスクを送り込んでいたユン監督もすかさず2枚目のカード。63分、國吉と野田隆之介をスイッチ。早坂良太を前線から右SHに落として、豊田と野田の2トップにシフト。高さとパワーを兼ね備えた2人で、今野、森重真人が聳える東京ゴール陥落を試みます。それでもボールが回るシーンはあるものの、シュートまで繋がるシーンは皆無。「とにかく勝ち点3が欲しかった」(今野)東京の気迫にゴールへの香りを遮断されてしまうと、76分には最後の交替枠で藤田と米田兼一郎をスイッチしたものの、以降は1本のシュートも打てず。
逆に大熊監督は86分に「ボランチの所は締めてもう1点という形で」羽生に替えてホベルトを送り込む念の入れよう。89分には「4ヵ月くらい試合に出てないので、もう少し動きの量と質を上げていかなくては」(大熊監督)というロベルト・セザーがハーフウェーライン辺りからスルスルとドリブルで持ち上がり、室にファインセーブを強いるようなシュートを放つ収穫も。「内容的にはそんなによくなかった」(谷澤)中でも、今シーズン求められる勝ち点3はしっかり奪い切り、FC東京はただ1つの目標を達成するための長い長い道程を歩み出しました。
敗れた鳥栖は「これから先、期待の持てるいいチームに仕上がってきたんじゃないか」とユン監督も話した通り、チームとしての機能性は一定以上のものを見せてくれたと思います。ただ、中盤での優位性をフィニッシュに繋げる部分はもう1つ。豊田を軸にして、パートナーやシステムをどう固めていくかは、新監督の手腕が問われることになりそうです。
東京は今日に限って言えば、昨シーズン終盤からメンバーの顔触れも含めて大きな変化はなく、攻撃はやはり長いボールが中心になりそうな雰囲気。プレシーズンの好調が伝えられた大竹洋平の出場機会がなかったのは少し残念でしたが、当然長いボールの多いスタイルが悪い訳ではないので、ブレずに突き詰めていけば勝ち点を積み重ねていくことはできそうです。さあ、2011年のJリーグ開幕です!
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第17回ちばぎんカップ 柏×千葉@柏の葉
“西大寺の裸祭り”“諏訪の御柱祭”“吉田の火祭り”と並ぶ日本四大奇祭(諸説アリ)にして“FIFAワールドカップ”“UEFAチャンピオンズリーグ”と並ぶ世界三大カップ戦。プレシーズンマッチにして唯一無二のダービー。伝統と信頼のカップ戦、ちばぎんカップが今年も千葉へ、いや、日本へ帰ってきました。注目度の高さを物語るかのように、観衆もこの時期のゲームにしては異例とも言えそうな9249人が集結。キックオフ前には両チームの選手が入り混じって、仲良く写真撮影。実に“ちばぎんカップ”らしい雰囲気の中でキックオフを迎えました。柏のスタメンはGK菅野、DFが右から村上、パク・ドンヒョク、近藤、橋本。中盤は栗澤と大谷のドイスボランチに、右がレアンドロ・ドミンゲス、左が注目の新加入ブラジル人ジョルジ・ワグネル。2トップには林とホジェルが並びます。一方の千葉はGKが岡本、DFは右から山口、竹内、青木良太、坂本。中盤は底に佐藤勇人と伊藤を置いて、右が青木孝太、左が深井。前線にはこちらも204センチの巨人系ストライカーとして注目を集めるオーロイが聳え立ち、少し引き気味に米倉という4-2-3-1をドワイト新監督は敷いてきました。さて、ゲームは2分に柏がいきなり決定機。ワグネルが挨拶代わりの高精度CKを放つと、パクのヘディングは千葉ゴールを強襲。岡本のファインセーブに阻まれたものの、6分にはレアンドロが中央から惜しいシュートを放つなど、「立ち上がりはリズムが創れて悪くなかった」(柏・ネルシーニョ監督)「初めの10分間はいいサッカーができなかった」(ドワイト監督)と両指揮官も認めたように、まずは柏がペースを握ります。千葉はロングボールが多い中、「フィジカルは100%」と自ら語るオーロイは確かに競り勝つのですが、やや周囲との距離感が遠いこともあって効果的な攻撃が繰り出せず、逆に22分にはパクのロングフィードをワグネルがうまく頭で落とし、ホジェルがフィニッシュまで持ち込むなど、むしろ柏が長いボールからチャンスを創出してみせます。ただ、20分を過ぎると、村上と橋本の両サイドバックに押し込まれっぱなしだった山口と坂本が、サイドの深い位置から割り切ったアーリークロスをオーロイへ当てるシーンが見え始め、26分には山口のクロスをオーロイが競り、こぼれを伊藤がシュート。28分には坂本のクロスをオーロイが落とし、オフサイドにはなりましたが米倉が抜け出す形も。「コンビネーションができて、オーロイを使えるようになってきた」とドワイト監督も言及したように、少しずつ連動したプレーが増え、30分には伊藤がクロスバー直撃のミドルを放つなど、流れを引き寄せます。対する柏は、「裏に1人が抜けるというのはやっているが、チームを通じて少ない印象はある」と大谷が話したように、レアンドロとワグネルは足元で受けるタイプで、林とホジェルも触ってリズムを創るタイプなので、バイタルが混み合うことも多く、加えて2トップは「紅白戦で20分くらいならあるけど、ほとんど組んだことはない」(林)コンビ。手詰まり感は否めなかった印象で、オーロイという戦術がハッキリしていった千葉に主導権は移り、前半は終了しました。すると、ハーフタイムを挟んで迎えた52分、やはり千葉はこの人が一仕事。左から深井が上げた高いクロス、オーロイが落下点に入ると近藤が競り合いに行きましたが、少し覆いかぶさる格好になると、井上知大主審はホイッスルを鳴らし、PKを指示。厳しい判定にも思えましたが、オーロイは「前半から体を持たれてるのはアピールしてたので、審判がよく見ていてくれた」としてやったり。深井が菅野に触られながらも左スミに蹴り込み、千葉が先制点を奪いました。さて、「ハイボールからのプレーに後手を踏んで、リズムが乱れてしまった」と語るネルシーニョ監督は、59分に1枚目のカードとして栗澤と茨田をスイッチ。すると60分には、村上、レアンドロと繋いだボールに大谷が走り込んでミドル。64分にもホジェルとのパス交換からワグネルが右足でシュート。共にDFのブロックに遭いましたが、徐々にゾーンが綻び始めた千葉を柏が侵食。70分には林に替わって1分前に投入された工藤が、いきなり枠内シュート。71分には、これまた橋本に替わってピッチに立ったばかりの大津が、左サイドを切り裂いて中へ折り返すと、レアンドロのボレーは左ポストを直撃。「交替で前に行けるようになり、力が抜けてテンポアップできた」と指揮官も言及するなど、途中出場となった20歳前後の3人が躍動して、再び柏がペースを奪還します。また、大津の投入に伴い、空いた左SBに入ったのはワグネル。これには「しっかり計算していた想定通りの交替」とネルシーニョ監督が話せば、「求められるポジションをこなす準備はしている」と本人。1つのオプションとしてシーズン中にも見られそうです。しかし、それでもある程度中央を締めた千葉の守備網も最後の部分は堅固。84分、レアンドロのCKにパクが頭で合わせますが、ここも岡本がファインセーブ。「守備の約束事はよくできた」とドワイト監督も話した堅陣は最後まで崩れず、4分間のアディショナルタイムも潰し切ってタイムアップ。PK戦で勝った昨年に続いて、千葉が連覇を達成しました。柏は「試合をこなしながらゴールへの道を思い出していく。これは時間の問題」とネルシーニョ監督も語ったように、攻撃陣のコンビネーションはこれからといった様子。それでも、途中から出場した茨田、工藤、大津が「チームの流れを創ってくれて、シュートチャンスが増えた」と指揮官も認める働きを見せたのは、大きな収穫でしょう。千葉は「いい方向に向かってるんじゃないか」とドワイト監督。オーロイの高さが強烈な武器になることは、十分過ぎるほどわかりました。あとはミリガン、ファン・ゲッセル、マット・ラムと今日は欠場した3人の外国籍選手をどう組み込んでいくかが大きなポイントになりそうです。待ちに待った開幕まで、あと2週間。“Jリーグのある日常”が帰ってきます! AD土屋
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TM 湘南×甲府@馬入
