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Nerds,Be Ambitious!

2006年12月27日

第二回 : ブレッツ→ウィザーズの頭韻数十年史(前編)

ワシ、実はファンタジー好きである。こんな顔はしているが。

おりしも映画界はファンタジーづいている。『ハリー・ポッター』シリーズはもとより、三大エピック・ファンタジーと呼ばれる『指輪物語』『ナルニア国ものがたり』『ゲド戦記』の全てが映画化され(まあゲドは本国ではなく日本で、だが)、新手の『エラゴン』もかなりの大作映画となった。2007年には、元祖RPG(ロールプレイングゲーム)こと「ダンジョンズ&ドラゴンズ」から派生したファンタジー小説『ドラゴンランス』がアニメ映画化されるようだし……。ちなみに『エラゴン』にはジョス・ストーンが出ているから、ブルー・アイド・ソウル好きは必見だ!まあ、ワシとしては、ザ・ロック主演の『スコーピオン・キング』の続編が何よりも待ち遠しいのだが。

さて、ファンタジーに欠かせないものといえば魔法使い。つまり「ウィザード」である。というわけで、今回はワシントン・ウィザーズの話をしよう。

とはいえ、いささか回りくどい話なのだが……。

日本にもともとなかった文化だからか、「韻を踏む」という概念は、日本において理解度が不十分だったり、逆に過剰に捉えられていたりする。たとえば日本語ラップ・アーティストの一部は、未だもって韻というものを理解していないと思う(韻がナンボのもんじゃい、音楽としてカッコ良ければええんや!という姿勢なら、それはそれで正論だ)。また、一時期、社会問題になった騒音おばさんのことを形容する際に「ラップを踏む」と書いていた(意味不明)週刊誌もあったが、これなぞは「韻とは“踏む”ものだ!」という記者の思いだけが一人歩きしてしまった例だろう。

なぜにこういう話をしているかというと……ラップの起源である英語詩、ひいてはヨーロッパ語詩の世界には、「韻」といっても脚韻と頭韻があるのだ。

すごく乱暴に説明すると……脚韻とは語末の母音の形を合わせるもの(本当は子音も関係する。ラップの文脈で「ライム=韻」と称されているものは、実は専門的に言えばassonance=母音押韻でしかないのだが……話がさらにややこしくなるので省略)。それに対して頭韻とは、語頭を同じ子音で揃えるものだ。

おそらくはラテン(つまりローマ帝国)起源の発想である脚韻に対し、頭韻はゲルマン起源。だから英語は本来、頭韻の詩を作っていた文化なのである。

閑話休題。


こんなに頭韻、頭韻と語ってきたのは、チーム名決定に際して、この要素が重視されることがあるように見えるからだ。

シアトル・スーパーソニックスニュージャージー・ネッツ
たとえば、ニュージャージー・ネッツ。あるいはシアトル・スーパーソニックス。この二つは、都市名とチーム名がそれぞれNとSで始まっているから、絵に描いたような頭韻志向のネーミングと言えよう。

また、ニューヨーク・ニックスも。スペルで書くとNew York KnicksだからNとKで全然違うわけだが、Knicksの頭のKは実際には発音しないわけで、音だけみれば要するにNとNだ。これまた頭韻志向である。

これらより若干複雑で、手が込んだパターンとなっているのが、クリーヴランド・キャヴァリアーズだ。カタカナで書くと実感しづらいが、Cleveland Cavaliers。つまり、都市名、チーム名ともにCとLとVが入り乱れる構成となっている。単純な頭韻だけでは飽きたらず、都市名とチーム名の両方が同一の語感で統一されている、とでも言おうか。結果として、『すすめ!! パイレーツ』に出てきた「オクラホマ・オカマーズ」に近い結果となっているのが興味深い(もちろんオカマーズは野球チームだが)。

クリーヴランド・キャヴァリアーズ
クリーヴランド・キャヴァリアーズ

この「キャヴァリアーズ=オカマーズ」の系譜につらなるのが、ワシントン・ウィザーズの前身、ボルティモア・ブレッツだ。スペルで書くと、Baltimore Bullets。BとLとTが入り乱れ、都市名とチーム名の音感が統一された構成となっている。

しかし! 本拠地の(微妙な)移動とあいまって、ブレッツ→ウィザーズの歴史は、頭韻とイメージとのせめぎ合いの数十年、となってしまったのだった……(次回に続く

丸屋九兵衛

Profile

丸屋九兵衛(まるや・きゅうべえ)
『bmr(ブラック・ミュージック・リヴュー)』編集部勤務

別名=「痴の巨人」。立場を利用し、自分が携わる雑誌『bmr』にて視点の定まらない連載「雑学王」を9年以上も続けている。早川書房『SFマガジン』でも、スター・トレック連載「Trek Daddy」続行中。文中で触れたとおり、2月には初の著書『音楽誌が書かないゴシップ無法痴態』を出したが絶不評中……。

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