著者プロフィールまで読んでくれる人がなんぼほどいるのか知らない。でも、前回のプロフィールで触れたとおり、ワシは初の著書というものを出したわけですよ、2月に。題して、『音楽誌が書かないゴシップ無法痴態』!……いや、エバるほどのタイトルではない。
「音楽誌が書かない」と銘打っている(そもそもワシ自身、音楽誌の編集者なのだが)からには音楽界の話題中心。残念ながら本サイト趣旨の直球ど真ん中というわけではない。唯一登場するアスリートといえばデニス・ロッドマンだ。それも、「プリンスとモトリー・クルーの女性関係を追う」というコーナーでの言及……トホホ。ごめんね、みなさん。
そのロッドマン以降、NBAで非常に目立ってきたものがある。
そう、タトゥーだ。
コービー・ブライアントの王冠タトゥー、ジェイソン・ウィリアムズの「White Boy」、ラシード・ウォレスのエジプト風タトゥー、レブロン・ジェイムズの背中の「CHOSEN 1」等々。センスの悪さが際立つ、シャキール・オニールのスーパーマン・ロゴも忘れがたいし……あれっ、ボブ・マーリーのポートレイト・タトゥーを入れてるのは誰だっけ?
とにかく、1998年の調査では、アメリカの全人口におけるタトゥー率は4%なのに、NBA選手のタトゥー率は35%だったそうだ。
いま、2008年ではどうだろう?もはや、タトゥーが一つも入っていないNBAプレイヤーのほうが少数派なのではないか(憶測)。いつぞやのニュージャージー・ネッツ対サンアントニオ・スパーズによるNBAファイナルが「タトゥー軍団 vs. 非タトゥー軍団」と評されたらしいが、その時点で、タトゥーのないマリク・ローズが「かつて、人々はタトゥーを入れたアスリートに“なんでそんなことしたの?”と聞いたものだった。でも最近では、“なんでタトゥーを入れないの?”と聞かれる」と語っていたはずだ。タトゥー・ブームを先導したロッドマン自身も、「最近では、つまらん白人たちもみんなタトゥーしてる」と嘆いたくらいだからなあ。
しかし、アスリートともあろうものが、そんなにタトゥーを入れてもいいものだろうか?道徳を問うているのではなく、体調管理の問題なのだが……。
ここで、ジャンル違いながら、WWEのレイ・ミステリオの例を引いてみよう。身長は諸説あるがおそらく163cm、体重は75~79kg。そんな体格で、時として身長2m20cmくらいの相手と戦うこともある、というメキシコ系アメリカ人のマスクマン・レスラーだ。
現在絶賛発売中のDVD『ザ・ビッゲスト・リトルマン』は、そんなレイの軌跡を辿るもの。基本的には試合中心だが、試合の合間にレイ本人が激闘の日々を振り返って語るコーナーが挿入されている。特に印象的なのはサンサンと陽光降り注ぐサンディエゴの路上を歩きながら、「いま、そこのタトゥー屋で彫ってもらったところなんだ。亡き友エディ・ゲレロを偲んで、“EG”と」と言って、左前腕部(内側)のイニシャル入り十字架タトゥーを見せるシーンだ。当然、マスクかぶったまま、街を歩き、語っているわけで、ミスマッチと感動が入り混じる、なんとも形容しがたい場面なのだった。
考えてみれば、このDVDはレイ・ミステリオがリングから遠ざかっている間に制作されたもの。やはり、膝を故障し、リハビリに励むレイの姿を中心としたドキュメンタリー調の前作DVD『619』には、左前腕の外側に地元の市外局番「619」を彫る一部始終も収められていた。
要するに、この男はリハビリ期間に入るたびに、タトゥーを増やしているようだ。アスリートがリハビリ中に彫ってもいいものなのか?