3月の開幕までちょうど1ヵ月。各クラブとも今シーズンを戦うメンバーの顔触れもほとんど決まり、これからチームとしての輪郭を形作っていくことになります。今日訪れたのは馬入ふれあい公園。“蹴燃”をスローガンに掲げ、反町康治監督体制下で2回目となる昇格が最大の目標となる湘南と、柏と共に磐石に近い成績で昇格を果たした2007年以来となるJ1で、まずは残留が現実的な目標となるであろう甲府のトレーニングマッチ。新シーズンへの期待と、特設フードパークへの期待からか、土手を埋め尽くした優に2000人を超えていたであろう両クラブのサポーターで、反町監督も「観衆が多くてよかったな」と話すほどの熱気に包まれる中、45分×3本のトレーニングマッチはキックオフを迎えました。1本目のメンバーは湘南がGK西部、DFは右から臼井、ソン・ハンキ、遠藤、小澤。中盤はアンカーにハン・クギョンで、右に日体大から加入したルーキーの岩尾憲、左に坂本、頂点にアジエルのダイヤモンド。2トップは巻と佐々木の新加入コンビです。一方の甲府はGKが荻、DFは右から石原、ダニエル、山本、内山。中盤は保坂と新加入ブラジル人のフジネイがドイスボランチを組み、右に阿部で左に永里のボックス。2トップはハーフナーにパウリーニョとなりました。ゲームは6分に湘南がチャンス創出。アジエルのスルーパスから佐々木が抜け出し、惜しいシュートを放ちますが、立ち上がりに攻撃のリズムを掴んだのはむしろ甲府。7分にはパウリーニョのループ、17分にはパウリーニョのパスから永里がカットインしてミドルをクロスバーの上にぶつけます。甲府で目を引いたのはボランチに入ったフジネイ。「守備もしながらやる意識を持たなくてはいけない」とは本人ですが、「攻撃が特徴なので預けるようにしている」とパートナーの保坂が話したように、かなり前まで出ていく印象。体の強さも含めた攻撃の能力は十分披露した中、自身も自覚している守備面の課題をどこまで意識できるかが、甲府の鍵を握って来そうな気がします。そんな中、先制は押し込まれていた湘南。24分、アジエルが狭い所を通す“らしい”スルーパスを繰り出すと、左足を思い切って振り抜いた佐々木のシュートは、右ポストを叩いてゴールの中へ。「仕事量は足りないが、決める力はあるな」と反町監督も一定の評価を口にした佐々木の一撃で、湘南がリードを奪いました。以降は、ややペースの落ちた甲府に対して湘南のボールキープが長くなる展開に。31分にはアジエルのケガを受けて、永木が交替で入るアクシデントはあったものの、38分には右サイドから積極性の目立った岩尾が上げたクロスを、巻が頭で狙うなどサイドからの形も創ります。逆に甲府は永里こそ左サイドでアクセントになりましたが、チームとして強力2トップを生かすまでには至らず。「去年の湘南得点王と福岡得点王、J2得点王経験のある2トップと、まずはこの4人を使ってみた」とは三浦俊也監督。保坂も「攻撃は監督からどういう風にやるというのは出てない」と話したように、攻撃面の連携はこれからといった様子。1本目はそのままのスコアで終了しました。2本目は湘南がGKに阿部、CBに山口、中盤は底が松尾、右に永木、左に坂本、頂点に菊池の4枚で、前線は巻と「ルーニーになってくれたら(笑)」と指揮官も期待を懸けるファビーニョ。甲府はGKが荒谷、DFは前半終了間際に山本と替わった冨田がそのままCBで、右SBに津田が入りました。さらに67分には湘南が5枚替え。DFは右から鎌田、山口、大井、石神。中盤の左に平木、FWにルーキーの高山薫という布陣に。甲府も67分に左SBへ犬塚を入れると、71分には7枚替え。CBに小林が入り、中盤は井澤と養父がボランチで、右が柏、左が内田。2トップは松橋とキム・シンヨンに変わります。展開自体はやや湘南ペースで推移しながら、70分過ぎに双方が施した大きなメンバー交替以降は甲府に流れが傾き、84分には「かなり速かったし、なかなかよかったね」と三浦監督も評した柏のクロスを、松橋が頭でねじ込む同点弾。90分間のスコアは1-1ということになりました。なお、3本目は共にチャンスを創り合うオープンなゲームになりましたが、お互いゴールは奪えず。メンバーは湘南がGK松本、DFが右から鎌田、山口、大井、石神、中盤アンカーに松尾で途中から遠藤、右が松浦、左が岩尾、頂点が平木、前は菊池とルーカス。甲府がGKにルーキーの岡大生、DFは右から津田、小林、冨田、井澤、中盤はボランチに内田と養父、右に柏、左に片桐、前が松橋とキム・シンヨン。途中から最終ラインは右から犬塚、津田、小林、井澤となっています。湘南は7日から「半袖短パンで過ごすことになる」(反町監督)タイ・バンコクでキャンプ開始。甲府も同じく7日から宮崎・綾町でキャンプに入ります。いよいよ開幕も近付いてきましたねえ。 AD土屋
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J1第34節 浦和×神戸@埼スタ

3月6日に開幕した2010年シーズンのJリーグも、とうとう今日が最終節。それぞれのチームが、それぞれの決着を付ける日です。私が最後に見たかった決着の行方は、やはりJ1の残留争い。ほとんど一騎打ちの様相を呈しているFC東京と神戸の決着をこの目で確かめるために、埼玉スタジアムへ向かいました。ここ6試合は3勝3分けという、驚異的としか言いようのない結果を残し、特に前節の清水戦では10人になってからの決勝ゴールで勝ち点3を獲得した神戸。現状ではリーグの中でも最も調子のいいチームかもしれません。その神戸を4万5千の埼スタで待ち受けるのは、フォルカー・フィンケ監督体制下としてもホーム最終戦となる浦和。どちらの“赤”がより燃えたぎるのか。そして神戸に奇跡は起きるのか。第34節。泣いても笑っても最後の90分間は家本政明主審のホイッスルでその幕を開けました。立ち上がりから「浦和はホーム最終戦なのでかなりの勢いで入ってくるだろうと予想していた」と和田昌裕監督が話した神戸は、石櫃と茂木の両SBも攻め上がりを自重する格好で、まずは守備に軸足。対する浦和も早めに縦を狙う選択が目立ち、なかなかボール回しにリズムが出てきません。18分には浦和が先に決定機。エスクデロ、柏木と繋いで、ポンテが右サイドへ振ると、高橋の折り返しをエスクデロがシュート。ここは神戸GK徳重が足で防ぎますが、1分後にも再び浦和のチャンス。ポンテがエジミウソンとのワンツーから抜け出し、放ったシュートはこちらも再び徳重がファインセーブ。「(徳重)健太がよく2本止めてくれた」とは北本。神戸は守護神の連続セーブに救われます。すると24分にチャンス到来。吉田がDFラインの裏へ出したボールに小川慶治朗が走り、フィニッシュまで持ち込むと、これは岡本拓也がブロック。高校3年生同士の攻防は両者譲りません。そんな中、ゲームが動いたのは意外な形から。31分、何気なく茂木が前へ蹴り入れたフィードに対応したのは、「CBのポジションで緊急事態を迎えていた」(フィンケ監督)チームで、今シーズン初スタメンとなった濱田水輝。ところがその濱田がGKへ頭で戻したボールは短く、「相手のDFラインもプレスを掛けるとアタフタしてたんで、1本来るかなと思ってた」という吉田が拾います。まったくのフリーで迎えた山岸との1対1も、冷静に右スミへ。ベテランがこの大事な局面で大仕事。勝つしかない神戸がリードを奪うと、以降は「先制点の重みで呪縛から解けた」と北本が話したように、バランスを維持しながらリスクを賭けずにゲームをコントロール。45分間は神戸がアドバンテージを握った形で終了しました。ハーフタイムのスタジアム。場内アナウンスで告げられた西京極のスコアは、1-0で京都リード。どよめくアウェイゴール裏。「他会場の経過は出ている選手には伝えてないし、僕も知らなかった」とは和田監督ですが、この時点で不利なはずだった神戸が一転、このまま行けば逆転残留という状況が生まれます。後半も先にチャンスを掴んだのは神戸。47分、右サイドからボッティが上げたクロスに、小川はフリーでボレーを放ちながら枠の左へ外してしまいましたが、その18歳が2分後に貴重な働き。49分、浦和の縦パスに体を入れたCBの北本は「僕のファウルかと思ったけど」、笛が鳴らないと見るやパスカットから「チャンスだったので」そのままオーバーラップ。この流れから抜け出した小川が濱田に倒されると、家本主審が指し示したのはペナルティスポット。神戸に追加点の絶好機が訪れます。