9月30日、全チームのキャンプが本格的にスタート。NBAに関する記事やトピックスが、いろいろ出てくるようになった。そんな中、ヒートの公式ホームページを見ていたら、「iPods for Playbooks?」というタイトルがあった。
記事を読んでみると、新しくヘッドコーチとなったエリック・スポールストラが、iPodの中にインストールされたプレイブックを、プレイヤー全員に渡したというのだ。NBAプレイヤーのほとんどは、iPodを持っており、使い慣れている。オフェンスのセットなど、プレイヤーが覚えなければいけない内容が書かれているプレイブックは、非常に分厚い本というのがこれまでの常識だった。
ところが、スポールストラはiPodタッチの中にインストールしたのは、プレイブックの内容だけでなかった。試合のビデオ、NBAとチーム内でのルール、コメント、新聞記事なども見られるのである。分厚い本と違い、軽量で持ち運びがいつでもできるiPodは、相手のスカウティングや自身のプレイをすぐに映像でチェックできる点で、プレイヤーにとって非常に便利である。
スポールストラはアシスタントからヘッドコーチに昇格した人物だが、その前はアドバンス・スカウト、ビデオ編集の仕事をしていた。6、7年前、筆者はスカウト時代のスポールストラと知り合いになった。そのきっかけは、アリーナでのスカウティングをする際、パソコンを使っていたのがきっかけだった。
スポールストラのパソコンには、ヒートが独自に開発したソフトがあり、それにダイアグラム(プレイヤーの位置、ドリブルやボールの動きが書かれたセットプレイの図)を書き込むことができた。ここ数シーズンは、多くのスカウトがアリーナにパソコンを持参し、足を運んだ試合のレポートや新しいダイアグラムを首脳陣に送信している。しかし、スポールストラは当時、どのスカウトよりも一歩先を進んでいた。
プレイブックをiPodにインストールするというのは、テクノロジーに精通しているスポールストラらしいと思った。ビデオ編集を担当した経験が、スカウティングの映像も取り込むアイディアへとつながったのはまちがいない。「(プレイブックが)300ページ以上もあれば、だれもがちょっと萎縮してしまうもの。iPodはみんなが持っている」と語るスポールストラは、プレイヤーとのコミュニケーションを円滑にできる点も、プレイブックのiPod化した理由としている。
スポールストラは、13年間パット・ライリーの下で仕事をしてきたスタッフから、名将の後を継ぐ指揮官となった。テクノロジーを有効に使うこと以上に、ライリーから学んだことを采配で生かせるのか?という点で、スポールストラは注目しなければならないコーチと言えるだろう。
Takashi Aoki
NBA専門誌「HOOP」の編集者から98年秋にフリーのバスケットボールライターとなり、ミシガン州デトロイトを拠点に取材を続ける。 最近のお気に入りプレイヤーは、昨年のヨーロッパ選手権優勝と、世界選手権でアメリカを倒す原動力となったギリシャ代表のガード、 セオドロス・パパルーカス。NBAでは人間性のよさを理由に、ドウェイン・ウェイド、エルトン・ブランド、マイケル・レッド、チャウンシー・ビラップス、 パウ・ガソルがお気に入りのトップ5。