カルチャー | Culture

Nerds,Be Ambitious!

2007年05月14日

第六回:スズメバチ物語(前編)

マシーネンクリーガー

表紙は独立軍のほうの装甲服

ゴールデンウィークはどないやった?ワシは原稿書きもしていたが、主に模型に色塗りして有意義に過ごしたね。そう、小学生の頃に初代ガンダムのインパクトにさらされたワシは、典型的な、正真正銘の、完膚なきまでに(?)、いわゆるオタクなのだ。「ヒップホップおたく」とか「R&Bオタク」とかじゃないぜ。No way! Me is a nerd for real, jigga! まあ、かつてのワシにとっては「模型」といえば当然のようにプラモデルだったが、今ではメタル・フィギュアだがね。

プラモデル時代を振り返って思い出されるのは、『SF3Dオリジナル』。独自の設定を持つ未来戦争SF世界で、そこに登場する独創的な戦闘マシンの数々が本当に魅力的だった。今では改称して『マシーネンクリーガー』というらしいがな。

詳しいことは端折るが、環境超劣悪化に伴い人類が脱出、その後、凄まじい自浄力によって回復した未来の地球が舞台。植民星から再び地球に入植した人類だったが、無法地帯とならぬよう管理するシュトラール軍(シュトラールも元は地球の植民星なので、彼らもみなヒューマン・ビーイングだ)との間に軋轢が生じ、やがて傭兵軍を雇っての独立戦争へと発展する……。

グリーン・ホーネット

下の方に小さく写るは、グリーン・
ホーネットの相方ケイトー。ただし、
このヴァージョンでのケイトー役は
ブルース・リーではない

さて、シュトラール軍はドイツ語が公用語らしく、戦闘メカの名称もドイツ語でつけられている。グスタフ、コンラート、ケーニッヒスクレーテ等々……。そのシュトラール軍のマシンとして、「ホルニッセ」という戦闘機が出てきた。

このホルニッセ、ドイツ語で「スズメバチ」の意味である。つまり英語の「ホーネット」だな。ワシは大学時代の第二外国語がドイツ語だったし、昨年、とあるドイツ産オカマSFパロディ映画の日本公開記念トークショーに出たことで、ドイツ語ヴォキャブラリーが再インストールされているのだ。ヴォーヘア・コメン・ズィ~?

米海軍の主力戦闘機となったホーネット

F-14トムキャットが現役引退した今、米海軍の主力
戦闘機となったホーネット。アメリカ的発想から言うと、
「主力」を名乗るにはやや小さいが(写真:U.S. Navy)

『SF3Dオリジナル』~『マシーネンクリーガー』は日本人イラストレーター/デザイナー/モデラーである横山宏の手によるものだが、この――戦闘機を「スズメバチ」と名付ける――命名センスは、多分に欧米的なものだと思う。というのも、特に英語圏を見ると、「外人ってスズメバチが好きだなあ」と思うことがままあるのだ。現実世界の、アメリカ海軍主力戦闘機F/A-18は通称ホーネットだし、同じくホーネットを名乗る米軍空母、さらに同名のイギリス軍艦もあった。ブルース・リーの出演で知られるTVドラマ『グリーン・ホーネット』を知る人もいよう(設定はバットマンとよく似ている)。

そして、我らがホーネッツだ。現在ではニューオーリンズ/オクラホマシティ・ホーネッツとして知られる、あのホーネッツである。


とはいえ。このスズメバチ好きな傾向は、大方の日本人には理解しがたいものだろう。

「空母・スズメバチ」も「戦闘機・スズメバチ号」も日本ではあり得なさそうだし、チーム名としてのホーネッツもなかなか発想しにくいものだ。だいたいホーネットという単語も、日本人のあいだでメジャーであるとは言い難い。

もっとも、ヴォキャブラリーとして馴染みがあるか否かは、さして問題ではないのだろう。肝心なのは、日本では毎年30人ほどがスズメバチに刺されて死んでいるという事実である。


Eastern Timber Wolf

ハードコアな本があるものですが……
こうやってしげしげと見ると、オオスズメ
バチのアゴの巨大さがよくわかりますね。

広義のスズメバチは、ハチ目ハチ亜目スズメバチ上科スズメバチ科スズメバチ亜科に属する昆虫の総称である。この非常にまどろっこしい重層構造のうち、比較的上位概念にあたる「スズメバチ上科」にはツチバチやベッコウバチ以外に、なんとアリも含まれているという。つまり、アリとスズメバチは共通の祖先を持ち、比較的近い仲間だということだ。アリは極論すればハチの一種だということは知っていたが、よりよってスズメバチに近いとはなあ……。想像だにしない進化の妙を見せられて感心してしまったが、感心している場合ではない。

日本で「スズメバチ」といえば、なんといってもオオスズメバチことVespa mandarinia japonicaだ。

体長2.5~4.5cm、広義のスズメバチ類でも屈指の大きさを誇るオオスズメバチは攻撃性も強く、毒針で刺す、毒液を空中噴霧する、刺しながら噛む、と多彩なワザを持っているから始末が悪い。おまけに、一度刺すと死んでしまうミツバチと違い、針は何度でも使用可能で、実際に何度でも刺してくる。また、ハチ目だからフェロモンによる情報伝達も得意で、件の毒霧は仲間への攻撃呼びかけフェロモンとしても機能するから、グズグズしていると集団攻撃にあう可能性もあるのだ。これが本物のフェロモンだからな、小僧ども!(誰に言ってるの?)

ホーネッツ

安野モヨコの『ハッピー・マニア』にも、高橋君がスズメバチに刺されたショックで記憶喪失に!という展開があった。要するに、日本で普通に生活している人間に対して、極端なダメージ(死を含む)を与える可能性が最も高い生物。それがスズメバチなのではなかろうか。

それをチーム名にするとは……海の向こうのこととはいえ、何を考えているのだ、ホーネッツ!

次回に続く

丸屋九兵衛

Profile

丸屋九兵衛(まるや・きゅうべえ)
『bmr(ブラック・ミュージック・リヴュー)』編集部勤務

別名=「痴の巨人」。立場を利用し、自分が携わる雑誌『bmr』にて視点の定まらない連載「雑学王」を9年以上も続けている。早川書房『SFマガジン』でも、スター・トレック連載「Trek Daddy」続行中。文中で触れたとおり、2月には初の著書『音楽誌が書かないゴシップ無法痴態』を出したが絶不評中……。

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