このプレッシャーの掛かる場面。本来のキッカーはポポでしたが、「蹴りたそうな顔してポポに「俺に任せてくれ」と言った」のは吉田。倒れた山岸の治療と、「不安がとても大きくなってしまった」(フィンケ監督)ために施された濱田と堀之内の交替も含め、3分近い中断を挟んで迎えたPKにも、「絶対に入れる自信はあった」と話した男の度胸は本物。指揮官も「真ん中に蹴ってましたもんね」と苦笑するほど冷静なキックが揺らしたゴールネット。0-2。吉田の今日2点目となる一発でリードが広がります。止まらないクリムゾンレッド。59分、「言い続けていたファーストディフェンス」(和田監督)を吉田が激しいチェイスで敢行。乱れた浦和のパスを奪うとボッティ、ポポを経由したボールはフリーのパク・カンジョへ。「痛み止めの注射も切れて、痛い中なんとかやってた」パクは、山岸との1対1も難なく左スミに一刺し。飛び出した“カズダンス”ならぬ“パクダンス”。0-3。この時点で神戸が見せていた守備の安定感を考えても、ゲームの大勢は決しました。ある意味、このゲームの神戸は“狡猾”だったと思います。実際にはおそらくここ数試合と比べても、チーム全体が見せた前への推進力はむしろ少ない程。それでも相手のミスを突き、PKを獲得して、高い位置でボールを奪ってのカウンターから3ゴールを奪取。まるで常勝チームの勝ちパターンかのような展開は、この苦境を強いられる中で神戸が身に付けてきた「チームに生まれた自信」(吉田)の象徴だったのではないでしょうか。63分には左サイドを素晴らしいターンで抜け出した宇賀神の折り返しから、エスクデロが打ったシュートには3人のDFが体を投げ出してブロック。守備陣の集中も途切れません。和田監督は74分、ポポに替わってルーキーの森岡亮太を投入すると、81分には吉田とイ・ジェミンを、83分に足をつった茂木と小林を入れ替え、万全を期すゲーム運びを披露。そして、交替で退くポンテに万雷の拍手がスタジアム中から贈られるシーンを経て、“ケーキに苺を乗せた”のは10代コンビ。93分、森岡は高いテクニックで右サイドを切り裂くと中へ折り返し、実は記録された4本のいずれもが決定的なシュートだった小川が、ようやく4本目で結果。0-4。終盤戦のキーマンとなった高校生のダメ押しゴール。点差はさらに開きます。西京極は京都に追加点。ベンチ前に集まる神戸の選手たち。94分、鳴らされたのはゲームの、そしてシーズンの終わりを告げるホイッスル。「とりあえずみんなで行こうと言っていた」(吉田)和田監督の下に駆け寄った全ての選手と全てのスタッフで広げた歓喜の輪。最後にJ1残留という決着を付けたのは神戸でした。確かに奇跡だったのかもしれません。10試合勝利がない状況から、最後の7試合は4勝3分けと逆に負けなしというのは、現実離れした数字と言えるでしょう。ただ、和田監督は試合後の会見でこう話しました。「チームが変わったのは一体感。ベンチ全員が一緒になって喜べる、悔しがる、泣ける、そういうチームにはなったのかな」。きっとそれを手に入れるのは口で言う程簡単ではありません。そして、それを生み出したのは「和田さんのためにもという気持ちがあった」(河本)「何とか和田さんを男にしたいとみんな思ってた」(吉田)「和田さんが監督になってこういう結果が出せた」(ボッティ)と皆が声を揃える指揮官への想い。「とにかく選手たちは凄いとただただ思うだけ」と言い切った和田監督その人が自ら“一体感”を創り出し、残留という“必然”を呼び込んだのだと私は感じました。 AD土屋
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J1第33節 湘南×C大阪@平塚

11年ぶりに復帰したJ1の壁は厚く、苦しい戦いを余儀なくされた結果、既に来シーズンはJ2で戦うことが決まってしまった湘南。ホーム最終戦で平塚へ迎えるのは、共に昇格を果たしたC大阪。同期として意地を見せたい所です。そのC大阪は、現在4位とACL圏内も狙える好位置をキープ。残る2試合で結果を出して、昨シーズンの広島が見せた躍進の再現を狙います。ゲームはかなりゆったりとした立ち上がり。最初のシュートは9分のC大阪。寺川から中盤でボールを奪った丸橋が、家長からのリターンを受けてミドルを枠内へ。さらに12分にはマルチネス、13分には清武が積極的なシュートチャレンジを見せると、20分に決定機。清武が右へ展開し、酒本のクロスをアドリアーノがボレーで狙うと、枠に飛んだボールは阪田がライン上でクリア。C大阪の攻勢が続きます。そんなチームの中で、存在感を示したのは3シャドーの中央に位置する家長。湘南はハン・グギョンが1枚でアンカーを務めるために、うまくその両脇に潜ると、前を向いてはチャンス創出。29分にも、DFラインの背後へ走り込んだアドリアーノへ浮き球でピンポイントパス。アドリアーノのトラップミスで決定機とはいかなかったものの、惜しいシーンを生み出します。対する湘南も、33分には攻撃で素晴らしいコンビネーション。村松のクサビを阿部が落とすと、永木は狭いコースを選択してスルーパス。臼井にはわずかに届かなかったとはいえ、ようやく数人が絡んだパスワークからチャンスの萌芽を紡ぎ出します。それでも、なかなか前でしっかりとボールを収めることができないため、スイッチが入りそうな場面でも攻撃に人数をかけ切れず、阿部やエメルソンが孤立してしまう面は否めず。どうしても相手陣内に入ると、DFラインの裏へボールを蹴っては、そのままGKにキャッチされるか、ゴールラインを割るシーンばかりが目立ち、前半のシュートはゼロ。ただ、C大阪もシュート数こそ10本を記録したとはいえ、湘南に「ディフェンスの激しさをぶつけてこられた」(レヴィー・クルピ監督)ことと、サイドを崩してからのクロス精度が低かったことで、決定的なシーンには至らず。前半は共に無得点のまま、45分が終了しました。後半はスタートからC大阪が猛攻。48分、酒本の右クロスからアドリアーノが放ったヘディングは臼井が体でブロック。同じく48分、相手DFラインの裏へ抜け出した乾のシュートはサイドネットの外側へ。49分、アマラウのミドルは枠の左へ。一方的に押し込みます。すると53分に動いたスコア。酒本のCKは湘南DFがクリアで逃れますが、清武が拾うと受けた丸橋は突如、無回転ミドル。揺れて落ちたボールは野澤も弾き切れず、ゴールの中へ。再三のクロスもなかなか精度が上がらなかった丸橋の、無回転が枠を捉えるという不思議な一撃。とうとうC大阪に1点が入りました。こうなると「失点してしまうとみんな下を向いてしまう」(反町監督)今の湘南も何とか踏みとどまってきたものの決壊。62分、中央やや右、ゴールまで約20mの距離でC大阪が得たFK。丸橋が動かし、アマラウが右足を振り抜くと、DFに当たってコースが変わったボールは、ゆっくりとゴールへ吸い込まれ、0-2。65分、アマラウ、清武、乾と繋いで最後はマルチネスが二アサイドを豪快に撃ち抜き、0-3。大勢は決しました。ホーム最終戦で何とか1点は返したい湘南。反町監督も67分にエメルソンを下げて馬場を投入。74分には寺川に替えて中村を送り込み、もう一度攻撃陣の立て直しを図りますが、一向にギアが上がる様子もありません。83分に孤軍奮闘していた坂本の放ったシュートが、何とチームが記録した初シュート。直後に坂本とチェ・スンインをスイッチし、4-4-2へ変更した布陣も奏功せず。逆に88分には右サイドから乾が入れたグラウンダーのクロスを、阪田はクリアしきれず痛恨のオウンゴール。「今年に入ってバージョンアップしたチームと、逆にバージョンダウンしてしまったチームとの差があったのかな」と反町監督。1年で残酷なまでに開いてしまった両チームの力を如実に現わすスコアで、C大阪がアジアへの道に望みを繋ぐ結果を得て、ゲームは終了しました。「なかなかいいゲームができたと思う」(クルピ監督)「今日は良さがほとんど出なかった」(反町監督)という両指揮官の言葉がすべてを言い表わしていると思います。とうとうその姿を現した、待望の799型“大型ビジョン”に一度もサポーターを涌かせるようなリプレイが流れることはなく、何とも残念なこけら落としとなってしまいました。最後に田村雄三が今シーズン限りでの引退を発表しました。まだ27歳ですが、その両ヒザはもはや限界に達していたようです。昨シーズン、反町監督が導入した4-3-3のキーマンは、間違いなくアンカーに入った田村でした。そしてその激しいプレーが、チームの昇格に多大なる貢献を果たしたのは、今更言うまでもありません。1つの大きな決断をした彼に、あと1試合残ってはいますが、心からの「お疲れさまでした」を贈りたいと思います。 AD土屋
