ウィザーズのセンター、イタン・トーマスは、昨年10月11日に心臓を手術した。心臓の問題ということもあり、NBAプレイヤーとしてのキャリアを続行できなくなる可能性もあった。
心臓の問題が原因で、若くしてこの世を去った有名なバスケットボール・プレイヤーは、90年代だけで2人もいる。セルティックスでオールスターになったレジー・ルイスは93年7月、ワークアウト中に倒れて27歳の若さで死去。90年3月には、NBAドラフトでの上位指名が確実といわれたロヨラ・メリーマウント大のハンク・ギャザーズが、試合中にフロアに倒れ込むと、病院へ搬送された直後に亡くなっている。
心臓に関連する病気となれば、生命の危機に直面する場合は多い。トーマスの場合は、幸運にも手術の成功によって現役復帰が可能になった。ただし、プレイできるレベルに体を動かせる状態になるまでの道のりは、長くて厳しいものだった。歩くことからリハビリを始めたトーマスだが、「1日2回病院内を歩いたけど、それだけで1日中疲労困憊になった」と語る。それでも、復帰できることを信じ、辛抱強くリハビリを続けた。
6月に身体接触のないドリルがOKになると、夏の間に元NBAプレイヤーとの1対1、ピックアップゲームができるようになるなど、トーマスの体調は著しく向上。キャンプに無事参加できただけでなく、プレシーズンゲームは10月7日の初戦から出場。翌日のグリズリーズ戦では、18分のプレイで8点、5リバウンドの数字を残した。3戦目のピストンズ戦では、持ち味であるブロックショットを3本記録している。
トーマスの復帰はウィザーズにとってプラス材料になるはずだったが、先発センターのブレンダン・ヘイウッドが、キャンプ序盤で右手首を故障。検査で手術が必要なほどの重傷だったことから、4~6か月の長期欠場が確定した。そんな事情もあり、トーマスはヘイウッドに代わる先発センターとなることが濃厚。フロントラインに信頼できる人材が少ないウィザーズにとって、トーマスの復活はより大きな意味を持つことになりそうだ。
「戻ることができたから気分はいいよ。大きな違い(チームに欠けていたもの)をもたらすことができると思う」
こう語るトーマスが一貫して25~30分プレイできれば、7リバウンド、2ブロックショット程度のアベレージは十分可能。ディフェンスがいまひとつのウィザーズにとっては、トーマスの存在にありがたみを感じるシーズンになるかもしれない。
Takashi Aoki
NBA専門誌「HOOP」の編集者から98年秋にフリーのバスケットボールライターとなり、ミシガン州デトロイトを拠点に取材を続ける。 最近のお気に入りプレイヤーは、昨年のヨーロッパ選手権優勝と、世界選手権でアメリカを倒す原動力となったギリシャ代表のガード、 セオドロス・パパルーカス。NBAでは人間性のよさを理由に、ドウェイン・ウェイド、エルトン・ブランド、マイケル・レッド、チャウンシー・ビラップス、 パウ・ガソルがお気に入りのトップ5。