カルチャー | Culture

Nerds,Be Ambitious!

2007年03月08日

第四回:森林オオカミを探せ!(前編)

諸君、球団名の由来に悩んだことはないか?

つまりだ。たとえば日本のプロ野球のチーム名を見ると、「ベイスター」「マリーン」といった意味不明系(後者は「海兵隊」の意味?)を除けば、圧倒的に動物系のネーミングが多い。だが、その由来となった動物たちは、そのチームの本拠地付近に生息しているのだろうか?

たとえば、阪神タイガース。当たり前だが、関西には野生のトラはいない。そして、MLBのデトロイト・タイガーズ。デトロイトにもトラはいない。そもそも、トラというのはユーラシア大陸(と東南アジアの島々)固有の動物であって、アメリカ大陸にいるわけがないのだ……野生、という意味では。ただし!現在、世界中に生息する野生のトラの個体数は全て合わせても5000頭前後しかいない(異説アリ)のに対して、アメリカ国内でペットとして飼われているトラは5000頭以上という話もある。そういう意味では、トラ大国なのだなあ、アメリカは。

ミネソタ・ティンバーウルブス
さて、そんなアメリカで……いや、生物学的には「北米大陸」と言ったほうがいいだろうか。その北米大陸において、本来の野生動物・食物連鎖で頂点に君臨する動物といえばオオカミだ。

そのオオカミの名を冠したNBAチームといえば、もちろんミネソタ・ティンバーウルヴズ。しかし、だ……同チームの本拠地はミネソタ州ミネアポリス。プリンスを生んだ音楽シーンを誇るミネアポリス市は、300万人ほどの人口を抱えるミネアポリス/セントルイス大都市圏の中心地だから、オオカミが生きていける余地などないだろう。だが、ミネソタ州全域を対象にすれば、オオカミはまだ生き残っているのか?それとも看板に偽りアリなのか、ティンバーウルヴズ?!そんなしょうもない疑問を突き詰めていこう。


ミネソタ州に絞って考える前に、オオカミという種について調べておきたい。

まずは、フィジカルなデータから。体高は60~90cm、体長は1.3~2m。体重はふつう、20から60kgの間だが、時おり80kgほどのマッシヴな個体が見つかるという。

オオカミ雪景色

野生ではなさそうだが……オオカミ in 雪景色。
(U.S. Fish and Wildlife Service)

今回、調べてみて驚いたのが、オオカミとイヌの関係。かつては「オオカミの親戚」、つまり、近いが別の種と考えられていたイヌも、現在の学会では「オオカミの亜種」と考えるのが主流なのだそうだ。さらに驚いたことに、イヌは他のオオカミよりも……

(1)脳みそが20%ほど小さい
(2)鼻が悪い
(3)免疫システムが弱い(つまり体が弱い)

愛犬家には「ええ~っ!」と言いたくなる内容だが、脳というものは非常に燃料を喰うパーツであるということを理解しておこう。人間に飼われることで、獲物を捕らえるという知的活動をせずとも済むようになったのだから、脳に回すカロリーをセーブすれば楽に生きられる。また、人間にエサをもらうにしろ生ゴミを漁るにしろ、それは逃げない食料なわけで、エサが逃げない以上はロングレンジの追跡など不要。だから、嗅覚が衰えるのも道理なのである。しかし、「イヌ=知的」「イヌ=嗅覚」というイメージも強かっただけに、ショックだよなあ……。

オオカミ生息地図

緑は現在もオオカミが生息している地域。赤は、かつて生息していた地域

さて。そんなイヌを含むオオカミという種は、諸説あるものの、17の亜種に分かれるとか。そのうち、日本に生息していた2種、つまりCanis lupus hattai(Hokkaido Wolf=エゾオオカミ)とCanis lupus hodophilax(Honshu Wolf=ニホンオオカミ *)は絶滅している。

というわけで、その生息範囲は確実に狭まっているのだ。詳細は地図を参照してほしいが、かつては日本列島を含むユーラシア全域(東南アジアは除く)&北米全域、そして北アフリカにまで分布していたオオカミは、今では北に偏った地域にしか生息していない(この場合、もちろんイヌはオオカミに含めない)。

もっとも、先述のトラなぞに比べると、種全体としては楽観できる状況らしい。その動物種の状態を表す指標を最もデンジャラスなほうから挙げていくと、Extinct(絶滅)、Extinct in the Wild(野生種は絶滅)、Critically Endangered(非常に危険)、Endangered(危険)、Vulnerable(弱体化)、Near Threatened(やや心配)、Least Concern(心配なし)となるのだが、トラがEndangered状態なのに対して、オオカミはLeast Concernなのだそうな。アラ、意外。

とはいえ、これは種全体としての話。個々の亜種については別だ。Canis lupus lupaste(Egyptian Wolf)なぞは「もしかすると絶滅してるかも」という頼りない記述があったりもする。では、北米大陸での生息状況や如何に?!……というところで、次回に続く

* ニホンオオカミ→山梨県立博物館では「オオカミがいた山 消えたニホンオオカミの謎に迫る」展を3月18日まで開催中!

丸屋九兵衛

Profile

丸屋九兵衛(まるや・きゅうべえ)
『bmr(ブラック・ミュージック・リヴュー)』編集部勤務

別名=「痴の巨人」。立場を利用し、自分が携わる雑誌『bmr』にて視点の定まらない連載「雑学王」を9年以上も続けている。早川書房『SFマガジン』でも、スター・トレック連載「Trek Daddy」続行中。文中で触れたとおり、2月には初の著書『音楽誌が書かないゴシップ無法痴態』を出したが絶不評中……。

ページの先頭へ戻る