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J1第33節 FC東京×山形@味スタ

既に優勝と2チームの降格は決定。最大の注目は残る1枠の降格を回避すべく、瀬戸際の戦いが続く残留争い。32ポイントで16位の神戸と、35ポイントで15位のFC東京に絞られた感のある過酷なサバイバル。今日は先にゲームを行っていた神戸が、清水を相手に10人になってから執念の決勝ゴールを挙げて3ポイントを獲得しており、暫定とはいえ東京と勝ち点で並んでいます。その結果を受けてのキックオフとなるホーム最終戦の相手は、前節の勝利で残留を決めた山形。ある意味対照的な立場に置かれた2チームの激突となりました。ゲームが始まると、まずは東京がラッシュ。3分、中村の左クロスは平山へわずかに届かず。7分、石川の右クロスを大黒はマークに付いた西河をハンドオフしながら、ヘディングを放つとボールは枠の左へ。さらに9分、石川のサイドチェンジを受けた羽生が中へ折り返すと、こぼれを拾った梶山のシュートはバーの上へ。「立ち上がりは点を取りに来るだろうと思った」と山形の増田が話した通り、東京が勢い良く飛び出します。13分には山形。GKへのバックパスも含めて1分近くボールを回し、前田のフィードを長谷川が収め、最後は小林がミドル。1つしっかりとしたポゼッションからフィニッシュまで繋げますが、流れは変わらず。16分は再び東京。西河のパスミスから、奪った石川が中へ送ると、平山に訪れた決定機は寸前で西河が自らカット。18分にも小林のパスミスから、最後は平山が抜け出し、1対1は山形GK清水がファインセーブを見せたものの、相手のミスから2回の大きなチャンス。さらに24分には石川のCKから、梶山のヘディングは枠を捉えましたが、清水がキャッチ。ゴールが少しずつ近付いているような雰囲気は確かにホームチームにありました。ただ、「立ち上がりを抑えれば自分たちのペースになると思っていた」と増田が話せば、「シュートは打てなかったが、バランス自体は悪くなかった」と小林伸二監督。すると、少しずつ「勝たなきゃいけないという堅さは感じた」と大熊監督も評した東京はトーンダウン。前線で体を張った平山の奮闘に対する周囲の呼応も少なくなり、ほとんどチャンスを創れなくなってしまいます。こうなると山形にも好機到来。31分、伊東が左へ流し、小林のアーリークロスは長谷川へわずかに合わず。33分、長谷川のポストワークから、またも小林のクロスに北村が合わせたボールは、東京のGK権田が何とかセーブ。いい形を創り出します。山形で目立っていたのは、Jリーグ初スタメンとなったルーキーの伊東。割合ポジションとプレーエリアが決まっているチームの中で、自由な位置取りからよくボールに絡んでアクセントを加えるなど、好プレーを披露。小林監督は「もう少し高い位置でボールが持てれば、スピードがあるのでもっと脅威になったと思う」と語りましたが、今までの山形にはいなかったタイプで可能性を感じさせたと思います。ややリズムが掴めなくなった東京にさらなるアクシデントは35分。そこまで右サイドから再三鋭い突破を繰り出していた石川が、負傷でリカルジーニョと交替を余儀なくされてしまいます。44分には平山、羽生と繋いで、エリア内で大黒がシュート態勢に入るも、戻った伊東が間一髪でクリア。山形ペースと言ってよさそうなスコアレスで、前半は終了しました。後半は立ち上がりから膠着。53分に動いたのは大熊監督。大黒を諦め、前田を投入を選択。58分には小林監督も1人目の交替を決断。「2トップも考えたが、相手が1トップで前田と羽生が(ワンボランチの)佐藤の脇を狙い始めたので、中盤3枚の方がうまく守れる」と長谷川の所へそのまま田代を投入します。それでも展開に与える影響が少ないと見るや、次の交替は両指揮官ともほぼ同時に近いタイミング。64分には大熊監督が最後のカードを決断。羽生に替わったのは森重。平山の1トップで、その下には右から前田、一列上がって梶山、リカルジーニョ。ボランチにはやはり徳永が一列上がり、森重はCBに入ります。65分は小林監督の2枚目。いい働きを見せていた伊東を下げて、「途中から入れると左サイドからのクロスの質は高くなる」と宮沢を投入。サイドを意識させるような交替策を採ってきます。これが奏功したのは東京。74分、右サイドから森重が入れたボールを梶山が流すと、受けた平山はキープしながら反転して素早くシュート。ボールはDFに当たったことで、綺麗な弧を描いてゴール右スミへ吸い込まれていきます。瞬間、大熊監督も思わず派手なガッツポーズ。東京の中で最も闘志を前面に押し出していたストライカーが大仕事。東京が先制。1点のリードを奪いました。その後も78分には森重がクイックで始めたFKを梶山が繋ぐと、平山のシュートがわずかに枠の右へ外れましたが、1点目とまったく同じ選手の流れで決定機を創るなど、東京に勢い。逆に山形は77分、北村に替えて下村を送り込んでいましたが、あまり効果を得られずに時間を消費していました。ところが「そんなに危ない場面もなかった」(今野)、そして「サイドを割られるのはあまりなかった」(大熊監督)にも関わらず、サイドから一瞬の隙を突いたのは86分の山形。左サイドで小林が縦に付けたボールを、宮沢はうまくタメてからリターン。外を回った小林が「(田代)有三なら強く飛ばせる」と柔らかいボールを中へ送ると、その田代は長く、そして高い跳躍から絶妙のコースへ頭で一刺し。「サブで満足してる選手はいないと思う」とベンチスタートを強いられたチームトップスコアラーが意地の一発。小林監督も「この前点を取ったのに、今日も途中からだったので、そのストレスが点に結び付いたかな」と笑う田代の技ありゴールで、山形が追い付いてみせました。もはや東京も今野を最前線に上げた90分以降はノーガードの殴り合い。90分は東京。梶山、今野、梶山と推移したボールを最後は今野が左足で狙うも枠の右へ。91分は山形。宮沢のFKを秋葉が枠内へ飛ばすも、権田がキャッチ。93分も山形。佐藤が右へ送り、田代が最高のクロスを上げると、飛び込んだ宮沢のダイビングヘッドは、わずかにゴール左へ。カウンターから完全に崩し切った形に、歓声と悲鳴が交錯します。94分は東京。最後は前田がスライディングでボールに食らい付いたシュートは清水がキャッチ。そして長いホイッスル。タイムアップ。東京が挙げたポイントはわずかに1。その分だけ神戸にリードしたまま、残留争いの結末は最終節へ持ち越されることになりました。ゲーム内容としては、8対9というシュート数が示しているようにほとんど互角だったと思います。それでも、東京にしてみれば残り15分でエースが先制ゴールを挙げても、ワンチャンスを生かされて追い付かれてしまう辺りに、今シーズンの苦闘がよく表れているのではないでしょうか。「最後の1試合は悔いが残らないように、全力でチーム一丸でやっていきたい」と大熊監督。東京に訪れるのは歓喜か、それとも悪夢か。その答えはあと90分間を終えればハッキリします。 AD土屋
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J1第32節 大宮×神戸@NACK5

