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Nerds,Be Ambitious!

2008年03月10日

第十回:「ユタ・ジャズ」のひみつ

アメリカの人口統計について調べていて、面白いことがわかった。

ご存じのとおりアメリカ合衆国は「世界の警官」であるからして、世界各地に軍隊を派遣してらっしゃいます。日本、韓国、ドイツ、イギリス……あれっ、映画『トランスフォーマー』冒頭部で描かれる中東の米軍駐屯地、あれはどこだったっけ?とにかくこの惑星は、犬も歩けば米軍に当たる状態なのだよ。(写真1)

そんなわけで、海外で軍務に就いている米兵人口は相当な数にのぼる。問題は、下院の選挙の時だ。いや、投票手続きウンヌンではなくてだな……。

「下院」ことThe United States House of Representative(合衆国代議院)の議席総数は435。それらの議席は、10年に1度の国勢調査で判明する人口に応じて、50の各州に割り当てられている。アラスカやワイオミングなど、いくつかの州は代表1名。やはり、いかにも人口過疎なイメージだもんなあ。それに対して、面積広大な上に人口密度もそれなりで、要するに人口の多いカリフォルニア州なぞは53議席!ということは、下院議員の8分の1近くがカリフォルニア州選出か。調べてみるとカリフォルニア州の人口は3600万強。アメリカの総人口は3億と見積もられているから……おおっ、実際に総人口の8分の1くらいじゃないか!

さて、ここで注目したいのは海外兵役組の人口がどう扱われているか、だ。答えは、「彼らも各州の人口としてきっちり統計されている」。つまり、海外駐在人口も、議席の配分を左右するのだ。各地に駐屯する米軍の総人口は相当なものだろうから、下院議席を増やしこそすれ減らしたくはない各州にとって、無視できないものなのだろう。


ところが。同じように海外に人々を派遣しながらも、カウントされないケースがある。それは、「伝導」だ。

かつて、海外への布教といえば、カトリックはイエズス会の十八番だった。しかし!現代アメリカにおいて海外布教といえば、モルモン教こと「末日聖徒イエス・キリスト教会」である。ユタ州はソルトレイクシティを本拠地とするモルモン教は、19世紀前半に生まれたキリスト教系の宗教。だが、一般のカトリックやプロテスタントからは、異端あるいは「異教」扱いされることもある。当初は一夫多妻制を旨としており、それがゆえに非難ゴーゴーだった。そのあたりについては、シャーロック・ホームズの第一弾「緋色の研究」を読まれたし。(写真2)


このモルモン教の凄いところは、なんといってもフルタイムの(という表現も変だが)宣教師を5万人以上、世界中に派遣しているということだろう。

あなたが、自転車に乗って走っている白人二人組を見かけたとしよう。しかも、それがスーツ姿の若い男だとしたら……モルモン教の宣教師だと思って、まず間違いない。

ワシが「えらいなあ」と感心するのは、彼らがまがりなりにも日本語で話しかけてくることだ。世界各地のコンサートにおいて、「ヘヴィ・メタルの真髄とはなんぞや」を客に説教する際、ちゃんと現地の言葉を使うマノウォーのように。(写真3)

ワシ自身も会社のほど近くで、自転車に乗った二人組に「スイマセン」と声をかけられたことがある。ワシが「むっ、末日聖徒だなっ」と言うと、むしろ彼らは喜んで「末日聖徒についてなにを知っていますか?」と尋ねてきた。ワシが「たとえばオズモンズとか」と言うと、彼らは「ああ」と頷いていたが……本当にわかってたのか、若造どもよ。

オズモンズ a.k.a. オズモンド・ブラザーズといえば、70年代に世界的人気を博した、モルモン教徒一家によるアイドル・グループだ。中でも人気が高かったドニー・オズモンドは、なぜかアル・ヤンコヴィックの“White & Nerdy”のプロモーション・ヴィデオに出てたなあ。

このオズモンド一家は「布教ではなく、芸能活動に熱中してる」とモルモン信者コミュニティ内で批判されたらしいが……別にええやん。というより、布教が信者の義務であるかのように語られているのが、ワシには理解できない。ま、自由ですがね。

閑話休題。

とにかく、これら5万人以上のモルモン宣教師のほとんどがユタ州出身らしい。そして、2000年の国勢調査において、その宣教師人口がカウントされていれば、ユタはもう下院議席をもう一つ獲得できただろう、というのが大方の見方だとか。カリフォルニアのように53議席もあるところに1議席足しても有り難みがないが、ユタは現状3議席。もう1議席、のどから手が出るほど欲しかったでしょうなあ。


ユタ・ジャズ

そんなユタ州が誇るNBAチームといえば、もちろんユタ・ジャズである。だが、不思議に思わないか?なぜ、ユタ州でジャズなのだろう?と。こう言っちゃ失礼だが、どう見ても小粋なジャズが似合う土地柄には思えやせんぜ。

そう、これも例によって本拠地移転に起因する珍事だ。このチーム、もともとは「ニューオーリンズ・ジャズ」だったのだが、当時のオーナーがニューオーリンズに馴染めなかったこと、また、その妻がユタ出身(モルモン教徒か?)だったために、チームをユタに移したのだという。

ところで、古巣ニューオーリンズはNFLチームのセインツの本拠地。ゆえに、「ジャズの街、ニューオーリンズには聖徒(セインツ)がいる。末日聖徒の州、ユタにはジャズがある」と皮肉られることもあるそうな。

トランスフォーマー

(写真1)
タカラというメーカーがなかったら、
『トランスフォーマー』は生まれなか
った。その事実を、我々日本人はもっ
と誇るべきだと思う。本作では、特に
タイリースとアンソニー・アンダーソ
ンに注目したい!

末日聖徒イエス・キリスト教会

(写真2)
これはソルトレイクシティにある
「末日聖徒イエス・キリスト教会」
本部ビル。立派ざんす。

マノウォー

(写真3)
I like heavy metal, too!
LPでもリリースされた本作。1曲目
が長すぎてLPの片面に収まりきらず、
曲の途中なのにフェイドアウト。盤を
裏返して続きを聴かねば、という珍事
発生!さすがメタルのカガミ!もっと
も、彼らを嫌う正統派メタル・ファン
もいる。曰く、「マノウォーはメタル
のステレオタイプを演じている」。
ううむ。



丸屋九兵衛

Profile

丸屋九兵衛(まるや・きゅうべえ)
『bmr(ブラック・ミュージック・リヴュー)』編集部勤務

別名=「痴の巨人」。立場を利用し、自分が携わる雑誌『bmr』にて視点の定まらない連載「雑学王」を9年以上も続けている。早川書房『SFマガジン』でも、スター・トレック連載「Trek Daddy」続行中。文中で触れたとおり、2月には初の著書『音楽誌が書かないゴシップ無法痴態』を出したが絶不評中……。

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