(写真1)
というわけで、ワシもやってみた!ワシはアスリートでもリハビリ中でもないが、タトゥーがカラダにどれだけ響く行為か?という点は確かめられるかもしれん。
とはいえ……実はワシ、以前から左肩(三角筋のところ)にはタトゥーが入っていた、ということを告白しておこう。
(写真2)
で、今回は胸だ。彫るのは丸屋家の家紋をヨーロッパの紋章ふうにアレンジしたもの。左肩に続き、池袋のTattoo Studio SEEKでやってもらった。
ワシの体にタトゥーが入っていることを知ると、皆が問うてくる質問が、「痛くなかったのか?」である。
ワシは特に痛いとは思わなかった。ハッキリ言うが、歯医者のほうがよっぽどツラい。ただ、こればっかりは人それぞれ、体質によっても違うと思うので、「マルヤの言葉を信じてタトゥーを入れたのに、メチャメチャ痛かった~」などと言われても知りまへん。
しかし、ワシはちと心配だった。
というのも……有名タトゥーイストのMr.カートゥーンに胸を彫られている客(日本人)が、顔をゆがめて苦しむ……という映像を見たことがあったから。エクスタシーに悶える女性がシーツをつかむように、その男は自分のジーンズのモモ部分をつかんで必死に耐えていた……ププッ。
とはいえ、胸への彫りが間近に控えているワシとしては、笑っている場合ではない。「胸に入れるタトゥーはそんなに痛いのか!」と、肩の時とは全く段違いな苦痛を想像してしまうではないか。
で、当日。覚悟を決めて臨んだのだが……実際には大したことなかったのだ、ケロッ。上の方、つまり鎖骨に近い部分が、ちょっと骨に響くくらいだな。
ただ、場所が場所だけに、彫られてるあいだはあまり喋れない(喋ると胸が上下してしまうため)ことが、痛みよりもつらかったりして。「マルヤ殺すにゃ刃物はいらぬ、箝口令をしけばいい」ですな。なんやかんやで、計7時間ほどかかっただけに……。
(写真3)
その後、数日はシャワーを浴びるたびに痛むが、それとて日焼け後と大差ない程度。敢行翌朝のパジャマには少量の血と、固着し損なったインクが多少つくし、4日~7日めにかけてカサブタがはがれる(と説明されるのだが、ワシのはどう見ても垢でしかない)が、日常生活に支障をきたすわけでもない。
というわけで、アスリートの体調管理にも問題なく、リハビリ中に敢行してもOKなんじゃないか?というのが、ワシの結論だ。
ただ、皮膚が弱い人やリンパ腺を腫らしている人には絶対に勧めないが……。
(写真1)レイ・ミステリオ
ワシがタトゥーというものを敢行するに当たって、最大のインスピレーションになった人物の一人。上から読んでも下から読んでも「619」となる市外局番タトゥーもナイスだが、おなかに「mexican」という自己主張タトゥーがあることにも感服する。
その「619」と「mexican」からわかるとおり、彼の戦い・言動・出で立ちの全てにみなぎっているのは、プライドとレプリゼント精神。その歩みは、3枚組DVD『ザ・ビッゲスト・リトルマン』で確認して欲しい。
(写真2)タトゥー解説、左肩編
ワシの左肩タトゥーのテーマは「SF」。
写真を見てればわかるとおり、真ん中にはチカーノ・ラップとメタルの中間みたいな書体で、大きくSFと書いてある。もちろん、サイエンス・フィクションのことだ。
そのバックは、『スター・トレック』の宇宙艦隊マークを上下逆さにしたもの。さらに、その艦隊マークの下部、左から下を経由して右まで走っている刀のようなものは、実はカタカナで、左から右に「ナード」と読む。要するに「SFオタク」ということだな。That's what I am!
(写真3)タトゥー解説、左胸編
●真ん中のマークはウチの家紋。
●なぜキツネか?それはワシが京都市伏見区出身だから。伏見ゆうたらお稲荷さんですがな。最初に東京に来たときに住んだのも北区王子あたりで、これまた関東のお稲荷さんの総本山。犬・狼・コヨーテに間違われないよう、尻尾を9本にしてキツネ性を主張してますわ。
●鳥のような蛇のような生き物は、アステカの神、ケツァルコアトル(Quetzalcoatl)。アステカ人はスペインの侵略者によって物質的には征服されても、精神的には逆征服した。また、そうやって築かれたメキシコは、アメリカ合衆国に領土を奪われながらも、合法・非合法を問わず移民を大量に送り出すことによって、再征服を成功させている。どんな苦難にも負けない、敗れざる者たち。ワシもそれにあやかりたく。
●「1785年」とは、悪代官・小堀なんちゃらの圧政に苦しむ地元(伏見)の人々を救うため、ワシの先祖が江戸まで来て幕府に直訴し、ムショに入れられた年。1788年死亡。獄死説と「釈放されたが弱ってて死んだ」説あり。
下オビの文句はワシのモットー。
●DEFIANCE=権威に盲従しないこと
●DILIGENCE=努力、精進
●DEVOTION=献身、奉仕の精神(EW&Fの曲名でもあるな)
Tattoo Studio SEEKに興味ある人は、下記のURLで。
http://www.tattooseek.com/
丸屋九兵衛(まるや・きゅうべえ)
『bmr(ブラック・ミュージック・リヴュー)』編集部勤務
別名=「痴の巨人」。立場を利用し、自分が携わる雑誌『bmr』にて視点の定まらない連載「雑学王」を9年以上も続けている。早川書房『SFマガジン』でも、スター・トレック連載「Trek Daddy」続行中。文中で触れたとおり、2月には初の著書『音楽誌が書かないゴシップ無法痴態』を出したが絶不評中……。