37ポイントで13位の大宮と、31ポイントで16位の神戸。正真正銘、残留争いの大一番。「気持ちの部分で負けるといろんな部分で差が出てくる」と村上も話すなど、ここまで来れば“気持ち”のぶつかり合い。そこで上回った方がよりよい結果を得られるであろう、まさにシーズンの総決算は大宮ホームのNACK5です。序盤にまず勢いを得たのは大宮。割り切ったロングボールにラファエルが強さを見せ、相棒のイ・チョンスや中盤もセカンドを拾って攻勢に。9分には三原のパスミスを奪ったラファエルが、枠の左へわずかに逸れる強烈ミドルをお見舞いします。しかし、意外な形で生まれた先制ゴールは14分。ポポの直接FKを大宮のGK北野はファインセーブで逃れましたが、このCKからボッティが蹴ったボールは右にこぼれ、再びボッティのクロス。河本が頭に当てると、「反対側のシチュエーションはわからなかった」というマトのクリアが、なんとフリーのパク・カンジョへ。パクは難なく無人のゴールへ流し込みます。神戸からすればかなりラッキーでしたが、1点は1点。まずはアウェイチームがアドバンテージを得る格好になりました。さて、嫌な形でリードを許した大宮。26分に藤本のクロスをイ・チョンスが落として、青木が放ったシュートは三原が体でブロック。28分、ラファエルがダイレクトで浮き球をスルーパスに変え、イ・チョンスが抜け出すもわずかにオフサイド。31分、FKからマトのシュートはDFに当たって枠の左へ。失点直後こそ神戸の勢いに圧されたとはいえ、25分以降は再びペースを奪還して攻め込みます。ただ、結果としてボールを持つ時間が長くなったために、ストロングでもある2トップを生かすことがなかなかできず、スイッチを入れるポイントが見つかりません。また、ラファエルの対応に苦慮していた神戸の小林と河本で組むCBコンビも、時間を追うごとにアジャスト。やや大宮に閉塞感が漂うような展開の中で、最初の45分間は終了しました。後半は開始から鈴木監督が講じる施策。「中盤で神戸のプレスが速いので、回避してサイドに基点を置きたい」と、イ・チョンスを右サイドに出し、藤本を中へ入れて4-2-3-1気味にシフト。「縦の関係を創って外から勝負という形を意識した」とはその藤本。人を変えずに、システムを変えてきます。それでも実際後半が始まると、お互いにほとんどシュートまで持ち込むことができない状態に。すなわち膠着。時間は容赦なく経過していきます。58分、和田昌裕監督も1枚目のカードを選択。先制弾のパク・カンジョに替えて、イ・ジェミンを投入。右サイドを強化しに掛かると、すかさず鈴木監督も63分に2枚目のカード。「なかなか茂木をはがせなかったので、チョンスを左に持ってきて基点にする狙い」と、藤本を下げて石原をFWで起用。左SHの渡部がイ・チョンスと入れ替わり、再び4-4-2に戻します。すると直後の65分にはイ・チョンスがいきなり左サイドから正確なクロス。石原のボレーはわずかにゴール右へ外れましたが、早くも効果が現れます。そして67分にスタンド沸騰。鈴木の右CKは、中央の石原に当たって跳ね返ると、そこにいたのはマト。「長いキャリアの中では決めたこともある」という、利き足とは逆の右足でプッシュ。8月以降はスタメンを外れることも多かったマトの汚名返上弾。大宮が追い付きました。こうなるとイケイケのホームチーム。69分、鈴木のFKにラファエルが合わせたヘディングは枠の右へ。74分、またもイ・チョンスの左クロスを渡部が落とし、ラファエルのボレーはクロスバー直撃。逆転の機運も高まる一方。ところが77分、「出てきてからなかなか対応ができなかった」と鈴木監督も認めるイ・ジェミンが大仕事。河本のフィードから右サイドで仕掛けると、再三緩い守備を見せていた対面の鈴木をものともせず、あっさりかわすと左足で鋭いクロス。後ろに小川の気配を感じた深谷が、懸命に伸ばした足に当たったボールは無情にも自らのゴールへ飛び込みます。「サイドの守りが手薄な所をやられてしまった」と鈴木監督。神戸がまたも1点のリードを奪いました。すかさず動いた和田監督はボッティに替えて、「セカンドの拾い合いと、CBの前で競り勝ちたい」という狙いでエジミウソンを投入。田中を前に押し出し、中盤を引き締めます。負けられない大宮も、鈴木監督決断。81分に「チョンスの所で基点ができていたので、オーバーラップを1つ入れたかった」と鈴木OUTで村上IN。83分には渡部OUTで、これがJリーグデビューとなる2種登録の宮崎泰右IN。29歳と18歳に希望を託します。そしてそれが叶ったのは85分。イ・チョンスとの大きなワンツーの形で左サイドを独走した村上は「(石原)直樹がいて欲しい所にいてくれた」と中へラストパス。「いいボールが来たので、落ち着いてゴールの中へ入れるだけ」と石原は二アで冷静にプッシュ。ゴール裏のオレンジ再沸騰。常にゲームのキーとなり続けた方のサイドから崩した一撃。2-2。大宮が驚異的な粘りでスコアを振り出しに戻してみせました。ドローは限りなく負けに等しい神戸の猛攻。前へ神戸。後ろへ大宮。93分はやはり右サイド。イ・ジェミンのクロスに、右足を振り抜くポポ。枠を捉えたボール。一瞬時が止まり、直後に見えたのは懸命に弾き出した北野。タイムアップ。ドローでも、あまりに異なる勝ち点1の意味。ゲームは「勝てなかったけど大きな勝ち点1」(鈴木監督)を大宮が獲得したという結果となりました。和田監督は、「エジミウソンを入れる時に森岡を入れる考えもあった」と振り返っています。ただ、入ったのはエジミウソン。「守備的に行こうという意図ではなかった」と指揮官は話しましたが、シグナルはやはり守備重視と取れるものでした。一方の鈴木監督は、「チョンスが持ったら外を回るように指示が出ていた」という村上を攻撃的な意図で起用し、最後の1枚に選んだのはリーグ戦初出場のユース所属選手。この腹を括った采配が、自ら「非常にお互い気持ちの籠もったゲーム」と評した決戦で確かな成果を手繰り寄せたのだと思います。 AD土屋
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J2第35節 千葉×北九州@フクアリ

前々節に柏が、前節に甲府が、それぞれJ1昇格を決めたため、残された切符はわずかに1枚。3位の福岡を5ポイント差で追い掛ける4位の千葉からすれば、江尻篤彦監督が今シーズン限りで退任することが既にクラブから発表されており、「残り4試合 エジさんを漢にしよう」とサポーターがゴール裏に掲げた横断幕と同じ気持ちを、選手も持っているはずです。一方の北九州も、地域リーグ時代から指揮を執っていた与那城ジョージ監督の、今シーズン限りでの退任が決定。何とか30にまで伸びてしまったリーグ戦連続未勝利という不名誉な記憶を断ち切りたいという気持ちは大きいはず。共に黄色をイメージカラーに持つチーム同士のナイトゲームは、北九州のキックオフでその幕を開けました。開始直後の18秒、右サイドから太田圭輔が入れたクロスを青木孝太がワンタッチで落とし、佐藤勇人がわずかに枠を外れるシュートをいきなり放ったのは、千葉の覚悟の現れ。5分、太田のアーリークロスに青木孝太が頭で合わせたボールは、北九州GK水原大樹がキャッチ。8分、佐藤勇人の左アーリークロスは、谷澤達也にドンピシャもヘディングはバーの上へ。「立ち上がりに物凄い勢いで来られて、マークのズレが凄いあった」と与那城監督が振り返り、「サイドからのクロスにマークが甘くなるのは予想通り」とは7月25日の柏戦以来、久々のスタメンとなった中後雅喜。すると、やはり先制ゴールもサイドアタック。9分、左サイドで工藤浩平とのパス交換からアレックスが上げたクロスに、飛び込んだ谷澤がヘディングで一刺し。「思うようにいい形で攻撃できた」(佐藤勇人)千葉が、狙い通りにリードを奪ってみせます。流れは完全に千葉。それまでを見ても、大量点が入る一方的なゲームになってもおかしくない展開だったと思いますが、14分に宮川大輔が強引にミドルを放ち、北九州にもシュートが記録されたのを境に、風向きが変化していきます。その要因として考えられるのは2つ。1つは、左のSHに入っていた関光博がポジションに捉われず、幅広い動きから積極的にFKを含む7本ものシュートを放っていったこと。もう1つは、「CBが2枚引いててカバーがない状態だったので割とうまく受けられた」と話したFWの中嶋雄大が、バイタルに潜ってボールをよく収めたこと。41分には千葉も谷澤がバックステップから無回転ミドルを枠内へ飛ばし、水原のファインセーブに阻まれるシーンを創りますが、終わってみれば共に9本ずつのシュートを記録するなど、序盤の一方的な展開から、「シュートで終わられることが多く、リズムを取られた」と佐藤勇人も認めたように、最後はほとんど互角と言っていいような展開に変容したゲームは、千葉が1点をリードして45分間が終了しました。後半もサイドを使う形で千葉にチャンス。47分、佐藤勇人の右クロスに谷澤がヘディングを放つも、水原がキャッチ。58分には坂本が右サイドから左足で上げたクロスに、飛び込んだ青木孝太のヘディングも水原がキャッチ。「2点目がなかなか取れない」(佐藤勇人)時間が長くなっていきます。対する北九州は、CBに入った長野聡が「今日は後ろから自信持って回せた」と話したように、少しずつショートパスを繋ぎながらアタックに出るシーンも見られ、いいリズムの中でゲームを進めていくと、73分に結実。左サイドを上がってきたSBの冨士祐樹が、大島のパスをダイレクトではたき、中嶋もダイレクトで巧みに落とすと、冨士が右足を振り抜いたボールはゴール左スミへ吸い込まれます。「無我夢中であんまりよく覚えていない」という冨士は、これが5年ぶりとなるJリーグ2ゴール目。アシストの中嶋も「まさか右足で決めるとは」と驚いたレフティの一発で、北九州が力強く追い付きました。さて、千葉からしてみれば少しずつリズムを手放してしまった上に、失点まで喫する最悪のシナリオに。江尻監督も、77分にはボランチの中後を下げてネットを投入。前に人数を掛けますが、焦りからかなかなか形を創り出せません。最終盤の84分にも青木孝太と林丈統をスイッチして、前へのパワーを増強したものの、シュートが遠い千葉。その間にも時計の針は無情なまでに進み続け、サポーターの声も悲鳴混じりに。88分には佐野裕哉のCKから、大島のヘディングは枠の右側へ。90分、関、佐野と繋いで、大島のシュートはバーの上へ。92分、中嶋、関と繋いで途中出場の長谷川太郎が放ったシュートもバーの上へ。「90分間ハードワークしてくれていい試合ができた」と与那城監督も目を細めた北九州が、2点目を取ったとしても何らおかしくないような流れの中、しかし最後に輝いたのは「引き分けじゃダメなんだと、ずっと言いながらプレーしていた」という闘将でした。93分のほとんどラストプレー。右サイドから工藤が左足で放り込んだボールは、北九州DF必死のクリアも小さくなります。すると、そこに走り込んだ佐藤勇人が左足一閃。難しいボレーで狙ったシュートは、左のポストを叩いて、内側へ跳ねると、転がり込んだのはゴールの中。「最後まで勝ち点3しか考えていない」という7番が土壇場で2試合続けてチームを救う決勝ゴール。千葉生還。奇跡の逆転昇格に向けて、わずかな望みを繋げる劇的な勝利を収めました。忘れてはいけないのは北九州の健闘。「いい内容で試合を終われたことは非常によかったなと思う」と与那城監督も話したように、50人前後で大きな声量を最後までキープし続けたサポーターと共に強く印象に残る、とても30試合も勝ちがないとは思えない、素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれました。「サポーターと選手の意地が最後に出た」(江尻監督)千葉。最悪に近いタイミングで発表された指揮官の退任を受け、奮起した選手たちが最後の最後で諦めない姿勢を結果に繋げてみせました。果たして今日呼び込んだ奇跡が、さらなる奇跡を引き寄せるのか。泣いても笑っても、残された時間はあと270分です。 AD土屋
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J1第31節 FC東京×川崎@味スタ

3月に開幕したJリーグも、あっという間に終盤戦。残すは今日を入れても4節のみ。それぞれのチームにそれぞれの決着が付けられていきます。味の素スタジアムは多摩川クラシコ。前節の横浜FM戦に競り勝ち、残留争いの渦中からわずかに首を出したFC東京と、水曜日の天皇杯で山形との激闘の末にPK戦で敗退し、「唯一タイトルの懸かった試合もなくなった」(高畠勉監督)川崎の対戦。ややモチベーションの差は懸念されますが、今年最後のクラシコに期待を込めて、キックオフを迎えました。2分に平山のドリブルから、最後は石川がカットインしながら枠に飛ばすシュートを放って始まったゲームは、「相手もそんなにハイペースで来てる訳じゃなかった」とその石川が振り返った通り、かなり静かな立ち上がりに。10分にはジュニーニョがミドルレンジから、トーキックで権田の好セーブを引き出すシュートをお見舞いしましたが、特に最初の30分間でそれ以外にゴールを予感させるようなシーンは皆無。膠着した時間が続きます。川崎は絶対的な支柱である中村が出場停止。さらに田坂が負傷で欠場する中、中盤はドイスボランチに稲本と谷口を配して、SHは楠神にヴィトール・ジュニオールという並び。これが結果的に今日のドイスボランチの特性からか、構成力は落ちるものの、守備のバランスという意味では普段以上に整った印象。加えて負傷を抱えているはずのジュニーニョとヴィトールの推進力が、十二分に生かされるようなカウンターも見られ、安定した守備からいくつかチャンスの萌芽は創り出します。逆に東京は、前節で覚醒した感のあった平山こそ基点を創って奮闘しますが、いかんせん周囲のフォローが少なく、なかなか決定的なシーンを生み出せません。36分に東京が掴んだチャンス。石川のCKを平山が頭で合わせ、体を投げ出した森重のヘディングは川崎のGK相澤がしっかりキャッチ。45分間で記録されたシュート数は東京の3に対して、川崎が2。妥当なスコアレスで前半は終了しました。ハーフタイムを挟むと、後半は開始早々にゲームが動きます。47分、ハーフカウンターは川崎。左サイドを楠神がドリブルで持ち上がり、ジュニーニョを経由したボールは矢島の足元へ。スクリーンから反転して左足で振り切ったシュートは、「見えない所からボールが出てきた」という権田を破ってゴール右スミへ。歓喜の色はスカイブルー。アウェイチームが1点のリードを奪いました。さて、ホームで追い掛ける展開となった東京。大熊清監督は「(後半開始から)10分くらいで入れようと思っていた」リカルジーニョを50分に前倒しで投入。さらに57分には大黒に替えて、右SBに椋原を送り込み、「久々の右SBで駆け上がるパワーやタイミングが多少悪かった」(大熊監督)徳永をボランチに上げ、梶山を平山のすぐ下に置く4-2-3-1へシフトして勝負に出ます。それでもしばらくはリズムに変化のないまま推移しましたが、65分にジャッジの妙が展開に変化を。左サイドに張り出し、再三ドリブルで仕掛けながら、ことごとくチャンスに結び付けられなかったリカルジーニョが、ここも強引なドリブルで突っ掛け、相手DFと接触。微妙なプレーでしたが、山本雄大主審は川崎のファウルを指示します。このFKを石川が枠に直接飛ばし、相澤がなんとかセーブ。しかしこのCKから、石川のキックに森重がダイビングヘッドを敢行すると、ゴールネットはボールを捕獲。1-1。25分を残して、結果だけ見ればリカルジーニョ投入が奏功した格好で、東京が追い付いてみせました。高畠監督の決断は69分。楠神OUTで黒津IN。黒津はそのまま右SHに入る、超攻撃的布陣を断行。73分には矢島の巧みなポストプレーから、ヴィトールが中央を抜群のスピードでぶち抜き、シュートはわずかに枠の右へ外れましたが、衰えないカウンターの恐怖を一瞬で植え付けるプレーを披露。80分には稲本のレーザーフィードを右サイドで受けた黒津が、中村をあっさりかわしてサイドネットの外側を強襲するシュート。ただ、決定機は川崎にありましたが、同点後の東京も前へのパワーは強まり、攻撃の時間は明らかに増加。まさに「どっちに転ぶかわからない展開」(高畠監督)だったと思います。こうなると勝敗を分けるのは往々にして「致命的なミス」(大熊監督)。84分、ヴィトールの何でもないフィードに対応した森重は、なぜかボールに対して手を出してしまいます。すると、山本主審のホイッスルは鳴らず、ボールを拾った「DFの手に当たって方向は変わったが、前半からDFの裏にボールをくれと要求していた」という10番は、やや中途半端に前へ出てしまった権田の頭上を緩やかに越えていく、完璧なループでフィニッシュ。ジュニーニョのJ1通算100ゴール目となるメモリアル弾が飛び出し、川崎が再び勝ち越しました。追い込まれた東京。「短い時間だったのでペナの中に人を入れたい」と大熊監督が切った最後のカードは、天皇杯で2ゴールの活躍を見せた大竹ではなく前田。それでもスタンドを沸かせるようなシーンを創れないまま、時間ばかりが経過していきます。94分、権田も上がった東京のラストチャンス。米本のFK、こぼれ球を平山が懸命に抑えて枠に飛ばしましたが、相澤が横っ飛びで弾き出し、鳴らされたタイムアップのホイッスル。今シーズン最後のクラシコは川崎に軍配。ACL圏内確保に向けて、価値のある3ポイントを敵地から持ち帰る結果となりました。勝ち点3だけではなく、勝ち点1までもその手からこぼれ落ちた東京。「ウチは勝ち点1を狙いに行くチームではないが、勝ち点1でもOKと言わなきゃいけない状況」とは権田ですが、「みんなで2点目を狙いに行く姿勢はあった」と大熊監督。結果は個人のミスが失点に直結してしまったとはいえ、オープンな打ち合いの様相を呈した75分以降に、チーム全体の意志統一ができていたか否かには疑問が残ります。「最低限もう1点取られないようにするのが課題」と米本。その“課題”を“最低限”のレベルまで引き上げるために残された試合は、あとわずかに3つしかありません。 AD土屋
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J2第34節 草津×岡山@正田スタ

現在の順位は15位と17位。いよいよ佳境を迎えている昇格争いとは無縁の位置となってしまった、草津と岡山の対戦。気温も11.3度。日曜19時半キックオフのナイターということもあってか、観客数も今シーズン最少の2232人と、何とも淋しい雰囲気の中でゲームは始まりました。立ち上がりからお互いになかなかシュートを打てない中、いきなりゲーム自体のファーストシュートがゴールに直結。13分、左サイドでボールを持ったアレックスの右足クロスに、ニアへ飛び込んだのは高田保則。「ゲームのリズムを取り戻してきたので、頭から使った」という副島博志監督の期待に応える、草津の“9番”が一仕事。ホームチームが先制ゴールを奪い、まずはリードしました。アウェイでいきなりの失点を喫した岡山は、15分に澤口雅彦のクロスをヘディングで合わせた左SHの小林優希が、スピードと左足を駆使して一人気を吐きますが、いかんせん周囲のフォローが乏しく、効果的な攻撃には繋げられません。それでも徐々に手数が増えていったのは岡山。「ボランチの櫻田(和樹)と西澤(代志也)がボールを引き出せず、DFもサイドに追い込まれてロングボールが多くなってしまった」と副島監督も振り返ったように、草津も先制したとはいえ、その後はリズムを掴み切れません。すると案の定、次のゴールは岡山に。41分、カウンターの形から、草津は2回フィルターをかけ損なうと、右サイドを白谷建人が独走。味方が中央をフリーで並走する2対1の状況下で、白谷の選択は自らフィニッシュ。ボールは確かな意志を持って、サイドネットに突き刺さります。「前半に関してはある程度、ゲームもボールも動かすことができた」と影山雅永監督も手応えを口にするようなパフォーマンスを披露した岡山が、ドローに追い付いてハーフタイムへと折り返すことになりました。さて、前半終了間際に「不注意から」(副島監督)失点を喫した草津。ここ7試合は複数得点がなく、苦しい後半が予想された中、そんな空気を打破したのは48分のゴラッソ。熊林が右から蹴り入れたCKに反応したアレックスは、難しいジャンピングボレーにチャレンジすると、ジャストミートしたボールが豪快にゴールネットを揺さぶります。「練習でもセットプレーでよく点を取っている。感覚は持っていた」と副島監督。「ゴールを決めるために練習してきた」というブラジル人の来日初ゴールが飛び出し、草津が再び1点のリードを奪いました。こうなると、「後半は相手がギアを一段上げてきた」と敵将の影山監督も認めたように、完全な草津ペースへ。54分、佐田聡太郎の右クロスに合わせたアレックスのヘディングは、わずかにゴール左へ。63分、熊林のスルーパスに反応した高田が、左サイドからカットインして強烈なシュートを枠に飛ばすと、ここは岡山のGK真子秀徳がファインセーブ。そのCK、熊林の入れたボールを最後はアレックスがクロスバー強襲のボレー。「ホームではなんとしてでも結果を出したい」(副島監督)草津の猛攻が続きます。影山監督も68分、1枚目のカードとして、前節決勝点となるJ初ゴールをマークしたリ・ドンミョンを切ってきますが、流れは変わらず。逆に77分は草津。後半のチャンスをことごとく演出し、まさしくピッチの支配者と言うべき存在感を発揮していた熊林が、直接狙ったFKは右ポスト直撃。3点目へチャレンジする姿勢が、ピッチの草津イレブンから確かに伝わってきます。82分にはGK常澤聡が判断ミスで飛び出してしまい、こぼれを拾ったリ・ドンミョンがシュートを放ち、わずかに枠を外したようなシーンもありましたが、その他では概ね安定したゲーム運びで、終盤は確実にクローズ。結果、覚醒したアレックスの1ゴール1アシストの活躍で、草津が寒さの中でも声援を送り続けたサポーターへ勝ち点3を贈り届けました。群馬の夜は確実に冬の気配。シーズンの終わりはもうすぐそこまで近付いてきています。 AD土屋
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J1第28節 湘南×大宮@平塚

台風の接近に伴って延期されていた第28節の9試合目は、残留争いを繰り広げる18位湘南と14位大宮の対戦。置かれている立場こそ微妙に違えど、共に負けられないゲームなのは間違いなく一緒。特に湘南は平日のナイトゲームにも関わらず、チームをサポートしようとスタジアムへ足を運んだ多くの人たちに戦う姿勢を見せる義務があります。やや冷え込みも厳しくなった11月の仕切り直しは、気温14度の中でキックオフを迎えました。湘南はスタメンを見ても少しシステムが予想しにくい中、ゲームが始まってみると反町康治監督の選択は3-4-2-1。田原の下には、シャドー気味に三平とエメルソン。中盤4枚は右に臼井、左に古林で、中央が田村と坂本。3バックは右から村松、遠藤、山口という並び。最終ラインのセンターには、何と17歳が入ります。ただ、「サイドに1回入った時にちょっと下がり過ぎちゃった」とは遠藤ですが、立ち上がりから概ねうまく守備陣をコントロール。イ・チョンス、ラファエルの大宮が誇る強力2トップにも確実に対応し、まずは立ち上がりの15分を凌ぎ切ります。ところが、その直後に落し穴。中盤でのビルドアップ、チャンスになりかけた所で山口はボールが足に着きません。奪った大宮のカウンターから、ラファエルが村松に倒されFKに。やや右、ゴールまで約25mの距離から金久保の右足が繰り出したキックは綺麗な弧を描き、都築は一歩も動けず。「金久保の直接FKは資料になかったのでちょっと想定外」と苦笑したのは反町監督。「繋ぎの所でミスが出てしまった」と都築。ある程度いい立ち上がりを見せていた湘南でしたが、「つまらないミス」(反町監督)から先制を許す展開になってしまいました。さて、大宮からすれば「湘南とシステムが違って、最初は守備の所でズレがあり、捕まえづらかった」と鈴木淳監督が振り返ったように、やや難しいゲームの入り方となった大宮でしたが、リードを奪うとある程度守備に軸足を置きながら、様子を見るような格好に。32分には、その少し前から勢いが出始めていた湘南に決定機。田原からのパスを受けたエメルソンは左へスルーパス。走り込んだ古林のシュートは、しかし枠を捉えられません。すると迎えた33分、イ・チョンスからのリターンをもらったラファエルは「考える時間はなかったが、わずかだけどコースはあったので」迷わずミドル。これがDFに当たって少しコースが変わると、ゴール右スミへ吸い込まれていきます。内容にそれほど差はなかったものの、前半が終わった時点でのスコアは0-2。今シーズンで複数得点を挙げたのはわずか6試合の湘南。「0-1で折り返せば風向きはこっちに来ると思っていた」という指揮官の思惑も儚く霧散し、手痛いビハインドを負ってハーフタイムへ折り返しました。攻めるしかなくなった反町監督は、後半開始から決断。田村を下げてハン・グギョンを送り込み、攻めの姿勢を鮮明に。「しっかりポゼッションはできていた」と遠藤が振り返れば、「前節よりも攻める内容はよかった」と都築。決して悪くなかった湘南は、56分にこそイ・チョンスに決定的なシーンを創られながらも何とか凌ぐと、60分には三平に替えて、「やりきることが少なかったので、それを意識した」という阿部を投入。より前への意識を打ち出します。64分には、中盤でエメルソンがボールカット。田原とのワンツーからエリア内へ侵入するも、切り返して放った左足シュートは弱く、GK北野がキャッチ。68分にも坂本、エメルソンと繋いで、田原のミドルはバーの上へ。2点が重くのしかかります。そして70分にゲームは決着。右サイドから金久保が入れたFK、湘南ディフェンスのクリアは高く舞い上がり、こぼれ球を藤本がうまいボレー。これが左ポストに当たった跳ね返りを深谷が体で押し込みます。「大宮は36%セットプレーから点を取っている」(反町監督)と十分警戒しながらも、結局「セットプレーとロングシュートにやられた」(遠藤)結果に。0-3。緑と青の勇者を信じるサポーターには、辛い展開となってしまいました。ホームチームがようやく一矢を報いたのは90分。左サイドからエメルソンが蹴ったボールを、バックヘッド気味にゴールへ流し込んだのは、「ジャーンと2つのゴールを約束していた」という阿部。その約束の半分は果たしたものの、反撃もそこまで。「我々に多大な貢献をしてくれたジャーンを、いい形で送り出そうという話をした」とは反町監督ですが、4年間DFラインを牽引し続けたJ1昇格の功労者とのお別れは、何とも寂しい幕切れとなってしまいました。大宮は序盤こそ少し混乱したとはいえ、先制後はうまくゲームをコントロール。前節の山形戦に続き、残留に向けて大きな大きな勝ち点3を獲得しました。「2勝したのがどう出るかは予断を許さない状況」と鈴木監督は気を引き締めますが、これで15位FC東京、16位神戸との勝ち点差は5。わずかながら有利な立場に躍り出たと言えるでしょう。一方、ゲーム終了後にはゴール裏のサポーターから「プライド見せろ」コールを浴びてしまった湘南。11シーズンぶりに帰還したJ1からの降格は、早ければ次節に決まってしまいます。「やろうとしている気持ちは変わらない」と都築。「プライドを持って戦うしかない」と反町監督。“プライド”という何とも抽象的なモノが、今この状況だからこそ問われています。 AD土屋
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J2第33節 柏×岐阜@日立台

2009年11月28日。涙の降格から1年。いよいよ柏がJ1復帰を懸けたゲームに臨みます。「第1節からファイナルだと思ってやっているので、1試合ずつ極端なことを言えば“生きるか死ぬか”でやってきた」(柏・ネルシーニョ監督)積み重ねが、20勝9分け2敗という素晴らしい成績に。引き分け以上で昇格が決まるとはいえ、目指すのはただ勝利のみ。日程の関係上、ホームで昇格を決められるのはおそらくこれが最後のチャンス。サポーターと共に歓喜を分かち合うためにも、負けられないゲームは“太陽王”の名にふさわしく、強い日差しが射し込む日立台でキックオフを迎えました。3分に中盤でのルーズボールを収めた田中秀人のパスから、嶋田正吾がしっかり枠にミドルを飛ばし、ゲームのファーストシュートを記録した岐阜は、「前半に関しては、守備をしっかり固めてカウンターというパターンに徹した」と倉田安治監督も話したように、スペースをしっかり埋めたゾーンの4-4-2を選択すると、22歳の吉本一謙と36歳の秋田英義で組むCBが積極的なプッシュアップを行い、高いラインを保ったことで、全体のコンパクトさを維持。これにはネルシーニョ監督も「守備を徹底して走るし、サボらないので非常にやりづらい。キーになる選手が消されていた」と苦しめられたことを認めています。実際、7分にはレアンドロ・ドミンゲスのCKから、近藤直也がわずかにバーを越えるヘディングを放ちましたが、以降はボールキープこそ長いものの、流れの中からはなかなか決定的なシーンを創り出せません。逆に岐阜は、嶋田と左SHに入った押谷祐樹がカウンターの先鋒に。14分には押谷が無回転ミドルを枠内へ。30分には、嶋田が西川とのワンツーから右サイドに持ち出し、最後は右SBの新井涼平がフィニッシュ。「焦れて前掛かりになった所でカウンターを受けた」とはネルシーニョ監督。ボール支配とは裏腹に決定機へ繋がりそうな攻撃の手数は、ほぼ互角で推移していきます。少しモヤモヤしつつあった日立台がようやく沸いたのは33分。中央、ゴールまで約25mの距離からレアンドロが狙ったFKはクロスバー直撃。チーム最多タイの10ゴールをマークしている司令塔が、個の脅威を岐阜に突き付けてみせます。45分には北嶋の巧みなポストプレーから、左サイドを抜け出した蔵川洋平のクロスは流れ、拾った酒井宏樹が右サイドをえぐって折り返すと、蔵川のダイレクトシュートは枠の右へ。両SBが揺さぶりを掛けて創り出したチャンスもゴールには至らず。前半は「我々がうまくコントロールして進めていった」という倉田監督の言葉も頷けるような、岐阜のプラン通りに近い形で、45分間が終了しました。後半はスタートから岐阜に選手交替。あまり流れに乗れていなかったFWの佐藤洸一に替えて、永芳卓磨を左SHへ投入。前には押谷が上がり、嶋田と2トップを組むことになります。48分には柏にチャンス。大谷秀和のフィードを北嶋が収め、林陵平のシュートは秋田がブロックも、こぼれをレアンドロが再びシュート。枠は逸れましたが、このゲームではなかなか見られなかったアタッカー陣のコンビネーションで、惜しいシーンを創出します。すると、57分に日立台の黄色が噴火。近藤が獲得したFKをレアンドロがファーへ送ると、高い打点で林がヘディング。ここに飛び込んだのは、まるでここに合わせてきたかのような終盤戦の絶好調男・北嶋。そのまま見送っても入っていたようなボールに、頭から飛び込んだ執念が自らのゴールという記録を呼び込み、「林〜、ごめんなさい」とおどける一幕も。不動の9番が大舞台で価値ある先制弾。柏が昇格を引き寄せる、大きなリードを奪いました。倉田監督も59分、ボランチの池上礼一を下げて、川島眞也を送り込み、少し運動量が落ちてきた中盤を引き締めにかかりますが、あまり効果は得られず、どうしてもスペースが空き始めてしまいます。70分には北嶋がレアンドロとのワンツーで抜け出し、綺麗な左足ボレーを放つと、ボールは枠のわずか右へ。71分、酒井が右サイドを茨田陽生とのワンツーで抜け出し、上げた速いクロスは二アでDFが何とかクリア。74分、レアンドロ、林、茨田と細かく繋いで、レアンドロが左へ送ると、走り込んできた蔵川のシュートはGKがキャッチ。「サイドのスペースにもう少しMFが流れて攻撃しよう」というネルシーニョ監督が送った指示も高いレベルで実行した柏が、果敢に追加点を狙います。岐阜も76分には最後のカードを投入。足を攣った阪本一仁に替わって入ったパク・キドンが前線で押谷と並び、嶋田を2トップ下に配して、川島がアンカーに入る中盤ダイヤモンドの4-4-2で、最後の反撃を試みます。しかし83分、新井が大谷への危険なタックルで提示されたイエローカードは今日2枚目。岐阜は厳しい状況に追い込まれました。そして、もはやその瞬間へのカウントダウンが始まっていた90分、右サイドで6分前に投入された田中順也が粘って中へ送ったボールを林が落とすと、大谷は躊躇なく右足を振り抜き、ゴール左スミへ豪快に一刺し。全試合にスタメン出場してきたゲームキャプテンの今シーズン2点目は「思ったよりも“持ってる”なと思った」と笑う、バースデー翌日ゴール。勝利を確信したスタンドはもはや総立ち。さらなるデザートは94分。蔵川のクロスを、替わったばかりのホジェルが体を張ってキープしながらエリア内で倒されると、岡部拓人主審の判定はPK。キッカーのレアンドロが左スミに蹴り込み、フィエスタは終演。終わってみれば3-0。「僕らは90分を見てゲームをしている」とは大谷。トータルのゲームマネジメントで差を見せ付けた柏が、ホーム日立台で1年でのJ1復帰を見事に決めてみせました。石崎体制の終焉。新監督の就任。急激な方向転換。浸透しない新機軸。後手に回った監督交替。結果、4年ぶりの降格。負のスパイラルから抜け出せず、2度目のJ2生活を強いられた柏。しかし、「ネルシーニョの言うことがこの1年で浸透してきた」と北嶋が語ったように、シーズンを通じて勝利という結果を積み重ねることで、攻守に力強さを感じさせる素晴らしいスタイルが少しずつ、確実に構築されていった印象です。「手応えは100%感じている。4試合を残しての昇格、こういうシーズンにできたことは結果が証明している」と5度日立台の宙に舞った指揮官。1シーズンで見違えるように逞しくなったチームは、どんな時も声援を送り続けて来たサポーターに少し早い、それでも最高の「クリ